はじめに
概要
本記事では、会社を辞めるときによく出てくる「退職願」「退職届」「辞表」の三つの書類について、意味や法的効力、使う相手や場面の違いをわかりやすく解説します。書類の名称だけで迷わないよう、具体的な例を交えて説明します。
誰に向けた記事か
- 退職を考えている社員の方
- 人事や総務で対応する担当者の方
- 書き方やタイミングを確認したい方
本記事でわかること
- 三つの書類の基本的な違いと効力
- 「いつ」「誰に」「どの書類を」出すべきか
- 撤回の可否や注意点、実務でよくあるケースの対処法
読み方と注意点
章ごとに具体例と簡単な文例も載せますので、実際の場面で使いやすい形で理解できます。法的な扱いはケースにより異なることがありますので、不安がある場合は会社の人事や専門家へ相談してください。
「退職願」「退職届」「辞表」――3つの書類の基本的な違い
概要
会社を辞めるときに使う書類は主に三種類です。目的は同じく「職を辞する意思を伝えること」ですが、意味合いや効力、使う人が異なります。下記でわかりやすく説明します。
退職願(お願い)
退職願は「退職したい」という希望を会社に伝える書類です。文面は「一身上の都合により退職をお願い致します」など簡潔でよく、提出後も会社が承諾するまでは撤回できます。まず相談として出すときに使います。
退職届(意思表示)
退職届は退職の意思を確定的に伝える書類です。提出すると原則として撤回できないと扱われます。形式は退職願に似ていますが、言い切る表現(「退職致します」など)を用います。重要な節目で提出する際に使います。
辞表(役職者用)
辞表は主に取締役・役員や公務員など、役職や地位を持つ人が職務を辞する際に使います。一般の従業員は通常使いません。承認を得る手続きが別に必要になることが多い点に注意してください。
比較のポイント
- 撤回の可否:退職願は撤回可能、退職届は原則不可。
- 対象者:辞表は役職者専用。
- 使うタイミング:まず退職願で相談し、正式に決めたら退職届を出すのが一般的です。
書類の文例や提出先は会社ごとに違うため、就業規則や人事担当者に確認してください。
「退職願」と「退職届」の違い ― どちらを使うべきか
概要
「退職願」は会社に対して「退職したい」とお願いする文書です。会社が承諾する前なら撤回できます。円満な話し合いを望むとき、合意が得られる前に使います。
「退職届」は「退職します」と断定する文書で、退職日が確定した後に提出します。提出した時点で効力が生じ、原則として撤回できません。
主な違い(ポイント)
- 意味:退職願=お願い、退職届=通知・宣言
- 撤回可否:願は承諾前なら可、届は原則不可
- 提出タイミング:願=合意前、届=退職日確定後
- 対象者:基本は社員向け。状況に応じて使い分けます。
どちらを使うべきか(実例)
- 転職先がまだ確定していない、上司とまず相談したい:退職願を提出し、話し合いで退職日を決めます。
- 退職日が決まり、会社が承認した:退職届を出して正式に手続きを進めます。
実務上の注意点
- 提出前に直属の上司に口頭で相談すると誤解が少なくなります。
- 撤回を考える場合は書面を出す前に話し合ってください。
- 退職届を出す際は控えを必ず受け取り、日付や署名を確認してください。
丁寧に手続きを進めれば、トラブルを避けて退職できます。
「辞表」とは ― 役員・公務員が使う特別な書類
定義と用途
辞表は、会社の役員(取締役、執行役等)や公務員がその役職や地位を辞する意思を正式に伝える書類です。一般の従業員が退職するときに使う「退職願・退職届」とは目的が異なり、職位そのものの辞任に用います。たとえば社長が代表の座を離れる場合や、公務員が公職を辞する場合に提出します。
主な効力
辞表は提出しても、組織側の承認や法的手続きが必要になることが多いです。会社の場合は取締役会で承認されることがあり、承認をもって効力が生じます。公務員は所属長や人事機関の手続きで扱われます。つまり、辞表は“意思表示”であり、即時に職務喪失になるとは限りません。
撤回の可否
提出後でも、承認前なら撤回できることが一般的です。承認後は撤回が難しく、再び就任するには別途手続きや合意が必要になります。たとえば取締役会が辞表を受理している場合、原状回復は容易ではありません。
提出のタイミングと形式
宛先(代表取締役、取締役会長、所属長など)、日付、氏名と辞任の意思を明確に記載します。場合によっては理由や辞任の効力発生日を添えます。公務員は所属機関の様式に従うことが多いです。
注意点(具体例)
・辞任が役職のみの場合、一般職として残るかどうかを事前に確認してください。
・退職金や権利関係、職務の引継ぎは別途手続きが必要です。
・重要事項(兼務、訴訟、契約)に影響が出ることがあるため、関係者と調整してから提出することをおすすめします。
書類の使い分けと注意点
対象者と基本ルール
一般社員やアルバイトは「退職願」か「退職届」を使います。誤って「辞表」を出すと混乱や手続きの誤解を招くため、辞表は役員や公務員など特別な立場の人だけが使う書類だと覚えてください。
いつ退職願を使うか
退職の意思が固まりつつも、会社と話し合って退職日や引継ぎを調整したい場合は退職願を提出します。会社側と合意形成を目指す段階で出すのがマナーです。具体例:上司に口頭で相談した後、退職願を書面で渡す流れが一般的です。
いつ退職届を使うか
会社と条件(退職日など)を決め、最終的に退職を確定させるときに退職届を出します。退職届は撤回が難しいため、意思が確実なときに提出してください。
会社規程と提出方法の確認
会社によっては書式や提出先(総務、直属の上司)を指定しています。就業規則や人事担当に事前確認して、誤った様式や誤った宛先で混乱を招かないようにしましょう。
実務上の注意点
- 日付や氏名は自署で明確に記載する。コピーを取っておく。
- 口頭での合意も記録に残す。メール確認があれば保存する。
- 撤回を希望する場合は早めに上司・人事に相談し、書面での同意を得ることを目指す。
以上を守れば、トラブルを避けて円満に退職手続きを進められます。
まとめと実務ポイント
要点まとめ
退職願は「お願い」なので撤回できます。退職届は会社への「通知」で、原則として撤回できません。辞表は役職や公的な地位を持つ人が使う特別な書類で、一般社員は通常使いません。円満に退職したい場合は、まず退職願で意思を伝え、会社と合意してから退職届を出す流れが基本です。
実務チェックリスト
- 就業規則や雇用契約を確認:退職の手続きや必要な予告期間を確認します。
- まず口頭で上司に伝える:誠意ある説明を心がけます。
- 退職願は手渡しで提出し、受領の証拠(受領印やメール)をもらうと安心です。
- 合意が取れたら退職届を提出:最終出勤日や退職日を明確に記載します。
- 有給消化や未払い賃金、社会保険・年金の手続きも確認してください。
留意点
会社が受け取りを渋る、あるいは合意に至らない場合は、早めに人事や労務の担当に相談しましょう。会社の規定や自分の立場によって取るべき書類や手順が変わりますので、臨機応変に対応してください。


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