第1章: はじめに
概要
この文書は、源泉徴収票の発行主体についてわかりやすく解説します。給与所得・退職所得・公的年金等の各種類ごとに、誰が発行するのかを具体的に説明します。また、発行義務や発行時期、発行部数、再発行の対応など、実務で役立つ情報も含めます。
読者対象
- 会社員やパート・アルバイトの方
- 退職予定者や退職者
- 年金受給者
- 人事・総務担当者や税務処理を行う方
それぞれの立場で必要な対応や確認ポイントを丁寧に示します。
本書の構成
第2章以降で、源泉徴収票の種類ごとに発行責任者を詳述します。さらに、発行部数や提出先、発行時期、発行されない場合の対応、再発行の流れも取り上げます。実際の手続きで迷わないよう、具体的な確認事項や連絡先の目安も示します。
本章で伝えたいこと
源泉徴収票は所得の証明であり、税や年金手続きに不可欠な書類です。本書を読むことで、誰がいつどのように発行するのかを理解し、必要なときに適切に対応できるようになります。次章から順にご覧ください。
源泉徴収票とは何か
概要
源泉徴収票は、1年間に受け取った給与や支払いを受けた金額、その期間に源泉徴収された所得税額などを記載した書類です。会社や年金支払者が従業員・受給者に交付します。年末調整や確定申告の基礎資料になります。
主な記載項目
- 支払金額(給与の総額など)
- 源泉徴収された所得税額
- 社会保険料や生命保険料などの控除額
- 支払者と受給者の氏名・住所・整理番号
具体例:Aさんの給与が年間300万円で、源泉徴収税額が20万円なら、その金額が明記されます。
法的根拠と義務
源泉徴収票の発行は所得税法に基づく義務です。会社は一定の期限までに従業員へ交付しなければなりません。発行しない場合には罰則が科される可能性があります。
活用例と注意点
年末調整で税額の過不足を精算します。転職や離職時にも前職の源泉徴収票があると税務処理や社会保険の手続きがスムーズです。紛失した場合は勤務先に再発行を依頼してください。
給与所得の源泉徴収票を発行する主体
概要
給与所得の源泉徴収票は、給与を支払う事業者(会社や個人事業主)が発行します。給与計算を担当する部署や担当者に発行責任があります。従業員一人ひとりに対して、年末調整後や退職時に発行されます。
具体的な発行主体
- 会社の人事部・総務部・経理部:多くの企業で給与計算や年末調整を行い、これらの部門が発行します。
- 小規模事業者:担当の経理担当者や事業主本人が発行します。外部の会計事務所が給与計算を委託されている場合でも、発行権限は事業者にあります。
派遣・アルバイト・パートの場合
派遣社員やパート・アルバイトも、給与を支払う事業者が源泉徴収票を発行します。雇用形態にかかわらず、年末調整を受けた人には同様に発行されます。
アウトソースやグループ企業の場合
給与計算を給与計算会社や社会保険労務士に委託しているときは、実務は委託先が行います。発行書類は事業者の名義で交付されます。グループ会社間で給与を処理する場合も、給与を支払う側が発行します。
発行の方法と注意点
発行方法は紙での手渡し、郵送、電子交付などがあります。退職時や年末のタイミングで受け取れない場合は、事業者の総務・人事へ問い合わせてください。
退職所得の源泉徴収票を発行する主体
発行する主体は誰か
退職所得の源泉徴収票は、退職金などの退職所得を支払った者が発行します。通常は、退職者に退職金を支払った会社が担当します。会社が直接支払う場合はその会社が発行元です。
支払者が会社でない場合の例
- 企業年金や外部の支払機関が退職金を支払ったときは、その支払機関が源泉徴収票を発行します。
- 会社が解散して清算人や破産管財人が支払いを行った場合は、実際に支払った側が発行します。
発行の実務上のポイント
会社が支払者であれば、通常は総務や人事が手続きを行います。発行には支払額や源泉徴収税額、支払年月日などの記載が必要です。社内で支払いを外部委託している場合は、委託先と誰が発行するかを事前に調整してください。
具体例での理解
- 例1: 退職金を会社が口座振込で支払った → その会社が源泉徴収票を作成・交付します。
- 例2: 退職金を企業年金制度から受け取った → 年金を支払った年金機関が証明書を発行します。
受け取り側の注意点
受け取った源泉徴収票は確定申告や年金手続きで必要になります。発行者に不明点があれば、早めに問い合わせてください。発行が遅れると手続きに支障が出ることがありますので、支払者に確認することをおすすめします。
公的年金等の源泉徴収票を発行する主体
発行主体
公的年金等の源泉徴収票は、日本年金機構が発行します。国民年金や厚生年金、遺族年金など公的な年金給付について、年間の支払総額や源泉徴収された所得税額を記載した書類です。
記載される主な項目
- 支払った年金の総額(年間)
- 源泉徴収された所得税の額
- 扶養控除などの適用情報(該当する場合)
具体例:Aさんが厚生年金を受け取っている場合、日本年金機構からその年に支払われた合計額と天引きされた税額が記載された源泉徴収票が届きます。
受け取り方と利用場面
通常は年明けに郵送で届きます。確定申告や年金収入を記入する際に必要です。医療費控除や他の所得と合算する場合に役立ちます。
再発行や問い合わせ先
紛失した場合や内容に疑問がある場合は、日本年金機構に連絡して再発行や確認を依頼します。年金証書や本人確認書類を求められることがあります。
注意点
私的年金(企業年金や個人年金保険)は別の発行主体になるため、届いた書類の発行者を必ず確認してください。
源泉徴収票の発行部数と提出先
基本(原則)
源泉徴収票は原則として従業員1人につき4部作成します。内訳は次の通りです。
– 従業員用:1部(本人に交付)
– 税務署提出用:1部(所轄の税務署へ)
– 市区町村提出用:2部(「給与支払報告書」として提出)
市区町村提出の扱い
市区町村提出用は、提出する年の1月1日時点で従業員が住民登録している市区町村に提出します。例えば、1月1日にA市に住んでいる従業員の分はA市へ提出します。転居があった場合でも、提出先は1月1日時点の住所で決まります。
市区町村用を2部作成する理由は、各市区町村が住民税の計算と記録のために保管するためです。従業員が複数の市区町村にまたがることは通常ないため、原則どおり1市区町村へ提出します。
提出の実務ポイント
- 提出方法は、窓口持参、郵送、または電子提出が一般的です。会社の規模や市区町村の受付方法に合わせて対応してください。
- アルバイトやパートでも原則は同じです。人数に応じて部数を用意します。
- 提出先を誤ると手続きに時間がかかるため、1月1日時点の住所を必ず確認してください。
不明点があれば、所属する市区町村や所轄税務署に問い合わせると丁寧に教えてもらえます。
源泉徴収票の発行時期
年末調整後(年末〜翌年1月ごろ)
会社は年末調整の計算を終えた後、給与所得者の源泉徴収票を作成します。通常は12月の給与計算が終わり次第、または年が明けてから1月中旬ごろに交付することが多いです。例えば、年末調整で控除の計算が確定したら、その内容を反映した源泉徴収票を発行します。
退職時(退職日から1ヵ月以内)
退職した従業員には、退職から1ヵ月以内に退職所得や給与の源泉徴収票を渡す必要があります。会社が用意して手渡すか、郵送で送ることが一般的です。早めに受け取りたい場合は人事や総務に相談してください。
確定申告時
確定申告をする際に源泉徴収票が必要になります。申告期間中に税務署や金融機関へ提出するため、雇用主に発行を依頼することができます。申告の準備段階で早めに確認しましょう。
収入証明が必要なとき(随時)
住宅ローンや各種手続きで収入証明が求められた場合、随時発行を依頼できます。必要な期間の源泉徴収票を具体的に伝えるとスムーズです。
発行期限
- 在職者:翌年1月31日までに交付
- 退職者:退職日から1ヵ月以内
発行時期や期限を確認し、必要なときは早めに発行を依頼してください。
発行されない場合の対応
会社は従業員に源泉徴収票を交付する義務があります。ここでは、会社が発行しない場合に取るべき手順を分かりやすく示します。
1. まずは社内で催促する
- 口頭だけでなく、メールや書面で発行を依頼しましょう。例:退職後や年末に「源泉徴収票の交付をお願いします」と書面で送る。
- 送った証拠が後で役立ちます。
2. 証拠を揃える
- 給与明細、振込記録、雇用契約書などを保存してください。これらは納税や相談時に必要です。
3. 管轄の税務署に相談する
- 催促しても発行されない場合は、管轄の税務署に相談します。税務署は事実確認のうえで会社へ指導することがあります。
- 税務署に相談する際は、先ほどの証拠と送付した依頼のコピーを持参または送付してください。
4. 退職後に会社と連絡が取れない場合
- 会社が移転・休廃業などで連絡不能の場合も、税務署に相談してください。税務署が状況を確認し、必要な対応を検討します。
5. 最後に知っておくこと
- 源泉徴収票は本人の権利です。会社が正当な理由なく発行しないことは認められません。税務署からの指導で発行されることが多いので、まずは記録を残して相談してください。
再発行について
再発行の依頼先
源泉徴収票の再発行は、会社の給与計算を担当する部署に依頼します。多くの会社では人事部・総務部・経理部が対応します。退職している場合は、退職前の勤務先に連絡してください。企業には発行・保管の義務があるため、基本的に対応してもらえます。
依頼時に用意する情報・書類
- 氏名、社員番号(分かれば)
- 対象の年(例:2024年分)と在籍期間
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
メールや電話で問い合わせる場合は、これらを先に伝えると手続きが早く進みます。
発行までの目安と費用
多くの会社は依頼後すぐに対応し、数日以内に発行されます。原則として再発行は無償の場合が多いです。ただし、郵送を希望すると切手代や実費を請求されることがあります。
再発行の一般的な流れ(例)
- 人事・総務・経理に連絡(メール・電話・窓口)
- 必要情報・本人確認書類を提出
- 会社が書類を作成・確認
- 手渡しか郵送で受け取り
代理人による受け取り
代理人が受け取る場合は、委任状と代理人の身分証明書が必要になることが多いです。企業ごとに要件が異なるため、事前に確認してください。
注意点
税務申告の締切が近い場合は早めに依頼してください。紛失を防ぐために、受け取った源泉徴収票はコピーやスキャンで保存すると安心です。


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