はじめに
この資料の目的
本資料は「退職日を有給消化後に設定する方法と注意点」をやさしく解説します。有給休暇を退職前に取得してから正式な退職日を決める流れを、実務的に分かりやすくまとめました。
誰に向けているか
- 今の職場で退職を検討している方
- 有給を使って円満に退職したい方
- 会社に相談する前に基本を知りたい方
本資料で学べること
- 有給消化後に退職日を設定する際の基本ルール
- 有給計画の立て方と手続きの順序
- 退職届の書き方例と注意点
- よくあるトラブルとその対処法
- スムーズに退職するための実践ポイント
- 特別なケース(育児・病気など)の扱い
読み方のポイント
まずご自身の就業規則や雇用契約を確認してください。会社ごとにルールが異なるため、ここで示す方法を基本に調整して使うと役立ちます。次章から順に手順と例を示しますので、実践的に進めてください。
有給消化後に退職日を設定する基本ルール
基本ルール
有給休暇は労働者の権利です。退職時に残っている有給を消化してから退職日を迎えることは可能で、取得中も在籍扱いになります。退職届に記載する退職日は、有給消化がすべて終わった翌日を指定するのが一般的です。会社と調整した上で日程を確定してください。
具体例
最終出勤日が4月1日で有給が10日残っている場合は、4月2日〜4月11日を有給消化期間とし、4月12日を退職日と記載します。有給期間中は給与や社会保険の扱いが継続します。
注意点
- 有給取得の申し出は早めに行い、会社の承認を得て記録を残します。
- 会社が業務都合で時期をずらすよう求める場合は、話し合いで調整します。
- 退職日と有給消化の開始日を退職届に明確に書き、双方で確認してください。
手続きの流れ(簡潔)
- 有給残日数を確認する
- 取得希望日を上司に伝える
- 承認を得て退職届に退職日を記載する
- 有給消化後、最終手続きを行う
この章では、具体的な日付の例と注意点を押さえて、トラブルを避けるために早めの相談と記録を心がけることが大切だと説明しました。
有給消化計画の立て方と手順
1. 残有給の正確な把握
まずは自分の残日数を確認します。給与明細や社内勤怠システム、人事に直接問い合わせると確実です。繰越分や時効の有無も忘れず確認しましょう。
2. 退職日を逆算する
残日数を基に退職日を逆算します。一般的には「最終出勤日=実際に働く最後の日」で、その後に有給消化期間が続きます。会社ごとに雇用終了日の扱いが異なるため、人事に最終的な扱いを確認してください。
3. 業務調整と引き継ぎ
有給中に業務が滞らないよう、引き継ぎを早めに進めます。担当業務の優先順位をつけ、引継書を作成し、引継相手と日程をすり合わせます。関係部署への連絡も忘れずに行ってください。
4. 取得方法と会社との調整
有給を一括で使うか分割するかを検討します。忙しい時期は業務と調整して取得日をずらす、段階的に消化するなど柔軟に対応しましょう。上司や人事に希望日を提示し、代替案も用意すると話が進みやすいです。
5. 手続きの一般的な流れ
1) 残日数確認 2) 上司へ退職意思と有給消化の希望を相談 3) 人事に正式申請(書面やシステム) 4) 引継完了の確認 5) 最終出勤と有給開始 という順で進めます。
6. トラブルを防ぐための注意点
口頭だけでなくメールや書面で合意を残す、承認記録や申請画面のスクリーンショットを保管するなど証拠を残してください。不明点は早めに人事に確認すると安心です。
具体例
残有給10日で忙期を避けたい場合は、最終出勤日を設定してから人事と調整し、有給を連続して取るか分割するかを決めます。例:最終出勤4/1→有給4/2〜4/11→退職扱いは社内規定により4/11または4/12になります。必ず会社に確認してください。
退職届の書き方と記載例
書き方の基本
- 日付:右上に記載します。退職日は有給消化後の日付を明確に書きます(例:令和○年○月○日付で退職いたします)。
- 宛名:会社名・部署名・代表者名(または上司の氏名)を記載します。
- 本文:退職の意思と退職日を簡潔に述べます。理由は「一身上の都合により」で差し支えありません。
- 署名:氏名と押印を忘れずに。手渡しする場合は自署が好ましいです。
記載例(横書き)
令和○年○月○日
株式会社○○○○ 代表取締役 ○○○○ 様
退職届
私事で恐縮ですが、有給休暇をすべて消化した後、令和○年○月○日付で退職いたします。つきましては、何卒ご承知おきくださいますようお願い申し上げます。
氏名:○○ ○○(印)
記載例(縦書き)
縦書きでは年・月・日を漢数字(二〇二五年十一月五日など)で書き、書式は和文の礼儀に従います。本文も縦書きで「有給休暇を全て消化した後、○年○月○日付で退職いたします。」と記載します。
提出時の注意点
- 提出前に有給の残日数・消化予定を確認してください。
- 提出方法は手渡しが基本ですが、事情がある場合はメールで意思表示後に書面を郵送する方法も可です。
- 提出後は控えを必ず保管してください。
この章では実際に使える文例と押さえるべきポイントを示しました。必要に応じて文言を調整してください。
よくあるトラブルと対処法
1. 会社が有給取得を拒否する場合
会社は原則として有給を拒否できません。例外は「時季変更権」で、事業運営に著しい支障がある場合に限定されます。拒否されたらまず上司と冷静に話し、理由を確認してください。話し合いで解決しない場合は人事部へ書面で申請内容と希望日を残しましょう。やむを得ず対応を受けた場合は、日付や会話の記録、メールを保存してください。
2. 不当な扱いや圧力を受けた場合
取得を理由に不利益(降格、懲戒、差別的扱い)を受けたら違法の可能性があります。社内で改善しないときは社労士や労働基準監督署に相談してください。第三者に相談する前に、証拠(申請書、やり取り、出勤記録)を整理します。
3. 有給が残ったまま退職する場合
有給は原則として退職で消滅します。退職前に消化できるよう計画的に申請することが大切です。どうしても消化できない場合、就業規則に「買い取り」規定があるか確認してください。買い取りは企業の任意で、法律上の義務ではありません。
4. トラブル対処の具体的な手順
1) 口頭で申請→2) 書面(メール)で希望日を残す→3) 証拠を保存→4) 人事へ相談→5) 改善しない場合は労基署や社労士へ相談。その際、証拠を提示できると話が早く進みます。
5. 早めの相談と冷静な交渉が鍵です
感情的にならず、記録を残しながら順を追って対応してください。外部相談は最終手段ではなく、早めに使うことで解決が早まることが多いです。
スムーズな有給消化・円満退職のポイント
早めに伝える(目安:退職3ヶ月前)
退職の意思と有給消化の希望は早めに伝えましょう。時間に余裕があれば引き継ぎや業務調整がしやすくなります。口頭で伝えた後、メールで要点を残すと安心です。
引き継ぎ計画を立てる
引き継ぎは業務リスト、担当者、期限を明確にします。マニュアルや手順書を作成し、よくある質問(FAQ)も用意すると後任がスムーズに対応できます。
関係者への情報共有を徹底する
上司、同僚、関係部署、取引先へタイミングを合わせて伝えます。顧客対応がある場合は引き継ぎ用の連絡先とスケジュールを共有してください。
就業規則と人事の確認・書面保存
有給消化の取り扱いは会社によって異なります。就業規則や人事と必ず確認し、メールや書面で記録を残しましょう。トラブル防止になります。
最後の心配りで円満に
感謝の言葉を忘れず、後任が困らない配慮をしましょう。引き継ぎ後も連絡可能な期間や方法を明確にしておくと印象が良くなります。
特別なケースやQ&A
概要
シフト制や法定休日との関係は会社ごとの規則と労働基準法が絡みます。個別の扱いは人事に確認してください。一般には「有給消化終了日=退職日」とすることが多いですが、規定や事情で異なる場合があります。
よくある特別ケース
- シフト制:有給でシフトを埋めるとき、代替要員やシフト表の調整が必要です。欠勤扱いや勤務扱いになるかは規定で変わります。必ず上司や人事に調整方法を相談してください。
- 法定休日と有給:法定休日へ有給を充てる扱いは会社により異なります。振替休日や休出手当との兼ね合いも確認を。
- パート・アルバイト:比例付与や有給日数の取り扱いは正社員と異なることが多いです。勤続年数で変わる点に注意してください。
- 病気・育児・介護中の退職:治療や育児介護の継続が必要な場合は、退職日や有給の使い方を事前に相談しましょう。
Q&A(簡潔に)
Q: 退職日をずらせますか?
A: 原則は可能ですが、業務調整や合意が必要です。書面で日程を残すと安心です。
Q: 有給をすべて消化しても最終給与はどうなりますか?
A: 支払い方法や締め日で変わります。明細で確認し、不明点は人事へ。
Q: 会社が有給取得を拒むことは?
A: 正当な理由なく拒めないケースもありますが、業務上の調整が必要です。相談を優先してください。
どのケースでも、早めに人事へ相談し、やり取りを記録しておくことをおすすめします。


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