はじめに
目的
この章では、本記事の全体像と読み方をやさしく説明します。退職の時期や給与の支払いタイミングが年末調整にどう影響するかを把握し、必要な手続きや準備を分かりやすく学べます。
対象となる方
- 年内に退職を予定している方
- 年途中で転職した方
- 退職後の税手続きに不安がある方
本記事で扱う主な内容(概要)
- 退職者が年末調整の対象になるかどうか
- 退職時期別の具体的な扱いと給与支払の例
- 年末調整ができない場合の確定申告の方法
- 源泉徴収票の受け取り方と書類準備
読み進める際のポイント
実例を交えて手続きを説明します。まずは自分の退職時期と最終給与の支払い日を確認してください。これにより、年末調整の対象かどうかが大きく変わります。
退職者は年末調整の対象になるのか
原則
年末調整は、会社が1年間(1月~12月)に支払った給与と源泉徴収税を精算する仕組みです。原則としては、12月31日時点でその会社に在籍している社員が対象になります。退職が12月31日より前であれば、通常は退職先で年末調整を受けられません。
例外となるケース
ただし、次のような場合は退職先で年末調整ができることがあります。
– 12月分の給与を受け取った後に退職した場合(企業が年間給与を確定できるため)
– 年内に再就職の見込みがなく、年間の給与額が確定している場合
– 会社と取り決めがあり、年内の支払額が確定しているとき
どれも年間の支払額と源泉徴収額が確定していることが前提です。
対処方法(退職先で年末調整を受けられない場合)
- 年末調整を受けられないときは、自分で確定申告を行い、過不足を精算します。特に医療費控除や寄附金控除などを受ける場合は確定申告が必要です。
- 年内に別の会社へ再就職した場合は、再就職先で年末調整を行ってもらえることが一般的です。
注意点
年末調整の可否は給与の支払状況や会社の処理方法で変わります。退職時に会社の総務や人事に確認して、必要書類(扶養控除等申告書など)を整えてください。
退職時期ごとの年末調整の具体的な扱い
11月退職
- 最終給与が11月支給:退職先では年末調整を行わず、源泉徴収票を発行します。年末調整がないため、翌年2〜3月に確定申告で精算する必要が出る場合があります。
- 最終給与が12月支給:退職先で年末調整を実施します。給与が12月分として支給されれば、その年の所得として扱われます。
12月途中退職(例:12月15日)
- 基本的に年末調整の対象外です。ただし、12月分の給与をすでに受け取っている場合は、退職先で年末調整が可能です。
同月中に転職した場合
- 退職後、同じ月に転職して転職先で給与を受ける場合は、原則として転職先で年末調整を行います。源泉徴収票は前の会社から受け取り、転職先に提出します。
12月末退職(12月31日)
- 会社で年末調整の対象になります。なお、12月分の給与が翌年1月に支給されるときは、その給与は翌年分となり年末調整の対象外です。会社は源泉徴収票を発行します。
実務上の注意点
- 最終給与の支給月で扱いが変わるため、給与明細と支給日を確認してください。源泉徴収票は退職後に必ず受け取り、転職先があれば速やかに提出しましょう。年末調整が受けられないときは、翌年に確定申告で調整します。
年末調整ができない場合の対応
退職後に年末調整が行われなかった場合や、退職後に無職で年末調整を受けられない場合は、自分で確定申告を行う必要があります。ここでは、必要な手順と注意点を分かりやすく説明します。
1. まずは源泉徴収票を受け取る
退職した会社から源泉徴収票を必ず受け取ってください。源泉徴収票には、その年に支払われた給与や源泉徴収された税額が記載されています。もし受け取れない場合は、元の勤務先に連絡して発行を依頼します。
2. 確定申告の準備をする
確定申告では以下の書類がよく必要になります。
– 源泉徴収票
– 生命保険料や地震保険料の控除証明書
– 医療費控除を申請する場合は領収書と明細
– 寄附金控除の受領証
これらを揃えて、控除を漏れなく申請すると税金が還付される可能性があります。
3. 確定申告の提出方法と注意点
確定申告は税務署へ紙で提出する方法と、国税庁のe-Taxでオンライン申告する方法があります。e-Taxは手続きが早く還付が早い利点がありますが、事前にマイナンバーカードやIDの準備が必要です。
また、申告漏れや証拠書類の不足で時間がかかることがあるため、早めに準備することをおすすめします。退職時の給与の取り扱いや社会保険料の控除など、迷った点は税務署に相談すると安心です。
4. 源泉徴収票が手に入らない場合
会社が倒産しているなど源泉徴収票が入手困難な場合は、税務署に相談してください。状況を説明すれば代替の対応や指示を受けられます。
5. 具体例
例1: 6月に退職しその後無職の場合は、年末に自分で確定申告をして、払い過ぎた税金を還付してもらうケースが多いです。
例2: 12月に退職して新しい勤務先に年末調整を依頼できない場合でも、翌年に自分で確定申告すれば調整できます。
必要書類を揃えて期限内に手続きを行えば、税金の過不足をきちんと調整できます。
年末調整が必要となる例外ケース
概要
通常は在職中に年末調整を行いますが、例外的に退職・就労形態の違いなどで年末調整が必要になる場合があります。本章では代表的な例をわかりやすく説明します。
1.心身の不調で再就職の見込みがない場合
病気やけがで退職し、その年内に再就職の見込みがないときは、年間の給与額が確定します。会社はそれを基に年末調整を行えます。医師の診断書や退職届を求められることが多いので、早めに会社に相談してください。過剰に源泉徴収された分は最終給与で精算するか、還付が発生する場合は確定申告で受け取れます。
2.年間給与総額が103万円以下のケース(アルバイト・パート等)
1つの勤務先からの年間給与が103万円以下であれば、所得税の基礎控除等を反映して年末調整で精算できます。複数の勤務先があれば、主たる勤務先で年末調整を受けるか、他の勤務先からの源泉徴収票を添えて確定申告する必要があります。
3.ほかの例外的なケース
- 年の途中で扶養控除等申告書を出していないが、後から扶養が確定した場合
- 長期休職で給与が変動し、年間収入が確定した場合
会社ごとに取り扱いが異なるため、給与担当者に状況を伝え、必要書類(源泉徴収票、診断書、退職届など)を確認してください。
手続きのポイント
年末調整の対象になるか迷ったら、勤務先の人事・経理に早めに相談しましょう。会社で年末調整できない場合は、翌年に確定申告で精算できます。書類は原則としてコピーではなく原本の提示を求められることがあるため、準備を忘れないでください。
退職・転職後の年末調整の手続きと注意点
1. 源泉徴収票は必ず受け取る
退職後、前職から給与所得の源泉徴収票を交付されます。法律上は退職から1か月以内が目安です。例:3月末で退職したら4月中に受け取るよう催促してください。
2. 転職先へ提出する書類
転職先で年末調整を受ける場合、前職の源泉徴収票を提出します。さらに、生命保険や地震保険、扶養控除、配偶者控除などの証明書(控除証明書)も忘れずに提出してください。住宅ローン控除は初年度は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で対応できます。
3. 年末調整の流れ(転職後)
転職先で配られる「給与所得者の保険料控除申告書」等に必要事項を記入し、控除証明書と前職の源泉徴収票を添えて提出します。会社はそれらを基に年末調整を行います。
4. よくあるトラブルと対処法
- 源泉徴収票が届かない:前職に早めに連絡し、書面での再交付を依頼してください。
- 提出書類を忘れた:年末調整で反映されない場合、翌年の確定申告で修正します。
- 複数社からの給与がある:主たる給与以外で年末調整ができない給与があるときは確定申告が必要です。
期限と書類の管理を早めに行い、必要があれば税務署や会社の担当に相談してください。
12月末退職のメリット・デメリット
メリット
12月31日に退職すると、一般的にその年は会社が年末調整を行ってくれます。年末調整を受けられれば、勤務先で源泉徴収の過不足を精算してくれるため、自分で確定申告をする手間が省けることが多いです。例えば、副業がなく、年収が1社からのみで各種控除も通常の範囲であれば、原則として申告不要で済みます。
デメリット
一方で注意点もあります。年末調整を受けるには、扶養控除等申告書など必要書類を期限内に提出する必要があります。書類の提出が間に合わないと調整されず、自分で確定申告が必要になる場合があります。副収入がある、医療費控除を申請したい、年の途中で転職し翌年に調整がずれるといったケースでも、確定申告が必要になります。
対処法・注意点
退職前に人事・給与担当に年末調整の対象になるか確認し、必要書類は早めに出してください。翌年1月に受け取る源泉徴収票は必ず保管し、もし年末調整で過不足が解消されていなければ、確定申告(通常は翌年3月15日まで)で調整します。分からない点は税務署や税理士に相談すると安心です。
第8章: よくある質問
以下では、退職後の年末調整に関するよくある疑問を、短くわかりやすく整理しました。
Q1: 退職後でも年末調整を受けられますか?
A: はい。退職が12月分給与受け取り後であれば、原則として退職時の勤務先で年末調整できます。再就職の見込みがなく、年間の給与が確定している場合も同様です。例:12月25日に退職して給与を受け取った場合、勤務先で年末調整が可能です。
Q2: 源泉徴収票はいつもらえますか?
A: 退職後、原則1か月以内に交付されます。届かないときはまず前の勤務先に問い合わせてください。それでも受け取れない場合、最寄りの税務署に相談します。
Q3: 転職先で年末調整を受けるには何が必要ですか?
A: 前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出してください。これがないと正しい年末調整ができないため、源泉徴収票は忘れずに渡します。
Q4: 年末調整を受けられなかった場合は?
A: 年末調整を受けられないときは、自分で確定申告をします。医療費控除や住宅ローン控除の初年度なども確定申告が必要です。
Q5: 源泉徴収票に誤りがあったら?
A: 前の勤務先に訂正を依頼します。修正後の源泉徴収票を受け取り、必要なら転職先へ提出または確定申告で対応します。
Q6: 年金や副収入がある場合は?
A: 給与以外の所得があると年末調整だけでは不十分なことがあります。その場合は確定申告が必要です。
疑問が残るときは、前の勤務先、人事担当、または税務署に相談してください。適切な手続きをとれば、税金の過不足を正しく調整できます。


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