はじめに
概要
令和7年（2025年）適用の源泉徴収票様式変更や税制改正、年末調整の実務対応について分かりやすくまとめます。特に新設された「特定親族特別控除」や基礎控除の拡充など、企業や個人事業主が年末調整や源泉徴収票の作成で注意すべき点を中心に解説します。
対象読者
給与担当者、人事・総務、個人事業主、税理士の方、また源泉徴収票の受け取り側で内容を確認したい従業員の方に向けています。
この記事の読み方
実務で直面しやすいケースを具体例で示し、チェックリストや記載例で対応を分かりやすくします。次章で様式変更の詳細を説明し、その後に税制改正、年末調整の流れ、記載項目の見方、実務上の注意点とFAQを順に解説します。
源泉徴収票の様式変更と新様式公開
1. 概要
令和7年分の源泉徴収票は、国税庁が新しい様式を公開しています。特定親族特別控除の新設に伴い、記載項目が追加・変更されました。新様式は令和7年12月以降の使用が基本ですが、それ以前の使用も可能です。
2. 主な変更点（具体例）
- 特定親族特別控除欄の追加：控除額を記入する欄が増えました。例）扶養親族に該当する親が対象になった場合、その控除額を明記します。
- 記載順やラベルの整理：従来の欄の名称が分かりやすくなり、金額の算出根拠が見やすくなりました。
3. 使用時期と入手方法
国税庁の公式サイトで最新版の様式が公開されています。令和7年12月以降の発行分は新様式を用いるのが原則ですが、業務の都合でそれ以前に使うことも可能です。ダウンロードして印刷、または対応する給与ソフトのアップデートで対応してください。
4. 実務上のポイントと対応例
- 給与ソフトの更新：ソフトベンダーの案内に従い様式変更に対応してください。
- 社内手続きの周知：従業員に変更点を簡潔に案内し、扶養状況の確認を促してください。
- 例）親を扶養に加える手続きがある場合、新様式の該当欄へ正確に記載します。
5. 注意点
- 新様式でも旧様式の使用に大きな支障はありませんが、最新版の利用で誤解を防げます。
- 国税庁の案内に沿って記載してください。
令和7年度税制改正の主な内容
概要
令和7年度の改正では、税の負担を軽くする方向で複数の控除が見直されました。特に基礎控除の拡充や給与所得控除の見直し、新しい控除の創設が目立ちます。以下で項目ごとにわかりやすく説明します。
基礎控除の拡充
基礎控除が所得に応じて拡充され、最大で95万円まで受けられるようになりました。これにより、所得が低めの方ほど税負担が軽くなります。たとえば、もともと基礎控除だけで課税所得が下がっていた方は、さらに税額が減る可能性があります。
給与所得控除の下限引き上げ
給与所得控除の下限額が引き上げられ、低所得の給与所得者の実効負担が和らぎます。給与収入が少ない方ほど手取りが増えやすくなります。
特定親族特別控除の創設
新たに「特定親族特別控除」が創設されました。具体的には、扶養する近親者への負担が大きい世帯を対象に追加の控除が設けられます。家計の事情によっては、これまで控除対象外だった支出が控除の対象になる場合があります。
扶養控除・配偶者控除の緩和
扶養控除や配偶者控除の所得要件が緩和され、多くの人が控除を受けやすくなります。働き方が多様化する中で、パート収入や一時的な収入のある配偶者でも控除を受けやすくなります。
実務への影響
会社は年末調整や源泉徴収票の様式変更に合わせ、社員への周知と給与計算の見直しが必要です。従業員は扶養や配偶者の状況を改めて確認し、必要書類を準備してください。
年末調整と源泉徴収票の実務対応
概要
年末調整では、改正前の税額を改正後の基礎控除額で再計算し、差額を精算します。社員への還付や徴収が発生することがあるため、正確な処理が必要です。
再計算と差額精算の手順
- 全従業員の所得・控除情報を新基礎控除で再計算します。控除漏れがあると差額が生じます。
- 税額が減った場合は給与で還付、増えた場合は追加徴収または次月以降で調整します。
年末調整システムの確認ポイント
- 基礎控除額や扶養判定の設定を最新に更新します。
- 入力漏れを防ぐため、保険料や扶養の証明書類の有無チェックリストを用意してください。
- サンプル計算で代表者数名分を検証します。
法定調書の電子提出（e-Tax）対応
- 法定調書のe-Tax提出が必須になっています。事前に利用者識別番号やソフト連携を確認し、送信テストを行ってください。
退職所得の源泉徴収票の取扱い
- 退職所得の源泉徴収票の提出対象は令和8年から拡大されますが、令和7年分は従来通りの扱いです。該当年分は従来ルールで作成してください。
誤りがあった場合の対応
- 源泉徴収票に誤りがあれば速やかに訂正票を発行し、必要に応じて法定調書を再提出します。従業員へ変更点を丁寧に説明してください。
源泉徴収票の記載内容と見方
給与・賞与の欄
源泉徴収票の上部には、年間の給与・賞与の総支給額が記載されます。ここは支払金額の合計で、例えば給与が月20万円、賞与が年50万円なら総支給は290万円と表示されます。従業員はまずここで支給の全体像を確認します。
控除欄の見方（基礎控除・配偶者控除など）
基礎控除は全員に適用される控除です。配偶者控除や扶養控除は該当者のみ記載されます。新様式では控除項目が整理され、どの控除が適用されたかが分かりやすくなりました。たとえば扶養1人なら「扶養控除1人分」といった表示になります。
源泉徴収税額の確認
源泉徴収税額欄は実際に差し引かれた所得税の合計を示します。年間の税額が多い場合は、年末調整の結果や申告の必要性を検討します。税額と控除の組合せを照らし合わせると、不自然な記載がないか確認できます。
記入ミスや不明点があったとき
金額や控除の記載に誤りがあれば、まず給与担当者に確認してください。証明書類（扶養控除等申告書など）を提示すると早く解決します。
従業員に説明する際のポイント
・まず総支給額と源泉徴収税額を示す。
・次にどの控除が適用されたかを具体例で説明する。
・不明点は書類を基に確認するよう促す。
これらを丁寧に伝えると、従業員が自分の税務状況を理解しやすくなります。
実務上の注意点とよくある質問
実務上の注意点
- 使用様式の判断：令和7年11月30日以前の年末調整では、令和6年分の様式を補正して使えます。新様式を使っても差し支えありません。どちらを使うかは社内で統一してください。
- 年度をまたぐ事務処理：法定調書の提出は令和8年1月です。年末調整は12月中に終えるのが通常でも、法定調書提出は翌年扱いになるため、締め切りや帳票保存に注意してください。
- システム確認：給与計算ソフトや年末調整システムが最新の税制改正に対応しているか、事前にベンダーに確認し、アップデートやパッチ適用を行ってください。テスト出力で様式や欄のズレを確認します。
- 事例対応：退職者や入社の時期によって源泉徴収票の扱いが変わります。例えば、年内に退職した社員の源泉徴収票は年末調整と一緒に発行しますが、年明けに事務処理が残ることがあるため日程を明確にしておきます。
よくある質問（Q&A）
Q1: 旧様式を補正して使ってもよいですか？
A: はい。有効期間内であれば補正して使えます。ただし社内で統一し、提出先の指定がある場合はそちらに合わせてください。
Q2: 法定調書の提出はいつですか？
A: 令和8年1月が提出期限です。年をまたぐ作業になるため、スケジュールを早めに確定してください。
Q3: ソフトが未対応の場合はどうする？
A: ベンダーへ早めに問い合わせ、手動でのチェックリストを作成してミスを防ぎます。最終的には紙で補正する方法も検討してください。
Q4: 訂正が必要になった場合は？
A: 速やかに訂正手続きを行い、訂正理由を記録します。法定調書の訂正方法も確認してください。
Q5: 社内連絡で気を付けることは？
A: 従業員へ提出書類の期限と必要書類を明確に伝え、回収状況を管理してください。
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