はじめに
「有休を取ったら給料が少なくなった気がする」「そもそも有休の給料はどう計算されるの?」と感じていませんか?そんな疑問にお答えするため、本記事を用意しました。
この連載では、有給休暇(有休)を消化したときの給料の仕組みを丁寧に解説します。第2章では基本ルール、第3章では給料計算の仕組み、第4章では「給料が少なく感じる」主な原因、第5章では間違いがあった場合の対処法、第6章では退職・転職時の有休処理について扱います。
読みやすさを重視し、専門用語は最小限にして具体例で補足します。会社によって運用が違う点もあるため、最終的には就業規則や給与明細を確認することをおすすめします。本章では全体の流れとこの記事から得られることをざっくり把握しておいてください。次章から順に読み進めると理解が深まりますし、急ぎの方は気になる章にジャンプしても大丈夫です。
有休消化とは?その基本ルール
「有休消化」とは、付与された有給休暇を実際に休暇として使うことです。言い換えると、会社から与えられた“休む権利”を行使することを指します。
対象になる人
雇用形態は問いません。正社員だけでなくパート・アルバイトも対象です。付与の条件は、原則として「継続勤務6か月以上」「全労働日の8割以上出勤」を満たすことです。条件を満たすと法で定める日数の有給が発生します。
2019年の改正(年5日の義務化)
2019年4月以降、年10日以上の有給が付与される労働者には、使用者が年5日の取得を確保する義務があります。会社は計画的に取得を促す必要があります。
取得の流れと注意点
通常は従業員が申請し、会社が承認しますが、業務に重大な支障がある場合は会社が時期をずらすこともあります。休暇の繰越は基本的に2年間有効です。時間単位での取得は制度として認められる場合もありますが、会社の就業規則に従ってください。
有給休暇取得時の給料の仕組み
有給休暇は「賃金の支払いがある休暇」です。取得してもその日分の賃金は原則支払われるため、休んだから給料が減ることは基本的にありません。ただし支払い方法は就業規則や給与規定で定められており、主に次の3つの方式が認められます。
1) 通常の賃金を支払う方法(一般的)
普段の給与計算の基準で有給分を支払います。月給者の例:月給30万円、所定労働日数20日なら1日分は30万円÷20日=1万5千円です。時給者は「時給×所定労働時間」で計算します。
2) 平均賃金を支払う方法
直近の賃金の平均を基に1日分を算出する方法です。手当の有無などで金額が変わるため、高めに算出される場合もあります。
3) 健康保険の標準報酬日額を使う方法
社会保険の「標準報酬日額」を基準に1日分を決める方式で、企業によってはこれを採用します。
多くの企業は1)を採用しますが、就業規則の確認が大切です。給与明細には「有給」などの表記があり、欠勤としての控除は基本的に行われません。次章では、給料が少なく感じる原因について詳しく説明します。
なぜ「給料が少なくなった」と感じることがあるのか?
有休を取得して「給料が減った」と感じる主な理由を、具体例を交えて分かりやすく説明します。
計算方法の違い
会社は有休分を「平均賃金」や「標準報酬日額」などで計算することがあります。例えば月給30万円で所定労働日が20日の場合、単純に日割りすると1日15,000円です。ところが計算方法によってはこれより低い日額が使われ、結果として有休分が少なく感じることがあります。
シフト制・時給制の影響
時給やシフトで働く方は、有休を取ると実働日数が減り残業や早出手当が減るため、総支給額が下がります。たとえば普段残業で稼いでいる場合、有休日には残業が発生しないため手取りが減ります。
手当の取り扱い
歩合給やインセンティブ、出勤日数に応じる手当は、有休日に対象外になることがあります。売上連動の歩合は出勤しなければ発生しないため、有休で実収入が減るケースが多いです。
給与明細の見間違い
有休分が「有給」等の別項目で明記される会社があります。総支給額や内訳をよく確認せず、振込額だけ見て「減った」と誤解することがあります。
対処のための確認ポイント
・給与規定や雇用契約で有休の計算方法を確認する
・給与明細の内訳(有給項目)を照らし合わせる
・疑問があれば人事に計算根拠を問い合わせる
上記を確認すると、「減った」と感じる理由が明確になりやすいです。
正しくない場合と対処法
概要
原則として有給取得で賃金が減ることはありません。明らかに少ない、あるいは不明瞭な場合は次の手順で確認・対処してください。
1) まず確認すること
- 就業規則・雇用契約書:有給の賃金計算方法を確認します。具体的には「有給日数の扱い」「日給・月給の計算基準」などです。
- 給与明細:有給の日数や支給額が明記されているかを確認します。例:有給2日分が○○円と記載されているか。
2) 証拠を残す
- 有給申請のメールや申請システムの画面、給与明細は必ず保存してください。写真やPDFで保管すると安心です。
3) 会社へ問い合わせる
- 人事・総務にまず相談します。問い合せの例文:
件名:有給取得時の給与額についての確認
本文:先日、有給を取得しましたが、給与明細を見ると支給額が想定より少ないように感じました。差額の内訳をご教示ください。
4) 解決しない場合の相談先
- 労働基準監督署:法令違反の疑いがある場合は相談・調査を依頼できます。
- 労働組合や弁護士:未払い・不当な減給が疑われるときに相談します。
5) 早めに動く理由
給与や労働条件は時間がたつと確認が難しくなります。疑問があれば速やかに記録を残し、まず社内で確認してください。必要なら専門機関へ相談しましょう。
退職時や転職時の有休消化と給料の関係
概要
退職時に有休を消化する場合、消化した日数分の賃金は支払われる義務があります。会社が単に拒否することはできません。最終的な給与が想定より少ないと感じたら、消化日数や計算方法をまず確認しましょう。
確認すべきポイント
- 有休の残日数と消化日数:就業規則や最終の有休残数を確認します。
- 支給基準:有給の日に通常の1日分の給与が支払われるかを確認します。
- 給与明細と振込額:最終の給与明細で、有休分が反映されているか確認します。
具体例(イメージ)
月給30万円で所定労働日が20日なら、1日分は約1万5千円です。有休を5日使えば約7万5千円が上乗せされる想定です。実際は社会保険料や税金の天引きで手取りが減る点に注意してください。
問題がある場合の対処法
- まず会社の人事・総務に明細と計算根拠を求めてください。書面で残すと後で有利です。
- 就業規則や雇用契約の該当箇所を確認します。
- 会社の説明で納得できない場合は、労働基準監督署や労働相談窓口に相談してください。必要なら弁護士に相談するのも有効です。
最後に、有休の扱いは証拠が大切です。最終給与が想定と違うと感じたら、早めに明細や記録をそろえて確認しましょう。
まとめ・よくある質問
まとめ
有給休暇を消化しても、原則として給料の額は減りません。ただし、給与の計算方法や支給条件の違い、手当の扱いによって手取りが変わることはあります。実際の差が気になるときは、給与明細や雇用契約、就業規則を確認してください。疑問が解消しない場合は、労働基準監督署や弁護士など専門家に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1: 有休中に社会保険料はどうなりますか?
A1: 原則として通常の給与扱いなので、健康保険や厚生年金の控除も通常どおりです。会社の運用により変わる場合は明細で確認してください。
Q2: 有休で手取りが減った場合、まず何を確認すればいいですか?
A2: 給与明細の支給項目と控除項目、手当の支給条件を確認します。日給換算や時間単位の処理が原因になることがあります。
Q3: 退職時の未消化有休はどうなりますか?
A3: 会社の規定や雇用契約で扱いが決まります。未消化分の買い取りがある会社もありますので、退職時に必ず確認してください。
Q4: 会社が有休取得を認めないときは?
A4: まず就業規則や法令に基づく権利を確認し、話し合いで解決しない場合は労働基準監督署などに相談することをおすすめします。
不明点があれば、給与明細のスクリーンショットや契約書の該当部分を手元にして相談すると、より具体的な助言が得られます。
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