はじめに
本書は、複数のアルバイトを掛け持ちしている方向けに、源泉徴収票と税手続きの基本を分かりやすく解説するための案内です。
目的
複数の勤務先があるときに「誰が何を出すのか」「年末調整はどうなるのか」「確定申告は必要か」を整理できるようにします。専門用語は最小限にし、具体例を交えて丁寧に説明します。
本書で扱う内容(全章)
- 源泉徴収票の発行義務
- 税区分(甲・乙)の違いと掛け持ち時の扱い
- 年末調整と確定申告の違い
- 源泉徴収票の受け取り・提出方法
- 年収や控除のラインに関する注意点
- よくある疑問とトラブル対策
想定読者
学生やフリーター、掛け持ちで働く社会人など、源泉徴収票や年末調整に不安がある方を想定しています。具体的な手順や注意点は後の章で順に説明しますので、まずはこのまま読み進めてください。
掛け持ちアルバイトでも源泉徴収票はもらえるのか
● 結論
アルバイトやパートでも、その年に給与の支払いがあれば原則として源泉徴収票が発行されます。正社員に限られないので安心してください。
● 誰が発行するか
給与を支払ったそれぞれの事業者(バイト先)が発行します。複数の職場で働いていれば、各職場ごとに別々の源泉徴収票を受け取ります。
● いつもらえるか
年末調整を行う事業所は年明け(通常1月末から2月)に交付します。退職した場合は退職時に交付する義務があります。短期で働いて給与が出ていれば、年内でも発行されるケースがあります。
● 掛け持ちのときの扱い(簡単な例)
A店とB店で働いている場合、A店はA店分の源泉徴収票、B店はB店分を発行します。年末調整は通常、一つの勤務先でまとめて行いますが、主たる勤務先がなければ自分で確定申告する必要が出ることがあります。
● 受け取れない・見つからないときの対処
発行されない、あるいは紛失した場合はまずバイト先の総務・給与担当に問い合わせてください。応じないときは最寄りの税務署に相談すると案内を受けられます。
具体例を交えつつ、まずは各バイト先に交付を確認しましょう。
掛け持ち時の源泉徴収票と税区分(甲・乙)とは
税区分「甲」と「乙」の違い
主に働く勤務先(収入が一番多い先)に「給与所得者の扶養控除等申告書」を出すと、税区分は「甲」になります。甲は基礎控除や扶養控除などが反映され、毎月の所得税の天引きが軽くなります。一方、その他の掛け持ち先は「乙」になり、控除が適用されず税額が高めに天引きされます。
源泉徴収票の関係
それぞれの勤務先から年末に源泉徴収票が発行されます。甲の勤務先は年末調整を行い、過不足を精算します。乙の勤務先は年末調整を行わないため、乙の分の税金調整は自分で行う必要があります。
具体例と手続きの流れ
例えば本業Aで年収200万円、掛け持ちBで年収50万円ならAに申告してAが「甲」、Bは「乙」になります。Bからの源泉徴収が多いと感じたら、翌年の確定申告でAとBの所得を合算して精算します。確定申告で還付を受けられる場合があります。
実務上の注意点
- 勤務先ごとに必ず源泉徴収票を受け取る
- 甲に出来るのは一か所だけ。変更する場合は早めに申告書を提出
- 確定申告が必要かどうかは年間の合計所得や控除で変わる
分かりやすく不明点があれば、お知らせください。
年末調整と確定申告の違い・必要性
年末調整とは
年末調整は勤務先(主に“甲”とされる主たる勤務先)が年の最後に一年分の給与から税額を精算する手続きです。給与からの税額を確定させ、払い過ぎがあれば還付、足りなければ追加徴収します。手続きは勤務先が行うため、本人は提出書類(扶養控除等申告書など)を出すだけで済むことが多いです。
確定申告とは
確定申告は個人が自分で一年間の所得をまとめて税務署に申告する手続きです。給与以外の所得や複数の給与を合算して正しい税額を計算します。自分で申告するため、控除の適用漏れを防げたり、還付を受け取ったりできます。
確定申告が必要になる主なケース
- 主たる勤務先以外(乙区分)の給与収入が年間で20万円を超える場合(副業がある場合など)。
- 年収の合計が103万円を超える場合(扶養や基礎控除の関係)。
- どの勤務先でも年末調整を受けていない場合(すべての職場で自分で申告が必要)。
例:AさんはアルバイトAで甲扱い、アルバイトBで乙扱い。Bの年間給与が25万円なら、Aの年末調整だけでは済まず、確定申告が必要です。
確定申告の簡単な流れ
- すべての勤務先から源泉徴収票を受け取る(1月頃)。
- 1月〜12月分を合算して申告書を作成する。書面かe-Taxで提出できます。
- 税務署で手続きし、過不足が確定して還付または納税します。
注意点
- 源泉徴収票は大事に保管し、申告時に必ず添付または提示します。
- 不安がある場合は税務署や税理士に相談してください。
源泉徴収票の受け取り・提出方法
受け取りの基本
掛け持ちしているすべてのアルバイト先から源泉徴収票を受け取ります。例えば、カフェAとコンビニBで働く場合、両方から発行してもらいます。勤務先は通常、翌年の1月末ごろまでに渡します。
受け取り時に確認する項目
受け取ったら、支払金額・源泉徴収税額・氏名・勤務期間などが正しいか確認してください。金額に誤りがあれば発行元にすぐ連絡しましょう。
提出が必要な場面
年末調整を受ける場合は、勤務先に源泉徴収票を提出します。転職やアルバイト先の変更時も、新しい勤務先に前の職場の源泉徴収票を渡すことがあります。確定申告をする場合は、全ての源泉徴収票を申告書に添付または提示します。
提出の手順(例を含む)
- 年末調整:現在の勤務先に原本を提出します(コピーを取っておくと安心です)。
- 確定申告:申告書に全ての源泉徴収票を添付して税務署へ提出します。e-Taxを使う場合は、書類の写しを保存してください。
紛失・未着の場合の対処
届かない・紛失した場合は、早めに発行元に再発行を依頼してください。給与明細や振込記録があれば再発行の助けになります。
注意点
原本の提出が求められる場面がありますので、コピーだけで済ませないようにしてください。複数のアルバイトがあるときは、全てそろえてから年末調整や確定申告に臨みましょう。
年収や控除のラインに注意
概要
掛け持ちアルバイトでは、複数の収入を合算して判断します。年収の少しの違いで税金や社会保険の扱いが変わるため、ラインを把握しておくことが大切です。
主な目安(年間の給与収入)
-
103万円(1,030,000円)
給与収入がこの金額以下だと、所得税がかからず配偶者控除の対象になりやすいです。アルバイト先ごとの源泉徴収票を合算して確認します。 -
130万円(1,300,000円)
健康保険・厚生年金の被扶養者から外れる目安です。超えると自分で社会保険に加入し、保険料を負担する可能性があります。勤務先の判断基準は会社ごとに異なります。 -
150万円(1,500,000円)
配偶者特別控除の金額が変わる区切りの一つです。103万円を超えると控除額が段階的に減ります。 -
201万円(2,010,000円)
配偶者特別控除がなくなるラインです。これを超えると配偶者への控除は受けられません。
実務上の注意点
- すべての給与を合算して年収を計算してください。半年で調整せず年間で判断します。
- 年の途中で稼ぎが増えそうなら勤務時間やシフトを調整するか、税務署や勤務先に相談しましょう。
- 社会保険の適用基準は勤務時間や雇用形態で異なります。心配なら会社の総務・社会保険事務所に確認してください。
分からない点は雇用先や税務署に相談すると安心です。
よくある疑問とトラブル対策
受け取れない・紛失した場合
源泉徴収票は雇用主に発行義務があります。退職したバイト先や短期の勤務先でも必ず発行されます。受け取れないときはまず勤務先の経理や人事に再発行を依頼しましょう。紛失したら再発行を頼み、届いたらコピーを取って保管してください。
再発行の具体的手順
- 口頭で連絡し、再発行を依頼する。できればメールや書面で依頼し記録を残します。例:「源泉徴収票の再発行をお願いします。送付先は○○です。」
- 一定期間たっても対応がない場合は税務署に相談します。収入の証明が必要なら賃金明細や振込記録を準備します。
年末調整・確定申告で使えない場合
源泉徴収票がないと年末調整や確定申告で困ります。どうしても間に合わないときは、手元の支払記録で仮算出し税務署に相談して指示を仰いでください。
副業・掛け持ちが勤務先にバレる懸念
契約で副業が禁止されているか確認してください。税務処理で勤務先に通知が行くわけではありませんが、住民税の徴収方法(普通徴収か特別徴収か)によっては勤務先に副収入が分かることがあります。必要なら住民税を普通徴収にして職場に知られないよう手続きを検討します。
給与額の誤りや記載漏れの対処
源泉徴収票の金額に誤りがあれば早めに勤務先に訂正を依頼してください。訂正してもらえない場合は税務署に相談し、指示に従ってください。
どのケースでも、証拠となるメールや振込履歴を残すこと、再発行依頼は書面で行うことが早期解決につながります。保管は紙とデータ両方で行うと安心です。


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