はじめに
転職や退職の理由として「やりたいことがある」と伝えるのは問題ありません。前向きな動機として受け取られやすく、面接官や上司にも好印象を与えることが多いです。本章ではその理由がどう評価されるか、伝える際の基本的な心構え、そしてこの先の章で扱う内容の見取り図をやさしく説明します。
- なぜ「やりたいことがある」が評価されるのか
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成長意欲や主体性が感じられるため、前向きな印象を与えます。具体例としては「専門スキルを深めたい」「新しい分野で挑戦したい」などがあります。
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伝えるときの基本姿勢
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正直に、でも前向きに伝えます。ネガティブな批判や感情的な言い方は避け、具体的な目的や学びたいことを示すと説得力が増します。
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この先の章で学べること
- 第2章:上司や会社への伝え方の手順
- 第3章:そのまま使える具体フレーズ
- 第4章:面接や転職先での説明の仕方
- 第5章:避けるべき表現と注意点
この本全体を通して、読み手が実際に使える言い回しと心構えを丁寧に紹介していきます。
上司・会社への伝え方
はじめに
退職を伝えるときは角が立たない言い方を意識します。現職への感謝と新しい挑戦をセットで伝えると受け止められやすいです。
伝えるタイミング
- 直属の上司にまず伝えます。メールより対面(またはテレビ会議)が望ましいです。
- 退職意志は決まってから速やかに伝えます。周囲に憶測を生まないためです。
伝え方の基本(3つのポイント)
- 感謝を伝える:具体的な経験や学びを一つ挙げます。
- 前向きな理由にする:「スキルアップ」「新しい分野に挑戦」などで説明します。
- 協力姿勢を示す:引き継ぎや退職時期の調整に協力する旨を伝えます。
伝える順序(話す内容の流れ)
- 挨拶と感謝
- 退職の意志表明
- 理由(前向きな表現で簡潔に)
- 引き継ぎの意志と希望する退職時期
引き止められたときの対応
- 感謝を示しつつ、決意は丁寧に繰り返します。
- 条件や役割の変更であれば検討する旨を伝えると場が整いますが、最終決定は揺るがない場合はその点も明確にします。
注意点
- 嘘や過度の詳細は避けます。理由は簡潔に。
- 感情的にならず、プロフェッショナルに対応します。
次章では、そのまま使える具体的なフレーズを紹介します。
例:そのまま使えるフレーズ
概要
以下は、実際に上司や人事に使える具体的な言い回しです。状況別に「対面で伝える一言」「確認メール」「退職届の冒頭」を用意しました。どれも丁寧で前向きな表現です。
使い方のポイント
- 短く率直に伝えると印象がよくなります。背景は簡潔に述べ、詳細は別の場で説明します。
- 感謝の気持ちを必ず入れてください。
1)経験を生かしつつ新分野に挑戦したい場合
対面:
「これまでの経験を生かしつつ、より興味のある分野に挑戦したいと考え、退職を決断しました。これまで本当にお世話になりました。」
確認メール:
「先日はお時間をいただきありがとうございました。あらためて、経験を生かして新しい分野に挑戦したいと考え、退職の意向をお伝えします。引き継ぎについては調整いたしますので、よろしくお願いします。」
退職届の冒頭:
「一身上の都合により退職いたします。これまでのご厚情に深く感謝申し上げます。」
2)長年の夢に本格的に取り組むため環境を変える場合
対面:
「長年温めてきた目標に本格的に取り組む必要があり、環境を変えることにしました。これまでのご支援に心から感謝しています。」
短文:
「夢に向き合うため、退職させていただきます。ありがとうございました。」
3)特定のスキルを高めるため専念したい場合
対面:
「キャリア形成を考え、特定のスキルを高める必要が出てきました。その目標に専念するため退職を希望します。引き継ぎは責任を持って行います。」
確認メール:
「スキル向上のため専念したいと考え、退職を希望します。引き継ぎ計画については別途ご相談させてください。」
すぐ使える短い一言例(場面を選ばず使えます)
- 「一身上の都合により退職させていただきます。」
- 「これまでの経験を次の挑戦に生かしたく、退職を決めました。」
- 「長年の目標に集中するため、退職いたします。」
必要に応じて、これらの文を状況に合わせて少し変えてお使いください。
面接・転職先で話すとき
話す前の基本方針
面接では退職理由と志望動機、キャリアプランの一貫性を示します。端的に伝え、応募先で実現したいことと結びつけると説得力が増します。
退職理由と志望動機のつなぎ方
まず現在の課題を簡潔に述べます(例:専門性を深められない、裁量が限られる)。次に応募先でどう実現したいかを説明します。具体的な業務や環境を挙げると伝わりやすいです。
現職で叶わない理由の伝え方
ネガティブな批判は避け、事実ベースで述べます。例:「現職では大規模プロジェクトに携われる機会が少なく、より広い領域で経験を積みたいと考えました。」と短めに説明します。
具体例(話し方の流れ)
1) 現状と課題:◯◯の経験を積む中で専門性を高めたいと感じました。
2) 志望理由:御社の△△事業で□□の経験を活かし、さらに深めたいと考え応募しました。
3) 将来像:3〜5年で◯◯のスキルを身につけ、チームに貢献したいです。
面接での注意点
・具体的な業務や数字を挙げると信頼感が増します。
・前職批判は避け、前向きな表現にします。
・回答は2分以内を目安に簡潔にまとめます。
言わないほうがよいポイント
概要
退職や転職を話すとき、ネガティブな本音(「飽きた」「つまらない」「やる気が出ない」など)は避けましょう。現職の悪口や漠然とした不満だけを伝えると、評価が下がることがあります。
避ける表現(例)
- 「飽きた」「つまらない」
- 「上司がひどい」「会社が悪い」
- 「給料が低いだけ」
- 「なんとなく転職したい」
なぜ言ってはいけないか
短絡的で感情的に聞こえ、責任感や職業意識が低い印象を与えます。また、具体性がないと面接官や上司が判断できません。
代わりに伝えるコツ
- ポジティブに言い換える:「新しい分野に挑戦したい」「専門性を高めたい」
- 具体性を添える:何を学びたいか、どんな仕事で貢献したいか、いつまでに何を達成したいかを明確にする
- 解決策や行動を示す:資格取得、プロジェクト参加、自己学習の計画など
伝え方のポイント
- 要点を3つ以内に絞る
- 事実と感情を分けて話す(例:△△という業務で□□を学びたい)
- 現職への感謝は必ず伝える
短い例:「御社ではデータ分析の実務経験を積み、専門性を高めたいと考えています。現在はオンライン講座で○○を学んでおり、半年以内に××の成果を出す予定です。」このように具体性を持たせると印象が良くなります。


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