はじめに
「会社から源泉徴収票が届かない」「退職したのに源泉徴収票をもらえない」──こうした経験をした方は少なくないでしょう。本記事は、そうした不安を解消するために作りました。源泉徴収票の基本的な役割や、会社に発行義務があるかどうか、発行されないときに取るべき具体的な対応まで、順を追って分かりやすく解説します。
まずは全体の流れをお伝えします。以下のポイントを中心に進めます。
- 源泉徴収票の役割と誰が発行するか
- 会社が発行しない主なケース(具体例を交えて)
- 発行されない場合の手続きや申告方法
- 転職や年末調整での影響と注意点
この記事は、会社員だけでなくフリーランスやパートタイムの方にも役立つ内容です。例えば、退職後に前職の源泉徴収票がないと確定申告で必要書類が揃わず困ることがあります。そうした実務的な問題を想定し、誰でも実行できる対処法を中心に書いています。
次の章からは、源泉徴収票とは何か、発行義務の基本ルールについて詳しく見ていきます。気になる点があれば、順に読み進めてください。
源泉徴収票とは何か?発行義務と基本ルール
概要
源泉徴収票は、会社が従業員に対して1年間の給与支払額や源泉所得税の金額を記載して交付する法定書類です。年末調整や確定申告で使う重要な書類になります。雇用形態にかかわらず、給与を受け取っている人には発行されます。
発行義務について
会社は従業員ごとに源泉徴収票を作成し交付する義務があります。発行しないことを会社の都合で正当化することはできません。複数の勤務先がある場合は、それぞれの勤務先が自分の分を交付します。
発行のタイミング
通常は、1年分の給与について翌年の1月末までに交付されます。退職時は、退職日までの給与について速やかに発行されます。
主な記載項目
- 支払金額(給与、手当などの合計)
- 源泉徴収税額
- 社会保険料や控除額の記載(控除がある場合)
- 会社の名称・所在地、従業員の氏名・マイナンバーの一部など
交付方法と保管
紙で手渡すか郵送の他、従業員の同意があれば電子交付も可能です。税務や年末調整で必要になるため、大切に保管してください。
受け取ったときの確認ポイント
受け取ったら、氏名・支払金額・税額・勤務期間が正しいか確認してください。誤りがあれば早めに会社に申し出ましょう。
会社が源泉徴収票を発行しない・もらえない主なケース
概要
源泉徴収票がもらえない主な理由は大きく分けて三つです。会社の倒産・夜逃げ、発行を拒否されるケース、そしてそもそも給与所得として扱われていない場合です。以下でそれぞれの状況と取るべき対応を丁寧に説明します。
1) 会社の倒産・夜逃げ
説明:会社が倒産して担当者がいない、または夜逃げで連絡が取れない場合、源泉徴収票が届かないことがあります。
対応:破産管財人や清算人に連絡してください。連絡が付かない場合は税務署に相談し、年金や雇用関係の記録をもとに自分で所得を証明する書類(給与明細、銀行振込の履歴、雇用契約書)を準備します。確定申告で所得を申告できます。
2) 発行拒否(会社が意図的に出さない)
説明:誤解や社内の手続きミス、あるいは意図的な拒否で発行されないことがあります。
対応:まず社内の総務や経理に書面で請求し、証拠を残します。それでも発行しない場合は税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出し、税務署から会社に対して発行の指導を求めてもらえます。
3) 給与所得でない(業務委託・個人事業主など)
説明:雇用契約ではなく業務委託やフリーランス契約の場合、支払者は源泉徴収票を発行しません。代わりに支払調書が出ることがあります。
対応:支払調書、請求書、振込履歴などで収入を整理し、事業所得や雑所得として確定申告してください。源泉徴収が行われているか確認し、必要なら控除や税額の調整を行います。
準備しておく書類(共通)
- 給与明細、タイムカード、雇用契約書
- 銀行振込の履歴(給与振込の記録)
- メールや書面による請求・要求の記録
それぞれの場合でまずは記録を残すこと、そして税務署へ相談することが重要です。どの対応が適切かは状況によるため、不安な場合は税務署や税理士に相談してください。
源泉徴収票がない場合の対処法・申告方法
概要
源泉徴収票が手元にない場合は、まず会社へ再度請求し、それでももらえないときは税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を出すことを検討します。給与支払いの記録を残すことが大切です。
1. 会社へ再確認・催促する
賞与や退職時など発行のタイミングを確認し、メールや書面で催促してください。やり取りの記録は保存します。例:給与明細の写しや申請メール。
2. 税務署への届出
会社が正当な理由なく発行しない場合、税務署に届出書を提出できます。税務署は状況を確認し、会社に対応を促すことがあります。
3. 給与記録で確定申告する方法
給与明細、通帳の入出金記録、雇用契約書などで収入額を証明します。2019年以降、確定申告書に源泉徴収票の添付は原則不要ですが、正確さのため資料は整えておきます。
4. 会社倒産など発行不可能な場合
倒産で発行不能なら、上記の記録で申告可能です。支払いの証拠があれば税務署は受け付けます。
5. 注意点
控除や社会保険料の扱いは複雑です。疑問があれば税務署や税理士に相談してください。記録は5年程度保存することをおすすめします。
源泉徴収票が発行されない理由と注意点
この章では、源泉徴収票が発行されない代表的な理由と、確認すべき点、取るべき対応を分かりやすく説明します。実際に困ったときに落ち着いて対処できるように整理しました。
主な理由
- 業務委託・報酬扱いになっている
- 業務委託(個人事業主など)の報酬には、会社に源泉徴収票の発行義務はありません。代わりに支払調書が作成されることがあります。
- 会社の倒産・解散
- 会社が事業を停止すると、発行が遅れたり難しくなったりします。倒産手続き中は対応が滞ることが多いです。
- 事務ミスや発行拒否
- 書類の不備や単純ミスで発行が遅れる場合があります。雇用関係があるのに故意に発行を拒否されることもあり、その場合は問題です。
雇用関係の判断ポイント
- 雇用契約書やタイムカード、給与振込の有無で判断します。アルバイトや派遣などの短期雇用でも、給与所得者であれば源泉徴収票の交付義務があります。
発行されないときの注意点と対応
- まず会社に丁寧に問い合わせる。口頭だけでなくメールや書面でやりとりを残すと安心です。
- 給与明細や振込記録、契約書などを保存する。確定申告の際に証拠になります。
- 会社が拒否する・連絡が取れないときは税務署に相談する。勤務実態がある場合は税務署が助言してくれます。
- 業務委託の場合は支払調書の有無を確認する。
発行されない理由を正しく把握し、証拠を残して早めに相談することが大切です。必要なら税務署へ相談して、適切な手続きを進めてください。
転職・年末調整時の源泉徴収票の重要性とリスク
なぜ重要か
転職や年末調整では、前職の源泉徴収票が所得や税額の確認に使われます。前職で受けた給与や源泉徴収税額が正しく合算されないと、税金の過不足が生じます。例えば、年の途中で転職した場合、両社の給与を合算して年税額を確定する必要があります。
提出しない・もらえないと起きること
- 所得が正しく把握できず、年末調整で過大な還付や不足の発生
- 転職先で手続きが遅れ、手当や保険手続きに支障が出ることがある
具体的な対応方法
- まず前職の人事・総務に再発行を依頼してください。多くは対応してくれます。具体的な日付や氏名を伝えると早いです。
- 紛失や連絡が取れない場合は、給与明細や振込履歴を整理して保存してください。それらを使って税務署に相談できます。
- どうしても源泉徴収票が手に入らない場合は、税務署で相談のうえ確定申告を行い、実際の収入をもとに税額を申告します。税務署は代替資料で判断してくれます。
提出時の注意点
- 転職先にはできるだけ早く提出してください。年末調整の期日が近いと間に合わないことがあります。
- 不明点は転職先の総務と税務署に確認し、書面でのやり取りを残すと安心です。
まとめ ― 源泉徴収票をもらえない場合の最終対応
1. まず知っておくこと
源泉徴収票は会社に発行義務があります。受け取れない場合でも税金の申告義務は消えません。落ち着いて対応しましょう。
2. 優先すべき行動(証拠の確保)
給与明細、振込の通帳履歴、雇用契約書、退職届やメールのやり取りを保存してください。これらが申告や交渉の重要な証拠になります。
3. 会社への請求方法
まずは書面やメールで発行を依頼し、発行がない場合は内容証明郵便で請求すると証拠が残ります。窓口や担当者名を記録してください。
4. 税務署に相談・申告する方法
最終的な窓口は税務署です。源泉徴収票が手に入らない旨を伝え、給与額や源泉税額の確認方法を相談してください。税務署は代替手続きや必要書類を案内してくれます。
5. 申告で使える代替書類
給与明細、通帳の振込履歴、雇用契約、離職票などで年末調整や確定申告は可能です。金額の根拠を明確にしておきましょう。
6. 注意点と心構え
期限を守って速やかに行動することが重要です。書類を集め、記録を残し、必要があれば税務署で早めに相談してください。
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