はじめに
目的
本章では、本記事の狙いと読み方を丁寧に説明します。退職日と給与の締め日(勤怠締め日)は一見小さな違いに見えますが、給与支払額や社会保険の扱い、手続きのタイミングに影響します。本記事はその関係をわかりやすく整理します。
何を扱うか
- 退職日と締め日の基本的な意味
- 月末退職と月途中退職の違いが給与や保険に与える影響
- 退職日を決める際の実務的なポイント
- 退職後の給与・社会保険の精算方法の流れ
具体例を挙げながら、会社員やパート・契約社員など幅広い立場の方に役立つ情報を提供します。
読者の想定と進め方
会社を辞める予定がある方、あるいはこれから退職手続きをサポートする人を主な対象にしています。専門用語は最小限にし、実例や図を想像しやすい説明で進めます。次章からは、「退職日・締め日とは何か?」を順を追って解説します。
注意事項
制度や会社のルールは会社ごとに異なります。本記事は一般的な説明ですので、最終的には勤務先の就業規則や総務担当者に確認してください。
退職日・締め日とは何か?
退職日とは
退職日は会社を正式に辞める日です。最終出勤日や離職年月日と表現されることがあります。手続き上この日が基準になり、雇用保険や退職証明、年金手続きの開始点になります。退職届に記載する日付は、会社と合意した退職日を記入してください。
締め日とは(勤怠締め日・給与締め日)
締め日は給与計算の対象期間の最終日です。会社によって月末締め、15日締め、25日締めなどがあります。勤怠締め日は出勤日数や残業時間を確定する日で、給与締め日は支払対象の期間を確定します。両者が同じ場合もあれば、別々に設定される場合もあります。
支払日との関係
支払日は実際に給与が振り込まれる日です。締め日→計算→支払日という流れで給料が確定します。締め日と支払日の組み合わせで、最終給与の振込時期が変わります。例えば月末締め・翌月25日支給の場合、月の途中で退職してもその月分は翌月25日に振り込まれます。
具体例で分かりやすく
例1: 月末締め・翌月25日支給で9月20日に退職すると、9月分の給与は翌月25日に支払われます。例2: 15日締め・当月末支給で9月10日に退職すると、9月1〜15日分が当月末に支払われます。
注意点(有給・精算)
有給の消化や未払い残業代の精算は退職日と締め日の関係で処理方法が変わります。退職前に締め日と支払日のルールを人事に確認してください。
退職日を月末にする場合・しない場合の違い
社会保険(健康保険・厚生年金)の扱い
月末退職の場合、資格喪失日は原則として翌月1日になります。結果として退職月の社会保険料が給与から差し引かれることがあり、実質的に保険料の支払いが1か月分多くなることがあります。例:2月末で退職すると、3月1日付で喪失扱いになり、2月分の保険料が給与で控除される場合があります。
一方、月途中に退職すると資格喪失日は原則として退職日の翌日です。したがってその月の保険料は発生せず、前月分までの控除で済むケースが多いです。例:2月15日退職なら、2月の保険料は発生せず1月分までの控除で足ります。
扶養や失業保険への影響
社会保険の加入状況は配偶者や家族の扶養認定に影響します。月末退職で喪失日が翌月になると、扶養の要件に変更が生じる可能性があります。失業保険(雇用保険)の受給額や受給開始日も、離職票の発行時期や保険加入期間の扱いで変わるため、最寄りのハローワークで確認してください。
給与計算・有給・引き継ぎ面の注意点
給与の締め日と退職日は切り離して考えます。締め日が月末の会社では月末退職で最終月の給与計算がそのまま反映されやすいです。月途中退職では日割り計算や有給消化の取り扱いに注意が要ります。業務の引き継ぎ期間を確保するため、退職日をいつにするかは給与の手取りや手続きの影響を踏まえて決めてください。
退職日決定のポイント
まず確認すること
- 就業規則に定められた退職申し出期間を確認します(例:1ヶ月前)。会社のルールに従うことでトラブルを避けられます。
業務の引き継ぎ状況を考慮
- 引き継ぎが終わる日を基準にします。短期間で後任が決まらない場合は、余裕を持って退職日を設定すると安心です。具体例:プロジェクトの区切りや月次報告のタイミングに合わせると引き継ぎがスムーズです。
有給休暇と最終給与の関係
- 有給を消化するか買い取りになるかで退職日が変わります。締め日と支払日を確認して、手取り額の差を想定してください。
ボーナス・手当の支給時期
- ボーナス支給月の直前や直後で退職すると、支給対象になるかどうかで受け取り額が変わります。支給条件を人事へ確認しましょう。
社会保険・雇用保険の手続き
- 社会保険は月単位で扱う会社が多いです。退職月の扱いや、資格喪失日を確認して手続きを漏れなく行います。
給与締め日との兼ね合い
- 会社の勤怠締め日に合わせると、最終給与の計算や控除がスムーズになります。例:締め日が毎月25日なら、その直後に退職すると当月分を受け取りやすいことがあります。
決め方の実務ポイント(チェックリスト)
- 就業規則の確認
- 引き継ぎ完了日
- 有給残日数と消化計画
- ボーナスや手当の条件
- 社会保険の資格喪失日
- 給与締め日と支払日
上記を照らし合わせて、会社と相談しながら退職日を決めると安心です。
退職後の給与・社会保険の精算方法
給与の精算方法
退職月の給与は、締め日と退職日が一致しないと按分(出勤日数に応じた支払い)になります。月給制なら日割り計算で支払います(例:月給30万円で15日出勤→15万円)。控除も日割りで調整されます。未消化の有給の扱いは会社により異なるため、事前に確認してください。
社会保険料の扱い
健康保険・厚生年金は最終給与から控除されます。会社によっては複数月分をまとめて差し引くことがあるため、最終の給与明細で確認してください。控除額に心配がある場合は総額と差引後の手取りを照らし合わせてチェックしましょう。
雇用保険の手続き
会社は雇用保険の資格喪失届を、退職日の翌々日から起算して10日以内にハローワークへ提出します。離職票の発行や受け取り時期については会社に確認し、失業給付を受ける場合は必要書類を揃えてハローワークへ相談してください。
確認しておくポイント
- 最終給与明細:支給内訳と控除を必ず確認
- 支払日:支給がいつになるかを確認(翌月扱いになることもある)
- 有給・手当:未消化分や退職手当の扱いを確認
- 手続き書類:雇用保険被保険者証、離職票の受取時期を確認
不明点は総務や人事に早めに問い合わせると安心です。
まとめ:退職日・締め日の選び方と注意点
ポイント
退職日を決めるときは給与の締め日と社会保険の扱い、有給や引き継ぎを総合的に考えます。月末退職は勤めた月の社会保険料や給与の調整で負担が増えることがあります。手取りを優先するなら月途中での退職も検討してください。
チェックリスト
- 給与の締め日と振込日:締め日がずれると未払い分の扱いが変わるので人事・経理と確認します。
- 社会保険と雇用保険:月末在籍だとその月分の保険料負担が発生します。国保や年金の切り替え時期も確認しましょう。
- 有給休暇の残日数:消化か買い取りか会社ルールに従います。早めに申請すると調整しやすいです。
- 引き継ぎの完了:業務が残ると想定外の延長や給与調整が必要になるため、計画的に進めます。
手続きの流れ(簡易)
- 退職希望日を決める(複数候補を用意)
- 人事・経理と締め日・最終給与の確認
- 有給・引き継ぎ計画を作成して上司と調整
- 保険・年金の移行準備を行う
これらを踏まえて、早めに相談と書面での確認を行うと安心です。選び方は人それぞれなので、自分の収入や家計、手続きの負担を比べて決めてください。


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