はじめに
目的と概要
本章は、本資料の目的と読み方をわかりやすく示します。本資料は、近年の育児・介護休業法などの労働法改正に伴う就業規則の見直し・改定の必要性を整理し、2025年前後に予定されている複数の改正に対応するためのポイントを解説します。具体例を交え、実務担当者が何を優先して検討すべきかを示します。
誰に向けているか
人事・総務担当者、経営者、社内で就業規則の改定に関わる管理者が主な読者です。社労士や外部のコンサルと協働する際のチェックリストにも使えます。現場で働く管理職にも読みやすい表現を心がけています。
本資料の読み方
第2章で法改正の方向性を示し、第3章で就業規則で見直すべき具体項目を挙げます。第4章では実務上の対応ポイントを、 第5章では改正内容と就業規則対応を比較表で確認できます。まずは自社の現行規程と照らし合わせ、早めに検討を始めてください。
注意点
本資料は一般的な指針を示します。最終的な対応では、専門家や労働基準監督署に確認してください。
最近の主な法改正の方向性
背景
働き方の多様化と少子高齢化を受け、労働関連法が柔軟な働き方と高年齢者の雇用継続を後押しする方向で改正されています。企業は就業規則や雇用契約を見直す必要があります。
育児・介護休業法の主な変更点
- 子の看護休暇の対象年齢が引き上げられ、より長期のケアが必要な子も対象になります。具体例:以前は小学校未満が対象だったものが、年齢上限が延びる場合があります。
- 取得理由の追加で、短期の看護や通院付き添いなどでも休暇が取りやすくなります。
- 残業免除(所定外労働の制限)の対象を拡大し、育児や介護をする社員の勤務時間調整を義務化・努力義務化します。
- テレワークやフレックスなど柔軟な働き方について、企業に制度整備を求める規定が増えます。
高年齢者雇用・雇用保険の主な変更点
- 継続雇用の対象年齢を拡大する方向が進みます。定年後も働きやすい制度設計が求められます。
- 雇用保険の給付内容や受給要件見直しで、再就職支援や高年齢者向け給付が強化されます。
就業規則への影響(具体例)
- 休暇の対象年齢や取得手続き、残業制限のルールを明確化する必要があります。
- テレワークの可否、申請方法、設備費用の負担について規定を作ると実務が楽になります。
- 継続雇用制度や再雇用条件、賃金規程の見直しが必要です。
対応の優先事項(例)
- まず現行ルールを洗い出し、対象者や手続きに抜けがないか確認します。
- 社内の運用例を具体化し、就業規則に落とし込みます。
- 労働者への周知と相談窓口の整備を行います。
就業規則で見直す主な項目
1 育児・介護関連規程
育児休業、介護休業、子の看護休暇、所定外労働の制限、短時間勤務、テレワーク規程などを対象にします。チェック項目は「対象者(正社員・パートなど)」「日数や時間」「申請手続き」「職場復帰の扱い」です。例えば短時間勤務は始業・終業時刻の例を明示し、申請方法(書面・電子)を定めます。
2 運用方法の明確化
承認基準や代替要員の手配、急な申請への対応フローを規定します。育児・介護での所定外労働の制限は具体的な時間帯例を挙げ、管理者の許可要否を明記してください。運用上の誤解を防ぐため、よくあるケースを事例で示すと効果的です。
3 高齢者雇用・雇用保険関連
継続雇用制度の対象範囲(年齢・職種)、再雇用条件、定年延長の有無を明示します。退職・解雇条項は手続きと理由の整合を取り、休業給付の取り扱いは実務上の申請窓口と賃金控除の扱いを記載してください。
4 実務上の注意点
就業規則の文言は短く分かりやすく書き、運用マニュアルや申請書式と整合させます。変更時は労働者への周知方法(掲示・電子配信)と適用開始日を明確にしてください。
法改正対応の実務ポイント
全体の進め方
- 法改正の要点を社内で整理します。対象規定と影響範囲を明確にしてください。次に就業規則や関連規程を一括点検します。
- 不足や矛盾を見つけたら、修正案を作成し、労働者代表や該当部署と調整します。必要な労使協定の再締結は早めに行います。
点検の具体項目(例)
- 就業規則本体:適用範囲、懲戒、退職手続きなど
- 育児・介護規程:休暇日数、短時間勤務の運用例
- テレワーク規程:通信費補助、労働時間管理の方法
- 休暇規程:年次・特別休暇の取得条件
- 労使協定:時間外・深夜・変形労働など(締結・届出の有無を確認)
届出と労使協定の扱い
- 常時10人以上の事業場は就業規則の変更を労基署に届出します。署への届出書類と施行日を確定してください。
- 労使協定は内容に応じて労働者代表の署名・押印を得て再締結します。例:時間外労働の上限に関する協定。
周知と運用整備
- 従業員への周知は書面配布・社内メール・説明会を組み合わせます。従業員からの質問はFAQでまとめておくと便利です。
- 運用変更は具体的な手順書を作り、管理職に教育を行ってください。変更履歴は保存して証拠とします。
専門家活用と条文検討
- 社労士に条文の文言や届出書類を確認してもらうと安心です。実務上の文言例を複数検討し、自社の事情に合ったものを選びます。
チェックリストとスケジュール例
- 1週間:改正点の把握と影響範囲の整理
- 2〜4週間:規程の改定案作成と労使協議
- 1〜2週間:届出準備と周知計画
注意点
- 不利益変更になる場合は従業員の理解を得る工夫が必要です。
- 遡及適用は原則避け、施行日以降の運用を明確にしてください。
比較表:法改正と就業規則対応
育児・介護休業関係
- 法改正(ポイント): 子の看護等休暇の対象拡大、取得事由の追加、残業免除の対象年齢拡大、柔軟な働き方措置の義務化
- 就業規則での対応: 対象となる子の年齢を明記し、取得可能日数・取得事由を追加します。所定外労働の制限や残業免除の手続き、テレワークや時短勤務の制度内容(申請方法・承認基準)を条文化します。例:取得事由に「学校行事等での看護」を追加し、申請様式を定めます。
高齢者雇用・雇用保険
- 法改正(ポイント): 継続雇用制度の対象拡大、給付内容の見直し
- 就業規則での対応: 継続雇用・再雇用の対象者要件(年齢上限や勤続条件)を明確化します。雇用形態や賃金・労働時間の扱いを条文で規定し、給付変更に合わせた手当規定を見直します。説明義務や手続き(募集方法、本人への説明・同意取得、届出期限)を明文化します。
実務上のチェックポイント
- 条文修正は具体的に:年齢、日数、事由、申請から承認までのフローを記載します。
- 運用ルールの整備:申請様式、管理者向けチェックリスト、労使協議の記録を準備します。
- 周知と届出:就業規則の変更は書面で周知し、所轄庁への届出・保存を忘れないでください。
(注)以上は一般的な比較表の構成例です。実際の条文や数値は貴社の実情と最新法令に合わせて最終調整してください。


コメント