はじめに
ご挨拶
本レポートへお越しいただきありがとうございます。本書は「源泉徴収票を提出しない」ことに関する疑問や不安に答えるために作成しました。特に転職者、転職を検討中の方、フリーランスを目指す方に役立つ実用的な情報を丁寧にまとめています。
本章の目的
この「はじめに」では、本レポートの目的と読み方を示します。まず全体像をわかりやすく伝え、その後の各章で詳しく解説します。初めて読む方でも迷わないように配慮しています。
レポートの構成と進め方
全10章で、源泉徴収票の基礎、法的扱い、提出しない場合のリスクや対応、確定申告との関連、企業側の実務まで順を追って説明します。章ごとに具体例や実務的な対処法を示しますので、必要な章だけを参照しても理解できる作りにしています。安心して読み進めてください。
源泉徴収票とは何か
概要
源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った給与や賞与について、支払金額と天引きされた所得税の額、社会保険料や各種控除の金額などが記載された書類です。会社が従業員に交付します。
主な記載項目(具体例で説明)
- 支払金額:その年に受け取った総支給額(例:給与や賞与の合計)
- 源泉徴収税額:毎月天引きされた所得税の合計額
- 社会保険料等:健康保険・厚生年金などの本人負担分
- 控除額:扶養控除や基礎控除など、税額計算に使う金額
- 支払者情報:会社名や所在地、受給者の氏名など
使いみち
年末調整や確定申告で必須になります。例えば、副業で複数の勤務先がある場合は、それぞれの源泉徴収票を確定申告で合算します。
保管と再発行
個人情報を含むため大切に保管してください。紛失した場合は、勤務先に連絡して再発行を依頼します。
源泉徴収票の提出は法的義務ではない
結論
源泉徴収票を転職先に出すことは法律で義務づけられていません。提出しないことで刑罰や罰金が科されることはありません。多くの場合、提出は任意です。
なぜ義務ではないのか
源泉徴収票は前職での給与や税額を示す書類です。税務上は個人が確定申告で正しく申告すればよく、転職先に提出すること自体を国が強制する規定はありません。
実務上の理由で求められる
企業は年末調整や給与計算のために源泉徴収票を求めます。提出がないと年末調整ができず、転職先が代わって税額を調整できない場合があります。結果としてあなたが自ら確定申告を行う必要が生じることがあります。
対処法の簡単な指針
まずは転職先と率直に相談してください。理由を説明し、代替書類(給与明細や雇用期間の証明)を提示すると受け入れてもらえる場合があります。個人情報の取り扱いが心配なら、どのように保管・利用するかを確認してください。
提出しないことで生じるリスク
概要
源泉徴収票を提出しないと、年末調整や税金の還付に影響が出ます。ここでは実務で起こりやすいリスクを具体例を交えて分かりやすく説明します。
主なリスク
-
年末調整の対象から外れる
前職の源泉徴収票がないと、会社はその従業員を年末調整の計算から外す場合があります。結果として過払いの所得税が還付されません。 -
還付が受けられない
過去に多く税を払っていた場合、本来戻るはずの税金が手元に戻らないままになります。自分で確定申告する必要が出ます。 -
休職や転職の事情が伝わる可能性
提出を渋ると、転職先が休職や離職の事情を推測することがあります。プライバシー面で気になる方は注意が必要です。 -
事務手続きの煩雑化
会社側で再確認や問い合わせが増え、手続きが遅れます。結果として源泉徴収票の取得や還付の受け取りまで時間がかかります。
具体例
例:Aさんは前職の源泉徴収票を提出しなかったため、今年の年末調整で還付を受けられませんでした。Aさんは翌年に自分で確定申告をして還付を受けることになり、手間と時間が余計にかかりました。
どう対応するか(簡単)
可能であれば早めに前職から源泉徴収票を取り寄せ、現在の勤務先に提出してください。提出が難しければ、翌年に自分で確定申告する準備をしておきます。
提出しないで済む方法
概要
源泉徴収票を転職先に提出したくない場合、自分で確定申告を行うことで対応できます。確定申告は1年間の収入と税額を自分で精算する手続きです。転職先には「自分で確定申告をするので提出は不要です」と伝えると受け入れてもらえる場合があります。
手順(具体例)
- 前職の源泉徴収票は自分用に受け取るか、給与明細で金額を確認します(例:給与合計と源泉所得税の金額)。
- 翌年の確定申告期間に、集めた書類をもとに申告書を作成します。e-Taxを使えば自宅から提出できます。
- 提出後、税務署から還付があれば振込で受け取れます。
転職先への伝え方(例文)
「申し訳ありませんが、源泉徴収票は自分で確定申告を行うために個人で管理します。御社へは提出しなくてもよろしいでしょうか。」
準備する書類
- 自分宛の源泉徴収票(可能なら)
- 給与明細
- 保険料控除の証明書類
- マイナンバーや本人確認書類
注意点
- 会社側が給与計算や社会保険の手続きで必要とする場合があります。その際は相談して書類の範囲を決めましょう。
- 期限内に確定申告をしないと追徴課税や還付の遅れが生じます。期限を確認して余裕を持って準備してください。
確定申告時の源泉徴収票の扱い
概要
2019年4月1日以降、確定申告書に源泉徴収票を添付する必要はありません。ただし、確定申告書の「給与」欄などには、源泉徴収票に記載された金額を転記します。転職先へ提出する必要はなくても、自分で申告する場合は原本を手元に用意してください。
転記の仕方(具体例)
- 給与収入額:源泉徴収票の「支払金額」をそのまま記入します。
- 所得控除:社会保険料や生命保険料控除は別途の証明書を参照します。源泉徴収票には控除関係の情報が一部記載されています。
手元に保管する理由
源泉徴収票は誤りがないか確認するために必要です。金額が合わないと税額が変わるため、控えを必ず保管してください。
紛失したときの対応
勤務先に再発行を依頼します。退職済みでも会社に請求できます。再発行が難しい場合は、支払調書や給与明細で代替できることがありますので、税務署に相談してください。
電子申告(e-Tax)の場合
e-Taxでも添付は不要ですが、入力時に源泉徴収票の記載を参照します。入力ミスを防ぐために手元に準備しておくと安心です。
注意点
複数社から給与を得ているときは、すべての源泉徴収票を用意してください。記載内容に不明点がある場合は勤務先か税務署へ早めに確認してください。
提出期限を過ぎた場合の対処法
- 期限の確認
退職時の源泉徴収票は、年の途中で退職した場合は退職後1か月以内、それ以外は翌年1月31日までに交付されます。まずは自分がいつまでに受け取るべきだったかを確認してください。
- まずは会社に丁寧に問い合わせる
口頭で済ませず、メールや書面で交付を依頼します。やり取りは保存して証拠にしてください。具体例:メールで「源泉徴収票の交付をお願いします。交付期限は○月○日です」と送る。
- 税務署への届出(源泉徴収票不交付の届出書)
会社が期限を過ぎても交付しないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。税務署は届出を受けて会社へ交付を促す行政指導を行います。
- 届出に必要なもの・流れ
本人確認書類、勤務先の名称・所在地、退職日、受け取るべき源泉徴収票の年分などを用意します。税務署の窓口で書類を記入し提出します。電話で相談してから行くと手続きがスムーズです。
- 届出後の注意点と代替手段
税務署の指導で会社が交付するケースが多いですが、時間がかかることもあります。確定申告の期限が迫る場合は、給与明細や振込記録を使って自分で申告できます。その際も税務署に相談すると支援を受けられます。
- 記録を残す重要性
交付依頼の履歴や税務署とのやり取りは、大事な証拠になります。後の手続きや争いを避けるために、必ず記録を残してください。
提出が不要となるケース
ケース1:前年の給与が前年内で完結している場合
例:前職の給与支給が前年12月で終わり、転職先に1月1日に入社したとき。新しい会社で前年に給与支給が一切なければ、前職の源泉徴収票を提出する必要がないことが多いです。年末調整で前職分が必要になる場面がないためです。
ケース2:前年途中で退職し年をまたいで転職した場合
前年中に退職し、その後に年をまたいで別の職場に就職した場合も、前職からの給与が翌年に支払われていなければ提出を求められないことがあります。具体的には前職の支払日がすべて前年内に収まっているかを確認してください。
ケース3:前職が副業・兼業で主たる収入でない場合
前職の給与が生活の主な収入でなく、額が小さい場合は、転職先が源泉徴収票の提出を求めないことがあります。例として、別に本業があり前職は週末のアルバイトだったケースなどです。
確認と対応
どのケースでも、最終判断は転職先の人事・経理がします。不安なときは事前に相談し、給与明細や退職証明を提示できるよう準備してください。必要があれば源泉徴収票を後日提出する旨を伝えるとスムーズです。
企業側の実務対応
締切の設定と周知
社内で明確な提出締切を設け、就業規則や社内ポータルで周知します。期限と提出方法(紙・メール・社内システム)を具体的に示すと、社員が迷わず対応できます。
提出支援とフォロー
提出書類の書き方見本やチェックリストを配布し、窓口(人事・総務)を設けて相談に応じます。締切前にリマインドを複数回出すことで未提出を減らせます。
提出が間に合わない場合の扱い
期限までに書類がそろわない場合は年末調整の対象外とする運用が一般的です。ただし、提出の見込みがある場合は締切を延長し、可能な範囲で年末調整を待つ運用も検討してください。未処理分は翌年以降の調整や個人の確定申告で対応する旨を明確に伝えます。
特別な事情への配慮
長期休職・転勤・災害などで提出が難しい場合は個別対応します。新入社員や退職者の扱いも事前にフローを決めておくと混乱を避けられます。
記録管理と個人情報保護
受領記録を残し、書類の取り扱いは厳重に管理します。電子化する際はアクセス権や削除ルールを定め、個人情報保護に配慮してください。
まとめと注意点
要点の確認
源泉徴収票を提出する義務はありません。自分で確定申告を行う場合は、給与や源泉徴収額を正確に申告する責任と手間が発生します。
主な注意点
- 提出を省くと、会社側が年末調整であなたの情報を反映できません。結果として自分で確定申告が必要になります。
- 提出漏れは後から訂正可能です。前職に源泉徴収票の発行を依頼したり、税務署で相談したりできます。
実務的な行動例
- 転職する場合は、前職に源泉徴収票の発行時期と送付方法を確認してください。
- 転職先には「前職の源泉徴収票を確保している」と伝えると手続きがスムーズです。
- 源泉徴収票の控えは必ず保管し、確定申告で同じ内容を転記してください。
困ったときの相談先
税務署や税理士に相談すれば、確定申告の方法や修正手続きの流れを教えてもらえます。手間を減らしたい方は専門家の活用を検討してください。
大切なのは、前職と転職先の間で適切にコミュニケーションを取り、自分の申告と書類をきちんと管理することです。これだけで多くのトラブルを防げます。


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