はじめに
目的
この章では、本書の狙いと読み進め方をやさしく説明します。アルバイトで働いている方が「源泉徴収票がもらえない」と困ったときに、原因の見つけ方や正しい対処法を身につけられるように構成しました。
対象読者
- 初めて源泉徴収票に触れるアルバイトの方
- 複数のバイト先があり手続きに不安がある方
- もらえないときどうすればいいか知りたい方
本書で学べること(概要)
- アルバイトでも原則として源泉徴収票の発行義務があること
- もらえない主な理由と実際の例(例:短期バイト・年末調整の有無)
- 必要な場面(確定申告・転職手続きなど)とその準備
- もらえないときの正しい請求方法と注意点
読み方のヒント
各章で具体例を挙げて説明します。まずは次章で「バイトでも源泉徴収票はもらえるのか?」を確認すると、全体の流れが見えやすくなります。
バイトでも源泉徴収票はもらえるのか?
概要
アルバイトでも給与として賃金を受け取っていれば、雇用主は源泉徴収票を交付する義務があります。雇用期間の長短や契約形態(短期・長期)にかかわらず、給与が支払われた場合は対象です。
いつもらえるか
- 退職した場合:退職日から1か月以内に交付されます。例)3月15日に退職したら4月15日までに交付されます。
- 在職中の場合:その年の所得分について、翌年の1月31日までに交付されます。年末調整の結果を反映したものが渡されます。
だれが発行するか
給与を支払っている会社や個人事業主が発行します。コンビニや派遣会社、飲食店など、雇い主が誰であっても同じです。
もらい方の実践的ポイント
- 退職時は「源泉徴収票をお願いします」と口頭で頼むか、退職届に明記しておくと確実です。
- 在職中は年明けに人事・経理に確認すると受け取り忘れを防げます。
- 紛失した場合は再発行を頼めます。雇い主に事情を伝えてください。
注意点
給与としての支払いがなければ交付対象になりません。派遣や業務委託で報酬の扱いが異なる場合もあります。不安なときは雇い主に確認してください。
源泉徴収票がもらえない主な理由
はじめに
源泉徴収票が届かないと不安になりますね。ここでは届かない代表的な理由をやさしく説明します。具体例を挙げながら見ていきましょう。
1) 給与所得に該当しない(発行対象外)
業務委託やフリーランスとして「報酬」を受け取っている場合、勤務先の給与として扱われず、源泉徴収票は原則発行されません。例:個人事業主に支払う報酬は支払調書が使われることが多いです。
2) 事務ミスや手続き遅延
担当者の入力漏れ、年末調整の未処理、給与システムの不具合などで発行が遅れることがあります。特に中小企業や繁忙期は発行手続きが後回しになる場合があります。
3) 連絡不足・住所変更
退職後に住所を変えて届かないケースがあります。郵送先が古いままだと会社側は発送していても手元に届きません。メール連絡があるか確認しましょう。
4) 退職や短期雇用時の手続き不足
退職時に必要な書類の提出が完了していないと、年末調整がされず源泉徴収票が作られないことがあります。短期バイトで雇用情報が漏れてしまう場合もあります。
5) 支払形態や額の関係
非常に少額の支払いや、一時的な謝礼などは源泉徴収の扱いが変わるため、発行されない場合があります。具体的には給与として定期的に支払われていない報酬などです。
以上がよくある理由です。まずは雇用主に現状を確認することをおすすめします。
源泉徴収票が必要になる場面
概要
源泉徴収票は、年間の給与や源泉徴収された税額を示す大切な書類です。身近な手続きで提示や提出を求められることが多く、用途ごとに必要な理由と準備方法を知っておくと安心です。
転職時の年末調整
転職した場合、前の勤務先の源泉徴収票を新しい勤務先に渡します。新しい会社はそれをもとに年末調整を行います。期限が近い時期は早めに前の会社へ発行を依頼してください。
確定申告・税金の還付
確定申告で所得や税額を証明する際、源泉徴収票が必要です。医療費控除や年末調整で還付されなかった分を請求する場合にも使います。申告書に添付するか、提示を求められます。
社会保険や給付の手続き
失業給付、傷病手当、育児・介護休業給付などでは収入の証明が必要です。源泉徴収票を提出すると手続きがスムーズになります。
住宅ローンや各種審査
銀行や貸主は申込者の収入を確認します。最新の源泉徴収票を求められることが多く、審査通過の重要な資料になります。
その他(賃貸契約・ビザ申請など)
賃貸の保証会社や在留資格更新などでも収入証明として使われます。用途に応じて原本やコピーの指定があるので案内をよく確認してください。
もらえない時の正しい対処法
- はじめに
まずは勤務先に直接依頼するのが基本です。電話だけで済ませず、メールや書面など記録が残る方法で請求しましょう。記録があれば、後で税務署へ届出を出す際に根拠になります。
-
1) 勤務先への請求の仕方
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メール:件名に「源泉徴収票送付のお願い」と明記し、在籍期間・支払を受けた年・希望する送付方法(郵送/手渡し)を記載します。2週間程度の回答期限を設けるとわかりやすいです。
- 書面:内容証明郵便や手渡しの受領印をもらう方法が確実です。
-
電話:電話で依頼した場合は、日時と相手の氏名をメモし、その後に確認メールを送って記録を残してください。
-
2) 記録として残すもの
給与明細、振込履歴、請求メールの送受信記録、内容証明の控えなどを保存してください。請求の日時ややり取りの内容が重要になります。
- 3) 無視や拒否された場合の手順
勤務先が無視・拒否する場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。届出書には次の情報を記入します:
– 収入金額(源泉徴収票に記載されるはずの金額)
– 在籍期間(勤務した期間)
– これまでの請求経緯(いつ、どのように請求したかの記録)
– 会社名・所在地・担当者名、本人の連絡先
税務署は企業に対して指導を行い、ほぼ確実に交付されます。税務署を通す方法は最終手段と考え、まずは会社と話し合うことをおすすめします。
- 4) その他の注意点
届出前に手元の給与明細や振込記録で確定申告ができる場合があります。急ぎの場合はそれらを使って税務署に相談してください。また、会社が倒産しているなど特別な事情があると対応が変わるため、その際も税務署に相談するとよいです。
もらえなかった場合の影響と注意点
概要
源泉徴収票が届かないと、税金関係の手続きで不便が生じます。転職先の年末調整や自分で行う確定申告の際に必要になるため、早めに対応することが大切です。
転職先での年末調整への影響
転職先では前職の給与情報をもとに年末調整を行います。源泉徴収票がないと正確な調整ができず、転職先から追加の書類提出を求められたり、自分で確定申告をしなければならない場合があります。
確定申告や税の還付・追徴のリスク
源泉徴収票がないまま手続きを進めると、還付が受けられない、あるいは税金を多く支払ってしまう可能性があります。過不足を正すために確定申告が必要になる場面が増えます。
再発行や請求の際の注意点
まずは前の勤務先に再発行を依頼し、連絡は記録が残る方法(メールや書面)で行ってください。再発行に時間がかかる場合もありますので、余裕を持って動くと安心です。
問題が解決しない場合の対処
勤務先が対応しないときは、最寄りの税務署に相談してください。給与や源泉徴収に関する実務的な助言が得られます。労働問題が絡む場合は労働基準監督署などにも相談できます。
実務的なポイント
- 給与明細や振込記録は必ず保管する
- 再発行依頼は書面で行い、控えを残す
- 不明点は税務署に早めに相談する
不利益を避けるため、落ち着いて順を追って対応することが重要です。
アルバイト・短期バイトの源泉徴収票の基礎知識
源泉徴収票に書かれている主な項目
- 支払金額:1年間にその勤務先から支払われた総額です。例:給与や手当の合計。
- 所得控除後の金額:各種控除(社会保険料や基礎控除など)を引いた後の金額です。税金計算のもとになります。
- 所得控除額合計:引かれた控除の合計額が書かれます。どのくらい控除されたか確認できます。
- 源泉徴収税額:勤務先があらかじめ差し引いて国に納めた所得税の額です。確定申告で還付されることもあります。
受け取り方と保管
- バイトを辞めた場合は、勤務先が自宅へ郵送することが多いです。住所が変わったら早めに連絡しましょう。
- 1年分は大切に保管してください。確定申告や転職先での年末調整に必要になります。
複数のバイトをした場合の扱い
- 年の途中で複数の勤務先がある場合は、それぞれの勤務先から源泉徴収票をもらいます。
- すべての源泉徴収票を合算して所得や税額を確認し、必要なら確定申告を行います。
短期・日雇いの注意点
- 短期バイトでも給与が発生すれば原則として源泉徴収票が発行されます。
- 日雇いで1回だけ、または給与が少額の場合でも発行されることがあります。発行されないと感じたら勤務先に確認してください。
使い道の簡単な例
- 年末調整:勤務先が行う税金の精算で、源泉徴収票が必要です。
- 確定申告:複数の勤務先がある人や還付を受けたい人は、源泉徴収票を添付して申告します。
必要な書類の一つなので、受け取り・保管・確認を忘れずに行ってください。
まとめ・Q&A
以下は、よくある疑問と簡潔な対応まとめです。分かりやすく順を追ってご案内します。
Q1: バイトでも源泉徴収票は必ずもらえる?
A1: はい。給与を受け取っていれば、雇用主が源泉徴収票を発行する義務があります。たとえば、短期のアルバイトでも給与を受け取ったら発行されます。複数の職場で働いた場合は、職場ごとに別々にもらいます。
Q2: いつもらえる?
A2: 在職中なら翌年の1月31日までに受け取ります。退職した場合は、原則として退職後1か月以内に交付されます。交付時期を過ぎたら、まず雇用主に連絡してください。
Q3: もらえない場合の最終手段は?
A3: まずは口頭や書面で雇用主に再請求します。それでも交付されないときは、税務署へ「給与等の不交付の届出書(不交付届)」を提出できます。税務署が仲介・指導することが可能です。
ワンポイント
– 紛失したら雇用主に再発行を依頼してください。再発行に応じない場合も上記の手順で対応します。
– 年末調整や確定申告で必要なので、届かないと困る場合は早めに行動してください。
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