はじめに
本記事の目的
この章では、本記事で扱う内容と読むべき人をやさしく紹介します。転職や中途退職で発生する税手続きは、慣れないと戸惑いやすいです。ここでは源泉徴収票の扱い方、年末調整と確定申告の違い、住民税の手続きなど、実務で必要なポイントを分かりやすくまとめます。
対象となる方
- 年の途中で退職した方
- 年の途中で入社した方
- 転職先と前職の給料の合算で税金が気になる方
具体例を交えて説明しますので、初めての方でも手順を追って対応できます。
本記事で学べること（概要）
- 退職時の源泉徴収票の受け取り方と保管方法
- 年末調整が会社で済む場合と、自分で確定申告が必要になる場合の違い
- 源泉徴収票の主要な記載項目とチェックポイント
- 年だけの給与や退職金に関する注意点
- 住民税の納付や特別徴収・普通徴収の切替手続き
読み方のアドバイス
まずは自分の状況（退職時期・再就職の有無・扶養の有無）を整理してください。章ごとに具体的な手順や例を示しますので、該当する章から順に読み進めると実務に活かしやすいです。
源泉徴収票の発行時期と法的義務
退職した際の源泉徴収票は、給与や税金の整理に必要な大切な書類です。以下で、発行の時期や法律上の義務、転職時の扱いをわかりやすく説明します。
発行の期限
会社は退職日から1か月以内に源泉徴収票を作成し、本人に交付する義務があります（所得税法第226条第1項）。例えば、退職日が3月15日なら、4月15日までに交付されます。発行を急ぐ場合は、まず前の会社に問い合わせてください。
年末退職の場合と翌年分の扱い
退職日が12月31日で年末調整の対象になるときは、翌年1月に支払われる給与についても源泉徴収票が発行されます。つまり、年をまたいで支払われる給与がある場合は、前職がその分を含めて源泉徴収票を用意します。
転職先への提出
転職する場合は、前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出してください。新しい会社はそれを使って年末調整を行います。提出が遅れると年末調整に影響することがあるので、早めに渡しましょう。
受け取れないときの対応
期限を過ぎても交付されないときは、まず前の会社に書面で請求してください。それでも解決しないときは、管轄の税務署に相談するか、確定申告で対応する方法があります。記録を残しておくと手続きがスムーズです。
中途退職時の年末調整と確定申告
概要
退職の時期で年末調整や確定申告の手続きが変わります。ここでは代表的な3パターンに分け、必要な書類と手続きの流れを具体例を交えて説明します。
1) 12月31日以前に退職し、年内に転職しない場合
この場合、翌年の確定申告（2月16日〜3月15日）で所得税の清算を行います。準備する主な書類は前職の源泉徴収票、保険料控除証明書、医療費の領収書などです。例：10月に退職し再就職しなかった場合、前年分の給与は前職の源泉徴収票で確認します。
2) 12月31日以前に退職し、年内に転職した場合
原則として転職先の雇用先が年末調整を行います。手続きでは前職の源泉徴収票と各種控除の書類（生命保険料控除、社会保険料の証明等）を転職先に提出します。例：11月に退職して12月に新しい会社に入社した場合、新しい会社で1年分の給与を合算して年末調整します。
3) 12月31日付で退職した場合
12月31日付で退職すると、その年の給与が退職先で確定します。退職先が年末調整の対象になり、必要な控除を会社に伝えれば年末調整で精算されます。
補足（注意点）
- 年末調整で処理できない控除（医療費控除や寄附金控除など）は自分で確定申告が必要です。
- 前職の源泉徴収票を受け取ったら大切に保管し、転職先や税務署での手続きに備えてください。
必要なら、具体的なケースに合わせて提出書類のチェックリストを作成します。
源泉徴収票の記載内容と注意点
はじめに
源泉徴収票は年末調整や確定申告で必要な大切な書類です。内容に誤りがあると手続きで困りますので、受け取ったら必ず確認してください。
記載すべき主な項目
- 支払金額（給与の総額）
- 所得税の源泉徴収額
- 退職した人は退職日や退職金の金額
- 社会保険料の控除額
具体例：退職日が空欄だったり、最後の給与が反映されていなければ要注意です。
退職日の記載と対応
退職日が記載されていない、または誤っている場合は会社に訂正を依頼しましょう。まず給与明細や退職届の写しを用意し、総務担当に口頭だけでなくメールや書面で依頼するとスムーズです。
社会保険料の天引き確認
最後の給与で健康保険や厚生年金が正しく天引きされているか照合してください。例：最終月に保険料が計上されていなければ、翌年の所得や控除に影響します。給与明細と源泉徴収票の控除額を比べると見つけやすいです。
訂正・再発行の依頼方法
- 誤りがあれば証拠（給与明細、退職届）を準備。
- 総務に訂正と再発行を依頼（メール推奨）。
- 必要なら社労士や税務署に相談してください。手続きは会社側の対応で直ることが多いです。
注意点
源泉徴収票は確定申告や年金手続きで必要になります。受け取ったら速やかに確認し、誤りがあれば早めに対応しましょう。
年だけの給与や退職所得にかかる源泉徴収票
途中で受け取る２種類の源泉徴収票
年の途中で会社を辞めたり入社したりすると、主に「給与所得にかかる源泉徴収票」と「退職所得にかかる源泉徴収票」の２種類を受け取ることがあります。給与分は勤務先ごとの１年分の給与と税額が記載され、退職金は別にまとめて記載されます。
年末調整での取り扱い
年末調整で扱うのは原則として給与所得の分だけです。退職所得は税法上で別枠の計算となるため、年末調整には算入されません。例えば前職で退職金を受け取り、その源泉徴収票があっても、それは年末調整用には使いません。
退職所得の源泉徴収票は本人へ返却される
退職金に関する源泉徴収票は会社が従業員本人に交付します。これを受け取り大切に保管してください。確定申告が必要な場合や税額の精算を希望する場合に使います。例：退職金を受け取り、かつ他に給与収入があるときは確定申告で全体の税額を調整することがあります。
実務上の注意点
- 転職先で年末調整を受ける場合は、前職の給与所得の源泉徴収票を提出してください。退職所得の票は提出不要です。
- 紛失したときは、発行した会社に再発行を依頼しましょう。
- 不安があれば税務署や税理士に相談すると安心です。
住民税の手続き
概要
退職で会社が特別徴収を続けられなくなる場合、会社は従業員の居住地の市区町村に「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を翌月10日までに提出します。届出により、特別徴収から普通徴収へ切り替える手続きが行われます。
具体的な手順
- 退職時に転職先が決まっていない場合は、届出書へ「普通徴収へ切替」の旨を記載します。市区町村は納税通知書（納付書）を発行し、本人に送付します。
- 退職後すぐに転職先が決まっている場合は、新しい勤務先で特別徴収を継続できることが多いです。新しい勤務先へ退職と納税方法の状況を伝えてください。
- 住所を異動した場合は、届出先の市区町村が変わります。住民票のある市区町村へ手続きを行ってください。
注意点と対処法
- 会社が届出を忘れたときは、本人が居住地の市区町村に相談してください。手続きの有無で納税方法が変わります。
- 普通徴収になった場合は、納付書の期限内に自分で納める必要があります。紛失したら市区町村窓口で再発行を依頼してください。
何か不明点があれば、退職前に会社の総務や居住地の市区町村へ確認すると安心です。
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