はじめに
目的
この記事は、退職届の「受理」について基礎から実務まで分かりやすく説明します。退職の意思表示が会社にどう伝わり、どのように扱われるかを理解し、トラブルを避けるための手続きを知ることが目的です。
対象読者
・退職を考えている方
・退職手続きで不安がある方
・人事担当者や上司で適切な対応を知りたい方
本記事で得られること
・退職届提出から受理までの流れが分かります
・受理が必要な理由と法的なポイントを理解できます
・会社が受理しない場合の対処法や、その後の手続きを把握できます
章の構成
第2章以降で「受理とは何か」「手続きの流れ」「トラブル対処」「受理後の処理」などを順に解説します。実務で使える具体例や注意点も紹介しますので、順に読み進めてください。
退職届の「受理」とは何か?
退職届の受理とは
退職届の受理とは、従業員が提出した退職届を会社側(上司や人事)が正式に受け取ることを指します。受理後、会社は記載された退職日や理由を確認し、必要な手続きを進めます。
具体的な受け取り方と証拠
- 書面で手渡す:上司や人事に直接渡し、受領印や受領書をもらうと安心です。例:人事担当に退職届を手渡し、受領印を押してもらう。
- メールや社内システム:送信履歴や返信が証拠になります。例:退職届をメールで送信し、受信確認の返信を受け取る。
受理後の会社の対応
会社は受理を受けて、退職日の確認、引き継ぎ計画の作成、給与や各種手続き(年金・保険など)の準備を始めます。可能なら期日や手続きの流れを文書で確認してください。
よくある誤解と注意点
- 受理=退職の可否ではありません。退職については当人の意思表示が重要ですが、受理の有無で手続きが進む点は押さえておきましょう。
- 受理の証拠は必ず残すことをお勧めします。口頭だけだと後で行き違いが生じやすいです。
退職届提出から受理までの一般的な流れ
1. まず直属の上司に意思を伝える(口頭)
退職の意思はまず口頭で直属の上司に伝えます。誠実に理由と希望する退職日を伝えると、会社側も対応を調整しやすくなります。例えば「来月末で退職したい」といった具合に具体的に話すとよいです。
2. 正式な退職届の作成・提出
会社の就業規則に従い、退職届を作成します。書式が指定されている場合はそれに従い、ない場合は氏名・退職日・署名を明記します。提出先は人事または直属の上司です。封筒やメールの件名も丁寧にします。
3. 会社側の確認と受理の手続き
人事や上司が内容を確認します。受理すると受領印や受理通知(メールや書面)で知らせるのが一般的です。確認に数日かかることがあるため、余裕を持って提出するのが安心です。
4. 社内通知と引き継ぎ準備
受理後は人事が関係部署へ通知し、業務の引き継ぎや最終出勤日までの手続きに入ります。引き継ぎ資料を作り、担当者とミーティングを重ねるとスムーズです。
5. 具体的な一例(イメージ)
口頭で相談→1〜4週間後に退職届提出→受理確認後、2〜4週間で引き継ぎ完了、という流れがよくあります。会社の規模や業務内容で前後しますので、早めに相談すると安心です。
退職届の受理が必要な理由と法律上のポイント
退職届は「意思表示」である
退職届は法的には本人の退職の意思表示です。会社が受け取らないと言っても、届出が会社に到達すれば効力が認められます。口頭でも書面でも意思が伝われば成立しますが、後日のトラブルを避けるため書面や記録を残すと安心です。
退職時期――2週間前の原則
民法上、無期雇用の正社員は退職の意思を2週間前に伝えれば退職できます。就業規則に1カ月前などの規定があっても、法律上は2週間前が優先します。会社は原則として退職を拒めません。
受理しない場合の法律上の扱い
会社が「受理しない」と言っても、退職の効力は生じます。到達の証拠が重要です。届出の写しやメール、受領を示す記録を保管してください。
実務上のポイント
重要な場面では内容証明郵便やメール送信の記録を残すと有効です。引継ぎや有給消化などは別途交渉になります。円満に進めるため、事前に上司や人事と話し合い、証拠を用意しておくことをおすすめします。
退職届が受理されない場合の対処法
会社が退職届を受理しないときは、意思表示を確実に残し、記録を整えることが重要です。以下の方法を順に試してください。
1. 内容証明郵便で送付する
退職届のコピーを内容証明郵便で送ると、いつ誰にどんな内容を送ったかが公的に証明されます。郵便局で手続きし、受取人に到達した時点で意思表示が成立します。送付の際は控えを必ず保管してください。
2. 上司の上司や人事に相談する
直属の上司が受理しない場合は、上位の管理者や人事部に同じ書面を提出します。直接持参する際は、受領印や受領日時を記録してもらうと安心です。メールで送る場合は送信履歴を保存します。
3. 労働基準監督署や弁護士に相談する
社内で解決しない場合は、労働基準監督署に相談すると無料で助言を受けられます。必要なら弁護士に相談して、法的手続きや交渉を依頼してください。
4. 記録を残す
やり取りの日時、場所、相手の氏名、内容のメモ、メールや書面のコピーは必ず残します。証人がいる場合は名前を控え、可能なら証言を頼みます。
5. 退職日までの対応
退職意思を示した後も、就業規則に基づき引継ぎや出勤対応を行いましょう。会社が不当な扱いをする場合は、上記の相談窓口に早めに連絡してください。
退職届受理後に会社・従業員が行うべき手続き
会社側の手続き
- 社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
- 退職日を基準に保険の資格を喪失するため、事業主が速やかに手続きを行います。健康保険や厚生年金、雇用保険の届出が必要です。窓口やオンラインでの提出期限を確認してください。
- 貸与品(社員証、制服、PCなど)の回収
- 回収リストを作成し、受領印や署名をもらいます。PCはデータのバックアップと個人情報の消去を確認します。
- 関係部署への通知・引き継ぎの調整
- 総務、経理、IT、担当部署へ退職情報を伝え、引き継ぎ日程を調整します。取引先への連絡も忘れずに。
- 離職票や源泉徴収票など書類の準備
- 離職票はハローワークの失業給付申請に必要です。源泉徴収票は年末調整や次の勤務先で必要になるため、正確に作成して渡します。
従業員側の手続き
- 引き継ぎ業務の実施
- 業務手順書、関係者リスト、未完了タスクのまとめを作り、引き継ぎ相手と口頭・書面で確認します。重要なパスワードやアクセス権も明示します。
- 貸与品の返却
- 返却日を守り、受領印を受け取ります。私物と会社の物を分け、忘れ物がないよう確認します。
- 必要書類の受け取りと手続き
- 離職票、年金手帳、源泉徴収票などを会社から受け取ります。失業給付を受ける場合は離職票を持ってハローワークで手続きを行ってください。
- 最終給与・有給の精算確認
- 未払い給与や未消化の有給休暇がある場合は、清算方法と支払日を会社と確認します。
備考・実務上の注意点
- 重要書類や貸与品は記録を残すと後でトラブルになりにくいです。IT機器のデータ扱いは社内ルールに従い、安全に処理してください。
よくあるトラブル・注意点
受理を理由に引き止められた場合
会社が「受理しない」と言っても、法律上は退職の意思表示を拒めません。実務では引き止めや交渉が起きやすく、口頭でのやり取りだけだと証拠が残りません。対処法としては、必ず書面で退職届を提出し、受領印や受領メール、送付記録(内容証明や配達記録)を残してください。
口頭だけだと後で困る理由
口頭だけだと「言った・言わない」の争いになります。具体例として、上司が「辞めると言っていない」と主張するケースがあります。対策は控えを作ることです。退職届の控えを1通受け取り、送付なら配達証明のある方法を使いましょう。
退職日をめぐる争い
就業規則と会社の主張が異なる場面があります。民法上は一般に2週間前の意思表示で退職できます(事業の種類や契約で別途定めがある場合を除く)。退職日について争いがある場合は、提出時に希望日を明記し、証拠を残すことが重要です。
給与・有給・保険などの手続きの注意
最終給与や未消化の有給の扱い、社会保険や雇用保険の手続きで誤解が起きやすいです。具体的にいつまでの給与が支払われるか、有給は買い取りか消化かを確認して書面に残してください。
引き継ぎ・備品返却
引き継ぎの範囲と返却物を明確にします。貸与品は返却時に相手の署名をもらい、引き継ぎはメール等で記録を残すと安全です。
不利益取扱いやハラスメントがあった場合
退職を理由に不利益な扱いを受けたら、日時や内容を記録して相談窓口(社内の相談窓口、労働基準監督署、労働相談センターや弁護士)へ相談してください。証拠があるほど対応が進めやすくなります。
上記は実務でよく起きるトラブルと注意点です。書面でのやり取りと記録の保全を心がければ、争いを避けやすくなります。
まとめ:円満退職のためのポイント
重要ポイントの要約
- 退職届は必ず書面で提出し、受理の有無を確認または受領の証拠を残します。
- 受理されない場合は内容証明郵便などで退職の意思を証明します。
- 会社・従業員ともに必要な手続きを正しく進め、トラブルを未然に防ぎます。
具体的なチェックリスト
- 退職届を自分用に控えを残して提出します(押印・署名・日付を忘れずに)。
- 受領書やメールで受理の確認を受け取ります。受け取れないときは配達記録や郵便記録を残します。
- 退職日、引継ぎ方法、最終出勤日を明確にします。
- 会社側は離職票や保険手続きを速やかに行います。
トラブル予防のコツ
- 退職の意思は早めに伝え、口頭だけでなく書面でも残します。
- 感情的にならず、冷静に引継ぎと手続きを進めます。
- どうしても受理されない場合は労働基準監督署や弁護士に相談します。
最後に、記録を丁寧に残すことが円満退職の鍵です。手続きを一つずつ確実に進めてください。


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