はじめに
目的
この章では、転職時に必要となる「前職の源泉徴収票」について、本書全体の目的と読み方をやさしく説明します。年末調整や確定申告で困らないよう、実務に役立つ情報を順を追って解説します。
誰に向いているか
転職予定の方、すでに転職したばかりの方、人事や総務の担当者など、源泉徴収票の取り扱いに不安がある人向けです。書類の取り寄せ方や提出タイミングも具体的に扱います。
この記事でわかること
- 前職の源泉徴収票がなぜ必要か
- 取得方法と注意点
- 記載内容の見方と使い方
- 手元にない場合の対応方法
読み進め方の案内
次章から順に読み進めると実務で迷わず対応できます。まずは第2章で源泉徴収票の基本を確認してください。
源泉徴収票とは
概要
源泉徴収票は、会社が従業員に対して1年間に支払った給与や賞与の金額、そこから差し引かれた社会保険料や源泉徴収された所得税の額を証明する書類です。年末調整や確定申告の際に必要になります。日常的に受け取る給与明細とは異なり、年間の集計を示す点が特徴です。
誰が発行するか
勤務先(雇用主)が発行します。通常、翌年の1月末までに交付されます。退職者にも発行されるため、転職時や離職後にも受け取る必要があります。
主な記載項目と意味(例で説明)
- 支払金額:その年に支払われた総額(給与+賞与)を示します。例:年間の合計給与。
- 所得税の源泉徴収額:会社が天引きした所得税の合計です。
- 社会保険料等の金額:本人が負担した保険料の合計。
- 扶養親族等の数:年末調整で反映されます。
使いみち
年末調整の確認、確定申告や住宅ローンの手続き、失業給付の申請などで使います。企業側や税務署への提出書類として信頼性の高い所得証明になります。
給与明細との違い
給与明細は毎月の内訳を示す書類、源泉徴収票は年間の合計を示す書類です。どちらも大切ですが、税務手続きでは源泉徴収票が優先されます。
前職の源泉徴収票が必要となる理由
年間の所得税を正しく計算するため
転職した年は、前職と現職それぞれで給与が支払われます。税金は本来「1年間の総所得」に対して計算しますから、前職分を合算しなければ正しい税額が出ません。源泉徴収票には前職での給与額や既に差し引かれた所得税が記載されているため、新しい勤務先が年末調整で正確に清算できます。
具体例(分かりやすく)
例えば前職で半年分の給与をもらい、現職で残りの半年を働いた場合を想定します。両方を合算して1年分の所得を計算すると、多くの場合、毎月の天引きだけでは過不足が生じます。前職の源泉徴収票を出すと、徴収し過ぎた税金は還付されやすくなります。
提出しない場合の負担
前職の源泉徴収票を提出しないと、現職の年末調整で前職分を反映できません。結果として自分で確定申告を行い、税金の清算をする必要が出ます。手続きや時間の負担が増えるため、できるだけ勤務先へ提出することをおすすめします。
実務上の注意点
源泉徴収票は退職後に前職から発行されます。記載内容に誤りがないか確認し、必要なら再発行を依頼してください。書類を早めに準備すると年末調整がスムーズになります。
源泉徴収票のもらい方と注意点
1. 受け取り義務と期限
退職した会社は、退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。たとえば退職日が3月15日なら、4月15日までに受け取る必要があります。
2. 受け取り方法(一般的な流れ)
- 郵送が一般的です。会社の事務処理の都合で最終出勤日に手渡されないことが多いです。
- 会社に郵送先住所を伝えておきましょう。手渡しを希望する場合は事前に相談してください。
3. 届かないときの対応手順
- まず前職の担当部署(人事・総務)に電話かメールで問い合わせます。氏名・退職日・返送先を伝えるとスムーズです。
- 1か月を過ぎても届かない場合は、書面で発行を請求すると記録が残ります。送付の写しを自分で保管してください。
- それでも発行されない場合は、税務署で「源泉徴収票不交付の届出手続」を行います。給与明細のコピーなどを添付すると手続きが早まります。
4. 手続き時の注意点とポイント
- 給与明細や振込明細を保管しておくと、税務署への提出資料になります。
- 転職先の年末調整や確定申告のために早めに確認してください。
- 発行が遅れると年末調整で不利になる可能性があるため、早めに行動しましょう。
源泉徴収票の記載内容と使い方
概要
源泉徴収票には、1年間に受け取った給与や差し引かれた税金などがまとめて記載されています。年末調整や確定申告で必要になるため、各欄の意味を押さえておくと便利です。
主な記載項目と分かりやすい説明
- 支払金額:その年に支払われた総額です(例:給与や賞与の合計)。
- 給与所得控除後の金額:給与から所定の控除を引いた後の金額で、課税対象の目安になります。
- 所得控除後の金額:さらに各種控除(社会保険料や配偶者控除など)を差し引いた後の金額です。
- 源泉徴収税額:あらかじめ差し引かれた所得税の合計額です。年末調整で「前職の源泉徴収額」を求められたら、この欄の金額を入力します(例:30,000円なら30,000円を記入)。
- 社会保険料等の金額:本人が負担した健康保険や厚生年金などの合計額です。
実際の使い方
- 年末調整で前職分を申告する場合は、源泉徴収票の「源泉徴収税額」をそのまま記入します。
- 複数の勤務先があるときは、それぞれの源泉徴収税額や支払金額を合算して申告します。
- 確定申告や住宅ローン控除の初年度などでは、支払金額や社会保険料の額も確認し、必要書類と一緒に提出します。
注意点
- 記載内容(氏名、支払者、金額)が正しいか必ず確認してください。間違いがあれば前職に問い合わせて訂正してもらいます。
- 提出方法(原本が必要か写しでよいか)は勤務先や手続きによって異なるので、事前に確認してください。
源泉徴収票が手元にない場合の対応
概要
転職直後に前職の源泉徴収票が届いていない場合は、まず冷静に対応しましょう。多くの転職先は最初の年末調整で源泉徴収票が未提出でも受け付け、後日提出で調整できます。年末調整に間に合わないときは自分で確定申告を行い、税額を清算します。
まずやること(前職への連絡)
前職の人事・経理に再発行を依頼してください。メールや電話で「源泉徴収票の再発行をお願いします」と伝え、送付方法(郵送やPDF)と到着予定を確認します。受け取ったらコピーを保管しましょう。
転職先への連絡と対応例
転職先の担当者に状況を報告し、源泉徴収票が後日提出になる旨を伝えます。多くは年末調整時に提出すれば対応してくれます。最初の給与計算で控除が正確でない場合もあるので、その場合は年度末に精算します。
年末調整に間に合わない場合の確定申告準備
確定申告で精算する際は、前職の給与額や源泉徴収額が分かる書類(最終の給与明細や振込明細)を用意します。生命保険料や医療費などの控除証明書も揃えておきます。e-Taxを使えば自宅から申告できますし、税務署の窓口でも手続きできます。
どうしても入手できない場合の代替策
前職が倒産するなどで源泉徴収票が入手困難な場合は、給与明細や口座振込の履歴を添えて確定申告を行えます。必要に応じて税務署に相談し、指示に従ってください。
実務上の注意点
書類は受け取ったら必ずコピーを保管してください。源泉徴収票は年末調整や確定申告で最も重要な書類の一つです。期限や必要書類について不安があれば、早めに転職先の担当者か税務署に相談しましょう。
源泉徴収票提出のタイミング
概要
一般的には正式に入社した後、入社手続きの一環で源泉徴収票の提出を求められます。企業は前職の給与額や扶養状況を正確に把握するために使います。内定段階で求められることもあり、年収確認や交渉材料となる場合があります。
提出が求められる主なタイミング
- 内定時:年収の裏付けとして求められることがあります。採用側が報酬設計を確認するためです。例)内定通知と同時に「源泉徴収票のコピーをお願いします」と案内される場合
- 入社時(最も多い):年末調整や社会保険の手続きで必要になります。入社後すぐに提出を案内されることが多いです。
- 年度途中:中途採用や給与の再計算が必要なときに改めて求められることがあります。
内定段階で求められたときの対応
内定段階で求められても、原則として提出義務はありません。企業側の理由を確認し、どう使うかを尋ねてください。手元にない場合は、直近の給与明細や離職票で代替できることを提案すると良いです。また、個人情報の扱いについても確認しましょう。
入社時に求められたときの注意点
- 原本かコピーか確認する:多くの企業は原本の確認後、コピーを保管します。返却方法も確認してください。
- 提出期限に注意:年末調整に間に合わないと税金計算に影響が出る場合があります。早めに準備しましょう。
- 提出前に写しを残す:紛失や確認のために自分用の写しを保管しておきます。
提出できない/間に合わない場合の対処
手元にない場合はその旨を早めに伝え、企業と代替書類(給与明細、離職票、最終給与の支払証明など)で調整してください。どうしても用意できないときは、年末調整での再確認や確定申告が必要になることを説明しておくと安心です。
まとめ:転職時に前職の源泉徴収票が必要な理由と実務対応
要点
転職した年の年末調整では、前職・現職の給与や控除額を合算して正しい税額を計算します。そのため前職の源泉徴収票は必須です。前職分がないと税金の過不足が生じる可能性があります。
受け取りと提出の実務対応
- 退職後は早めに前職に源泉徴収票の発行を依頼してください。法律上は退職後1か月以内に交付されるのが一般的です。
- 現職の年末調整担当者に原本を提出します。再発行が必要な場合は前職の人事・総務に連絡してください。
- 前職から届かないときは税務署に「不交付の届出書」を出す手続きがあります。届出後は確定申告で自分で精算します。
実務チェックリスト
- 退職時に発行時期を確認する
- 住所変更がある場合は前職へ連絡する
- 紛失時は再発行を依頼する
- 年末調整に間に合わないときは確定申告の準備をする
転職時は源泉徴収票の取得と提出時期を確実に確認しておくと、年末調整や確定申告をスムーズに行えます。必要な手続きを早めに行ってください。
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