はじめに
本記事の目的
勤続4年での退職金について、相場や計算方法、企業規模や業種ごとの違い、退職理由による支給差、支給条件や注意点、実例、税金・控除までをわかりやすく解説します。退職金制度の有無や支給タイミングにも触れ、実際に役立つポイントを示します。
対象読者
・勤続4年前後の方
・転職や退職を考えている方
・退職金の見当をつけたい方
人事担当者や家族も参考になります。
読み方の案内
各章は独立して読みやすくまとめています。まずは本章で全体像をつかみ、関心のある章を詳しくご覧ください。実例や注意点を重点的に読むと現実的な判断がしやすくなります。
勤続4年の退職金相場
概要
経団連の「2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、勤続4年の平均退職金は大学卒で約64万7,000円、高校卒で約43万1,000円です。これは全国平均の一例で、すべての企業に当てはまるわけではありません。
金額の目安
- 大学卒:およそ64.7万円
- 高校卒:およそ43.1万円
実際の金額は企業規模や業種、退職理由で大きく変わります。中小企業では数十万円台にとどまることが多く、大手・上場企業では100万円前後から数百万円になる場合もあります。
変動要因
退職金は勤続年数のほか、「支給規程(計算式)」「最終給与や平均給与」「退職理由(定年、自己都合、会社都合)」などで変わります。支給要件が厳しい会社では勤続年数が足りず支給されないこともあります。
確認のポイント
- 就業規則・退職金規程を確認する
- 人事や総務に具体的な計算例を求める
- 転職や退職を考える際は退職金の有無と条件を早めに確認する
各企業で違いが大きいため、まずは自社の規程を確認することをおすすめします。
主な退職金計算方法
退職金の計算方法は企業ごとに異なります。ここでは代表的な4つの方法と、計算時の注意点を分かりやすく説明します。
定額制
退職時にあらかじめ決めた金額を支給します。たとえば「勤続に関係なく一律50万円」という形です。計算が簡単で予測しやすいです。
基本給連動型(例を含む)
基本給に勤続年数や係数を掛けて算出します。式はおおむね「基本給×支給係数×事情係数」です。例:基本給25万円、勤続4年で支給係数が2、自己都合係数が0.8の場合は25万円×2×0.8=40万円になります。
別テーブル制
勤続年数や役職ごとに表(テーブル)を用意し、その表に従って金額を決めます。会社ごとのルールが反映されやすく、細かい差が出ます。
ポイント制
勤務年数や評価、資格などに点数を付け、合計ポイントに単価を掛けて算出します。柔軟に設計できる一方で計算が複雑になります。
計算時の注意点
・自己都合退職と会社都合で係数が変わることが多いです。
・就業規則や退職金規定を必ず確認してください。
・支給方法(一時金か分割か)で受け取り方が変わります。
疑問があれば規程や人事に確認しましょう。
企業規模・業種ごとの違い
概要
企業規模や業種で退職金の有無や金額に差が出ます。ここでは大企業・中小企業の違いと、業種別の傾向、実務で確認すべき点を分かりやすく説明します。
企業規模別の特徴
- 大企業:退職金制度や企業年金を整備する会社が多く、支給額も高めの傾向です。勤続年数や役職に応じた計算式が明確な場合が多いです。
- 中小企業:制度を設けても金額が抑えられる場合が多く、制度自体がない会社もあります。個別に規程を確認する必要があります。
業種別の傾向
- 製造業・金融業・公務員:比較的高めに設定されることが多いです。安定した収益や制度の歴史が影響します。
- サービス業・小売業:非正規雇用が多く、退職金が少ないか支給されないケースが目立ちます。離職率の高さも影響します。
会社選びと確認ポイント
- 就業規則や退職金規程を必ず確認してください。支給要件(勤続年数、自己都合か会社都合か)、計算式、支給方法(一時金か年金)を見ます。
- 入社前・退職前に人事に確認するとトラブルを避けられます。制度がない場合は、確定拠出年金や個人の貯蓄で備えることを検討してください。
退職理由による支給額の違い
概要
多くの企業では、退職理由によって退職金の算定に使う「係数」が異なります。一般的には自己都合退職が係数0.8(8割)、会社都合退職が係数1.0(全額)で計算されます。
どの退職理由がどちらに当たるか
- 自己都合退職:転職、家庭の事情、個人的理由での退職など。企業側の事情ではない場合が該当します。
- 会社都合退職:解雇、整理解雇、事業縮小や倒産、契約社員の雇止めなど、会社側の事情で退職に至った場合です。
例で見る違い
退職金の「標準額」が100万円とした場合、自己都合なら約80万円、会社都合なら100万円となります。企業が特別に優遇する早期退職制度では係数が1.2倍などに上乗せされる場合もあります。一方、懲戒解雇では支給が減額されたり支給されないケースもあります。
例外と注意点
- 企業ごとに運用は異なります。就業規則や退職金規程を必ず確認してください。
- 合意退職(会社と協議して決める場合)は個別に条件を決め、特別手当が付くことがあります。
- 勤続年数が短いと支給対象外になる企業もあります。
実務上のアドバイス
退職前に人事に支給基準を確認し、条件は書面で残してください。不明点やトラブルがある場合は労働相談窓口や専門家に相談すると安心です。
支給条件と注意点
支給対象の確認
勤続4年の場合でも、会社の制度によって支給対象が異なります。よくある例は「正社員のみ支給」「一定の勤続年数(例:5年以上)を満たすこと」「契約社員やパートは対象外」です。まず就業規則や退職金規程を確認し、不明点は人事に書面で確認してください。
支給形態(一括・分割・年金)
多くの会社は退職後に一括で支払いますが、分割払いや年金形式で支給する会社もあります。分割や年金だと受取額のタイミングが変わり、生活設計に影響します。具体的な支給時期(退職後何日以内か)も規程で確認しましょう。
規程のチェックポイント
・支給対象者の範囲(雇用形態)
・勤続年数の条件
・支給率や計算式の記載
・特別条項(自己都合退職、懲戒、解雇時の取扱い)
・支給時期と支払い方法
これらを確認すると、自分の権利と期待額が明確になります。
受け取り時の注意点
受け取り時は明細書を必ず受け取り、計算根拠を確認してください。不明な点は書面で問い合わせ、必要なら労働相談窓口に相談するとよいです。退職金がない場合や規程があいまいな場合は、退職前に交渉の余地があることもあります。
勤続4年の退職金実例
具体例1:大学卒(基本給25万円・自己都合・支給係数2)
会社の規定で支給係数が用いられる場合、当該例では最終的に支給額が40万円となります。企業ごとに計算式や年数の扱いが異なるため、同じ基本給でも結果は変わります。
具体例2:看護師(基本給18万円・貢献度130%評価)
この例では貢献度(評価)を掛けて計算しています。単純計算の例を示すと:18万円 × 勤続年数4年 × 1.30(貢献度)=93.6万円。評価が高い場合は支給額が上がることが分かります。
具体例3:他業種・高卒の平均
業種や学歴による差はありますが、勤続4年での平均的な退職金は約43万円前後とされることが多いです。中小企業と大企業で差が出やすい点に注意してください。
実例からのポイント
- 退職理由(自己都合か会社都合)や企業の規定で大きく変わります。
- 評価や貢献度が反映される職種では、同じ年数でも金額差が出ます。
- 正確な金額は就業規則や退職金規程で確認してください。疑問があれば人事に問い合わせると安心です。
税金・控除について
概要
退職金には「退職所得控除」という特別な控除があり、税負担が軽くなる仕組みです。勤続年数が20年以下の場合は、1年あたり40万円が控除されます。控除額が退職金を上回れば、税金はかかりません。
計算の流れ(簡単な手順)
- 退職金から退職所得控除を差し引く
- 残額を2で割る(これが課税される退職所得となります)
- 所得税・住民税を計算する
勤続4年の具体例
例:退職金300万円、勤続4年
– 退職所得控除=40万円×4年=160万円
– 課税対象=(300万円−160万円)÷2=70万円
この70万円に対して所得税と住民税がかかります。住民税はおおむね10%ですので、概算の税負担は数万円から十数万円程度になることが多いです。
手続きと注意点
- 多くの場合、会社が源泉徴収して税額を処理します。源泉徴収票(退職所得の源泉徴収票)を受け取ってください。
- 会社の処理が不明確なときや、過去の給与と合算する必要があるときは確定申告が必要になることがあります。
その他のポイント
- 退職金を分割で受け取る場合や企業年金がある場合、計算方法が変わることがあります。具体的には会社ごとの規定や年金制度の種類で違いが出ますので、会社の人事担当や税理士に相談すると安心です。
まとめ:勤続4年の退職金を最大限活用するには
確認すべき基本事項
まず自社の退職金規程を確認してください。支給対象、計算式、勤続年数の扱い、退職理由による係数などを目で追い、分からない点は人事に書面で確認します。
実務的な手順
- おおよその支給額を試算します(基本給×勤続年数×係数など)。
- 退職理由で係数が変わるならケース別に試算します。
- 税金(退職所得控除)を簡単に確認し、手取り額を把握します。
受け取り方と使いみちの検討
退職金は一時金で受け取るか分割で受け取るかで税負担が変わります。生活防衛資金の確保、住宅の頭金、スキル投資など優先順位を決めて活用計画を立てます。
専門家への相談
金額が大きい場合や税負担が気になる場合は税理士やファイナンシャルプランナーに相談してください。職務経歴や転職計画と老後資金をセットで考えると安心です。
最後に、規程を早めに確認し、複数パターンで試算しておくと判断がぶれません。書面と記録を残して安心して次の一歩を踏み出してください。


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