はじめに
本資料の目的
本資料は、源泉徴収票と月ごとの関係をわかりやすく説明することを目的としています。源泉徴収票に何が書かれているか、どの期間の情報なのか、月ごとの税額をどう計算するかを順を追って解説します。給与や税金の管理、確定申告や転職時の手続きで役立つ実務的なポイントも盛り込みます。
なぜ知っておくべきか
源泉徴収票は一年間の給与と税額の「まとめ」です。例えば「1月は税金が少なかったのに年末にまとめて引かれていた」と感じることがあります。そうした疑問は、月ごとの計算や対象期間を理解すると納得できます。正確に把握すると確定申告や年末調整でのミスを減らせます。
読者想定と使い方
会社員、アルバイト、退職・転職を控えた方、経理担当者などが対象です。各章は段階的に読み進められる構成ですので、まずは本章で全体像をつかんでください。具体例や注意点は後の章で丁寧に説明します。
この章で得られること
本章を読めば、本資料の目的と構成、読む際のポイントがつかめます。次章以降で対象期間・記載内容、月ごとの計算方法、実務上の注意点などを詳しく説明します。
源泉徴収票の対象期間と記載内容
概要
源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの1年間に支払われた給与・賞与と、その年に徴収された源泉所得税を集計して記載する書類です。会社が年末調整を行った後や退職時に発行します。個人の年間の税額計算に使う重要な書類です。
対象期間
対象期間は暦年(1月~12月)です。会社による会計年度や年度(例:4月~翌3月)ではありません。したがって、同じ年に転職や退職があった場合でも、それぞれの勤務先から暦年ごとの源泉徴収票を受け取ります。
主な記載内容
- 支払者(会社)の名称・所在地
- 被保険者(従業員)の氏名・マイナンバーの一部など(場合により)
- 支払金額(年間の給与・賞与の合計)
- 控除対象となる社会保険料や扶養控除等の控除額
- 源泉徴収された所得税の合計(復興特別所得税を含む)
月ごとの内訳はあるか
源泉徴収票には月ごとの内訳は記載されません。月別の給与や源泉税を確認したい場合は、給与明細や賃金台帳を確認してください。源泉徴収票は年間の合計を示す書類です。
交付時期と再発行
通常、会社は翌年1月末までに源泉徴収票を従業員へ交付します。退職時は退職日に交付されることが多いです。記載ミスがあれば会社に訂正を依頼し、再発行してもらってください。複数の勤務先がある場合、それぞれから発行されます。
月ごとの源泉徴収税額の計算
基本の考え方
毎月の源泉徴収税は、標準的には「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使って決めます。支給額から社会保険料や非課税の通勤手当を差し引いた後の金額を税額表に当てはめます。
給与から差し引く主な項目
- 社会保険料(健康保険・厚生年金など)
- 雇用保険料
- 非課税の通勤手当
これらを差し引いた額が源泉徴収の基礎になります。
甲欄・乙欄の違い
扶養控除等申告書を提出しているかで税額表が変わります。申告書を出している人は甲欄、出していない人は乙欄を使います。甲欄は扶養の人数に応じた控除が反映されます。
計算手順(簡潔)
- 総支給額を確認する
- 社会保険料などを差し引き課税対象額を求める
- 扶養控除等申告書の有無で甲・乙を判断する
- 月額表に当てはめて税額を確認する
具体例
月給30万円、社会保険料4万円、通勤手当非課税2万円、扶養申告ありの場合:
課税対象額=300,000−40,000=260,000。月額表の甲欄で260,000に対応する税額を確認します。
実務上の注意点
- 賞与や臨時手当は別計算になることが多いです
- 年末調整で過不足が清算されるため、月ごとの源泉税はあくまで仮の税額です
- 途中入社・退職がある月は税額表の扱いに注意してください
源泉徴収票に月ごとの記載はあるのか?
結論
源泉徴収票には月ごとの給与や税額の内訳は記載されていません。記載されるのは「1年間の支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計」「源泉徴収税額」など、年間の合計値です。
月ごとの明細が必要な場合
月ごとの支給額や控除、毎月差し引かれた源泉所得税は、給与明細書(給与ソリューションや紙の明細)で確認できます。給与明細には基本給、手当、社会保険料、雇用保険、源泉徴収された税額などが明記されています。
具体例
たとえば毎月の手取りや控除を確認したい場合、源泉徴収票は年間合計(例:支払金額360万円、源泉徴収税額○○円)しか示しません。各月の税額や控除を知るには、各月の給与明細を合算してください。
実務上のポイント
- 年末調整で金額が調整されることがあり、月ごとの合計と源泉徴収票の金額が一致しない場合があります。
- 月ごとの明細が見つからない場合は、勤務先に給与明細の再発行を依頼してください。
- 確定申告や各種手続きで月別の確認が必要なら、給与明細や銀行の入金履歴が役に立ちます。
必要なら、給与明細の見方や年末調整のしくみについても詳しく説明します。
実務上の注意点
12月分給与の扱い(締め日と支払日)
税法上は「支払日」を基準に課税年度を判断します。たとえば「12月締め・翌年1月支払」の場合、12月分の給与は支払日が翌年なので翌年の源泉徴収票に計上されます。年末調整で12月に処理するかどうかは支払日を基に判断するため、給与計算担当は締め日と支払日を混同しないようにしてください。
退職時の源泉徴収票発行
退職した従業員については、会社は退職後1か月以内に源泉徴収票を発行する義務があります。転職先に提出する書類なので、受け取る側は早めに前職に請求し、届かない場合は記録を残して再度依頼してください。
実務上の注意点と対応策
- 給与明細や振込日を必ず保存する。年またぎの支払がある場合は明細に支払日を明示すると誤解が減ります。
- 年末調整との整合性を確認する。未払給与があると調整漏れが発生するため、未払分は別途処理するルールを定めます。
- 源泉徴収票の誤りに気づいたら速やかに訂正を依頼する。会社側は再発行に対応してください。
- 退職時の発行が遅れる場合は、前職への連絡記録を残し、必要なら税務署や専門家に相談すると安心です。
社内運用の例(簡単な流れ)
- 勤怠の締め日を確定
- 支払日を確認して年度判定
- 年末調整の対象を確定
- 源泉徴収票を期限内に発行
この流れをマニュアル化し、担当者間で共有するとミスが減ります。
源泉徴収票の主な記載項目
概要
源泉徴収票には、1年間の給与や賞与の支払状況と、そこから差し引かれた税や控除の情報がまとまって記載されます。年末調整や確定申告で必要になる大切な書類です。
支払金額(年間給与・賞与の合計)
1年間に会社から支払われた総額が記載されます。たとえば給与が500万円、賞与が100万円なら支払金額は600万円です。給与明細の合計と照らし合わせて確認してください。
給与所得控除後の金額
給与所得控除を差し引いた後の金額です。課税対象となるおおよその金額が分かります。控除の計算式は年収により異なりますが、源泉徴収票では結果だけ確認できます。
所得控除の額の合計(社会保険料控除、扶養控除等)
社会保険料、生命保険料、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などの合計が載ります。個別の内訳も項目ごとに記載されていますので、該当する控除が反映されているか確認しましょう。
源泉徴収税額(年間で天引きされた所得税の合計)
1年間に給与から差し引かれた所得税の合計です。月ごとの天引き額の合計と一致するか、年末調整後の金額を確認してください。
会社情報・本人情報
支払者(会社)の名称・住所・法人番号、受給者(本人)の氏名・マイナンバー欄(またはその一部)などが記載されます。問い合わせの際に必要な情報です。
その他の欄
年末調整に関するチェック欄、控除対象扶養親族の人数、源泉徴収票の交付年月日なども載ります。疑問があれば人事・経理に相談してください。
よくある質問とポイント
源泉徴収票について、よく寄せられる疑問と実務で役立つポイントを分かりやすく整理しました。
Q1: 月ごとの内訳が知りたい場合は?
給与明細書(毎月配られる明細)を確認してください。源泉徴収票は年間の合計額しか記載しません。給与明細には「支給額」「各種控除」「源泉徴収税額」が月別で載るのが一般的です。明細を紛失したら、所属部署の人事・給与担当に再発行を依頼しましょう。
Q2: 源泉徴収税額はどう決まる?
毎月の支払額、扶養親族の数、社会保険料の控除額などをもとに税額表で計算します。臨時手当や賞与は別計算になることがありますので、金額が変わる理由はここにあります。
Q3: 源泉徴収票はいつもらえる?
年末調整後(通常は12月〜翌年1月頃)に会社から交付されます。年の途中で退職した場合は退職時に受け取ります。
Q4: 訂正や再発行はどうする?
まず会社の人事・給与担当に連絡してください。誤りがある場合は会社が訂正し再発行します。会社で対応できないときは最寄りの税務署に相談してください。
ポイント:給与明細は大切に保管してください。扶養の変更や社会保険の控除が税額に影響しますので、変更があれば速やかに届け出ると安心です。
まとめ
ここまでの内容を簡潔に整理します。
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源泉徴収票には月ごとの税額は記載されていません。記載されるのは1年間(暦年:1月〜12月)の合計額です。
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月ごとの源泉徴収税額や控除額は、給与明細書で確認できます。給与明細は月ごとの内訳が分かるため、月別の金額を把握したいときは明細を見てください。
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発行時期は主に年末調整後と退職時です。年末調整が終わると会社が従業員に交付します。退職時には退職日までの内容を反映したものが交付されます。
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実務上の注意点:源泉徴収票の合計額に誤りがあれば、会社に確認・訂正を依頼してください。月別の確認が必要なときは、必要な月の給与明細を準備して照合します。
最後に一言。源泉徴収票は年間の所得と所得税の目安を示す大切な書類です。給与明細とあわせて保管し、税金や年末調整で疑問があれば早めに会社や税務署に相談してください。


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