はじめに
目的
この章では、パート従業員が退職を考えたときに知っておきたい基本的な情報をわかりやすくまとめます。退職願や退職届が本当に必要か、書き方や提出方法、時期など全体像をつかめるようにします。
対象読者
パートで働く方、これから退職を検討している方、家族や雇用主として支援したい方を想定しています。法律用語を避け、具体例を交えて説明します。
本書のポイント
- 法律上は書面提出が必須でないことを明確に説明します。
- 円満退職のために書類を出すメリットと注意点を示します。
- 退職願と退職届の違い、提出のタイミング、具体的な書き方、テンプレートの活用法、退職の流れを順に解説します。
読み方のアドバイス
まずは第2章で「書類が必要か」を確認し、続けて書き方やテンプレートを参照すると準備が進みます。疑問があれば各章の例を比較して実務に合わせて使ってください。
パートの退職において退職願・退職届は必要か
1. 法律上の位置づけ
法律上は、退職の意思表示自体は口頭でも可能です。パートであっても正社員であっても、まずは上司に意思を伝えることで退職の効力は生じます。
2. 口頭だけで退職できるのか
基本的に、直属の上司に「退職します」と伝えれば問題なく手続きに入れます。ただ、口頭だと誤解が生じることがあるため、口頭で伝えた後にメールや簡単な書面で確認しておくと安全です。
3. 会社が書面を求める場合
就業規則や会社の慣行で書面提出を求めることがあります。求められたら応じる必要がありますので、事前に人事や上司に確認してください。書面があれば手続きや給与精算もスムーズになります。
4. 円満退職のための実務ポイント
- まずは直属の上司に口頭で伝える
- 伝えたらメールや簡単な退職願で意思確認を残す
- 提出が必要と言われたら、指定の用紙に従う
これらを守るとトラブルを避けやすくなります。
5. よくある注意点
退職の意思は明確に伝え、やり取りの記録を残すことが大切です。会社側の処理や引継ぎが円滑になるよう配慮すると、気持ちよく退職できます。
退職願と退職届の違い
1. 基本的な意味
退職願は会社に退職の合意を求める書類です。本人が退職の意向を伝え、会社と話し合って日程や引継ぎを調整します。退職届は退職の意思を確定して会社に通告する書類で、受理されると取り消せない扱いになります。
2. 撤回の可否と効力
退職願は会社が正式に受け入れる前なら撤回できます。たとえば上司と話し合って条件が合わない場合、撤回して継続勤務することが可能です。退職届は一方的な通告に近く、会社が受理した後は撤回が難しくなります。
3. 提出のタイミング
一般にはまず退職願を出して上司と交渉します。合意が得られたら退職届を提出して退職日を確定します。パートの場合も同様で、最初に退職願で相談し、合意後に退職届を出す流れが一般的です。
4. パートに向けた実務的な注意点
就業規則や雇用契約で定めた手順や期間を確認してください。引継ぎやシフト調整は早めに相談すると円滑です。書面の写しは保管し、重要なやり取りはメールなどで記録を残すと安心です。
退職願・退職届の提出方法と時期
基本の提出方法
基本は直属の上司に直接手渡しするのが原則です。まず面談の時間を簡単に伝え、落ち着いて話せる場を作ってください。面談後に書類を渡すと誤解が生じにくくなります。
書類の渡し方(封筒・折り方)
- 書類は三つ折りにして白い無地の封筒に入れます。
- 封筒の表面中央に「退職願」または「退職届」と記載します。
- 封筒の裏面左下に所属部署名と自分の名前を書きます。
- 封筒の宛名は会社ごとの慣例があるため、念のため総務や就業規則を確認してください。
提出の時期
円満に退社するため、退職希望日の1〜2カ月前の提出をおすすめします。業務の引継ぎや後任探しの時間が確保できます。勤務日数や雇用契約に特別な規定がある場合は、その期間に合わせて早めに伝えてください。
具体的な流れ
- 退職希望日を決める
- 退職願を作成する(会社指定の様式があれば使用)
- 直属の上司に申し出て、面談のうえ手渡しする
- 上司の承認を受け、最終的な退職日を決定する
面談が難しい場合は、事前に電話で申し出てから書類を郵送(簡易書留など記録が残る方法)するか、人事に相談してください。コピーを保管し、やり取りの記録を残す習慣をつけると安心です。
退職願・退職届の書き方
書式と用紙
基本は縦書きで、手書きが一般的です。会社から指定があれば横書きやパソコン作成でも構いません。用紙は白い便箋やA4・B5の白紙を使い、罫線があるものでも差し支えありません。
筆記具と印鑑
黒のボールペンや万年筆で丁寧に書きます。消えるボールペンや鉛筆は避けてください。印鑑は朱肉を使う実印・認印を押します(会社指定があれば従ってください)。
記入項目と順序(一般的な例)
- タイトル:退職願(または退職届)
- 提出日:年・月・日を明記
- 宛名:会社名と代表者名(例:株式会社○○ 代表取締役 山田太郎 様)
- 前文(私儀など):私事で恐縮ですが
- 退職理由:一身上の都合により
- 退職日:具体的な年月日(例:令和○年○月○日)
- 結びの言葉:「以上」などで締める
- 所属部署・氏名:所属・氏名をはっきり記載し、印鑑を押す
横書き・パソコン作成の場合
上記の順序を守って横書きで記載します。会社の様式がある場合はそちらを優先してください。
注意点
誤字脱字がないか、日付や宛名が正しいか確認します。提出前に上司に一言相談すると円滑です。
テンプレートの活用
退職願や退職届のテンプレートは、書式を整える手間を大きく減らします。ここでは、入手方法・種類・使い方・注意点をわかりやすく説明します。
入手方法
- インターネットで「退職願 テンプレート」「退職届 サンプル」と検索すると無料で複数見つかります。
- ハローワークや雇用関係のサイトにも公式フォーマットがある場合があります。
テンプレートの種類
- 手書き用:手書き指定の会社に向く。罫線や署名欄がある。
- PC用:文字入力して印刷するタイプ。フォントや余白を調整できます。
- メール文面用:口頭やメールで提出する際の例文を示します。
カスタマイズのポイント
- 必須項目を確認して埋める(提出日、宛先、氏名、退職希望日、理由は簡潔に)。
- 会社の呼称や上司の役職名は正式名称にする。
- 実際の提出方法に合わせて手書きか印刷かを決める。
利用時の注意点
- 会社の規定で指定書式があればそちらを優先してください。
- 手書き指定の会社ではPC印刷だと受け取ってもらえないことがあります。
- 押印が必要か確認し、控えを必ず1部残すこと。
簡単なテンプレート例(参考)
-
退職願(短)
拝啓 私事ではございますが、一身上の都合により令和○年○月○日をもって退職いたしたくお願い申し上げます。
令和○年○月○日 氏名 印 -
退職届(短)
私、○○は令和○年○月○日をもって退職いたします。
令和○年○月○日 氏名 印
テンプレートは便利ですが、そのまま使うのではなく会社のルールや自身の事情に合わせて必ず確認・修正してください。
退職の流れ
1. 退職の意思を固める
まず自分の理由と退職後の予定を明確にします。金銭面や就業先、家族の理解などを確認すると決断がぶれません。
2. 退職希望日の決定
業務の繁忙期や有給消化のタイミングを考え、希望日を複数候補で用意します。会社の就業規則で必要な通知期間を確認してください。
3. 退職願の必要性を確認
パートの場合、口頭だけで済むこともありますが、会社のルールや証拠のために退職願や届出を求められることがあります。人事に問い合わせると安心です。
4. 直属の上司へ退職の意思を伝える
まず直属の上司に直接、丁寧に伝えます。理由は簡潔に、感謝の意を添えると印象が良くなります。口頭で了承を得たら、書面の提出方法を確認しましょう。
5. 退職日の合意と書類提出
上司と退職日を調整し、合意を得ます。その後、書面(退職願/退職届)を所定の様式で提出します。有給や社会保険、給与の精算についても確認してください。
6. 引継ぎと業務整理
引継書を作成し、後任やチームに業務を説明します。重要なファイルや連絡先、手順を分かりやすく整理しておくとトラブルを防げます。
7. 退職当日とその後の手続き
最終出勤日は挨拶をし、貸与品の返却や必要書類の受け取りを行います。退職後の保険や年金の手続きについて、人事から案内を受けましょう。


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