はじめに
この文書は、外国人労働者に関する源泉徴収票(給与支払報告)と税務手続きの基本を分かりやすく説明するために作成しました。雇用する側・働く側の両方が知っておくべきポイントを丁寧に整理しています。
目的
・外国人の給与に関する源泉徴収の仕組みを理解すること
・居住者・非居住者の判定や税率の違いを把握すること
・租税条約の影響や確定申告で必要な書類を知ること
想定読者
・日本で外国人を雇用する企業の人事・経理担当者
・日本で働く外国人本人(初めて源泉徴収に接する方)
・税務手続きを確認したい個人・支援者
本書の構成と読み方
第2章で居住者・非居住者の判定と源泉徴収の違いを詳しく扱います。第3章では確定申告の手順、対象となる所得や控除を具体例とともに紹介します。まずは第2章で自身の「税区分」を確認してください。税区分で源泉の税率や申告の必要性が大きく変わります。
注意点(先に押さえておくこと)
・税の扱いは「居住地・滞在状況・給与の支払い形態」で変わります。短期出張と長期赴任では扱いが異なることが多いです。
・租税条約により税負担が軽くなる場合があります。適用には届出や書類が必要です。
本章は全体の案内です。次章から実務で使える具体的な手順と書類例を順に説明します。
外国人の源泉徴収【2025年版】居住者・非居住者の判定方法と対応
居住者と非居住者の判定基準
居住者は日本に「生活の本拠」がある人です。一般に日本に1年以上住む見込みがあると居住者になります。短期滞在や本国に生活拠点がある場合は非居住者です。確認は在留カードやパスポート、住民票の有無で行います。
税の扱いと源泉徴収の違い
居住者:日本国内外の所得が課税対象になり、給与などは累進課税に基づき源泉徴収します。控除(基礎控除など)も適用されます。
非居住者:日本国内源泉所得のみが課税対象で、給与以外の報酬は原則一律20.42%の源泉徴収です。所得控除は基本的に適用されません。
租税条約の確認
外国と日本の間に租税条約がある場合、源泉税率が軽減・免除されることがあります。条約適用を受けるには、相手国の居住者証明(居住証明書)を提出してもらいます。
海外在住者との業務委託契約の扱い
業務が日本国内で行われた場合は国内源泉所得と判断され源泉徴収対象になります。海外で完結する業務なら課税されないことが多いです。契約書に作業場所や支払条件を明記し、証拠を残してください。
実務上の注意点
年に1回は居住判定を確認し、租税条約を使う場合は書類を確実に保管します。疑問があるときは税理士に相談すると安心です。
外国人の確定申告のやり方は?対象となる所得や控除
必要書類
- 源泉徴収票(給与など)
- 在留カードの写し
- 居住形態を示す書類(住民票や賃貸契約書の写し)
- 預貯金通帳の写し(還付受取口座確認用)
- 医療費や社会保険料の領収書、寄附金の受領証など
具体例:給与だけの人は源泉徴収票と在留カードがあれば申告できます。副業や不動産収入がある人はそれらの収支資料も必要です。
源泉徴収票の役割と確認ポイント
源泉徴収票は、支払金額や天引きされた税額を証明します。金額や支払者名、支払年月が正しいか必ず確認してください。氏名やマイナンバーは一致させます。誤りがあると還付や納税額が変わる場合があります。
対象となる主な所得
- 給与所得:日本で働いた収入
- 事業・不動産所得:副業や貸家の収入
- 利子・配当:預金利息や株の配当
- 一時所得や譲渡所得:保険の満期金や株売却益
具体的な扱いは所得の種類ごとに異なりますので、証拠書類を揃えてください。
使える主な控除
- 基礎控除、配偶者控除
- 社会保険料控除(日本の保険料)
- 医療費控除、寄附金控除
控除を使うと税金が戻る場合があります。領収書類を添付または保存してください。
還付金受取口座の名義確認
還付金は預金口座に振り込まれます。口座名義が申告者と一致しないと受け取れないことがあります。名義の確認書類を準備してください。
申告方法と期限
- 方法:税務署窓口、郵送、e-Tax(オンライン)
- 期限:原則として翌年の3月15日まで(事情で変わる場合あり)
税務署で不明点を相談できます。書類は写しを取り、控えを保管してください。


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