はじめに
本章の目的
パートの円満退職に向け、まず基本の流れと注意点をやさしく説明します。後の章で詳しい手続きや上司への伝え方などを扱いますが、ここで全体像をつかんでください。
早めに決める理由
退職日と理由は早めに決めると準備が楽になります。例えば、就業規則に「退職の1か月前連絡」とある場合、余裕を持って引継ぎや有給の調整ができます。理由も簡潔にまとめると伝えやすくなります。
基本の流れ(ざっくり)
- 退職日と理由を決める(例:1か月後の◯月◯日)
- 就業規則や雇用契約を確認する
- 上司に口頭で伝える(その後、書面で提出する場合が多い)
- 引継ぎ準備・最終出勤・書類の手続き
注意点
- 就業規則を必ず確認してください。会社によって手続きが違います。
- 感情的にならず、事実を簡潔に伝えましょう。
- 有給休暇や保険の扱いは早めに確認すると安心です。
この章で全体像を理解したら、次章で退職までの具体的な流れを順を追って説明します。
退職までの基本の流れ
1. 退職日と理由を整理します
まず、いつ退職したいかと理由を自分で明確にします。例:体調面の理由で○月末、家庭の事情で来年○月など。書き出すと伝えやすくなります。
2. 上司に口頭で伝えます
事前に時間を取ってもらい、誠実に伝えます。例文:
「お時間よろしいでしょうか。○月末を最終出勤日として退職を考えております。理由は○○です。引き継ぎについてご相談させてください。」
直接伝えにくい場合はまず電話で、どうしても難しければメールで連絡します。
3. 必要書類の確認と提出
会社から退職願や退職届の提出を求められたら従います。会社のフォーマットがあればそれに沿って作成し、提出期限を確認します。
4. 業務引き継ぎを進めます
担当業務を一覧化し、手順書や進捗を残します。引き継ぎ資料には連絡先、重要なパスワード(セキュリティルールに従って)や納期情報を入れます。引き継ぎは早めに始め、後任と段階的に行うと安心です。
5. 貸与物の返却・手続きを行います
社員証、パソコン、備品、会社発行のカード類は退職日までに返却します。有給や最終給与の扱い、人事への届け出も忘れず確認します。
6. 最終調整と挨拶
退職日が近づいたら関係者へ挨拶し、業務の最終確認を行います。礼儀正しく感謝を伝えると、次につながる印象を残せます。
いつまでに言えばいいか
契約期間の定めがない場合(正社員・パート等)
民法では「2週間前に申し出れば退職できる」となっています。しかし実務では業務の引き継ぎや後任手配が必要なため、少なくとも1ヶ月前、できれば2ヶ月前に伝えるのが望ましいです。例えば、月末での退職を考えるなら月初めに上司に相談すると調整がしやすくなります。
有期契約の場合(契約社員・一部のパート等)
契約満了で終了するのが原則です。途中で退職するには就業規則や契約書に定めがあるか、やむを得ない事由があるかを確認します。解約手続きや違約金の扱いも契約で決まっていることが多いです。
実務上の目安と判断材料
- 引き継ぎに必要な期間(業務の複雑さ)
- チームの人数や繁忙期
- 有給消化や最終出勤日の調整
これらを考え、上司と早めに相談してください。
注意点
口頭で伝えた後は、退職日を明記した書面やメールで確認しておくとトラブルを防げます。
上司への伝え方のポイント
落ち着いた時間を選ぶ
上司が忙しそうな時は避け、落ち着いて話せる時間を選びます。終業間際や昼休み直後など、短くても集中して話せるタイミングを見つけて「少しお時間よろしいですか」と声をかけましょう。
話し方の基本
あいまいな言い回しを避け、簡潔に伝えます。表情や声のトーンを穏やかに保ち、相手の反応を待ちながら話すと印象が良くなります。
退職理由は簡潔に、職場の悪口は避ける
理由は短く伝えます(例:家族の事情、キャリアチェンジ、健康上の理由)。詳細な不満や批判は控え、事実だけを述べるようにしましょう。
意思ははっきり示す
「まだ迷っています」は避け、「退職を決めました」「●月●日付での退職を希望しています」のように明確に伝えます。希望日が未確定なら「相談したい」と伝えましょう。
やってはいけないこと
- 先に同僚にだけ伝える
- 感情的に攻撃する
- 事前に知らせず突然辞表を机に置く
具体例(短いフレーズ)
- 「お時間よろしいでしょうか。退職についてご相談したくて伺いました。」
- 「私事で恐縮ですが、●月末で退職させていただきたいと考えています。」
- 「詳細は後日改めて整理してお伝えします。まずはご相談させてください。」
退職願・退職届は必要?
法律上の扱い
法律上は口頭で退職できます。会社に辞意を伝えた時点で退職の意思があると認められることが多いです。ただし、就業規則や雇用契約で予告期間が定められる場合がありますので、事前に確認してください。
会社が書面を求める理由
会社は事務処理や人事記録のために書面を求めます。書面があると給与計算や保険手続きがスムーズになります。トラブル防止のために、会社のルールに従って提出すると安心です。
退職願と退職届の違い
退職願:辞めたいという「お願い」の書面です。受理されると退職手続きが始まります。
退職届:退職の意思を明確にする「届出」です。会社によっては届出を必須とします。
出すときの注意点
・日付、氏名、所属、退職希望日を明記する
・提出先(上司または人事)を確認する
・控えを1部受け取り、保管する
・会社が受け取らない場合は、内容証明郵便やメールで日付の記録を残しましょう。証拠になります。
簡単な文例
退職願:
「私事都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」
退職届:
「私、(氏名)は、〇年〇月〇日をもって退職いたします。」
提出後は、受理の有無と最終出勤日・引き継ぎ方法を確認してください。
退職時のチェックリスト
退職前に確認すること
退職日や最終出勤日、引継ぎの期日を人事・上司と確認してください。会社ごとに返却物や受取物の手順が異なるため、総務に返却リストを必ず確認します。
会社に返すもの(例)
- 制服・名札・作業着
- 社員証・IDカード・社員用交通IC
- 出入口やロッカーの鍵、車両キー
- PC・スマホ・タブレット・モバイルルーター
- 業務で使った備品(工具、文具、書籍)
- 名刺、会社発行のカード類
- 機密情報が入った私物は社内規定に従って処理してください
会社から受け取るもの(例)
- 源泉徴収票(年末調整用)
- 離職票(求職申請に必要)
- 最終給与明細・退職金明細(ある場合)
- 雇用保険被保険者証、在職証明書
- 退職証明書(必要なら申請)
退職後に必要な手続き(主な窓口)
- 市区町村役所:国民健康保険・国民年金の手続き
- ハローワーク:失業給付の申請や求職登録(離職票が必要)
- 年金事務所:記録確認や国民年金への切替え相談
持ち物(手続き用)
マイナンバーカードまたは通知カード、身分証明書、印鑑、通帳、離職票、源泉徴収票
チェックのタイミング例
- 退職の申し出後:返却リストと受取物を確認
- 最終出勤日:すべて返却、受取物を受領
- 退職後1週間以内:市区町村・ハローワークへ相談
些細に思える事項も後で手間になります。リストを作って一つずつ確実に処理してください。


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