はじめに
本ドキュメントは、役員報酬に関する源泉徴収票の取り扱いについて、税務上の必要性や実務対応をわかりやすく解説します。役員報酬は給与所得として扱われ、会社側と役員側の税負担に影響します。正しい処理は後々の税務トラブルを防ぐうえで重要です。
目的
・源泉徴収の基本的な考え方を理解する
・源泉徴収票の作成・発行の流れを把握する
・年末調整や確定申告での取り扱いを実務面から学ぶ
想定読者
・中小企業の経理担当者
・一人社長や役員自身
・税務処理を正しく進めたい経営者
読み方のポイント
各章で計算例や具体的な手続きフローを示します。専門用語は最小限にして例で補いますので、実務で使える知識を順を追って身につけてください。
役員報酬にも源泉徴収は必要？役員報酬にかかる税金について解説！
役員報酬は給与所得として課税されます
会社の取締役や執行役が受け取る役員報酬は、給与と同じ「給与所得」として課税されます。所得税と住民税の対象です。個人の所得に応じて税率が上がります。
源泉徴収と年末調整の扱い
会社は毎月の役員報酬から所得税を源泉徴収して納めます。年末には年末調整で年間の税額を確定し、過不足を調整します。常勤か非常勤かで扱いが変わることがありますので、登記や就業状況に合わせて正しく扱ってください。
社会保険料の天引き
厚生年金や健康保険の保険料も役員報酬から天引きします。報酬額が高いほど会社負担と個人負担が増えます。報酬の改定は社会保険の加入額にも影響します。
簡単な計算例
月額報酬50万円の場合、年収600万円です。概算で所得税と住民税、社会保険料が差し引かれた手取りを会社と相談して確認してください。
報酬設定のポイント
- 法人税と個人税のバランスを考え、無理のない範囲で報酬を決める
- 定期同額給与の原則に従い、途中で頻繁に変えない
- 税理士や社会保険労務士に相談すると安心です
疑問があれば具体的な状況を教えてください。適切なアドバイスを差し上げます。
非常勤の役員報酬の源泉徴収額について
概要
非常勤の役員が他社で常勤勤務している場合、会社に「扶養控除等申告書」を提出していなければ、給与の源泉徴収は乙欄で計算します。令和7年の計算率の例として、報酬に対する率は3.063％です。
乙欄が適用される場合
- 扶養控除等申告書が提出されていないとき
- 他社で常勤として社会保険等に加入していることが多い場合
このようなときは甲欄ではなく乙欄で源泉徴収を行います。
源泉徴収額の計算手順
- 支払額（例：月額5万円）からその事業所で差し引く社会保険料を控除します。
- 控除後の金額に対して、税率（例：3.063％）を掛けます。
- 小数点以下の端数処理は実務に従って処理します（多くは1円未満を切り捨て）。
具体例
- 支払額50,000円、社会保険料控除なし：50,000×0.03063＝1,531.5→端数処理で約1,531円
- 支払額50,000円、社会保険料5,000円：45,000×0.03063＝1,378.35→約1,378円
注意点
- 扶養控除等申告書が提出されれば甲欄適用となり税額は変わります。
- 年ごとに適用される税率が確認必要です。会社は従業員の申告書の有無を管理してください。
役員の退職源泉徴収票について
概要
役員に対する退職金（退職所得）を支払ったときは、退職所得の源泉徴収票を発行します。役員報酬と退職金の支払い実績がある代表取締役には、それぞれ該当する源泉徴収票を用意してください。無報酬や支払不能の場合は発行不要ですが、支払処理が完了している場合は交付をおすすめします。
発行が必要な場合
- 退職金を実際に支払ったとき
- 退職所得に対して源泉徴収したとき
どの書類を出すか
- 給与としての最終報酬がある場合：給与所得の源泉徴収票
- 退職金を支払った場合：退職所得の源泉徴収票
両方該当すれば、それぞれ発行します。
記載の主な項目（ポイント）
- 支払金額：実際に支払った退職金の額
- 源泉徴収税額：差し引いた源泉税
- 支払年月日・支払者情報・受給者氏名・住所
- 退職理由：任期満了・解任など
支払がない場合の扱い
実際に支払いがない場合は作成不要です。支払処理をしたが未入金のときは、交付して受給者・税務処理を明確にしておくと安心です。
交付と保管
受給者へ交付し、会社側も控えを保管してください。税務署への提出が必要な場面では、所定の手続きを行います。
簡単な記入例
- 退職金支払額：10,000,000円
- 源泉徴収税額：1,000,000円
- 支払日：2025年3月31日
このように金額・税額・日付を明確に記載します。
必要なら、様式の記入例や雛形のポイントも用意しますのでお知らせください。
源泉徴収票とは？正しい見方や発行タイミング・利用場面を解説
概要
源泉徴収票は会社が従業員に発行する給与支払の証明書です。支払金額欄は1年間に会社が支払った給与・賞与の合計を示します。残業代や課税対象の手当も含まれます。
主な記載項目の見方
- 支払金額：年間の総支給額（課税対象を含む）。源泉徴収票の中心になる数字です。
- 源泉徴収税額：会社が年間で差し引いた所得税の合計です。
- 社会保険料等の金額：健康保険や年金など会社が天引きした合計額が記載されます。
- 給与所得控除後の金額：課税対象となるおおよその金額です。
- 扶養親族等：扶養の有無や控除対象の人数がわかります。
発行タイミング
年末調整が終わったあとの1月〜2月に発行するのが一般的です。退職時には退職日までの支払分を記載して発行します。
利用場面
確定申告、住宅ローンや賃貸契約の審査、各種補助金申請などで必要になります。確定申告では源泉徴収税額を基に納税額を調整します。
受け取ったら確認するポイント
- 支払金額が給与明細の合計と一致するか
- 源泉徴収税額や社会保険料の金額に誤りがないか
- 氏名、マイナンバー、勤務先名が正しいか
再発行の手順
発行元の会社に依頼してください。会社には交付の義務がありますので、不備があれば早めに相談しましょう。
役員報酬にまつわる確定申告＆年末調整の基本とは？
概要
役員は会社からの源泉徴収票と実際に受け取った報酬が一致しているか確認します。金額がずれると二重計上や所得漏れが起きるため、注意が必要です。
確定申告が必要な主なケース
- 給与以外の所得（不動産・事業・配当など）があり、合計で課税所得となる場合
- 給与所得以外の所得が20万円を超える場合（個人事業など）
- 年末調整で控除が反映されていない、還付を受けたい場合
例えば、非常勤役員で複数の会社から給与を受け取る場合は、合算して確定申告が必要になることがあります。
年末調整と役員の扱い
原則として勤務先（主たる給与支払者）が年末調整します。ただし、役員報酬は支給方法や契約により扱いが異なるため、会社の人事・経理と確認してください。複数の給与があるときは、一社が年末調整を行い、残りは源泉徴収票で確定申告時に合算します。
手続きの流れと注意点
- 年末に各社の源泉徴収票を受け取る
- 金額と控除内容を確認する
- 合算が必要なら確定申告（通常は翌年3月15日まで）を行う
注意：退職金は別枠の扱いになります。疑問があれば税理士に相談してください。
一人社長でも年末調整は必要？種類の作成方法や計算
はじめに
一人社長でも給与を会社から受け取っている場合は、年末調整の対象になります。役員報酬が少額や0円でも、法定調書合計表の提出は必須で、翌年1月31日までに出さないとペナルティが生じる可能性があります。
一人社長の年末調整は必要か
会社が代表者に給与を支払っているときは、会社側が年末調整を行います。給与がある場合は源泉徴収票の交付も必要です。給与が0円の場合、支払実績がないため源泉徴収票は不要になることが多いですが、法定調書合計表は提出義務があります。
作成する書類と作り方（簡単）
- 源泉徴収票：従業員や役員に給与を支払ったら交付します。年間の支払額や源泉徴収税額を記載します。
- 法定調書合計表：税務署へ提出する表で、少額や0円でも提出が必要です。
- 給与支払報告書：住民税のために市区町村へ提出します。
作成は会計ソフトや雇用契約の給与台帳を基に行い、電子申告（e-Tax）も使えます。
計算の流れ（基本ステップ）
- 年間の給与総額を集計
- 社会保険料や給与所得控除、基礎控除などを差し引き課税所得を算出
- 税率を当てはめて年税額を計算
- すでに源泉徴収した税額との差額を年末調整で精算
例：給与が支払われていれば同様の手順で税額を出し、過不足があれば還付や追徴となります。給与0円の場合は精算対象がなくても法定調書合計表の提出を忘れないでください。
提出期限と注意点
- 提出期限：法定調書合計表・源泉徴収票の交付はいずれも翌年1月31日（期限厳守）
- 注意点：記録を残し、会計ソフトや税理士を活用すると安心です。電子提出を利用すると手続きが簡単になります。
税務署への源泉徴収票の提出対象は？各種手続も解説
提出対象
法人が支払う役員のうち、年間の給与等（賞与を含む合計）が150万円を超える場合、その役員分の源泉徴収票は税務署への提出対象になります。ここでの「役員」には取締役・監査役だけでなく、相談役や顧問、名誉職など実態として報酬を受ける類似役職も含まれます。現役員でなくても、支払があれば該当します。
具体例で理解する
- 例1：常勤役員Aの年間報酬が200万円→提出が必要
- 例2：相談役Bが年間で120万円→提出は不要（150万円以下）
提出方法と期限
提出先は所轄の税務署です。書面での提出のほか、電子申告（e-Tax）での提出も可能です。通常、源泉徴収票（法定調書）の提出期限は翌年の1月末日が目安です。自治体への給与支払報告書は別途手続きが必要になる点に注意してください。
退職や訂正の扱い
役員の退職時に支払う退職金は別の「退職所得の源泉徴収票」で手続きします。また、提出後に誤りが見つかったときは速やかに訂正の届出を行います。訂正は税務署に相談し、指示に従ってください。
注意点
- 支払額の集計は賞与や手当も含めて行います。
- 非常勤や報酬形態が特殊な場合は、税理士等へ相談すると安心です。
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