離職票と6か月分の賃金記載ルールをわかりやすく解説

目次

はじめに

本資料は「離職票に記載する6か月分の賃金」について、会社側と退職者側の双方に向けて分かりやすく解説することを目的としています。雇用保険の給付手続きに必要な書類(離職票、賃金台帳など)に焦点を当て、具体的な計算方法や提出期間、よくある誤解点を丁寧に説明します。

対象読者

  • 事業主・人事担当者:離職票作成や賃金台帳の準備をする方向け
  • 退職者:失業給付の計算や書類の確認をする方向け

本資料の構成(全5章)

第2章:離職票における「6か月分」とは何か
第3章:賃金支払基礎日数と「11日以上」「6か月分」の関係
第4章:賃金台帳は「11日以上出勤した月の6か月分」を提出
第5章:離職票に記載する賃金(6か月分)の考え方

読み進めることで、離職票に記載すべき賃金の範囲や計算の根拠が理解でき、手続きをスムーズに進められるようになります。不明点がある場合は、ハローワークや社会保険労務士にご相談ください。

離職票における「6か月分」とは何か

概要

離職票に関わる「6か月分」は主に三つの意味があります。いずれも退職者の給与状況を把握し、失業給付の算定に用います。以下で具体的に説明します。

1) ハローワークに提出する賃金台帳

賃金台帳は離職日からさかのぼり、賃金支払の基礎日数が11日以上である月を6か月分集めて提出します。例えば、退職が9月末で5月に出勤が少なかった場合は4月からさかのぼって6か月分を用意します。これにより給与の確認や給付計算の根拠になります。

2) 離職証明書(離職票-2)の賃金欄

離職票-2には退職前6か月間の平均賃金に基づく賃金支払対象期間と基礎日数を記載します。ここでも基礎日数が11日以上の月を6か月分になるまで遡って算出します。実務上は賃金台帳の該当月を参照して記入します。

3) 失業手当の基礎計算

失業手当の基礎額は、離職日前6か月の賃金合計を180で割った額(1日あたりの賃金)で求めます。この計算を証明するために、離職票や賃金台帳の6か月分が利用されます。

ワンポイント

退職者の給与変動や欠勤の多い月があるときは、賃金台帳を整理して基礎日数と対象月を明示しておくと手続きがスムーズです。

賃金支払基礎日数と「11日以上」「6か月分」の関係

賃金支払基礎日数とは

賃金支払基礎日数は、その月に賃金や報酬の支払い対象となる日数です。給料の基礎になる日数を示し、失業給付の受給資格や保険料の算定に使います。出勤日だけでなく、有給や休業で賃金が支払われる日も含まれます。

「11日以上」で完全月とする理由

雇用保険の被保険者期間は離職日から1か月ごとに区切ります。区切った各月で賃金支払基礎日数が11日以上あれば、その月を完全月として数えます。完全月を6か月分さかのぼって賃金を確認し、離職票に記載する対象とします。

6か月分の数え方(具体例)

手順は次の通りです。離職日を含む期間から遡り、賃金支払基礎日数が11日以上の月を見つけていきます。11日未満の月は飛ばしてかまいません。例:
– 例1(退職月が途中): 退職月の賃金支払基礎日数が12日なら退職月を1か月目に数え、さらに前月、前々月…と遡って11日以上の月を6つ選びます。
– 例2(短期勤務): 入社からの勤務月で11日以上の月が3つしかない場合は、その3か月分を基に記載します。

注意点

賃金台帳や出勤簿で日数を確認してください。パートやシフト勤務では月によって基礎日数が変わりやすいので、実際に賃金が支払われた日を基準に数えます。給与が日割りで支払われた場合も、賃金支払の対象日として扱います。必要なら明細や台帳で確認して正確に数えてください。

賃金台帳は「11日以上出勤した月の6か月分」を提出

概要

事業主がハローワークに提出する賃金台帳は、離職日からさかのぼり「賃金支払基礎日数が11日以上ある月」のうち6か月分を用意します。単純に直近6か月の暦月ではありません。出勤日数の基準で該当する月を選びます。

カウント方法(手順)

  1. 離職日を基準に、前月・前々月と遡ります。
  2. 各月の賃金支払基礎日数(通常は出勤日数)を確認します。
  3. 11日以上の月を見つけたら1か月分としてカウントします。
  4. 6か月分そろうまでさらに遡ります。月が欠けても次の月で補います。

例:離職日が8月20日で、8月の出勤が12日、7月が9日、6月が15日…なら、8月・6月をカウントし、7月は除外してさらに遡り6か月分を集めます。

提出と期限について

離職証明書(離職票-2)は事業主が作成し、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出する義務があります。ハローワークはその情報をもとに離職票-1を作成し、退職者へ交付します。

実務上の注意点

  • 賃金台帳には賃金額と出勤日数を明確に記載してください。記録があれば選別がスムーズです。
  • 給与締め日や欠勤・有給の扱いで出勤日数の数え方が変わるときは、就業規則や給与計算の基準に沿って判断してください。
  • 不明点はハローワークに事前確認すると安心です。

離職票に記載する賃金(6か月分)の考え方

算定期間と実務の違い

離職票に記載する賃金の対象期間は離職日から遡って2年間ですが、失業給付の算定には直前の6か月の平均賃金を使います。つまり、離職票には広い範囲を示せますが、給付の計算では直近6か月が重要です。

どの6か月を記載するか

原則として「賃金支払基礎日数が11日以上」の月を6か月分遡って記載します。月ごとに出勤日数が少ない場合は、その月は除外します。6か月分に満たないときは、該当する月をできるだけ多く記載し、ハローワークの指示に従います。

通勤手当などの取り扱い

通勤手当は月ごとに定額で支払われることが多いため、月割りで賃金に含めます。日割りで支給した場合は、支給実績に基づいて当該月に配分します。例:月5,000円の通勤手当が毎月支給されれば、各月の賃金にそのまま加えます。

計算の実例(簡単)

直近6か月の給与(手当含む)が30万円、28万円、32万円、29万円、31万円、30万円なら、合計は180万円で平均は30万円です。これが失業給付の基礎となります。

実務上の注意点

賃金台帳や出勤簿で日数と支給額を明確に残してください。月ごとの支払根拠が分かれば、ハローワークのチェックでスムーズに処理されます。記載に迷う場合は早めに確認してください。

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