はじめに
目的
本書は、源泉徴収票が手元にないときに取るべき具体的な対処法をわかりやすく示すことを目的としています。会社から発行されない、退職後に受け取れない、紛失した場合など、よくあるケースを扱います。
対象読者
会社員、退職・転職を控えた方、年末調整や確定申告を準備中の方を想定しています。税務の専門家でなくても読み進められる内容です。
本書の構成と使い方
各章で原因別の手順と必要書類、実際の問い合わせ先例を示します。まずは当章で全体像をつかみ、該当する章を順にお読みください。具体的な手続きでは税務署や人事担当への連絡方法を例示します。
注意点
本書は一般的な案内です。状況により対応が異なる場合がありますので、不明な点は最寄りの税務署か税理士にご相談ください。
源泉徴収票が手元にない場合の基本的対処法
概要
源泉徴収票は確定申告や年末調整で必須の書類です。手元にないときは、まず前職・現職の会社に発行を依頼してください。会社には交付義務があり、退職済みでも請求できます。
請求方法(実践的な手順)
- メールで依頼する
- 送る相手:総務部・経理部または直属の上司
- 必要事項:氏名、社員番号(あれば)、在籍期間、発行を希望する年、郵送先またはPDF送付先、連絡先、理由(例:確定申告のため)
-
例文:
「お世話になります。○年分の源泉徴収票の発行をお願いします。氏名:山田太郎、在籍期間:20XX/XX〜20XX/XX、送付先:〒000-0000 ○○市○○町、連絡先:090-XXXX-XXXX。PDFでの送付が可能であれば助かります。」 -
電話で依頼する
- 最初に所属と氏名を名乗り、源泉徴収票の発行希望を簡潔に伝えます。
-
電話した日時と担当者名をメモしてください。
-
直接窓口に行く
- 可能なら総務・経理窓口で直接受け取りや受領確認を行うと確実です。
送付の目安とフォロー
- 一般に1週間〜3週間で送付されることが多いです。PDF対応なら数日で送れることもあります。
- 急ぎであれば、メールでPDF送付を依頼し、到着がない場合は1週間後に再確認の連絡を入れてください。
受け取った後の確認事項
- 氏名・支払金額・源泉徴収税額・支払期間に誤りがないか確認してください。誤りがあればすぐに連絡して訂正を依頼します。
- 受領記録(メール、電話メモ、控えのコピー)を保管しておくと後で役立ちます。
退職直後で源泉徴収票がまだ届いていない場合
概要
退職後、源泉徴収票は「退職日から1か月以内」に発行・交付することが法律で義務付けられています。ただし、最終給与の計算や税額確定の手続きに時間がかかるため、実際には2〜3週間程度で届くことが多いです。
発行が遅れる主な理由
- 最終給与・賞与の精算や控除の確定作業
- 経理担当者の繁忙や人員不足
- 住所変更が反映されていない
まず確認すること(退職直後)
- 会社が把握している送付先住所が正しいか確認してください。郵便事故を防げます。
- 電子交付に対応しているか尋ねると、PDFで早く受け取れる場合があります。
1か月以上届かない場合の対処
- まず前職の経理・人事担当に連絡します。電話で確認し、メールで要請内容を残すと後で証拠になります。
- 再送やPDF送付を依頼してください。切手代や手間を負担する必要は基本的にありません。
- それでも対応がない場合は、上司や会社内の別部署に相談しましょう。
連絡時のポイント(短い例)
件名: 源泉徴収票送付のお願い
本文: 退職者の氏名・退職日・現住所・連絡先を明記し、送付(またはPDF送付)を依頼します。
注意点
- 口頭だけでなくメールや書面でやり取りを残すと安心です。
- 年末調整や確定申告の期限が近い場合は、その旨を伝えて対応を早めてもらいましょう。
源泉徴収票を紛失してしまった場合
概要
源泉徴収票を紛失した場合は、勤務先に再発行を依頼します。退職後や転職後でも再発行は原則可能です。会社側に保管があれば再発行できますので、まずは落ち着いて確認してください。
まず確認すること
- 自宅の書類や封筒、過去のメール(PDF添付など)を探す
- 勤務先の社員用ポータルやクラウドにアップロードされていないか確認する
会社へ再発行を依頼する手順
- 給与担当や人事に電話かメールで連絡し、源泉徴収票の再発行を要請する
- 依頼の際は対象年度、氏名、本人確認書類の提示方法、送付先(郵送先)を伝える
- 発行に時間がかかる場合があるので、目安の時期を確認する
会社が「紛失した」「発行できない」と言う場合
会社には発行義務があります。給与台帳や支払記録から作成できることが多いので、担当者に再度確認してください。連絡の記録(メールや電話の日時)は保管しておくと後で役立ちます。
それでも対応が得られないとき
会社と連絡が取れない、あるいは拒否される場合は、最寄りの税務署へ相談してください。確定申告の期限が近い場合は、税務署に事情を説明すると対応方法を案内してくれます。
前職の源泉徴収票が年末調整までに届かない場合
概要
年末調整までに前職の源泉徴収票が届かないと、勤め先での年末調整にその分が反映されません。還付を受けたい場合は自分で確定申告を行う必要があります。できるだけ早く前職に発行を依頼しましょう。
届かない理由とまずすること
届かない理由は、発行手続きの遅れや住所不備など様々です。まずは前職の人事・給与担当に電話で状況を確認し、発行と送付を依頼してください。メールで依頼する場合は、氏名・在職期間・送付先を明記します。
発行依頼の具体例(メールや文面)
例:
「お世話になっております。〇年〇月まで勤務していた〇〇と申します。源泉徴収票を年末調整のために至急発行・送付いただけますでしょうか。送付先:〒xxx-xxxx、氏名、電話番号。よろしくお願いいたします。」
年末調整に間に合わないときの対応
年末調整に間に合わない場合は、翌年の確定申告で前職分の所得・税額を申告します。還付申告は通常、確定申告期間(翌年2月中旬〜3月中旬)に行えます。e-Taxを使うと手続きが早く済みます。
確定申告で準備するもの
源泉徴収票が届いたら必ず添付し、届かない場合は給与明細や雇用契約書で金額を確認して税務署に相談してください。保険料控除や医療費控除の証明書、振込先口座、マイナンバーも必要です。
期限と催促のコツ
発行依頼は早めに行い、返事がないときは電話で再確認してください。書面やメールでの依頼を残すと後で証拠になります。
最後に注意点
虚偽の申告は避け、必要なときは税務署や最寄りの税理士に相談してください。迅速に動けば還付を受けられる可能性が高まります。
会社が源泉徴収票の発行を拒否する場合の対処法
発行を拒否されたときの初期対応
まず社内で正式に請求します。口頭だけでなくメールや書面で「源泉徴収票の交付を希望する」旨を伝え、やり取りを保存してください。後で必要になる重要な証拠になります。
税務署への届出(源泉徴収票不交付の届出書)
会社が応じない・期限を過ぎても届かない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。書式は国税庁のホームページで入手できます。税務署窓口へ持参、郵送、税務署の指示に従って提出してください。提出前に電話で確認すると手続きがスムーズです。
届出書提出後の流れ
税務署は会社へ指導や調査を行います。通常、税務署が会社に対して源泉徴収票の発行を促すための措置を取ります。場合によっては、税務署から会社に対する是正指導や調査結果の通知が行われます。
その他の対処法と注意点
- 確定申告のために給与明細や支払証明を保管してください。源泉徴収票がなくても確定申告は可能です。例:給与明細の年間集計や振込記録。
- 会社が倒産・所在不明の場合は税務署にその事情を伝え、対応を相談してください。
- 個人での法的措置は最終手段です。弁護士に相談する前に税務署に相談してみると負担が軽くなることが多いです。
以上の手順を踏めば、会社の不交付に対して適切に対応できます。手続きの際は証拠を残すことを忘れないでください。
届出書提出の手順と注意点
入手と提出先
最寄りの税務署で届出書を入手して記入します。窓口での提出が基本です。郵送で受け付ける場合もあるため、事前に税務署に確認してください。
記入のポイント
- 氏名・住所・連絡先、勤務先名、退職日などの基本事項を正確に記入します。
- 給与の支払期間や金額は給与明細や源泉徴収票が無い場合も、手元の明細を基にできる限り正確に記入します。
- 添付書類(給与明細、離職票、身分証明書など)を忘れずに付けます。
- 必要な押印や署名を確認し、記入漏れがないか再確認します。
提出後の流れ
- 提出後、税務署が内容を確認します。場合によっては一時的に確定申告の代替措置を案内されることがあります。
- 税務署は会社に対して発行の指導や照会を行うことが期待できます。税務署からの連絡や指示には速やかに対応してください。
注意点・よくあるミス
- 金額の不一致や添付書類の不足、押印忘れが多いです。必ず控えを取っておきます。
- 不明点は税務署に相談してから提出すると手戻りを防げます。
- 会社が対応しない場合は、税務署からの指導状況を確認し、必要なら再度問い合わせしてください。


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