はじめに
本資料は、離職票の電子申請に関する調査結果を分かりやすくまとめたガイドです。従来の紙申請との違いや電子申請の利点、事前準備、具体的な手続きの流れ、本人確認書類や添付書類の要件、離職者がマイナポータル経由で離職票を受け取る方法までを扱います。
対象読者
- 企業の総務・人事担当者
- 退職手続きを行う従業員
- 社会保険・雇用保険の手続きに不慣れな方
本資料の使い方
各章は順を追って読めば申請の全体像がつかめます。具体的な手順や必要書類の項目では実例を示し、初めての方でも手続きしやすいよう配慮しました。運用ルールや細かな要件は自治体や機関によって異なる場合がありますので、不明点は所轄の窓口に確認してください。
離職票の電子申請とは
離職票の電子申請は、e-Gov(電子政府の総合窓口)を使って「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」をオンラインで行う仕組みです。インターネット環境があれば、24時間365日いつでも手続きできます。
どんな手続きか
- 退職した従業員について、事業主が雇用保険の資格喪失と離職票の交付を申請します。
- 紙で役所に持参・郵送する代わりに、データを送信して手続きを完了させます。
利用の流れ(簡単な例)
- e-Govにログインします。
- 「雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」を選び、必要事項を入力します。
- 必要な添付書類をアップロードして送信します。
- 受付の確認や控えをダウンロードします。
いつ使えるか
インターネット環境があれば時間を気にせず申請できます。夜間や休日でも手続き可能です。
注意点
- 入力ミスや添付漏れがあると処理が遅れます。入力前に書類や情報を確認してください。
- 紙の控えが必要な場合は、送信後に印刷して保管してください。
具体例
小さな事業所で従業員が退職した場合、出社せずに管理者が自席から申請を完了できます。郵送の手間や往復時間を省ける点が特徴です。
紙申請と電子申請の比較
受付時間と提出方法
紙申請はハローワークや窓口に直接持参または郵送します。窓口は受付時間が限られるため、来訪の予定を立てる必要があります。電子申請はe-Govや専用のWeb画面から行え、24時間365日いつでも送信できます。
本人署名と確認
紙申請は離職者本人の署名や押印が求められることが多く、来所が必要になる場面があります。電子申請では多くの場合、オンラインの本人確認やログインで対応でき、紙の署名は不要です。
必要書類と添付方法
紙申請は原本やコピーを持参・郵送します。電子申請は書類をスキャンしてPDFなどで添付します。ただし、原本確認が必要な書類は窓口で求められる場合があります。
経費と時間の比較
紙申請は印刷代、郵送費、窓口までの交通費や待ち時間などの負担が生じます。電子申請はこれらを削減でき、処理のやり取りも短縮されやすいです。
対応の違いと注意点
不備があった場合、紙は再提出や窓口対応が必要で手間がかかります。電子申請ならオンラインで修正や再提出がしやすく、通知も早いことが多いです。ただし、ログイン情報や添付ファイルの準備など事前の準備は重要です。
電子申請のメリット
時間効率の向上
電子申請は作成から送信までを短時間で済ませます。例えば、紙で郵送する場合に比べて、入力後すぐに送信できるため数日かかる手続きが当日中に完了することが多いです。再提出が必要なときも、修正して再送信するだけで済みます。
24時間365日対応
窓口の営業時間に合わせる必要がありません。夜間や休日でも作業できます。仕事や育児で平日に時間が取れない方でも、自宅や外出先から手続きできます。
経費削減
印刷代、封筒代、切手代、出社にかかる交通費などを削減できます。企業側も紙の保管コストや郵送管理の手間が減るため、全体の経費を抑えられます。
書類手続きの簡素化
入力フォームやチェック機能により、記入漏れや誤記を防げます。必要書類をスキャンして添付すれば一度で完結するため、書類の取扱いが簡単になります。署名や押印が不要な場合が多く、手続きがスムーズです。
多様な働き方への適応
リモートワークや時短勤務の方も職場に出向く必要がなくなります。いつでもどこでも手続きできる仕組みは、多様な働き方を支援します。
電子申請に必要な事前準備
マイナンバーの登録
離職者のマイナンバーが正しく登録されていることを確認してください。企業側と本人の情報が一致していないと申請が止まることがあります。通知カードや個人番号カードで番号を照合します。
e-Govアカウントの作成
e-Govの利用にはアカウントが必要です。事業者用と個人用があり、登録にはメールアドレスや事業者情報を入力します。ログイン情報は安全に管理してください。
GビズIDまたは電子証明書の取得
法人で申請する場合はGビズIDが便利です。個人や小規模事業者は公的個人認証の電子証明書(マイナンバーカード内)で代替できます。発行には時間がかかるので早めに申請してください。
e-Gov電子申請アプリのインストール
推奨ブラウザや専用アプリをインストールします。動作環境(OS、ブラウザのバージョン)を確認し、ログインできるか事前に試してください。
インターネット環境の確保
安定した回線を用意します。ファイル送信中に接続が切れると再送が必要になりますので、Wi‑Fiより有線回線が望ましいです。
書類の電子データ化(形式と品質)
賃金台帳、出勤簿、退職届などをスキャナやスマホでPDF化します。300dpi程度で文字がはっきり読めること、ファイル形式はPDFが無難です。ファイル名は分かりやすくしておきます。
準備する書類と確認事項
必須書類の一覧を作り、署名・押印の有無、日付の記載、マイナンバーの有無を確認します。個人情報は暗号化やパスワード付きZIPで保管すると安全です。
実務のコツ
最初はテスト申請で流れを確認します。申請前に上司や担当者とチェックリストで突合せを行い、再提出の手間を減らします。バックアップを必ず残してください。
電子申請の具体的な手順
1. e-Govポータルにログインし手続きを選択
e-Govにアクセスしてログインします。ログイン方法は、マイナンバーカード(カード読み取り)か利用者IDとパスワードのどちらかを使います。ログイン後、「雇用保険関係」(または「離職票」)の手続きを選んでください。
2. 申請書類一式を作成し必要書類をアップロード
画面のフォームに沿って必要事項を入力します。離職日や事業所情報、賃金など丁寧に記入してください。添付書類はPDFを推奨します。ファイル名は分かりやすく(例:本人確認_山田太郎.pdf、賃金台帳_2024.pdf)にしておくと担当者の確認が円滑です。
3. 電子署名を付与して提出
入力と添付が終わったら電子署名を付与します。署名はマイナンバーカードとICカードリーダー、あるいはスマホでの署名アプリを使う方法があります。署名後に「提出」ボタンを押すと受付番号が発行されます。受付番号は保存しておいてください。
4. ハローワークによる審査と結果確認
提出後、ハローワークが書類を審査します。不備があればメールやポータル内メッセージで連絡が来ます。審査には数日から数週間かかることがありますので、受付番号で進捗を確認してください。
5. 離職票の電子公文書をマイページからダウンロード可能に
審査が完了すると、離職票の電子公文書があなたのマイページに表示されます。ダウンロードまたは印刷して保存してください。通知が届いたら速やかに確認し、必要であれば紙で提出するために印刷しておくと安心です。
本人確認書類について
電子申請では離職証明書そのものに退職者の自筆署名は不要です。ただし、退職者が記載内容を確認したことを示す証拠(以下「確認書」とします)を別途添付する必要があります。
どのような書類が確認書になるか
- 退職者本人が署名した確認書(紙に署名してスキャン、写真で添付可)。
- 退職者が内容確認と同意を示したメールやメッセージの記録(送受信日時が分かるもの)。
- 電子署名やマイナ認証を用いて本人が確認した記録。
本人確認書類(身元確認)についての注意点
- 運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、健康保険証などが一般的です。顔写真・氏名・生年月日・有効期限が写っているものを用意してください。
- 写真やスキャンは文字と顔がはっきり読めるようにし、不要な情報(通信欄など)を切り取らないでください。
添付時の実務的なポイント
- ファイル形式や容量制限は申請システムで異なります。事前に確認してからアップロードしてください。
- 確認書の文面は簡潔で分かりやすくしてください。例:”離職証明書の内容を確認し、相違ないことを承認します。氏名 印/署名 日付”
- 個人情報の扱いに注意し、暗号化や安全な送信手段を利用してください。
必要な書類の具体的な要件は、管轄の窓口や申請システムの案内に従ってください。
添付書類の要件
添付が原則必要な書類
離職票の電子申請では、離職の事実や賃金・出勤状況を裏付ける書類を原則として添付します。代表的な書類は次の通りです。
- 賃金台帳(賃金の支払状況が分かるもの)
- 出勤簿やタイムカードの記録
- 退職届や解雇通知など退職の意思・事実を示す書面
- 給与明細や通帳の振込履歴(賃金の確認)
- 雇用契約書や就業規則の該当部分(契約条件の確認)
書類の形式と注意点
電子申請では原則としてスキャンや写真で提出します。読み取れる状態で保存し、ファイル名を分かりやすくしておくとハローワーク側の確認がスムーズです。可能ならPDFでまとめると扱いやすくなります。文字がかすれていると再提出を求められるので、解像度や撮影角度に注意してください。
個人情報(マイナンバーなど)や不必要な口座番号は、画像処理で隠して差し支えありません。ただし、賃金や支払先の確認に必要な箇所は隠さないようにしてください。
書類が揃わない場合や優良事業所の扱い
全ての書類が揃わない場合は、代替となる証拠(勤務日報や業務報告、出勤記録のスクリーンショットなど)を添付するとよいです。ハローワークが確認して補足説明を求めることがあります。
なお、ハローワークから「優良事業所」と認められた事業所では、根拠書類の添付を省略できる場合があります。その場合でも、必要に応じて後日資料の提出を求められることがある点にご留意ください。
原本の保管
電子申請後も原本は一定期間保管してください。ハローワークが原本の提示を求めることがあるため、すぐに提出できるよう整えておくと安心です。
離職者がマイナポータル経由で受け取る手続き
はじめに
企業が電子申請を完了すると、離職者はマイナポータルで雇用保険WEBサービスと連携することで、離職票のPDFを受け取れます。スマートフォンやパソコンで確認・保存できます。
マイナポータルでの連携手順
- マイナポータルにログインします。
- 「連携サービス」や「外部サービス連携」を開き、雇用保険WEBサービスを選びます。
- 連携(許可)を承認します。これで雇用保険側の書類がマイナポータルへ届きます。
通知と詳細の確認
連携後、マイナポータルの通知やメッセージを確認してください。離職票の到着は「通知」や「詳細情報」欄に表示され、PDFを開けます。
PDFの表示・保存・印刷
PDFはスマートフォンで閲覧・保存できます。必要なら画面からダウンロードしてクラウドや端末に保存、または印刷して紙で保管してください。
注意点とトラブル対応
・受け取れない場合は企業の担当者と申請状況を確認してください。ハローワークに問い合わせるのも有効です。
・個人情報保護のため、共有は控えてください。
・複数端末で利用する場合は、それぞれでログイン・連携設定が必要です。


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