はじめに
概要
この記事は、契約社員に関する源泉徴収票の仕組みや発行義務、取り扱いの注意点をわかりやすく解説します。契約社員でも正社員と同様に源泉徴収票の発行対象であり、退職時や年末調整後には必ず受け取る必要がある点を丁寧に説明します。
この記事で分かること
- 源泉徴収票が何のための書類かをかんたんに理解できます。具体例を用いて説明します。
- 契約社員がいつ・どのように源泉徴収票を受け取るべきかが分かります。
- 発行されない場合の対処法や、会社に確認するときのポイントを整理します。
読み方と進め方
まず第2章で源泉徴収票の基本を押さし、第3章〜第5章で契約社員特有の扱いと問題点を確認します。第7章では実際の書類の見方を示しますので、手元に源泉徴収票がある方は一緒に見てください。やさしく丁寧に案内しますので、安心して読み進めてください。
源泉徴収票とは何か
概要
源泉徴収票は、会社が従業員に支払った年間の給与総額と、給与から天引きした所得税の額を証明する書類です。給与や賞与、社会保険料などの控除額が記載され、年末調整や確定申告、転職時の年収確認、ローンや賃貸契約で提出を求められます。
誰が作るか・誰が受け取るか
会社(給与を支払う者)が作成して発行します。正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなど給与を受け取る人全員が対象です。受け取ったら自分で保管します。
主な記載項目(具体例を交えて)
- 支払金額:1年間に会社から受け取った給与合計(例:300万円)
- 源泉徴収税額:天引きされた所得税(例:15万円)
- 社会保険料等の控除額:健康保険・厚生年金など
- 支払者(会社)と受給者(従業員)の氏名・住所
いつ必要になるか
- 年末調整や確定申告をするとき
- 転職先に年収証明を出すとき
- 住宅ローンや賃貸契約で所得証明が必要なとき
受け取り・再発行について
通常は翌年1月に会社から渡されます。紛失した場合は勤務先の総務・人事に再発行を依頼してください。会社が保有する源泉徴収簿を元に作成します。
源泉徴収票の発行対象者
対象となる人
源泉徴収票は、給与や賞与などの「給与所得」を受け取った人全員が対象です。雇用形態に関係なく発行されます。具体例としては、正社員、契約社員、パート、アルバイト、日雇い派遣などが含まれます。短期間の勤務や月数回のアルバイトでも、給与が支払われれば原則として発行されます。
法的な根拠と交付期限
所得税法第226条に基づき、給与を支払った事業者は源泉徴収票を交付する義務があります。退職者には退職後1か月以内に交付しなければなりません。また、年末調整を行った後はその結果を反映した源泉徴収票が交付されます。
複数の勤務先がある場合
複数の勤務先がある場合は、それぞれの勤務先が支払った給与について個別に源泉徴収票を発行します。確定申告を行う際は、各勤務先から受け取った源泉徴収票を揃えると手続きがスムーズです。
受け取れないと感じたら
源泉徴収票が届かない場合は、まず勤務先の総務や給与担当に問い合わせてください。それでも解決しない場合は、最寄りの税務署に相談することをお勧めします。書面で依頼や確認を残すと後の手続きが楽になります。
契約社員に関する源泉徴収票の取り扱い
概要
契約社員は有期労働契約に基づき給与を受ける労働者です。給与を支払う側は、正社員と同様に源泉徴収を行い、源泉徴収票を交付する義務があります。雇用形態の違いで発行対象から外れることはありません。
発行時期と退職時の取り扱い
- 年末調整が行われる場合:年末調整後に翌年1月末までに交付されるのが一般的です。会社の勤務先が年末調整を代行します。
- 退職した場合:退職から1か月以内に交付する義務があります。例えば3月末で退職したら、原則4月末までに受け取れます。
実務上の注意点
- 複数の勤務先がある場合は、それぞれの勤務先が源泉徴収票を発行します。確定申告の際には全ての源泉徴収票を揃えてください。
- 派遣や請負といった形態で給与計算が異なる場合でも、給与を直接受け取っていれば原則発行されます。
受け取り後の対応
- 支払金額や源泉徴収税額が記載と合っているか確認してください。誤りがあれば勤務先(総務・給与担当)に早めに連絡しましょう。
- 大切に保管してください。確定申告や住宅ローン申請などで必要になることがあります。
源泉徴収票が発行されないケースとその対処法
発行されない主な理由
- 事務手続きの遅れや入力ミスで作成が漏れることがあります。
- 退職や異動のタイミングで処理が後回しになる場合があります。
- 業務委託(請負・フリーランス)は源泉徴収票の発行義務がないため、誤解で発行されないことがあります。
まず行うこと:会社へ確認・請求する
- 経理や担当部署にメールや書面で請求し、日時を記録してください。口頭だけだと証拠になりにくいです。
- 発行が遅れる理由といつ発行するかを明示してもらいましょう。
会社が応じない場合の相談先
- 最寄りの税務署:源泉徴収票は税務上の書類なので相談できます。確定申告時の対応も教えてもらえます。
- 労働基準監督署:給与の未払いなど、労働条件に関する問題がある場合に相談します。
業務委託(報酬支払)の場合
- 会社は源泉徴収票を発行する義務がありません。代わりに「報酬、料金等の支払調書」が発行されます。
- 支払調書がない場合は、請求書や入金記録を保管して確定申告で収入を申告してください。
保管すべき書類と確定申告の準備
- 請求書、給与明細、振込記録、やり取りのメールを保存してください。
- 年末に源泉徴収票が間に合わない場合は、これらをもとに確定申告で正しい税額を申告できます。税務署に相談すると手続きの流れを教えてくれます。
契約社員と正社員・他の雇用形態との違い
概要
契約社員は契約期間が定められた有期雇用です。正社員は期間の定めがない雇用が一般的で、雇用の継続性や福利厚生の面で違いが出ます。ただし、給与支払いや源泉徴収の扱いは基本的に同じです。以下で具体的に説明します。
1) 雇用期間と契約の性質
- 契約社員:雇用期間や業務範囲を契約書で明確にします。期間満了で契約が終了するため、更新の有無が重要になります。
- 正社員:基本的に期間の定めがなく、長期的な採用を前提にしています。
2) 給与・税金・源泉徴収
- 給与の支払い方法や所得税の源泉徴収は、契約社員も正社員も同じ扱いです。会社が給与から所得税を差し引き、年末調整や源泉徴収票の発行を行います。
3) 社会保険や手当の違い
- 社会保険の加入は勤務時間や契約条件で決まります。一定の労働時間を超えれば契約社員でも加入対象になります。手当や賞与、退職金の有無は契約内容で変わります。
4) 雇用の安定性と法的保護
- 契約社員は契約期間満了で退職扱いになることが多く、継続雇用の期待は契約次第です。一方で、不当な解雇や労働条件の一方的変更に対しては労働基準法等の保護が適用されます。
5) パート・アルバイト・業務委託との違い
- パート・アルバイトも雇用関係にあり、給与からの源泉徴収と源泉徴収票の発行対象になります。業務委託(請負・委任)の場合は雇用関係にないため、給与ではなく報酬扱いになり、原則として支払調書が使われます。業務委託先が従業員に近い指示を出すと労働者性が問われることがあります。
実例
- 期間1年の契約社員Aさん:給与から所得税を差し引かれ、年末には源泉徴収票が発行されます。契約が更新されなければ期間満了で退職扱いです。
- フリーランスBさん(業務委託):会社から報酬を受け取り、源泉徴収票ではなく支払調書や請求書で処理されることが多いです。
注意点
- 同じ職場でも雇用形態で加入保険や待遇が変わるので、雇用契約書の内容をよく確認してください。源泉徴収の有無で働き方を判断しないようにしてください。
源泉徴収票の見方・記載内容
概要
源泉徴収票は一年間の支払いと差引き税額を証明する大切な書類です。ここでは各欄の意味と、見方のポイントをやさしく説明します。
主な記載項目と意味
- 年間給与額:勤務先がその年に支払った総額です。通例、ボーナスを含めた金額が表示されます(例:年収300万円)。
- 賞与(ボーナス)額:別欄で年内に支払われた賞与の合計を示します。賞与にかかる税額が別計算されます。
- 源泉徴収税額:その年に給与から差し引かれた所得税の合計です。年末調整や確定申告で精算されます。
- 各種控除額:社会保険料、生命保険料、配偶者や扶養控除などが記載されます。控除額が多いほど課税所得が減ります。
- 支払者情報:会社名、所在地、法人番号などが記載されています。書類の発行元を確認する欄です。
- 受給者情報:氏名、個人番号(マイナンバーは一部非記載の場合あり)、住所が載ります。本人確認に使います。
見方のポイント
- 金額の合計が自分の給与明細と合うか比べます。差異があれば勤務先に確認してください。2. 控除欄は社会保険料が大きな割合を占めます。支払先の証明書(保険料の領収)と照合しましょう。3. ローン申請や確定申告では源泉徴収票が年収や税額の証明になります。
よくあるチェック項目
- 氏名や住所の誤記がないか。- 支払者の名称や押印が抜けていないか。- 源泉徴収税額が過大に感じる場合は年末調整や過去の控除漏れを確認してください。
この欄を正しく読み取ると、所得の把握や税手続きがスムーズになります。疑問があるときは勤務先の総務や税務署に相談しましょう。
契約社員の源泉徴収票に関する注意点
受け取りと保管
退職時や年末調整後は、必ず源泉徴収票を受け取ってください。転職先に渡したり、確定申告の際に使います。紛失しないようコピーを取って安全な場所に保管しましょう。
発行されない場合の対処
まずは勤務先に発行を依頼してください。発行を拒まれたり対応がない場合は、税務署に相談しましょう。必要に応じて労働基準監督署にも相談できます。証拠(給与明細や契約書)をそろえて説明すると進みやすいです。
業務委託との違いに注意
業務委託(フリーランス)と契約社員は税務上の扱いが異なります。契約社員は雇用関係にあり源泉徴収票が出ますが、業務委託では支払調書や自分で確定申告するケースが多いです。契約形態をよく確認してください。
転職や確定申告での使い方
転職時は前職の源泉徴収票を新しい会社へ提出します。確定申告では所得額や源泉徴収税額の証明として使います。年金や医療費控除などを申告する際にも役立ちます。
よくある注意点
・源泉徴収票と給与明細の金額が合うか確認してください。
・複数の勤務先がある場合はそれぞれの発行を受け取ってください。
・疑問があれば早めに相談窓口(税務署や労基署)を利用しましょう。


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