はじめに
この章の目的
本記事の目的は、退職手続きを総務部へメールで連絡する際の基本と実務をやさしく伝えることです。退職届・退職願をメールで送ってもよいか、総務の役割、メール送信時のマナーや注意点、具体的な例文、総務の返信例、社内外への挨拶メールまで、実務で役立つ情報を網羅します。
誰に向けているか
転職や家庭の事情で退職を考えている方、担当として退職対応を行う総務・人事の方に向けて書いています。初めて退職手続きをする人でも分かるよう、具体例を交えて説明します。
本記事の使い方
まず第2章で「メールでの提出は可能か」を確認してください。続いて総務の流れやマナーを学び、例文を参考にメールを作成すると手続きがスムーズになります。実際のやり取りでは社内ルールや上司の指示を優先してください。
注意点
会社ごとに手続きやルールは異なります。ここで紹介するのは一般的な目安です。必要に応じて就業規則や総務に確認をとってください。
退職届・退職願はメールで送っても大丈夫?
はじめに
退職届・退職願をメールで送ってもよいか不安になる方が多いです。本章では、法的な位置づけと実務上の注意点をわかりやすく説明します。
法的な扱い
労働基準法上、退職の意思表示は原則として2週間前に効力が発生します。提出方法に法律上の制限はなく、口頭・書面・メールいずれでも成立します。ただし、会社ごとの規則が優先されます。
会社のルールと慣例
多くの会社は就業規則で書面提出や手渡しを求めます。就業規則に明記がある場合は従う必要があります。まず就業規則や総務に相談してください。
メール提出が認められる代表的な事情
- 病気やケガで出勤困難な場合
- 災害や事故で移動できない場合
- 転勤・遠隔地在住など物理的に来社が難しい場合
これらはやむを得ない事情として理解されやすいです。
実務上のマナー(手順と注意点)
- まず上司や総務に事情を説明し、了承を得る
- メールには退職日や理由(簡潔に)、引継ぎの意思を記載
- 会社から署名入りの書面提出を求められたら速やかに対応
- 送信後は受領確認を依頼し、記録を残す
一方的な通知は避け、対話を重視することが社会人としての基本です。
退職手続きにおける総務部の役割と流れ
総務部の役割
総務部(または人事部)は退職の意思表示を受けた後、実務を一元的に進めます。退職届・退職願の受領と内容確認、雇用保険・社会保険の資格喪失手続き、最終出勤日の調整や記録管理が主な役割です。
主な業務(項目別)
- 受領・確認:退職届の到着日、退職日、理由を確認し署名・押印の有無をチェックします。
- 保険・年金手続き:雇用保険や社会保険の資格喪失や資格取得手続きの代行を行います。
- 必要書類の準備:離職票、源泉徴収票、各種証明書を作成・交付します。
- 備品回収・アカウント処理:PCや社員証の回収、メール・社内システムの利用停止を手配します。
- 社内外への連絡:関係部署や取引先への通知や引き継ぎ調整を行います。
- 記録保管:メールや書類でやり取りを残し、合意内容を証拠化します。
手続きの流れ(簡潔)
- 退職届受理と記録
- 面談で最終確認(引継ぎや期日)
- 必要書類の準備と案内
- 備品回収・アカウント停止
- 各種公的手続きの実行
- 書類交付と社内通知
メールで残す際のポイント
- 件名に「退職届受理」や氏名・退職日を明記します。
- 重要な確認はメールで行い、送受信を保存してください。
注意点
個人情報や最終給与、有給の精算は正確に扱います。双方の合意を明確にし、誤解を避けるために期限や手順を明示してください。
退職届・退職願をメールで送る際のマナーと注意点
件名の書き方
件名は一目で目的が分かるようにします。例:「退職届(山田太郎)」「退職願(山田太郎)」。日付を入れると管理しやすくなります。
宛先とCC
宛先は直属の上司を基本にします。総務(人事)は必ずCCに入れるか、会社の指定があればそれに従います。チーム全員への一斉送付は避けます。
退職理由の書き方
退職理由は「一身上の都合」で差し支えありません。詳細は口頭や個別の面談で伝えるのが望ましいです。感情的な表現は避け、簡潔に記載します。
本文の構成と文例ポイント
開頭で挨拶と要件を述べ、退職日(希望日)と届出の意志を明確にします。事前相談の有無や面談希望を添え、在職中の感謝を一言入れます。署名には氏名、部署、連絡先を忘れずに記載します。
添付ファイルの注意
退職届を添付する場合はPDFが望ましいです。会社指定のフォーマットや紙での提出が必要なら、その旨を明記し、紙の提出日を約束します。署名は手書き署名をスキャンしてPDFにするか、会社の指示に従います。
送信のタイミングと保存
業務時間内に送信するのがマナーです。送信後はメールの送受信履歴と添付ファイルを保存し、トラブル防止に役立てます。必要なら配達確認や受領の返信を依頼します。
退職届・退職願メールの具体例文
例1(ファイル添付型)
件名: 退職届(山田太郎)
本文:
お世話になっております。営業部の山田太郎です。
添付ファイルに退職届を送付いたします。退職日は2025年6月30日を予定しております。
これまで大変お世話になり、心より感謝申し上げます。引き継ぎにつきましては、別途担当者と調整の上、速やかに対応いたします。
お手数ですが、受領のご確認をいただけますと幸いです。
署名:
山田太郎
営業部
内線: 1234
※添付ファイル名の例: 退職届_山田太郎.pdf。PDFで添付すると開封しやすくなります。
例2(メール本文直接型)
件名: 退職届(山田太郎)
本文:
お世話になっております。営業部の山田太郎です。
私事で恐縮ですが、一身上の都合により2025年6月30日をもって退職いたします。
在職中は多大なるご指導を賜り、誠にありがとうございました。引き継ぎについては、○○さんに業務を引き継ぐ予定です。詳細は別途ご相談いたします。
お手数ですが、退職手続きに関するご確認と受領のご連絡をお願い申し上げます。
署名:
山田太郎
営業部
連絡先: yamada@example.com
—
補足: 上長と総務の双方へ送る場合はCCに総務のメールアドレスを入れてください。退職日や引き継ぎ内容は明確に記載すると手続きがスムーズになります。
総務側の返信・対応マナー
受領と挨拶
退職届・退職願のメールを受け取ったら、まずは受領の一報を短く伝えます。私的な理由に踏み込まず「ご連絡を受け取りました。承知しました」のように礼儀正しく応答します。
返信で伝えるべき項目
- 退職日(メールに記載がない場合は確認)
- 最終出社日と有給消化の扱い
- 提出が必要な書類(退職届の原本、身分証、貸与物のリストなど)
- 引継ぎの流れと担当者の連絡先
- 返却物の日時・方法(貸与品、IDカード、社用PC等)
情報は箇条書きで明確に伝えます。必要書類は期限と提出方法を明記してください。
言い回しのポイント
個人的な事情を詮索しない配慮を示しつつ、事務連絡は具体的に行います。例:「退職のご連絡、承りました。手続きについて以下の通りご案内します。」と始めると分かりやすくなります。
トーンと対応の速さ
返信は速やかに行い、丁寧で落ち着いた文面を保ちます。期限がある手続きは期限を強調し、フォローアップを約束します。
例(短い返信)
「ご連絡ありがとうございます。退職の件、承知しました。退職日は○月○日でよろしいでしょうか。以下の書類を△月△日までにご提出ください:…」
以上を踏まえて、相手の立場に配慮した上で、事務的に必要な情報を漏れなく伝えることが大切です。
退職に関連する社内外メール
送るタイミング
社内関係者への挨拶メールは最終出勤日の数日前(2〜5日前)が最適です。業務の引継ぎや調整が残る場合、早めに周知して混乱を防ぎます。
社内向け挨拶メールのポイント
- 宛先:直属の上司・チーム全員。必要に応じて総務をCC。
- 内容:退職日、感謝の言葉、引継ぎ担当者と主要な引継ぎ資料の所在、個別に相談したい人への誘導。能動的に引継ぎを進める姿勢を示します。
- 例文の一文:”○月○日をもちまして退職いたします。今後の担当は□□が担当します。詳細は共有フォルダにあります。”
社外(取引先)向け挨拶のポイント
- 要点:感謝、今後の窓口、引継ぎ担当者の連絡先、業務継続の依頼。短く丁寧にまとめます。
退職後のメール整理・転送設定
- 自動返信:退職日と新しい窓口(担当者名・メール・電話)を明記します。個人的な連絡は別途案内する旨を記載します。
- 転送設定:個人情報や私的なメールは処理して、業務連絡のみ適切に転送します。
総務の管理ポイント
- 自動返信文の確認、アカウント凍結日、メールアーカイブの保存期間、外部連絡先の引継ぎ確認を行います。担当窓口を明確にして、取引先が困らないよう配慮します。


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