はじめに
概要
本記事では退職代行サービスの利用者数や利用率の最新動向、年代・業種別の利用傾向、利用増加の背景や社会的影響を分かりやすく解説します。近年の利用者数の推移や企業側の受け止め方、認知度や利用経験の実態、季節ごとの利用傾向など、多角的に俯瞰します。
目的
退職代行を初めて知る方でも理解できるように、具体例を交えて説明します。例えば「本人に代わり退職の意思を会社に伝える」「退職手続きや有給消化の相談を代理で行う」といったサービスの実際を取り上げます。
読者への案内
・転職を考えている方、職場に悩みがある方
・人事・管理職として対応を検討する方
各章でデータや傾向を示し、実務や判断に役立つ視点を提供します。
退職代行サービスの利用者数・利用率の推移
増加の全体像
近年、退職代行サービスの利用者は着実に増えています。2024年度には主要なサービス「退職代行モームリ」だけで21,104人が利用しました。個人利用の選択肢として広がりを見せています。
転職者の利用割合
マイナビの調査では、直近1年間で転職した人の16.6%が退職代行を利用しています。これは約6人に1人が何らかの形で代行を使って退職手続きを行ったことを示します。手続きの代行だけでなく、精神的な負担を減らしたいと考える人が多い点が背景にあります。
企業側の実態変化
企業調査でも変化が見られます。社員が退職代行を利用した経験がある企業は、2019年の15.7%から2024年上半期には23.2%へ増加しました。大企業だけでなく中小企業でも報告が増え、職場規模を問わず利用が広がっていることが分かります。
利用が広がる理由の一端
業務量や人間関係の問題で直接辞めにくい人が代行を選ぶケースが多いです。例えば長時間労働が続く職場や、上司との対立が深い場合、第三者に手続きを任せることで穏やかに離職できる利点があります。具体的な数字は増加傾向を裏付けています。
若年層・新卒社員に広がる利用傾向
概要
利用者は若年層に偏ります。約60%が20代、約27%が30代で、40代以上は少数派です(50代6.4%、60代以上2.8%)。新卒利用者は2024年度に1,814名(全体の8.6%)でした。
年齢別の特徴
20代は入社間もない時期に退職代行を選ぶ例が多いです。理由は仕事内容や職場文化のミスマッチ、上司との人間関係、長時間労働などです。30代は転職回数や家庭の事情から慎重に判断しつつ利用する傾向があります。
新卒に見られる傾向
新卒の利用は特に入社後4か月以内に集中します。ゴールデンウィーク明けの5月に利用がピークとなる点が特徴です。例えば、研修段階で期待と現実の差に気づいたり、配属後の業務負担が原因となることが多く見られます。
企業・個人への示唆
若年層の早期離職を防ぐには、入社前後の情報提供を充実させること、メンター制度や定期的な面談で早期に悩みを把握することが有効です。本人は記録や相談窓口の活用を心がけると、円滑に次の一歩を踏み出せます。
注意点
退職代行は一つの手段ですが、法的手続きや雇用保険の手続きなどを確認し、必要なら専門家に相談してください。
業種・企業規模ごとの特徴
概要
業種別では、小売や理容・美容・洗濯・浴場などのBtoC(消費者向け)業界で退職代行の利用が目立ちます。従業員規模では、従業員1,500名以上の大企業での利用が相対的に多い傾向です。新卒利用者の職種別では、サービス業(17.5%)、営業(12.2%)、医療関連(7.9%)が上位に入ります。
業種ごとの具体例と理由
- 小売・接客業:店舗でのトラブルやシフト問題が背景にあり、対面での辞めづらさから代行を使う人が多いです。
- 理容・美容・洗濯・浴場:対顧客サービスが中心で、人間関係の摩擦が起きやすい点が理由として挙げられます。
- 医療・福祉:勤務環境が厳しく、夜勤や責任の重さから早期退職を考える若手が目立ちます。
- 営業:成果プレッシャーや長時間労働が原因で、相談よりも迅速な手続きを選ぶ傾向があります。
企業規模別の特徴
- 大企業(1,500名以上):書類・手続きが複雑なため、第三者に任せて確実に終わらせたい需要が高いです。また、面と向かって辞めにくい雰囲気が影響します。
- 中小企業:職場が狭いため直接交渉で済ませるケースもありますが、逆に対人関係が濃く代行を選ぶ場合もあります。
新卒・若年層の職種別ポイント
新卒で多いサービス業は、入社直後に業務と人間関係のミスマッチを感じやすい点が背景です。営業や医療系も同様に、仕事内容や責任と期待が合わないと感じると早期に退職を考えます。
注意点
業種や企業規模で傾向は変わりますが、個々の事情は多様です。退職方法を選ぶ際は、法的な手続きや雇用条件を確認することをおすすめします。
利用増加の社会的背景
現代の退職代行利用の拡大は、いくつかの社会的な変化が重なった結果です。
終身雇用制度の形骸化
かつての「一社で定年まで働く」前提が薄れ、転職や早期退職が一般化しました。雇用の流動化が進み、社員が長期間会社に留まることを前提にしない働き方が増えています。結果として、退職手段の多様化も進みました。
「退職は甘え」という価値観の変化
若い世代は働き方や心身の健康を重視します。無理に続けることよりも、環境を変える選択を尊重する意識が高まっており、退職そのものへの社会的な受容度が上がっています。
SNSによる情報拡散と心理的ハードルの低下
SNSや動画投稿で退職体験や代行サービスの実例が広がり、具体的な手順や費用の情報を手軽に得られるようになりました。身近な声を目にすることで「自分もできる」と感じる人が増えています。
ハラスメントやブラック企業問題で個人交渉が難しい現実
パワハラや長時間労働、賃金未払いといった問題が残り、本人が直接退職を伝えると報復や不利益を受ける恐れがあります。第三者を介した退職手段は安全性を高める実務的な選択肢です。
若年層での普及につながる背景の相乗効果
以上の要因が重なり、特に若年層で退職代行が現実的な手段として受け入れられました。情報の入りやすさと職場環境の厳しさが、利用増加の直接的な後押しになっています。
認知度と利用経験の実態
現状の認知度
各種調査では、退職代行サービスの認知度はおおむね70〜90%に達します。インターネットやSNSで話題になりやすく、特に若年層や転職に関心のある人ほど目にする機会が多い傾向です。
実際の利用経験
一方で、実際にサービスを利用したことがある人は全体では約2%前後と少数です。周囲で話題になっていても、行動に移す人は限られます。
若年層での利用率の上昇
年代別では20代で利用経験が高く、約5%程度の利用が確認されています。理由としては、職場での対人関係に不安を感じやすいことや、早めに次の職場へ移りたいと考える人が多い点が挙げられます。たとえば、新卒で入社した会社をすぐ辞めたい場合に利用されやすいです。
利用の特徴と注意点
利用者は「直接話さず円滑に退職したい」と考える人が多く、依頼方法は電話やメールでのやり取りが中心です。注意点としては、有給消化や退職日、給与清算などの取り決めは本人も把握しておく必要があります。サービスの対応範囲や実績を確認してから依頼することをおすすめします。
利用が集中する時期・季節的傾向
概要
退職代行の利用は、長期休暇の前後や入社直後に集中する傾向があります。具体的には、GW明けの5月、入社直後の4月、6〜8月(お盆前後)、年末年始などに利用が増えます。とくに新卒社員は入社後4か月以内の利用が多いのが特徴です。
各時期の特徴と背景
- 4月(入社直後)
新人は環境に慣れないうちに精神的・業務的な負担を感じやすく、早期に退職を決めるケースが多いです。研修や配属後のミスマッチが引き金になります。 - 5月(GW明け)
連休で気持ちに区切りがつき、職場の問題を改めて考える人が増えます。休み中に相談したり調べたりして、帰ってから行動に移す傾向があります。 - 6〜8月(お盆前後)
夏季休暇をきっかけに家族や友人と話す機会が増え、退職の判断が固まることが多いです。休暇直前に依頼が集中することがあります。 - 年末年始
年末の業務の区切りや年始の気持ちの切り替えで、退職を決めやすくなります。新年度を前に整理したいという心理が働きます。
企業と従業員への留意点
- 企業は休暇前後の相談窓口を明確にし、早期フォローを強化してください。
- 新人には定期的な面談やメンター制度で不安を早めに把握してください。
- 従業員は悩んだら早めに社内の相談窓口や第三者に相談すると選択肢が広がります。
以上の季節的傾向を押さえることで、企業は離職を予防しやすく、従業員は冷静に判断しやすくなります。
今後の展望とまとめ
今後の見通し
退職代行サービスの利用は今後も増える見込みです。利用者の中心が若年層や新卒、また大企業やBtoC業界で目立つことから、利用層はさらに広がるでしょう。社会の価値観が変化し「辞める」ことの心理的ハードルが下がったことが背景にあります。
予想される変化
- 利用の多様化:単純な退職代行だけでなく、キャリア相談やメンタルサポートを組み合わせたサービスが増えます。
- サービス品質の向上:実績や対応力を示す事業者が選ばれる傾向が強まります。
- 制度面の整備:企業側や行政が対応策を整え、トラブル防止に努める動きが出る可能性があります。
利用者・企業への示唆
- 労働者は早めに相談し、証拠ややり取りを残すことが大切です。代行を使う前に選択肢を整理してください。
- 企業は退職手続きやハラスメント対策を整備し、離職が円滑に進む仕組みを作ると信頼を維持できます。
- サービス事業者は透明性を高め、弁護士連携など法的対応力を示すと選ばれます。
注意点
退職代行は万能ではありません。労働問題での交渉や法的争いは専門家の関与が必要になる場合があります。業者選びと事前確認を忘れないでください。
結びとして、退職代行は働き方の変化に対応する一手段です。利用増加を受けて、関係者それぞれが改善を進めれば、より安心して活用できる環境が整っていくでしょう。


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