はじめに
この記事は、アルバイトを複数掛け持ちしている方に向けて、源泉徴収や年末調整・確定申告の基本をやさしく解説します。
この記事の目的
複数のバイト先があると、どこで税金を払っているのか、源泉徴収票はどう扱うのか迷いやすいです。本記事では「何を気をつければよいか」を中心に、実務で役立つポイントを具体例を交えて説明します。
誰に向いているか
・学生や掛け持ちで働く方
・初めて確定申告を考えている方
・年末調整で悩んでいる方
本章で学べること
次の章を読む準備として、全体像と用語のやさしい説明をお伝えします。源泉徴収票、年末調整、確定申告の関係がわかり、どの章を重点的に読めばよいかが判断できます。
読み方のポイント
具体例を交えている箇所を先に読むと実務に結びつけやすいです。専門用語は最小限にし、必要な場面は具体例で補足します。ご自身の状況に合わせて章を選んで読み進めてください。
バイト掛け持ち時の源泉徴収の仕組み
概要
バイトやパートを複数掛け持ちする場合、税金(源泉徴収)の扱いは「主たる勤務先(メイン)」と「従たる勤務先(サブ)」で異なります。まずはそれぞれの仕組みを押さえましょう。
主(メイン):扶養控除等申告書を提出した会社(甲)
扶養控除等申告書を1社だけ提出できます。その会社は「甲」扱いになります。月の給与が8万8,000円以下なら源泉徴収されません。超えると、甲の税額表に沿って源泉徴収されます。たとえば月9万円なら、甲の税額で所得税が差し引かれます。
副(サブ):扶養控除等申告書を出していない会社(乙)
他の掛け持ち先は「乙」扱いです。給与額に関わらず源泉徴収されます。また、その会社では年末調整が行われません。複数の乙先があると、各社で税金が天引きされるため、年末に合算して調整(確定申告)が必要になる場合があります。
日雇いや単発:丙の扱い
日雇いや単発バイトでは「丙」欄が適用されます。1日あたり9,300円以上の場合に源泉徴収が必要です。短期で支払われる仕事に当てはまります。
実務上の注意点
- 扶養控除等申告書は必ず1社にだけ出す。複数提出すると処理が混乱します。
- 年末調整は甲で行われ、乙は行われません。乙で税金が多く引かれていると、確定申告で還付を受けられることがあります。
- 給与明細で「甲・乙・丙」と源泉徴収額を確認しましょう。疑問があれば早めに各社の総務に相談してください。
源泉徴収票の取得と保管
「バイト先ごとに源泉徴収票は必ず発行される」と聞いて、不安に感じていませんか?ここでは受け取り方、確認ポイント、保管方法、紛失時の対応をやさしく説明します。
受け取りと確認
- 各バイト先から退職時や年明けに交付されます。受け取り忘れがないよう、勤務先ごとにチェックしてください。
- 確認する項目は主に「支払金額」「源泉徴収税額」「支払者の名称・住所」です。金額に誤りがあれば勤務先に相談しましょう。
保管の方法
- 紙で受け取ったら、年度ごとにクリアファイルやファイルボックスでまとめてください。
- スキャンしてPDFで保存すると、紛失時に便利です。クラウドにバックアップを残すと安心です。
紛失した場合
- まず発行元のバイト先に再発行を依頼します。対応は各社で異なるため、早めに連絡しましょう。
確定申告での扱い(簡潔に)
- 年末調整は扶養控除等申告書を提出したメインのバイト先だけが行います。サブのバイト先の分は年末調整されないため、源泉徴収票を揃えて確定申告で正しく申告してください。
最低でも確定申告が終わるまでは保存し、できれば数年分を保管しておくと安心です。必要なときにすぐ取り出せるよう、受け取りと保管を習慣にしてください。
年収合計と確定申告の必要性
合計年収がポイントです
アルバイトやパートを複数している場合、各勤務先の年収を合算して考えます。合計が103万円以下なら、所得税で払いすぎた分が還付される可能性があります。たとえば、主な勤務で年収90万円、別のバイトで10万円なら合計100万円で還付を受けられることが多いです。
サブのバイト(乙区分)と20万円ルール
主たる勤務先以外(多くは乙区分)の年収が20万円を超えると、確定申告が必要になります。逆に20万円以下でも、住民税の申告が必要になる場合があるため、申告を勧めるケースが多いです。
年末調整と確定申告の違い
年末調整は主たる勤務先で行う手続きで、副業分は対象外です。したがって、副業で源泉徴収された税金は確定申告で取り戻す必要があります。源泉徴収票を全部集めて合算することが重要です。
簡単な手順(流れ)
- 各勤務先の源泉徴収票を受け取る
- 年収の合計を計算する
- 確定申告が必要か、還付申告をするかを判断する
- 電子申告(e-Tax)か税務署で申告する
不明点があれば、源泉徴収票を持って税務署や相談窓口に相談すると安心です。
源泉徴収の税区分「甲・乙・丙」とは?
給与の源泉徴収には「甲」「乙」「丙」の3つの区分があります。どの区分になるかで、税金の差し引き方が変わります。ここではわかりやすく説明します。
甲(こう)
- 扶養控除等申告書を提出した従業員が該当します。主に「本業」にあたる職場で使います。
- 月の給与が88,000円以下なら、原則として源泉徴収されません。超えた分に対して「甲」欄の税率で計算されます。
- 例:本業で月12万円、扶養申告を出している場合、88,000円までは非課税扱いで、超過分の32,000円にだけ税がかかります。
乙(おつ)
- 扶養控除等申告書を提出していない場合に使います。掛け持ちの先(副業)で多く見られます。
- 給与の多寡に関わらず、支払額に対して源泉徴収されます。つまり、副収入が少額でも税が天引きされやすいです。
- 例:別のバイト先で月4万円しか稼いでいなくても、その全額に対して源泉徴収されます。
丙(へい)
- 日雇いや単発の仕事で使われる区分です。働いた日ごとに判断します。
- 1日あたり9,300円以上の支払いがあると源泉徴収が必要になります。日当が9,000円未満なら通常は源泉徴収されません。
- 例:単発のイベントで1日10,000円もらうと、その日の分は源泉徴収の対象になります。
実務的なポイント
- 扶養控除等申告書は勤務先ごとに1つだけ提出できます。複数バイトがある場合、多く稼ぐ方に提出すると全体の源泉徴収が軽くなりやすいです。
- 年末に収入を合算すると払いすぎた税金が戻る場合があります。源泉徴収票を集めて年末調整や確定申告で確認してください。
疑問があれば、どのケースか教えてください。具体例でさらに説明します。
還付を受けるには?確定申告のポイント
必要な書類
各バイト先の源泉徴収票が必須です。これがないと正しい年収や差し引かれた税額が分からず、還付の計算や申告ができません。まず各勤務先に発行を依頼しましょう。
申告で還付を受ける流れ
- 源泉徴収票をすべて集める
- 総収入と源泉徴収された税額を確認する
- 確定申告書に記入し、源泉徴収票を添付して税務署へ提出(e-Taxも可)
- 還付金の振込口座を記入すれば、過払い分が返ってきます
年末調整されなかったサブバイトの扱い
サブバイトで年末調整を受けていない場合でも、確定申告で支払った源泉税の還付を受けられます。給与が少なくても諦めずに申告してください。
住民税について
たとえ副収入が少額(例:20万円以下)で所得税の申告が不要でも、住民税の申告は必要です。確定申告を行えば通常は市区町村へ情報が連携されますが、確定申告をしない場合は別途住民税の申告が必要です。
源泉徴収票が入手できないとき
勤務先に再発行を依頼してください。どうしても取れない場合は、給与明細や振込履歴などで状況を説明し、税務署に相談しましょう。
実用的な注意点
還付振込までに時間がかかることがあります。振込口座は正確に記入し、控えは必ず保管してください。
給与明細・源泉徴収票の確認ポイント
まず必ず受け取り・確認しましょう
各バイト先から給与明細と年末に源泉徴収票を必ず受け取ってください。支払先や自分の氏名、支払期間が正しいかを最初に確認します。
明細でチェックする項目
- 支払金額:手取りだけでなく支払総額(差引前)を確認します。給与の計上漏れや残業代の未払いに気づけます。
- 控除・保険料:健康保険、厚生年金、雇用保険の控除額が妥当か確認します。
- 源泉徴収額:税金として差し引かれた金額を確認します。年末調整や確定申告で重要です。
- 支払者の情報:勤務先名・所在地・担当者名が明記されているか確認します。
複数バイトがある場合のポイント
複数の職場があるときは、すべての源泉徴収票を合算します。還付申告や確定申告では合算した支払金額と源泉徴収額が必要です。明細は職場ごとに分けて保管してください。
紛失しないための保管方法
- 紙で保管する場合:封筒やファイルに年度ごとにまとめます。
- 電子保存する場合:スキャンしてPDFにし、バックアップを取ります。
万が一紛失したら、勤務先に源泉徴収票の再発行を依頼してください。発行は勤務先の責任です。
確定申告や還付での扱い方
確定申告の際は、源泉徴収票をもとに合計金額を記入します。還付を受ける場合、源泉徴収額の証明になるため、原本の提出や写しの添付を求められることがあります。
簡単チェックリスト
- 給与明細を毎月受け取っているか
- 支払金額・源泉徴収額に誤りがないか
- 全てのバイト先の源泉徴収票を保管しているか
- 紛失時は勤務先へ再発行を依頼しているか
上の点を習慣にすれば、確定申告や還付の際に慌てずに済みます。
よくある悩み・注意点
バイトを掛け持ちしていると「税金が多く引かれている気がする」「扶養の扱いがわからない」といった不安が出やすいです。ここでは典型的な悩みと、すぐできる対応を分かりやすく説明します。
- サブのバイトで税金が多く引かれている
- なぜ起きるか:主な勤務先で「扶養控除等申告書」を出していると、他の職場では自動的に高い税率(乙扱い)で源泉徴収されます。
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対応:年末調整で戻らない場合は、翌年に確定申告をして還付を受けることが多いです。まずは各職場から源泉徴収票を集めてください。
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扶養控除等申告書を2社に出してしまった/未提出になっている
- 注意点:扶養控除等申告書は原則一社にしか提出できません。誤って二社に出すと、給与計算や年末調整でトラブルになることがあります。
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対処法:間違いに気づいたら速やかに勤務先の給与担当に連絡し、訂正方法を確認してください。訂正で済まない場合は年末調整や確定申告で調整します。
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ダブルワークで確定申告が必要か不安
-
基準は年間の合計収入や税額によります。副業の所得が少額でも源泉徴収されていれば、還付を受けられる可能性があります。源泉徴収票をもとに判断してください。
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その他の注意点
- 必要書類は必ず保管する(給与明細、源泉徴収票、控除証明など)。
- 不安なときは勤務先の給与担当か最寄りの税務署に相談するか、専門家(税理士)に相談してください。
どのケースでも、大事なのは記録を集めて早めに確認することです。疑問が出たら早めに相談すると安心です。
まとめ
バイトを掛け持ちすると、勤務先ごとに源泉徴収の扱い(甲・乙など)が変わり、税金の計算が複雑になります。サブのバイトでも必ず源泉徴収票を受け取り、保管してください。源泉徴収票があれば確定申告で税金の過払い分を取り戻せます。
実践チェックリスト
- 各バイト先から源泉徴収票をもらう。
- 年間の給与を合算して、確定申告が必要か確認する。
- 申告する場合は源泉徴収票を添付して申告書を提出する。
- 住民税の扱い(給与天引きか普通徴収か)を確認し、必要なら切り替え申請をする。
よくある悩みは「どの仕事を主にするか」「申告が面倒」という点です。源泉徴収票をそろえ、早めに手続きを進めれば税金の無駄払いを防げます。わからない点は税務署や市区町村窓口に相談してください。丁寧に手続きを行えば、具体的な還付につながりやすくなります。
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