源泉徴収票が発行してくれない場合の対処法完全ガイド

目次

はじめに

目的

この文書は、源泉徴収票を会社が発行してくれないときに、あなたが取れる行動と制度上の義務をわかりやすく整理するために作りました。税務手続きや転職・確定申告で必要になる重要書類の扱い方を丁寧に解説します。

対象読者

・転職や退職を控えている方
・確定申告を予定している方
・会社に源泉徴収票を請求しているが未だ受け取れない方
専門家向けではなく、実務で使える手順を知りたい一般の方を想定しています。

本書で扱うこと

源泉徴収票の基本的な役割、合法的に発行されない場合、会社が出してくれない場合の対応策、税務署への届出の手順、会社が倒産・合併で連絡が取れない場合の救済方法まで、実務的に整理して説明します。

読み方のポイント

各章は具体的な順序で並べています。まず基本を確認し、次に問題が起きたときの対処手順を順を追って読み進めてください。必要に応じて章だけを参照して対応できます。

源泉徴収票の基本:誰が・いつまでに・どんなときに発行する義務があるか

2-1. 源泉徴収票とは何か

源泉徴収票は、給与や賞与などの支払額と、そこから差し引かれた所得税(源泉徴収税額)をまとめた書類です。年末調整の確認や確定申告の資料、転職先への提出、住宅ローンの審査などで使います。受け取る側が税金の納付状況を把握するための重要な証明書です。

2-2. 誰に、いつまでに発行する義務があるのか

給与または報酬を支払う会社や事業主が発行します。税務署や市役所が発行するものではありません。支払者には、原則として支払翌年の1月31日までに源泉徴収票を交付する義務があります。パートやアルバイトでも、給与を支払っている以上は発行義務が生じます。年間の給与が103万円以下で所得税が源泉徴収されていない場合でも、原則として発行対象です。

複数の勤務先がある場合は、それぞれの支払者が自分の分について交付します。年の途中で退職しても、最終の給与を支払った事業主は源泉徴収票を出す必要があります。

そもそも源泉徴収票が「発行されない」ケース(合法な場合)

3-1. 業務委託・請負・個人事業主の場合

請負契約や業務委託で報酬を受ける場合、支払いは一般に『給与』ではなく個人事業の収入や雑所得として扱われます。たとえばフリーランスのライターやデザイナーが企業から原稿料や報酬を受け取る場合です。この場合、企業は給与所得用の源泉徴収票を作成しません。代わりに企業が『支払調書』を作ることがありますが、支払調書は必ず交付されるわけではなく、交付の有無だけで所得の正当性が変わるわけではありません。

実務上の対応例:請求書、契約書、銀行の入金履歴などを保存しておくと税務処理で役立ちます。支払調書の交付を希望するなら支払元に確認するとよいです。

3-2. そもそも給与所得がない場合

企業との間に雇用契約がなく、給与として支払いを受けていないなら、源泉徴収票自体が発行されません。アルバイトや社員のように給与から源泉徴収される仕組みが存在しないためです。したがって、源泉徴収票がないこと自体は必ずしも問題ではありません。

税金の申告時には、給与以外の収入をどう申告するかがポイントです。自分で確定申告する場合は、収入を証明する書類を整えておくと安心です。必要なら税務署や税理士に相談してください。

本来は発行されるべきなのに、会社が出してくれないケース

4-1 会社の義務違反パターン

会社は給与支払者として源泉徴収票を交付する義務があります。次のような状況で交付がないと、基本的に会社の義務違反です。

  • 1月31日を過ぎても前職から届かない:年末調整が終わり、翌年1月31日までに交付されるべきものが未着の場合。
  • 催促しても「忙しいから後で」「うちは出さない」などと拒まれる:口頭の断りは正当な理由になりません。
  • 給与明細や雇用契約があるのに「個人事業主扱いだから出さない」と言われる:実態が雇用関係なら交付が必要です。

会社が主張する「理由」とその見方

会社側が「個人事業主扱い」などと言う場合、実際の働き方(指揮命令の有無、給与支払い方法、雇用契約書の内容)で判断します。形式の説明だけで交付を拒むのは不当です。

労働者が取るべき準備(次章への橋渡し)

催促前に用意しておくと有利な証拠を挙げます。給与明細、雇用契約書、給与振込の通帳コピー、出勤記録などを保管してください。会社に書面で交付を求めるときは、日付と内容を残すと後で説明しやすくなります。

会社の説明が納得できないときは、次章で示す基本ステップに進んでください。必要なら税務署や労働相談窓口に相談できます。

源泉徴収票を発行してくれないときの基本ステップ

5-1. ステップ1:まずは会社(発行元)に正式に再発行を依頼

再発行は発行元である会社に依頼するのが原則です。まずはいつの年分が必要かを明確にし、氏名・在籍期間・現在の住所(退職済みの場合)を添えて依頼します。口頭だけで済ませず、メールや書面で依頼して証拠を残してください。例:件名「源泉徴収票再発行のお願い(2023年分)」。本文に在籍期間と送付先を明記し、返信期限(例:2週間)を設けると対応が早くなります。

送付方法は簡潔に。社内総務あてなら担当者名、外部の連絡先がわかる場合は宛先も明記します。重要書類は配達記録の残る郵送(簡易書留など)を併用すると証拠力が高まります。

5-2. ステップ2:それでも発行してくれない場合は税務署へ

依頼しても拒否されたり、明らかに引き延ばされる場合は所轄の税務署に相談します。税務署では「源泉徴収票不交付の届出書」を案内してくれますので、依頼した証拠(メールや書面のコピー)、自分の本人確認書類、会社の名称・所在地を持参してください。税務署が会社に確認し、必要な手続きを促すことがあります。対応に時間がかかることもあるため、最初の依頼時から記録を残す習慣を付けると安心です。

「源泉徴収票不交付の届出書」とは

6-1. 役割と効果

源泉徴収票不交付の届出書は、給与などの支払い者(通常は会社)が法律で定められた交付義務を果たさないときに、受給者が所轄の税務署へ状況を知らせるための書類です。届出をすると税務署が会社に対して税務上の指導を行います。多くの場合、その結果として会社が源泉徴収票を発行するようになります。届出自体が受給者の税務上の権利を自動的に解決するわけではありませんが、問題解決の有力な手段です。

6-2. 提出方法

  • e-Taxソフトで作成しオンライン提出
  • 国税庁の様式を印刷して記入し、所轄税務署に持参または郵送
  • 添付すると有利な書類例:給与明細の写し、会社に交付を求めたことが分かるメールや書面のコピー、雇用契約書の写し
    書類は事実が分かるものを揃え、控えを保管してください。

6-3. 注意点

  • 一度受け取った源泉徴収票を紛失しただけの「再発行」には原則使えません。まず会社に再発行を依頼し、拒否された場合に届出を検討してください。
  • 届出後は税務署が会社と連絡を取るため、処理に時間がかかることがあります。事実に基づいて正確に記載し、必要な証拠を添付するとスムーズです。

会社が倒産・吸収合併・連絡不能な場合の対処法

7-1 倒産で発行が事実上不可能なとき

会社が倒産した場合、源泉徴収票を期待するのは現実的でないことが多いです。まず、破産手続き中なら破産管財人に連絡して発行の可否を確認してください。管財人が対応できないときは、所轄の税務署に相談します。税務署は事情を聞いたうえで、確定申告で必要な書類の扱いや代替手段を案内してくれます。

  • 準備するもの:給与明細、振込履歴、雇用契約書など支払いを裏付ける証拠を集める。
  • 確定申告:源泉徴収票がなくても、これらの証拠で申告できます。税務署で事前に相談すると安心です。

7-2 吸収合併・社名変更などの場合

会社が吸収合併や社名変更した場合は、通常、承継した会社が源泉徴収票の発行窓口になります。まずは承継先の人事・総務に問い合わせてください。会社名や代表者が変わっただけであれば、過去分の発行に応じることが多いです。

  • 問い合わせ時のポイント:合併日、在籍期間、給与の支払先情報を伝えると手続きが早まります。
  • 証明が難しい場合は税務署へ相談し、確定申告の方法や代替証明について確認してください。

7-3 連絡不能な場合の実務的手順

代表者や担当者と連絡が取れないときは、次の順で進めます。
1. 書類収集:給与明細、通帳の入金履歴、雇用契約書を揃える。
2. 労働基準監督署や自治体の相談窓口で助言を受ける。
3. 税務署へ持参して、源泉徴収票がない場合の申告方法を相談する。

これらの手順で多くの場合、確定申告や年末調整の対応が可能です。困ったときは早めに税務署へ相談してください。

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