はじめに
退職時に受け取る源泉徴収票は、給与や税金に関する重要な証明書です。本章では、この記事全体の目的と読み方のポイントをやさしくお伝えします。
本記事の目的
退職時の源泉徴収票がどんな書類か、いつもらえるのか、法律上の期限、雇用形態の違い、転職や年末調整への影響、受け取れない場合の対処法まで、順を追って分かりやすく解説します。専門用語は最小限にし、具体例で補足します。
誰に向けた記事か
これから退職する方、すでに退職して手続きに不安がある方、転職を控えている方など、源泉徴収票の扱いに不安を感じるすべての方が対象です。給与明細や源泉徴収票を手元に用意すると読みやすくなります。
読み方のポイント
各章は短く区切り、実務で使える手順や注意点を中心にまとめます。まずは第2章で源泉徴収票の役割を押さえ、その後に具体的なタイミングや対処法を確認してください。
源泉徴収票とは何か?退職時になぜ重要なのか
概要
源泉徴収票は、1年間に支払われた給与・賞与の金額と、その支払いに対して源泉徴収された所得税額が記載された書類です。会社が発行する公的な証明書で、税金の支払い状況を示します。
退職時に受け取る2種類
- 給与所得の源泉徴収票:在職中の給与や賞与について記載。転職先での年末調整や確定申告に使います。
- 退職所得の源泉徴収票:退職金に対する課税の内訳が記載。退職金がある場合、確定申告で必要になることがあります。
なぜ重要か
前職分の給与や税額を証明する唯一の公的書類です。年の途中で退職・転職した場合や退職金を受け取った場合、正確な税処理のために必ず受け取り、内容を確認してください。
具体例
- 例1:4月に退職して6月に転職→前職の源泉徴収票を転職先に提出すると年末調整がスムーズです。
- 例2:退職金を受け取った人は退職所得の源泉徴収票で課税額を確認し、確定申告で正しく処理します。
チェックポイント
支払金額、源泉徴収税額、支払者(会社名)などが正しいか確認してください。誤りがあれば早めに前職の総務・給与担当に連絡しましょう。
退職時の源泉徴収票はいつもらえる?一般的なタイミング
概要
多くの会社では、源泉徴収票を退職時の最終給与支払日の前後に発行します。年末調整の有無や給与締め日によって前後するため、会社ごとに多少の差があります。
12月に退職する場合
12月に退職すると、12月分の給与と同時期に源泉徴収票が交付されることが多いです。会社が年末調整を行う場合は、その結果を反映した金額が記載されます。例:12月25日退職なら、同月の給与明細と一緒にもらえることが一般的です。
1〜11月に退職する場合
1〜11月の途中退職では、退職後おおむね1か月以内に交付されるケースが多いです。多くの会社は郵送で送るため、退職時に現物を受け取れないことがあります。例:6月末退職なら7月末ごろに届くことが多いです。
交付方法の違い
手渡し・郵送・電子交付のいずれかが一般的です。郵送を希望する場合は、退職前に最新の住所を伝えておくと安心です。電子交付を導入している会社は、退職後もログインできる期間を確認してください。
実務上の注意点
退職前に総務や人事にいつ渡されるか確認しましょう。受け取りが遅れると転職先や年末調整に影響するため、早めに連絡先や受取方法を整えておくと安心です。
法律上、会社はいつまでに源泉徴収票を渡さなければならないか
法律の要点
所得税法では、退職した従業員に対する源泉徴収票の交付期限を「退職日から1か月以内」と定めています。会社には交付する義務があり、期限を守ることが求められます。
具体例でわかりやすく
- 10月15日に退職した場合は、10月15日を起算日として1か月後の11月14日までに交付が必要です。
- 12月20日退職なら、翌年1月19日が期限になります。
期限を守らないとどうなるか
会社が期限を守らない場合は交付義務違反となり、税務署から指導や是正を受ける可能性があります。従業員にとっても手続き上の不便が生じるため、会社は速やかに対応する必要があります。
在職中の従業員との違い
在職中の従業員には「翌年1月31日まで」の交付義務がありますが、退職者には特別に退職後1か月以内という短い期限が適用されます。年末近くの退職では、退職者の期限が翌年の1月31日より早くなる点に注意してください。
確認のポイント
退職時は退職日を明確にし、交付が遅れる場合はまず会社の人事・給与担当に確認しましょう。必要なら税務署に相談することもできます。
雇用形態別(正社員・アルバイト・パート)で違いはあるか
概要
正社員、アルバイト、パートの別によって法律上の扱いは変わりません。給与から源泉徴収(税金の天引き)があった従業員には、退職後に源泉徴収票が発行されます。
正社員の場合
退職時は通常の給与締めのタイミングで源泉徴収票を受け取れます。例として12月に退職すると、12月分の給与明細と一緒に渡されることが多いです。
アルバイト・パートの場合
働き方が短時間でも、給与から税金が控除されていれば同様に交付されます。日雇いや短期契約でも原則は変わりません。
実務上の注意点
会社側は原則1か月以内に交付するのが望ましい扱いです。転居や連絡先の変更がある場合は、退職前に新しい住所や受取方法を伝えてください。給与計算のタイミングや事務手続きで多少遅れることがありますので、まずは人事・給与担当へ確認しましょう。
転職する場合:転職先への提出と年末調整への影響
提出の基本
転職先には、前職から受け取った「給与所得の源泉徴収票」を必ず提出します。これをもとに転職先が年末調整を行います。提出することで所得や控除が正しく反映されます。
年末調整のタイミングと間に合わない場合
年末調整は一般に10~11月から始まります。10月〜年末に転職すると前職の源泉徴収票が間に合わないことがあります。その場合、転職先では年末調整ができないため、翌年の確定申告で精算します。確定申告は原則として翌年2月〜3月に行います。
退職金(退職所得)の取り扱い
退職金に関する「退職所得の源泉徴収票」は通常、転職先に提出不要です。退職所得は別扱いで税額の計算方法も異なりますので、必要書類は前職から受け取って保管してください。
手続き上の実務アドバイス
前職に源泉徴収票の発行を早めに依頼しましょう。転職先に事情を伝え、年末調整ができない場合の扱いを確認します。確定申告の際は前職と現職の収入を合算して申告します。書類はコピーを残し、必要なら税務署や税理士に相談してください。
退職後に源泉徴収票がもらえない/遅い場合の対処法
退職後の源泉徴収票は、実務上は退職後2〜3週間から1か月程度で届くことが多く、法律上は退職日から1か月以内が原則です。この範囲内なら通常の事務処理と考えて差し支えありません。
まず確認すること
- 送付先住所やメールアドレスに変更がないか確認します。
- 最終給与明細や離職票が届いているか確認します。
会社への依頼方法(ステップ)
- まず担当の人事・総務に電話やメールで問い合わせます。簡潔に「源泉徴収票の発行をお願いします。送付先は〜です」と伝えます。
- 返答がない場合はメールで正式に依頼し、送受信記録を保管します。例文:
「退職に伴う源泉徴収票の発行と送付をお願いいたします。退職日は○年○月○日、送付先は○○です。PDF送付でも構いません。」 - それでも無反応なら、内容証明郵便で請求書面を送ると効果的です。
税務署や相談窓口の活用
- 最寄りの税務署に相談すれば、発行を促す方法や確定申告の対応を教えてもらえます。
- 源泉徴収票がどうしても入手できない場合は、給与明細や離職票を用いて確定申告できます。
最終手段と注意点
- 会社は法的に1か月以内の交付義務があります。対応しない場合は税務署に相談、証拠をもとに交渉や法的手段を検討します。
- やり取りの記録(メール、送付記録、送達証明)は必ず保存してください。期限を過ぎると確定申告に影響しますので、早めに行動することをおすすめします。


コメント