はじめに
目的
本資料は「源泉徴収票とマイナンバーカード」に関する基本的な取扱いを分かりやすくまとめたものです。源泉徴収票にマイナンバーを記載する必要があるか、誰に、どのように提出するかといった実務上の疑問に答えます。
本資料で扱う内容
- 源泉徴収票におけるマイナンバーの記載要否と提出先ごとの違い
- 法定調書の種類とマイナンバーの記載要件
- 従業員からマイナンバーを取得する手順と安全な管理方法
- マイナポータル連携を使った確定申告の効率化
想定読者
総務・人事・給与担当者、個人事業主、会計事務所の実務担当者を主な対象としています。例えば、従業員50名規模の会社で給与を扱う担当者や、個人事業主で源泉徴収票の提出が必要な方に役立ちます。
本資料の使い方と注意点
実務で使える手順やポイントを中心に説明します。マイナンバーは個人情報ですので、取得・保管・提供の際は厳重に取り扱ってください。法令解釈や最新の運用は所轄の所管機関や税理士に確認することをおすすめします。
源泉徴収票とマイナンバーの基本関係
概要
源泉徴収票(従業員に交付する控え)へマイナンバーを記載することは原則として不要です。個人情報保護の観点から、従業員の手元に渡る書類には番号を書かない取り扱いが一般的です。一方で、2016年のマイナンバー制度導入以降、税務署等へ提出する法定調書にはマイナンバーや法人番号の記載が求められます。
記載の違いと理由
交付用の源泉徴収票と税務署提出用の法定調書では目的が異なります。交付用は従業員の確認用であり、不要な個人情報は載せません。法定調書は行政手続きのための情報で、正確な本人確認のために番号が必要です。例として、従業員には番号なしの源泉徴収票を渡し、税務署へ提出するときだけ番号を付ける運用が多いです。
実務上の注意点
マイナンバーは収集・保管・廃棄を厳格に行ってください。収集は必要最小限にし、アクセス権を限定します。従業員の控えに番号を書かない旨を周知し、提出用と交付用を分けて管理すると安全です。
提出先別のマイナンバー記載要件
概要
税務署や市区町村に提出する源泉徴収票や給与支払報告書には、個人番号(マイナンバー)の記載が必要です。一方で、従業員本人に交付する源泉徴収票にはマイナンバーの記載は不要です。
誰に記載が必要か
- 税務署へ提出する書類:源泉徴収票の提出用にはマイナンバー欄があります。提出漏れや誤記入に注意してください。
- 市区町村へ提出する書類:住民税のために給与支払報告書などに個人番号を記載します。
- 従業員本人交付分:個人情報保護の観点から、マイナンバーは記載しないで交付します。
実務上の注意点
- 収集時の確認:従業員から番号を受け取る際は、本人確認書類で番号と氏名・生年月日が一致するか確認してください。
- 記載ミス対策:番号の桁数や氏名の一致を二重チェックすると安全です。誤記があると税務署や市区町村から差し戻されることがあります。
- 保管・取扱い:マイナンバーは厳重に管理します。提出済みの控えや収集書類も適切に保管してください。
電子的提出について
- 電子申告や電子提出時も、提出先が求める個人番号の入力が必要です。送信前に画面上で番号の表示・非表示の扱いを確認し、誤送信を防いでください。
法定調書の種類と記載要件
主な法定調書とマイナンバーの要否
- 給与所得の源泉徴収票:マイナンバーの記載が必要です。
- 退職所得の源泉徴収票:マイナンバーの記載が必要です。
- 公的年金等の源泉徴収票:マイナンバーの記載が必要です。
- 報酬・料金等の支払調書:支払先が法人や個人に対して税務署へ提出する様式にはマイナンバーを記載します。ただし、支払を受けた本人に交付する書面(交付用)にはマイナンバーの記載は不要です。
記載する内容と実務のポイント
法定調書に記載するのは原則として対象者のマイナンバーと氏名等の基本情報です。記載前に本人確認を確実に行い、番号の誤記を防いでください。番号を受け取る際は、収集目的を説明し同意を得ると安心です。
提出先と期限
法定調書は税務署への提出が必要です。電子提出と書面提出のどちらでも、提出用の様式にはマイナンバーを記載します。通常、翌年の所定期限までに提出しますので、事前の準備をおすすめします。
セキュリティと保管
マイナンバーは厳重に管理してください。アクセス制限、暗号化、保管期間のルールに従い、不要になったら適切に廃棄します。交付用の書面に番号を載せないことで、情報漏えいリスクを減らせます。
従業員からマイナンバーを提出してもらう流れ
1. 収集の準備
まず社内で収集窓口と期限を決めます。通知文で「個人番号(マイナンバー)」「本人確認書類のコピー」「提出方法」「締切日」を明示してください。例:給与担当メールまたは専用の回収封筒を用意します。
2. 提出方法の例
- 紙での提出:所定の用紙に記入し、身分証明書のコピーを添付して封筒で提出。\
- 電子での提出:社内の安全なフォームやメール暗号化で送付。\
- 対面回収:総務が直接確認し、コピーをその場で取得。
各方法で安全性を確保してください(ロックされた保管場所や暗号化通信)。
3. 本人確認の手順
本人確認は写真付き身分証(例:マイナンバーカード、運転免許証、旅券)を用います。提出時に提示して写しを取るか、マイナンバーカードの場合はカード番号と氏名を確認します。コピーは必要事項が判読できるようにしてください。
4. コピーの取り扱いと記録
コピーには提出日と受領者名を記入し、受領印やデジタルログを残します。アクセス権を限定し、不要になったら定められた保存期間経過後に確実に廃棄します。
5. 未提出時の対応
期限までに出ない場合は督促を行い、事情確認のうえで再通知します。どうしても提供できない場合は給与担当や税理士と相談して対応方法を決めてください。
マイナンバー提供後の対応
再提出が必要かどうか
税務署に源泉徴収票を提出した後で従業員からマイナンバーが届いた場合、原則は再提出します。ただし、氏名・支払金額・扶養等の記載に誤りがなく、追加するのがマイナンバーだけであれば、再提出を省略できる場合があります。実務では税務署の取扱要領や事例を確認してください。
具体的な対応手順
- まず提出済みの源泉徴収票と届いたマイナンバーを照合します。内容が一致すれば、再提出の要否を判断します。
- 再提出が必要な場合は、正しい情報で訂正した源泉徴収票を作成し、税務署へ提出します。併せて従業員に訂正の連絡を行ってください。
- 再提出を省略する場合でも、いつ・誰から・どのようにマイナンバーを受領したかを記録して保管します。税務調査等で説明できるようにしておきます。
事務管理と保存・廃棄
マイナンバーは厳重に管理します。アクセス権を限定し、電子データは暗号化、紙は施錠保管します。保存期間は法令に従い、不要になれば速やかに安全に廃棄してください。
従業員への対応
マイナンバー取扱いの説明と、収集後の管理方法を従業員に伝えます。誤記や変更があれば速やかに知らせてもらうよう依頼してください。
マイポータル連携による確定申告の効率化
概要
2024年2月から、勤務先が税務署に提出した源泉徴収票の情報をマイナポータル経由で取得し、国税庁のe-Taxで確定申告書に自動入力できるようになりました。手入力の手間が減り、記入ミスも少なくなります。
利点(具体例を交えて)
- 自動入力で給与や源泉徴収税額が反映されます。例:会社員Aさんは勤務先のデータを取り込むだけで所得欄が埋まりました。
- 手書きやコピーの添付が不要になるケースがあります。領収書など別途必要な書類は従来どおりです。
準備するもの
- マイナンバーカード(電子証明書が有効)
- e-Taxの利用環境(マイナポータル連携に対応したスマホやカードリーダー)
- 事前に勤務先が源泉徴収票を提出していること
操作の流れ(簡潔)
- e-Taxにログイン(マイナンバーカードで認証)
- マイナポータルから『源泉徴収票のデータ取得』を選択
- 取得したデータを申告書へ自動反映
- 金額を確認して申告書を送信
注意点
- 取得できるのは勤務先が提出した情報に限ります。未提出や訂正がある場合は反映されません。
- データは必ず確認してください。控除や副収入は別途入力が必要です。
- データの取り込みで不一致があれば勤務先へ確認し、必要なら訂正してもらいます。
実務のコツ
提出タイミングを確認し、早めに取り込んで内容を精査しましょう。取り込みだけで安心せず、控除額や扶養の状況も併せて確認してください。
まとめと実務上の注意点
概要
源泉徴収票へのマイナンバー記載は、税務署へ提出する用の書類にだけ必要です。従業員本人に交付する用の源泉徴収票には記載しません。人事・給与担当者はこの違いを常に意識してください。
重要なポイント(実務で押さえるべきこと)
- 提出先を確認する:税務署提出用か従業員交付用かをまず区別します。
- 記載方法:税務署提出分には正確なマイナンバーを記載、交付用は未記載またはマスキングします。
- 本人確認:マイナンバー収集時は身元確認書類を確実に確認します。
実務上の注意点(具体的対応)
- 書類の管理:マイナンバーを含む書類は厳重に管理し、アクセス権限を限定します。
- 保管期間と廃棄:法定保存期間を守り、不要になったら適切に廃棄します(シュレッダー等)。
- 電子的取扱い:電子保存・提出する場合は暗号化やログ管理を行います。
- 社内ルール整備:収集・利用・廃棄のフローを文書化し担当者に周知します。
よくある誤解と対応例
- 誤解:すべての源泉徴収票にマイナンバーが必要と思われがちです。
対応:交付用は不要である旨を社内で説明し、誤配送を防ぎます。 - 誤解:収集すれば自由に利用できると思うケース。
対応:利用目的を限定し、同意や法令に基づく利用のみ行います。
業務上は、提出先の区別と厳格な情報管理が最も重要です。日々の運用を整備することで、誤記載や情報漏えいのリスクを大きく減らせます。ご不明点があれば、具体的な運用例に合わせてさらに説明します。


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