はじめに
この文書の目的
この文書は、源泉徴収票をオンラインで扱う際の基本をわかりやすくまとめています。企業が作成・交付する方法、従業員が受け取って利用する方法、マイナポータルやe-Taxでの活用、注意点、主要な手段の比較を丁寧に解説します。
想定する読者
人事・経理担当者、従業員、フリーランスの方など、源泉徴収票を受け取る・渡す立場の方に役立ちます。専門知識がなくても読み進められるよう具体例を交えます。
なぜオンラインか
紙でのやり取りに比べて、保存や検索が簡単で紛失リスクが減ります。例えば、会社がPDFで交付し、従業員がメールやマイナポータルで受け取る流れが増えています。
本書の構成
全6章で、企業側・従業員側・マイナポータル連携・e-Taxの利用・注意点・手段の比較を順に説明します。各章で実務に役立つポイントと具体例を示します。
企業側:オンラインで作成・交付
概要
給与担当者はe-Taxや給与ソフトで源泉徴収票のデータを作成し、そのまま税務署へ電子提出できます。従業員への交付は紙に限られず、PDFをメール送付したり、Web給与明細システムや社内ポータルで閲覧・ダウンロードできる形でも可能です。従業員の同意が必要になります。
作成(電子提出)の流れ
- 給与ソフトや国税庁のe-Taxでデータ作成
- 電子署名やIDで本人性を確認
- そのまま税務署に電子提出
例:給与ソフトからXML形式で送信する操作です。
従業員への交付方法(具体例)
- メール:添付PDFを送付(パスワード設定推奨)
- Web給与明細:ログイン後に閲覧・DL
- 社内ポータル:アクセス権を限定して公開
非公開URLだけで渡すより、認証機能のある仕組みを使うと安心です。
同意の取り方・記録
書面や電子での同意取得が必要です。就業規則や雇用契約書、同意フォームを使い、同意日を記録して保存してください。非同意の場合は紙で交付します。
セキュリティと保管
データは暗号化やアクセス制限で保護し、法定の保存期間に従って保管します。誤送信や第三者閲覧を防ぐために二段階認証やログ管理を導入すると安全です。
実務チェックリスト
- e-Tax/給与ソフトでの提出手順を確認
- 従業員からの同意取得と保存
- 配信方法の認証・暗号化設定
- 非同意者への紙交付準備
- 保存期間とバックアップの確認
上記を整えることで、企業は安全かつ適法にオンラインで源泉徴収票を作成・交付できます。
従業員側:オンラインで受け取る・使う
受け取り方法
会社が電子交付に対応していれば、Web給与明細システムや社員専用サイトで源泉徴収票PDFを受け取れます。ログイン後に「源泉徴収票」「年末調整」などのメニューを探してください。メールで通知が来る場合もあります。
ダウンロードと保存
PDFをダウンロードして社内PCや自宅のパソコン、スマホに保存します。ファイル名に年と会社名を入れると後で探しやすくなります(例:2024_○○社_源泉徴収票.pdf)。複数の場所にバックアップを残すと安心です。
印刷して確定申告で使う
平成31年分以降は電子交付分の原本提出は不要です。ダウンロードしたPDFを印刷して申告書の添付や確認に使えます。印刷時は氏名・金額・支払年月日などがはっきり出るか確認してください。
スマホでの注意点
スマホ画面だけで申告する場合、画面サイズで見落としが起きやすいです。拡大して全項目を確認し、必要ならPCで印刷してください。パスワード付きのPDFは開ける環境を用意しておきます。
その他のポイント
紛失や不備があればまず会社の総務や給与担当に連絡してください。紙の原本が必要と判断された場合や、会社側で必要書類の再発行ができることがあります。電子データは複製が簡単なので、大事に管理してください。
マイナポータル連携・e-Taxでの利用
概要
マイナポータル連携を使うと、対応する事業者が提供した給与の源泉徴収票データを自宅で一括取得し、e-Taxの申告画面にそのまま取り込めます。マイナンバーカードと対応スマホまたはPCがあれば、紙の源泉徴収票を税務署へ持参する必要がありません。
必要なもの
- マイナンバーカード
- 対応スマホ(マイナポータルアプリ)またはPCとICカードリーダー
- マイナポータルの利用登録(初回のみ)
- e-Taxの作成コーナーにアクセスできる環境
利用手順(簡単な流れ)
- 事業者がマイナポータル連携に対応しているか確認します。
- マイナポータルにマイナンバーカードでログインし、給与の連携データを取得します。
- e-Taxの作成コーナーで「マイナポータルから取り込む」を選び、取得した源泉徴収票データを取り込みます。
- 自動で反映された内容を確認し、必要に応じて修正して送信します。
具体例
掛け持ちのアルバイトがある場合、複数の事業者の源泉徴収票を一括で取得し、合算して確定申告の金額に反映できます。データ取り込みで入力ミスを減らせます。
注意点
対応していない事業者の分は紙やPDFを用意して手入力する必要があります。データに誤りがあれば勤務先へ確認し、修正を依頼してください。また、源泉徴収票は念のため保存しておくことをおすすめします。
オンライン源泉徴収票の注意点
前提条件
会社が電子交付する場合、従業員が自分で画面表示・保存・印刷できる環境を用意していることが前提です。具体例:パソコンやスマートフォン、PDF閲覧ソフト、プリンターなど。操作方法を図や手順で案内すると安心します。
同意と告知
電子交付を行う前に、対象者へ通知し、閲覧方法や問い合わせ先を明示してください。従業員が不安な場合は紙の交付を希望できることを周知しましょう。
紙での対応体制
従業員から求められれば速やかに紙で発行できる体制を整えておきます。例:総務窓口での即日発行、郵送対応など。端末が使えない人や高齢者への配慮も必要です。
保管とセキュリティ
個人情報を含むため、閲覧・保存の際はアクセス制限や暗号化などで保護してください。ログ記録や再発行履歴を残すとトラブル防止になります。
受領確認・再発行
従業員が確実に受け取ったかの確認手段(画面上の同意ボタンやダウンロード履歴)を用意し、紛失時の再発行手順を整備しておきます。
よくあるトラブルと対処
- PDFが開けない:閲覧アプリの案内や社内ヘルプを用意
- 印刷できない:紙郵送や窓口発行で対応
ただし、説明が不十分だと誤解や不満が生じやすいので、丁寧な案内を心がけてください。
主なオンライン利用手段の比較
概要
企業は税務署へ電子提出する方法(e-Tax)や市販の給与ソフトで源泉徴収票を作成し、従業員へはメール添付やWeb明細システムでPDFなどを交付できます。電子交付は原則従業員の同意が必要で、印刷して保存することも可能です。
企業側の主な手段
- e-Taxで税務署へ電子提出:税務処理を一括で済ませたい場合に便利です。
- 給与ソフト+Web明細:日常の給与計算と連動し、交付まで自動化できます。
従業員側の主な手段
- Web明細サイトでログインしダウンロード・印刷:社内ポータルの「源泉徴収票」メニューから取得する例が多いです。
- マイナポータル連携+e-Tax:マイナンバーカードで連携すれば給与データを取得してそのまま申告データに反映できます(マイナンバーカードと利用者登録が必要)。
比較のポイント(選び方)
- 利便性:自動化の度合い。給与ソフト連携が高い。
- セキュリティ:個人情報の扱い。Web明細はログイン管理を確認してください。
- 運用コスト:小規模ではメールやクラウド明細が手軽です。
確認すべきこと
ダウンロード場所や手順は勤務先ごとに異なります。まず総務・人事に確認し、就業規則や社内ポータルの案内に従ってください。マイナポータル経由を使う場合はカードと登録状況を必ず確認してください。


コメント