はじめに
この記事は、パートタイム(以下「パート」)の有給休暇に関する基本と実務上のポイントをやさしく解説します。
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背景:2019年の働き方改革関連法の施行により、年5日以上の有給取得の努力義務が制度化されました。これはフルタイムだけでなく、条件を満たすパートにも関わる重要なルールです。
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この章の目的:これから続く章で法的根拠や付与条件、会社の義務、罰則、トラブル対応などを順に説明します。まずは全体像をつかんでいただきたいと考えています。
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誰に向くか:パートで働く方、雇用主、人事担当者、また家族で働き方に関心のある方に役立つ内容です。
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読み方のポイント:専門用語は最小限にし、具体例を交えて分かりやすく説明します。わからない点があれば、次章以降で詳しく確認してください。
有給消化義務の基本—パートにも適用される?
はじめに
この章では、パートタイマーにも「年5日ルール」が適用されるのかを分かりやすく説明します。疑問をお持ちの方に向けて、具体例を交えてお伝えします。
ルールの要点
2019年の改正で、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、事業主が年5日分の取得を確実にさせる義務が生じました。対象は正社員だけでなく、パート・アルバイトも含みます。つまり、パートでも要件を満たせばこの義務の対象です。
パートが対象になるケース(例)
・入社から一定期間を経て有給が10日以上付与されるパート
・勤務日数や勤続年数により有給日数が10日以上となる場合
これらに該当するパートは、年5日の取得を企業が確保する必要があります。
企業ができる対応の例
・従業員と話し合って取得日を決める
・会社側で取得日を指定して付与する(事前通知)
どちらの方法でも、従業員の事情を考慮して柔軟に対応することが望ましいです。
ワンポイント
パートでも対象になり得る点をまず押さえてください。具体的な付与条件や日数の判定は次章で詳しく解説します。
パートの有給休暇付与条件と日数
概要
パートタイマーにも有給休暇は発生します。付与される日数は、主に「勤続期間」と「週の所定労働日数(週何日働くか)」で決まります。年10日以上の有給が付与されると「年5日取得義務」の対象になります。
付与の主な条件
- 勤続6か月以上であること。\
- その6か月の間に、所定労働日の8割以上を出勤していること(出勤率80%以上)。
例:短期間で欠勤が多いと、最初の付与条件を満たさない場合があります。出勤率の計算は就業規則や勤怠で確認してください。
付与日数の目安(勤務開始から6か月後の初回付与)
- 週5日の勤務:10日
- 週4日の勤務:7日
- 週3日の勤務:5日
- 週2日の勤務:3日
- 週1日の勤務:1日
これらは初回(6か月)に付与される日数の代表例です。勤続年数が増えると付与日数も増えます。増加のタイミングや日数は法で定められた表に基づきますが、細かな数値は会社の就業規則に記載されていますので合わせて確認してください。
日数の取り扱いと注意点
- 同じ週日数でも、1日の労働時間が短い場合は時間単位での取得ができることがあります。会社の規定を確認してください。
- 年10日以上の付与がある場合、会社は年5日を時季指定や取得促進で確実に取得させる義務があります。該当するかどうかは付与日数を見れば分かります。
分からない点は、労務担当者や就業規則を確認すると安心です。
会社側の義務と罰則
まず企業に求められる義務
企業は、年10日以上の有給付与対象となる従業員(パートを含む)に対して、毎年少なくとも5日間の年次有給休暇を取得させる義務があります。対象者に取得の機会を与える点が重要です。
有給の取得方法(例つき)
- 本人の希望:従業員が希望する日に休ませます(例:家族の行事で休む)。
- 労使協定による計画年休:会社と労働者側が合意してあらかじめ日を決める(例:繁忙期を避けて全員の休みを割り当て)。
- 会社の時季指定:従業員が希望しないとき、会社が取得日を指定できます(例:長期休暇が取れない場合に指定)。
会社が取るべき具体的対応
- 対象者のリストアップと取得状況の把握。2. 取得方法を社員に周知して文書で残す。3. 希望を確認して調整し、必要なら時季指定で消化させる。4. 取得日数の記録を保存する。
違反した場合の罰則と影響
労働基準法違反となり、1人につき30万円以下の罰金が科される可能性があります。罰則以外に従業員との信頼関係悪化や行政指導のリスクもあります。
実務上の注意点
記録を欠かさず、個々の希望を丁寧に聞くことが肝心です。労使で計画年休を決めると運用が安定します。
パートならではの注意点
付与日数の差と影響
パートは勤務日数・時間に応じて付与日数が少なくなることが多いです。付与日数が少ないと、年5日間の取得義務の対象から外れる場合がありますが、有給そのものは申請できます。
10日以上付与された場合(取得義務)
入社後の要件を満たし、付与日数が10日以上であれば正社員と同様に年5日間の取得義務が発生します。会社は取得を促し、取得状況を把握する必要があります。
10日未満のとき(取得可だが義務対象外)
付与日数が10日未満なら「年5日ルール」の義務は適用されません。とはいえ、有給休暇は申請すれば取得可能です。権利として使いやすい職場づくりを話し合いましょう。
確認すべきポイントと手順
- 契約書や就業規則で「付与日数」や「基準」を確認する
- 人事・総務に付与日数の計算方法を問い合わせる
- 勤務日数の変更があれば付与日数が変わる可能性があるため、更新を確認する
申請のコツ
具体的な日付で早めに申請する、理由は簡潔に伝える、シフト制なら代替要員や引き継ぎを用意するなどで承認されやすくなります。
よくあるトラブルと対策
よくあるトラブル例
- 有給申請を会社に断られる。理由が曖昧で説明がない。
- 年5日ルールを満たせていないのに取得させてもらえない。
- 申請のやり取りが口頭だけで記録が残っていない。
初動の対処法
- 就業規則と自分の有給付与日数を確認します。具体的な付与日を把握しましょう。
- 申請はメールや書面で行い、日付と理由を簡潔に記載します。例:「○月○日に有給を申請します。理由:通院のため」。
- 拒否されたら誰にいつ言われたかをメモします。可能なら上司に再度書面で確認を求めます。
証拠の残し方
- メールやチャットのスクリーンショット、申請フォームの画面、出勤簿やタイムカードの写しを保存します。
- 口頭でやり取りした場合は日時・内容を自分で記録しておきます。
会社と話す手順
- 人事や上司に事実を整理して伝え、改善を求めます。
- 話が進まない場合は内容証明郵便で請求する方法もあります。
行政への相談(最終手段ではありません)
- 労働基準監督署や都道府県の労働局に相談できます。持参する資料:身分証、雇用契約書、就業規則、申請の記録、出勤簿など。
- 行政は事実確認をして会社に改善を促します。必要なら第三者の仲介も期待できます。
トラブル時の心構え
感情的にならず、証拠を整えて順序立てて行動することが重要です。早めに相談窓口を利用すると解決がスムーズになります。
まとめ:パートも「年5日ルール」の対象になる
この記事の要点をやさしくまとめます。
- 対象になる人
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パートでも、年10日以上の年休が付与される要件を満たしていれば「年5日ルール」の対象になります。つまり、付与日数が10日未満の人は対象外です。
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会社の義務とリスク
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会社は、従業員に年5日以上の年休を取得させる義務があります。会社がこれを怠ると、行政指導や罰則の対象になり得ます。
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パート側の対応ポイント
- まず自分の付与日数を確認してください(雇用契約書や出勤日数の記録で計算できます)。
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取得したい日を早めに申し出しましょう。会社が取得を促さない場合は、社内の相談窓口や労働基準監督署に相談できます。
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大事な心構え
- 有給は労働者の権利です。自分の権利を把握して、必要な休みを確実に取得してください。企業側にも取得を支援する義務がありますので、疑問や問題があれば早めに相談することをおすすめします。
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