はじめに
背景
源泉徴収票は、給与や年金から差し引かれた所得税の金額や支払額を証明する大切な書類です。転職手続き・住宅ローンの審査・確定申告などで提出を求められる場面が多く、手元にあると手続きがスムーズになります。
本記事の目的
本記事は、源泉徴収票に「有効期限」があるのか、どの期間のものが各種手続きで認められるのか、そして従業員側・会社側それぞれの保管義務や実務上の注意点を分かりやすく解説します。
読者対象
会社員・パート・派遣社員・人事担当者・個人事業主の方など、源泉徴収票を取得・管理するすべての方に向けています。
本章の内容
以降の章で、発行時期や保管期間の目安、手続きごとの取り扱いの違いを順に説明します。まずは全体像を把握して、必要な書類の準備と保管の第一歩を踏み出しましょう。
源泉徴収票の「有効期限」とは
定義と基本
源泉徴収票そのものに法律上の「有効期限」はありません。発行された年の給与や税額を示す書類であり、時間が経っても証拠書類としての性質は変わりません。とはいえ、実務上は提出先のルールが事実上の“有効範囲”を決めます。
提出先による違い(具体例)
- 転職:一般に直近の前年分を求められます。雇用保険や年収確認のためです。
- 住宅ローン・補助金:多くは直近1〜2年分を求めます。収入の安定性を確認するためです。
- 行政手続き・確定申告:対象年の源泉徴収票が必要です。
実務での注意点
- 提出前に提出先に「何年分が必要か」を必ず確認してください。要件が書面で示される場合も多いです。
- コピーで足りるか原本が必要かを確認します。原本還付を求められることもあります。
- 古い分を提出するよう要求されたら、理由を書面で求めると対応が楽になります。
紛失や再発行
紛失した場合は、前の勤務先に再発行を依頼できます。退職後でも発行可能なケースが多いので、早めに連絡してください。
チェックポイント(短く)
- 提出先の指示を最優先にする
- 直近1〜2年分が一般的
- 原本・コピーの扱いを事前確認
上記を押さえておけば、源泉徴収票の“有効期限”で困ることは減ります。
源泉徴収票の発行・交付時期
発行時期の基本
源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの給与・賞与の支払実績をまとめて作成します。年末調整を行った後に最終的な金額を確定し、これを基に発行します。
通常の交付時期
多くの会社は年末調整が終わる12月下旬から翌年1月末までに交付します。会社の処理状況や業務都合で時期に差が出ることがありますが、年明け早めに受け取れるよう手続きを進めることが一般的です。
退職者の場合
退職した従業員には、法律で退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付することが定められています。たとえば12月15日に退職した場合は翌年1月15日までに交付されます。
交付方法と実務上の注意
紙での交付が一般的ですが、本人の同意があれば電子交付も可能です。届かない・紛失した場合は勤務先に再発行を依頼してください。金額に誤りがあれば訂正して再交付してもらいます。
途中入社・途中退職の扱い
年の途中で入社または退職した場合でも、在籍期間に対応する源泉徴収票を発行します。転職先で手続きが必要なときは、前職の源泉徴収票を受け取っておくと手続きがスムーズです。
源泉徴収票の保管期間(従業員側)
保管の法的な位置づけ
法律上、従業員が源泉徴収票を保管する義務は特に定められていません。ただし、会社は原本を渡すため、従業員は受け取った原本を自分で保管する必要があります。
保管の目安と理由
目安は最低5年です。税務署からの問い合わせや確定申告で過去の給与を確認されることがあるためです。たとえば、確定申告で還付を受ける場合や、住宅ローン審査で過去の収入を示す必要があるときに役立ちます。
紛失した場合の対応
まず勤務先に再発行を依頼してください。会社が保管している原本や控えから再発行してもらえます。前の勤務先が対応できない場合は税務署に相談すると代替の案内を受けられます。再発行を依頼する際は、対象の年と支払者名を明確に伝えてください。
保管方法と実務上の注意点
原本は紙で大切に保管し、念のためスキャンしてPDFで保存すると安全です。ファイル名は「年_会社名_源泉徴収票.pdf」のようにして年別に整理してください。転職時は退職前に必ず最新の源泉徴収票を受け取り、紛失したら早めに前職へ連絡する習慣をつけると安心です。
実務のポイント
- 毎年受け取ったらすぐ保管する
- 紛失時は早めに勤務先へ連絡する
- スキャンしてバックアップを残す
会社側の保管義務と注意点
保管義務の概要
会社は源泉徴収票自体を保管する義務は基本的にありません。発行後の源泉徴収票は従業員に渡るため、会社の手元には残らないことが通常です。ただし、源泉徴収票の元になる帳簿類(例:源泉徴収簿、給与台帳、支払調書など)は7年間の保存義務があります。これは税務調査や法定調書の根拠資料として必要になるためです。
再発行時の実務フロー
再発行が必要なときは、会社は保存している帳簿類をもとに再作成します。具体的には給与台帳や振込明細、税額計算の根拠となる書類を確認して、新たに源泉徴収票を作成・交付します。従業員に説明をして速やかに対応すると信頼を損ねません。
管理上の注意点
・帳簿の記載は正確にし、保存期間は厳守してください。税務調査で照会されます。
・個人情報を扱うためアクセス制限や複製管理を徹底してください。
・電子データで保存する場合は、法令に従った保存方法を採用し、バックアップを残しましょう。
・再発行時は誤りがないよう元資料をよく確認し、従業員へ説明責任を果たしてください。
各種手続きで必要となる源泉徴収票の「有効」範囲
各種手続きで求められる源泉徴収票の「有効」範囲は提出先によって異なります。よくあるケースを具体例で分かりやすくまとめます。
転職時
転職先への提出では、直近(通常は前年度)の源泉徴収票が必須です。年の途中で転職した場合は、在籍期間の分が記載されたものを用意します。
住宅ローン・補助金申請
住宅ローンや各種補助金では、直近1〜2年分の収入を確認されることが多いです。金融機関は年ごとの比較を求めるため、複数年分を準備してください。
確定申告
確定申告では申告対象年分の源泉徴収票が必要です。e-Taxを使う場合は、電子データの提出で足りることがありますが、提出方法は税務署の案内に従ってください。
提出先が独自に期限を設ける場合
提出先によっては「発行から3ヶ月以内」など独自の期限を設定することがあります。必ず事前に提出先へ確認してください。
紛失や発行が間に合わない場合の対処
前職へ再発行を依頼するか、必要に応じて給与明細や支払調書で代替できるか確認します。金融機関や行政窓口は代替書類を認める場合と認めない場合があります。
丁寧に事前確認すると手続きがスムーズになります。
まとめと実務上のポイント
要点まとめ
源泉徴収票自体に法定の有効期限はありません。ただし、手続きや審査では直近のものが求められることが多く、実務上は最新の源泉徴収票を使うのが一般的です。
保管期間の目安
- 従業員側:確定申告や年金・ローン申請のために最低5年間は保管することを勧めます。2〜5年分をすぐ取り出せる状態にしておくと便利です。
- 会社側:源泉徴収簿などの保存義務は7年です。退職した従業員の記録も該当します。
具体的な場面別の扱い
- 住宅ローンや各種審査:過去2〜3年分を求められることが多いです。提出用は原本か原本に準じる写しを用意してください。
- 転職や年末調整:直近の源泉徴収票を提示します。紛失した場合は前職の勤務先に再発行を依頼できます。
保管と管理の実務ポイント
- 紙はファイル、電子は暗号化やバックアップで保管してください。スキャンしてPDF保存すると紛失防止になります。
- 紛失時はまず発行元(勤務先や税務署)に相談し、必要書類の再発行や代替書類の案内を受けてください。
最後に、手続きで求められる期間はケースごとに異なります。重要書類として扱い、少なくとも5年間は保管する習慣をつけると安心です。


コメント