はじめに
本記事の目的
この章では、源泉徴収票の保管期間について、基本的な考え方と記事全体の流れをわかりやすく説明します。法的な規定や企業・従業員それぞれの扱い、関連書類の保存期間、実務上の注意点まで順に解説します。
なぜ知っておくべきか
源泉徴収票は給与や税金の記録として重要です。転職時や確定申告、住宅ローンの申請などで提出を求められることがあります。保存方法や期間を知っておくと、必要なときに慌てずに対応できます。
本記事の構成と読み方
- 第2章:法律上の保管期間の規定
- 第3章:企業側の保存義務
- 第4章:従業員側の推奨保存期間
- 第5章:実務上の注意点と保管方法(実例つき)
- 第6章:関連書類の保存期間
- 第7章:まとめ
まずは全体像をつかみ、必要な章だけを順に読んでください。具体例を交えて丁寧に説明しますので、実務や個人の対応に役立ててください。
源泉徴収票の保管期間:法律上の規定
概要
源泉徴収票そのものには、法律上の「保管期間」は定められていません。源泉徴収票は会社が従業員や税務署に交付する原本であり、企業側に原本が残らない仕組みになっています。
なぜ“7年”と誤解されるか
多くの方が「7年間保管」と聞く理由は、源泉徴収票を作る際の根拠となる帳簿や申告書類に保存義務があるためです。税務に関する帳簿や決算書、給与台帳などは原則として7年間の保存が求められます。そのため、源泉徴収票も7年保管が必要と誤解されやすいです。
法律上の区分(簡潔に)
- 源泉徴収票そのもの:保管期間の明示なし
- 帳簿・申告書類:一定期間(一般に7年)保存義務あり
実務上の留意点
- 会社側は源泉徴収票の交付記録や作成に使った帳簿を保存します。
- 従業員は受け取った源泉徴収票を確定申告や年末調整のため保存しておくと安心です。
注意点
法律上は源泉徴収票自体に保存期間がありませんが、税務調査や手続きのために関連書類を規定どおり保存する点を優先してください。必要に応じて会社の総務や税理士に確認すると確実です。
企業(会社)側の保管義務
概要
企業に対して「源泉徴収票そのものを永久に保管する義務」は法律上ありません。源泉徴収票は従業員に交付する書類であり、企業に残ることは原則ないためです。ただし、税務調査や申告の確認に備えて関連書類を保存する義務は存在します。
会社が保存すべき主な書類
- 源泉徴収簿(給与支払報告や源泉徴収の記録)
- 年末調整に関する申告書類(扶養控除等申告書、配偶者控除等申告書など)
これらは給与計算や税務の根拠資料になります。
保存期間と理由
税法上、上記の帳簿や申告書類は原則7年間の保存が必要です。税務署から資料の提示を求められた場合に提出する義務があるためです。保存期間は年度ごとにカウントしますので、適切に整理してください。
提出や照会への対応
税務署から提出を求められた場合、迅速に提出できるように準備しておきましょう。コピーを取っておく、年ごとにファイルするなど整理すると対応がスムーズになります。
電子保存の扱い
紙での保存に加え、法令に沿った形で電子データで保管することも可能です。電子保存する際は、検索性や改ざん防止の要件を満たすように注意してください。
実務上のポイント
- 交付済みの源泉徴収票は従業員側にあるため、再発行が必要な場合の手順を定めておくと親切です。
- 退職者の分も含めて7年間保存する点を忘れないでください。
- 保存期間や方法について社内ルールとして明文化しておくと安心です。
従業員(個人)側の保管義務・推奨期間
法律上の扱い
従業員本人には源泉徴収票の法律上の“保管義務”はありません。会社から受け取った源泉徴収票を廃棄しても直ちに罰則が課されることはありません。ただし、税務処理や手続きで必要になる場面が多いため保管が望ましいです。
いつ保管しておくべきか(具体例)
- 確定申告をする場合:申告書類に合わせて保存期間の目安は5年です。
- ローンや奨学金などの収入証明が必要なとき。
- 転職先や年金手続きで過去の所得確認が求められるとき。
再発行の依頼方法
- まず会社に年と対象者を明確に伝え、再発行を依頼します。
- 会社は自社の源泉徴収簿や給与台帳などから新たに作成できます。再発行に時間がかかる場合がありますので、早めに連絡してください。
保管方法と推奨期間
- 推奨期間は、確定申告に合わせて5年間です。
- 紙で保管する場合は、年度ごとにファイルで分けて保管してください。
- スキャンして電子保存する場合は、見やすくフォルダ分けし、バックアップを取ると安心です。
- 会社に再発行を頼む際は、必要な年度を具体的に伝えることで手続きがスムーズになります。
実務上の注意点・保管方法
概要
源泉徴収票は個人情報を含む重要書類です。企業は情報漏えい対策を徹底し、従業員は必要な期間安全に保管することが大切です。
紙での保管方法
- 保管場所:鍵付きのキャビネットや施錠できる書庫に収納してください。部署間での共用スペースには置かないことを推奨します。
- コピー管理:原本は最小限の複製にとどめ、複製には日付と目的を明記します。貸出記録を残すと追跡しやすくなります。
電子データの管理
- 保存形式:PDFなど改ざん防止の形式で保存し、ファイル名に年と社員番号などを入れると検索が楽になります。
- セキュリティ:暗号化、アクセス権の限定、二段階認証の導入を推奨します。定期的にアクセスログを確認してください。
- バックアップ:別の物理媒体や信頼できるクラウドにバックアップを取り、保存先の管理責任者を明確にします。
廃棄・紛失時の対応
- 廃棄:シュレッダー(クロスカット)での破棄、電子データは安全消去ツールで完全に削除します。
- 紛失:速やかに関係者に報告し、再発防止措置(保管方法の見直し、異動・研修)を実施してください。
実務チェックリスト(簡易)
- 保管場所は施錠されているか
- 原本とコピーの所在が明確か
- 電子データに暗号化やアクセス制限があるか
- 定期的なバックアップとログ確認が行われているか
- 廃棄手順と報告体制が整備されているか
実務では、ルールを文章化して関係者に周知することが最も効果的です。
関連する年末調整書類の保管期間
対象となる書類
- 扶養控除申告書、配偶者控除申告書
- 保険料控除申告書(生命保険・地震保険の控除証明書を含む)
- 住宅借入金等特別控除に関する書類
- その他、年末調整で提出された申告書や添付書類(源泉徴収簿や領収書など)
保管期間
これらの書類は原則として7年間の保管が必要です。税務署からの提出要求や税務調査に備えるためです。したがって、企業は受け取った年から数えて7年間、きちんと保管してください。
保管の理由と注意点
税務調査で控除の根拠を示す必要が出ることがあります。たとえば、生命保険の控除証明書や扶養の状況を示す書類が求められる場面です。重要な点は次のとおりです。
– 原本を保管することが基本です。紛失した場合、控除が認められないことがあります。
– 紙で保管する場合は整理してラベルを付け、検索しやすくします。
– スキャンして電子保存する場合は、読み取り可能な状態で保存し、バックアップやアクセス制限を設けてください。
廃棄方法
保管期間終了後は、個人情報を含む書類なのでシュレッダー処理や安全なデータ消去で確実に廃棄してください。税務調査が進行中の場合は保管期間が延長されますので、廃棄せず保管を続けてください。
まとめ:源泉徴収票の保管期間
概要
源泉徴収票は、立場によって扱いが異なります。企業は源泉徴収簿などの帳簿を7年間保管する義務がありますが、源泉徴収票そのものを必ず保管する法的義務はありません。従業員側は法的な保管義務はないものの、確定申告などを考えると5年間程度の保管を推奨します。
企業側の要点
- 保管義務:源泉徴収簿や給与台帳などは7年間保管。
- 実務:過去の支払状況を確認するため、源泉徴収票も一定期間保管することが多いです。
従業員側の要点
- 保管推奨:確定申告や年金手続きで参照することがあるため、最低5年は保管すると安心です。
- 保管方法:紙はファイル保存、スキャンしてデータ保存する場合は読み取りやすく保存してください。
関連書類
年末調整の書類や支払調書などは、企業側で7年間の保管義務があるため、必要に応じて入手・保管してください。
実務上の注意点・再発行
再発行を依頼する際は、対象の年度・氏名・社員番号などを明確に伝えてください。紛失防止のためコピー保管やデータ保存を習慣にすると便利です。
結び
法律上の義務と実務上の推奨が異なります。目的(確定申告・年金手続きなど)や自分の立場に応じて、適切に管理することが大切です。必要な場合は勤務先や税理士に相談してください。


コメント