はじめに
「源泉徴収票をどう扱えばいいかわからない」「会社が発行してくれないと困る」といった悩みをもっていませんか?
本資料は、源泉徴収票の未交付が企業・従業員にもたらすリスクや法的罰則、従業員が提出しない場合の影響、紛失や未交付時の対処法まで、具体例を交えてわかりやすく解説します。主に次の方に向けた内容です。
- 会社の人事・総務担当者
- 給与担当者や経理の方
- 源泉徴収票を受け取る従業員やフリーランスの方
この記事を最後まで読むと、源泉徴収票が果たす役割(年末調整や確定申告での使い道)、未交付時の具体的な問題点、早めに取るべき対応が理解できるようになります。実務で役立つポイントを中心に、やさしく丁寧に説明していきます。
源泉徴収票の発行と交付義務
概要
源泉徴収票は、給与や賞与から所得税を差し引いたことを示す大切な書類です。所得税法第226条で、給与支払者(企業や事業主)が従業員に交付する義務を定めています。税金の計算や確定申告、年末調整で使うため、正確な発行が求められます。
対象となる人
正社員だけでなく、アルバイト、パートタイム、契約社員や日雇い労働者も対象です。報酬を支払う側が給与と認める支払いをしている場合、原則として交付義務があります。個人事業主に支払う外注料など、一部扱いが異なることがあります。
交付期限
在職している従業員には翌年の1月31日までに交付します。退職した従業員には、退職日から1か月以内が期限です。期限を過ぎると従業員の手続きに支障が出るため、期日を守ることが重要です。
交付方法と注意点
紙での交付が一般的ですが、電子交付も可能です。電子で渡す場合は従業員の同意や閲覧方法の確保が必要です。内容に誤りがあると税務手続きで問題になるため、金額や氏名、マイナンバーの扱いを慎重に確認してください。
再発行・訂正
誤りが見つかった場合は速やかに訂正し、再発行します。退職後に住所が変わることがあるため、従業員からの申請に応じて送付先を確認しておくと安心です。
企業が源泉徴収票を出さない場合の罰則・リスク
源泉徴収票の交付や税務署への届出を怠ると、所得税法242条などに基づき、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。虚偽の記載も同様に処罰対象となります。
税務・金銭面のリスク
税務調査が入り、未納の源泉税の追徴や延滞税、加算税が発生します。会社が納付義務を負うため、突然の出費で経営を圧迫することがあります。
信用・労務のリスク
従業員が源泉徴収票を受け取れないと給与明細の確認や確定申告に支障が出ます。これが原因で従業員とのトラブルや退職、損害賠償請求につながる恐れがあります。対外的にも取引先や金融機関の信用低下を招きます。
実務上の注意点(具体例)
- 交付忘れや記載ミスがあれば速やかに再発行・訂正する。
- 税務署への必要な届出は期限を守って行う。
- 給与・税務処理の記録を保存し、税理士に相談する。
早めに対応すれば、刑事責任や経済的負担を軽減できます。
従業員が源泉徴収票を提出しない場合の影響
概要
転職などで前の勤務先の源泉徴収票を新しい勤務先に出さないと、年末調整が正しくできないことがあります。結果として税金の過不足や手続きの手間が発生します。
具体的な影響
- 年末調整が不完全になり、過不足が生じます。過不足のうち不足分は後で追加徴収されることがあり、多く払った場合は確定申告で還付手続きを行います。返金や調整に時間がかかる場合があります。
- 確定申告で源泉徴収票が必要になります。副業などで他に所得がある場合、源泉徴収票がないと収入の説明が難しくなり、税務署から問い合わせを受けることがあります。
- 収入の証明書類がないと、住宅ローンや各種給付の手続きで不利になることがあります。
紛失・未提出時の対応
- まず前の勤務先に再発行を依頼してください。多くの企業は対応してくれます。
- 再発行してもらえない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出して対応を依頼します。税務署が間に入って発行を促すことがあります。
- 確定申告の際は、給与明細や振込記録などを用意して収入を示すと説明がしやすくなります。
実例
例:Aさんは転職後に源泉徴収票を提出せず年末調整が反映されませんでした。結果として多めに税金を払いましたが、確定申告で還付を受けるには時間と手間がかかりました。必要書類は早めに揃えることをお勧めします。
源泉徴収票がない場合の対処法
1. 勤務先に再発行を依頼する
まずは勤務先の総務や人事に連絡して再発行を依頼します。口頭で伝えるよりメールや書面で残すと、後で証拠になります。具体例:再発行申請のメールを送って「受領したら返信をお願いします」と書く。
2. 給与明細やWebシステムを確認する
会社によっては給与明細システムやメールで源泉徴収票をダウンロードできます。ログイン方法やダウンロード手順を確認し、保存しておきましょう。
3. 交付期限を過ぎても届かない場合の手続き
会社が交付しないときは、交付期限(通常は年明け前後)から一定期間経過後に税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。提出すると税務署が会社へ確認を行います。
4. 確定申告や税務署での相談
源泉徴収票が間に合わないときは、給与の支払金額や税額を給与明細や銀行振込の記録で集め、確定申告を行います。最寄りの税務署に相談すると具体的な助言が得られます。
5. 証拠を残すことの重要性
再発行依頼の履歴、給与明細、メールのやり取りは必ず保存してください。後で証明が必要になったときに役立ちます。
まとめ:源泉徴収票を出さないことによる主なリスク
源泉徴収票を交付しないことは、企業側・従業員側の双方にさまざまな不利益を招きます。ここでは主なリスクを分かりやすく整理します。
企業側の主なリスク
- 法的罰則:交付義務違反は罰金や場合によっては刑事責任につながる可能性があります。税務調査で発覚すると行政処分の対象になります。
- 税務署からの指導・調査の増加:源泉徴収や記録の不備があると監査の対象になりやすく、追徴課税や加算税が発生する場合があります。
- 従業員との労務トラブル:給与内容を証明できないことで誤解や不信感が生じ、退職や損害賠償請求などの紛争に発展する恐れがあります。
従業員側の主なリスク
- 税金の過不足・還付遅延:源泉徴収票がないと年末調整や確定申告が正確にできず、還付が受けられない、または追徴を受ける可能性があります。
- 各種控除や手続きの不利益:扶養控除や社会保険料控除の適用漏れ、住宅ローンや賃貸契約での給与証明ができないなどの不利益があります。
- 職場での信頼低下や副業疑念:給与の扱いが不透明だと同僚や取引先から疑念を持たれることがあります。
対応のポイント
- 企業は速やかに源泉徴収票を交付し、電子・紙の記録を残すことが重要です。
- 従業員は不交付の場合に文書で請求し、解決しないときは税務署や労働基準監督署、税理士に相談してください。
源泉徴収票は義務的な書類です。早めに対応することで、双方のリスクを大幅に減らせます。
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