はじめに
「懲戒解雇をされたとき、解雇予告手当はもらえるのか?」という疑問をお持ちではありませんか?
本記事は、懲戒解雇に関する解雇予告手当の支給の有無や基準、例外、計算方法、実務上の注意点まで、わかりやすくまとめています。専門用語はできるだけ避け、具体例を交えて説明します。例えば、就業規則に重大な規律違反を書かれた場合と、軽い遅刻が続いた場合で扱いがどう違うか、といった日常に近い事例で理解しやすくします。
対象は、従業員と雇用主の双方です。労働基準法の基本ルールを押さえつつ、実務上よくあるトラブルの予防策も紹介します。この記事を最後までお読みいただければ、懲戒解雇後に自分がどのような手当や手続きを期待できるのか、次に何をすべきかが見えてくるはずです。
注意点として、本記事は一般的な解説です。個別のケースでは事情が異なるため、最終的には専門家に相談することをおすすめします。
それでは、次章から順に具体的に見ていきましょう。
懲戒解雇とは何か
定義
懲戒解雇は、従業員が会社の秩序や信頼を重大に損なう行為をした場合に、会社が行う最も重い懲戒処分です。解雇の中でも特に厳しく、普通解雇や整理解雇よりも重い影響を与えます。
具体例
- 横領や業務上の重大な背任
- 暴力行為や重大なセクシャルハラスメント
- 重大な無断欠勤や業務放棄(長期間)
これらは例で、状況によって判断が変わります。
手続きのポイント
事実関係の調査、証拠の確保、本人からの聴取を行い、公正な手続きをとることが重要です。証拠不足で一方的に懲戒解雇すると、無効と判断されることがあります。
懲戒解雇の影響
懲戒解雇になると社会的信用や再就職に大きな不利益が出ます。雇用契約や就業規則に基づいた判断と、慎重な対応が求められます。
解雇予告手当の基本ルール
解雇予告手当とは
解雇予告手当は、使用者が労働者を解雇する際に、少なくとも30日前の予告をしなかったときに支払う手当です(労働基準法第20条)。30日分以上の平均賃金を目安にします。
いつ発生するか
使用者が30日以上前に解雇を予告した場合は不要です。予告がない場合や予告日数が30日に満たない場合、その不足日数分について手当の支払い義務が生じます。
支払額の概要
基本は「平均賃金×不足日数」です。即日解雇(予告なし)の場合は30日分の平均賃金を支払う必要があります。具体的な平均賃金の計算方法は別章で詳しく解説します。
具体例
・即日解雇:30日分の平均賃金を支払う。
・解雇予告が10日後:不足は20日分。平均賃金×20日を支払う。
使用者の義務と注意点
支払いは解雇時に行うのが一般的です。記録を残し、労働者に分かりやすく説明してください。例外や除外認定があるため、それらは第5章で扱います。
懲戒解雇と解雇予告手当の原則
■ 概要
懲戒解雇でも原則として30日前の解雇予告が必要です。会社は30日以上前に告知するか、または30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
■ 即時解雇と手当の扱い
即時に雇用関係を終了させる場合でも、原則として解雇予告手当を支払います。つまり“告知なしで辞めさせる”なら、その分の手当が必要です。
■ 例外(労働者の責めに帰すべき事由)
重大な背任・横領・暴行など、労働者の責任による重大な不正行為がある場合は例外となることがあります。この場合、会社は解雇予告手当の支払いを免れる可能性があります。
■ 会社が注意すべき点
ただし、例外を適用するには、事実関係の明確な立証が必要です。調査記録・証拠・本人聴取・懲戒手続きの経過などを残してください。裁判所は懲戒の相当性(行為の重さと処分との均衡)を重視します。
■ 具体例
– 横領が確実で被害が大きい場合:解雇予告手当が不要となる場合あり
– 軽微な遅刻や注意で済む場合:原則として手当が必要になる
■ 実務上の勧め
懲戒処分前に事実関係を十分に調べ、書面での記録と本人への説明を行ってください。争いを避けるため、労働基準法の趣旨を踏まえた慎重な対応が大切です。
解雇予告手当が支給されない例外(除外認定)
除外認定とは
懲戒解雇であっても、労働基準監督署長が「労働者の責めに帰すべき重大な事由がある」と認めれば、解雇予告や解雇予告手当の支払いを免れることができます。行政が個別に判断する制度です。
認められる例(具体例)
- 会社の金を横領した場合
- 業務上の重大な暴行やセクハラを繰り返した場合
こうした行為は「重大な事由」として認定されることが多いです。
認められない例(具体例)
- 業績不振や単なる勤務態度の悪さ
- 一度の小さなミス
これらは通常、除外認定に当たりません。
手続きと注意点
使用者側が労働基準監督署に申請し、証拠提出や事情説明が必要です。申請せずに手当を支払わなければ、処罰の対象になります。証拠は客観的に残すことが重要です。
未申請で支払わなかった場合の罰則
除外認定を受けずに解雇予告手当を支払わないと、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる可能性があります。
実務上の助言
まず労働基準監督署に相談し、必要なら弁護士に依頼してください。事実関係を整理して証拠を保全することが大切です。
解雇予告手当の計算方法と注意点
計算の基本
解雇予告手当は「30日分の平均賃金」を基準にします。事前予告が30日に満たない場合、足りない日数分を手当として支払います。例えば15日前に予告した場合は15日分の手当が必要です。即時解雇(予告なし)の場合は30日分を支払います。
平均賃金の求め方(簡単な説明と例)
平均賃金は直近3か月(退職日の前日までの3か月間)の総支給額を、その期間の日数で割って求めます。
例:3か月合計が90万円、期間の日数が90日なら平均日額は1万円です。15日分の手当は1万円×15日=15万円になります。
支給日数の具体例
- 予告30日:手当不要
- 予告15日:15日分支給
- 即時解雇(0日):30日分支給
相殺・損害賠償との関係
解雇予告手当は賃金にあたり、会社が一方的に損害賠償と相殺するのは簡単ではありません。賠償が認められる具体的事由や合意がある場合を除き、相殺は争いになります。個別の事情で判断が変わるため、争いが予想されるときは労働基準監督署や弁護士に相談してください。
実務上の注意点
- 変動する賃金(残業代や手当)がある場合は平均値で計算します。
- 給与の締め日や支給形態で計算期間が変わることがあるため、給与明細を確認してください。
- 税・社会保険の扱いが生じるため、総額での扱いを確認しましょう。
必要があれば具体的な給与例を教えてください。計算のサンプルを一緒に作成します。
実際の対応と注意点
概要
懲戒解雇を即日で行う場合、必ず労働基準監督署の除外認定を申請する必要があります。除外認定が認められない、または手続きを怠ると、解雇予告手当を支払わなかったとみなされるリスクが高まります。トラブルを避けるため、法律に沿った手続きを徹底してください。
具体的な手順
- まず事実確認と内部調査を行います。日時、場所、関係者の陳述を記録します。
- 証拠(メール、ログ、監視映像、領収書など)を収集し、調査報告書を作成します。
- 懲戒の理由と判断経緯を社内で確認し、書面に残します。
- 除外認定のために必要な資料を整え、速やかに労働基準監督署へ申請します。
- 解雇を通知する際は、理由と事実を明示した書面で行います。
証拠と書類のポイント
客観的な証拠を揃えることが最も重要です。録画やログは保存期限に注意し、証拠の出所と取得方法を明確にしておきます。調査報告書には調査日、調査者、関係者の陳述を記載してください。
従業員対応の注意点
口頭のみで済ませず、説明機会を設けて書面で対応します。未払賃金や退職金の扱いは別途精算が必要です。感情的なやり取りを避け、記録を残してください。
トラブル回避と相談先
早めに社内の人事・総務、社労士や労働問題に詳しい弁護士に相談してください。除外認定が下りない場合のリスクを想定し、和解や示談の準備も検討すると安心です。
まとめ・よくある質問
要点まとめ
本記事のポイントを簡単にまとめます。
- 原則として、懲戒解雇でも解雇の30日前の予告が必要です。予告ができない場合は、平均賃金の30日分に相当する解雇予告手当を支払います。
- 例外として、重大な規律違反などで労働基準監督署の除外認定を受けた場合は手当は不要になります。ただし、認定は要件が厳しく手続きに漏れがあると無効になります。
- 実務上は手続きの誤りや認定漏れでトラブルになることが多いです。判断に迷う場合は社労士や弁護士に相談してください。
よくある質問(Q&A)
Q1: 懲戒解雇なら必ず手当は不要ですか?
A1: いいえ。除外認定を受けて初めて不要になります。認定がない限り手当が必要です。
Q2: 手当の額はどのくらいですか?
A2: 通常は平均賃金の30日分です。給与形態により計算が変わるため注意してください。
Q3: まず何をすればよいですか?
A3: 事実関係を整理し、社内手続きや証拠を揃えたうえで専門家に相談することをお勧めします。
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