はじめに
本資料の目的
本資料は、源泉徴収票と報酬に関する基本的な知識と、日常の実務で使える取り扱い方をわかりやすくまとめています。難しい税法用語を避け、具体例を交えて説明しますので、初めての方でも理解しやすい構成です。
誰のための資料か
- 給与担当者や経理担当者
- フリーランスや個人事業主で報酬を受け取る方
- 源泉徴収票の意味を確認したい方
本資料で学べること
- 源泉徴収票とは何か、誰が発行するか
- 報酬と給与の違いと判定のポイント
- 源泉徴収の基本的な仕組みと対象となる支払い
- 報酬にかかる源泉税の計算方法(実務例つき)
- 年末調整との関係と整理の仕方
読み方のポイント
各章は実務で出会う場面を想定して書いています。該当する章だけを先に読むこともできますが、全体を通して読むと理解が深まります。具体的な計算例は第5章にまとめていますので、実務で使う際はそちらをご参照ください。
注意事項
税制には例外やケースバイケースが多くあります。ここでの説明は一般的な取り扱いに基づきます。個別の判断や税務署との手続きが必要な場合は、専門家に相談してください。
源泉徴収票とは
概要
源泉徴収票は、1年間に会社が従業員に支払った給与・賞与・退職金などの金額と、会社が差し引いた所得税や社会保険料などが記載された書類です。会社が発行し、税務申告や年末調整、各種手続きで重要になります。
誰が発行し、誰が受け取るか
雇用主(会社)が従業員に対して発行します。給与や賞与、退職金の支払いがあった人が対象です。役員は年間給与総額が150万円を超えると発行対象になります。
主な記載項目(見方のポイント)
- 支払金額:額面の合計。基本給・残業代・各種手当・賞与を含みます。具体的には年収の元になる金額です。
- 源泉徴収税額:会社があらかじめ差し引いた所得税の合計額です。
- 社会保険料等の控除額:会社負担分とは別に記載されます。控除された金額が分かります。
- 支払者・受給者情報:会社名、従業員名、マイナンバー等(記載項目は様式による)
具体例と活用場面
年末に会社が発行し、転職で年の途中に複数の会社から給与を受け取った場合は、それぞれの会社から源泉徴収票を受け取ります。確定申告や住宅ローンの申請、年末調整の確認に使います。
受け取り方と保管の注意
退職時や年末に交付されます。受け取ったら必ず中身を確認し、税金や扶養の情報に誤りがないかチェックしてください。紛失すると再発行が必要になるため、大切に保管してください。
報酬と給与の違い
概要
報酬と給与は受け取り方や税の扱いが違います。給与は会社などとの雇用契約に基づく対価で、報酬は成果物やサービスに対する支払いです。以下で具体的に説明します。
契約形態と受け取り方
- 給与:雇用契約に基づき毎月支払われることが一般的です。勤務時間や労働条件が明確で、給与明細が発行されます。社会保険の加入も会社が手続きを行います。
- 報酬:業務委託や請負などで支払われます。仕事の成果や時間単位で支払われ、請求書を発行する場合が多いです。契約は個別に取り決めます。
所得の分類と判定の目安
- 給与は「給与所得」に該当します。
- 報酬は事業として継続的に行っている場合は「事業所得」、一時的・副業的であれば「雑所得」となることがあります。判断の目安は継続性や規模、営利性です。
税と手続きの違い
- 給与:通常、雇用主が源泉徴収し年末調整で税額を精算します。原則として確定申告が不要な場合が多いです。
- 報酬:支払者が源泉徴収する場合もありますが、最終的な税額は受け取る側が確定申告で精算します。経費を差し引ける点が特徴です。
実務上の違い(書類・控除)
給与は給与明細や年末調整の書類が中心です。報酬は請求書や領収書を保管し、必要経費を帳簿に記録します。経費を正しく計上すると課税所得を減らせます。
源泉徴収の仕組みと対象
概要
源泉徴収は、給与や報酬を支払う側があらかじめ所得税を差し引き、国に納める仕組みです。受け取る側が後で税金をまとめて支払う負担を軽くする役割があります。事業者や会社が支払の都度、税額を天引きします。
誰が源泉徴収するか
支払う事業者や会社が源泉徴収を行います。個人が個人に一時的に少額を払う場合など、例外もありますが、原則として支払者が税金を差し引いて納付します。
どの報酬が対象か
報酬のうち、特定の職業に対するものが源泉徴収の対象になります。代表的なものは原稿料、講演料、弁護士・司法書士などの専門職報酬、プロスポーツ選手の契約金などです。対象となる報酬には通常、10.21%の税率が適用されます。
対象額と消費税の扱い
原則として源泉徴収の対象額は消費税を含みます。ただし、請求書などで「報酬は税込み」「消費税は別」と明確に区分されている場合は、消費税を除いた金額をもとに源泉徴収できます。
実例と注意点
例:作家へ税込10万円を支払う場合、区分がないと100,000円×10.21%=10,210円を源泉徴収します。請求書で消費税(10%)と報酬を分けて示していれば、報酬90,909円に対して10.21%をかけるなどの扱いになります。支払者は正しく区分して控除し、所定の期限までに納付する義務があります。
報酬の源泉徴収税額の計算方法
基本の計算
報酬の源泉徴収税額は、原則として「報酬額×10.21%」で計算します。支払金額が1回で100万円を超える場合は、超過分に対して高い税率(20.42%)が適用されます。
消費税の扱い
消費税が報酬と明確に区分されているときは、消費税を除いた報酬額が課税対象です。区分されていない(=税込表示のみ)の場合は、合計金額に対して上の率を乗じます。
計算手順(実務の流れ)
- 消費税が分かれているかを確認する。
- 課税対象額を決める(分かれていれば税抜、そうでなければ税込)。
- その金額に10.21%を乗じる。1回の支払いが100万円を超える場合は、上限100万円までは10.21%、超過分は20.42%で計算して合算する。
具体例
- 税込で110,000円の場合:110,000×0.1021=11,231円
- 報酬100,000円+消費税10,000円(分かれている): 100,000×0.1021=10,210円
- 支払額1,200,000円の場合:1,000,000×0.1021+200,000×0.2042=102,100+40,840=142,940円
注意点として、実際の端数処理は事務上のルールに従います。疑問があれば税務担当者に確認してください。
源泉徴収と年末調整
給与(会社員)の場合
給与からの源泉徴収税は、企業が年末調整で一年分をまとめて精算します。年末調整で過不足が判明すれば、過払いなら給与で還付し、不足なら追加で徴収します。たとえば生命保険料控除や扶養の変更があれば、控除を反映して税額が変わります。\n\n### 報酬(個人事業主・フリーランス)の場合
報酬では支払側が一定額を源泉徴収しますが、最終的な精算は納税者本人が確定申告で行います。納めすぎていれば還付を受け、足りなければ追加で納付します。給与と兼業している場合、給与側の年末調整と確定申告の関係に注意してください。\n\n### 手続きと必要書類
給与者は会社から受け取る源泉徴収票を保管します。報酬を受け取る人は支払調書や領収書、経費の証拠を整理します。確定申告が必要かどうか不明なときは、源泉徴収票や支払い明細をもとに判断してください。\n\n### 具体例
・会社員Aさん:年間の源泉徴収が多ければ年末調整で還付されます。\n・フリーランスBさん:報酬から10%が源泉徴収された場合、確定申告で経費を差し引き還付を受けることがあります。\n\n### 注意点
年末調整は会社が行うため手続きは比較的簡単です。報酬の源泉徴収は自分で確定申告する必要がある点を忘れないでください。必要な書類は普段から整理しておくと手続きがスムーズになります。


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