はじめに
この記事は、源泉徴収票に記載された金額が自分の計算やほかの書類と合わないときの原因と対処法をわかりやすく解説します。源泉徴収票は給与や年末調整の結果を示す大切な書類です。合計が合わないときは、慌てずに項目ごとに確認することで多くのケースはすぐに理由がわかります。
誰に向けた記事か
- 給与所得者で源泉徴収票を受け取った方
- 確定申告や市区町村の課税証明と照合する必要がある方
この記事で扱う主な内容
- 源泉徴収票のどの欄を比べればよいか
- 合計が合わない代表的な原因(所得控除、計算方法、他書類との差)
- 調べ方と簡単な対処法(確認の順番や必要書類)
準備するもの
- 手元の源泉徴収票
- 今年の給与明細(年末のもの)
- 必要なら課税証明書や保険料の控除証明書
この記事を読めば、どの順で確認すればよいか明確になり、誤りの有無を自分で判断しやすくなるはずです。次章からは、合計が合わない具体的なパターンを一つずつ見ていきます。
源泉徴収票の合計が合わない主なパターン
源泉徴収票は1年分の給与や控除、税額を示す大切な書類です。ここでは合計が合わないときに多く見られるパターンを分かりやすく整理します。
1.給与と賞与の集計期間の違い
給与は支払日基準、賞与は支給日や計算期間の違いで年をまたぐことがあります。例:12月に支給予定の賞与が1月支給になると、前年分の源泉徴収票に含まれません。
2.非課税手当や経費精算の扱い
通勤手当や経費精算は非課税扱いになる場合があり、総支給額に含まれても課税対象額に反映されません。例:通勤手当10,000円が非課税だと、給与合計と課税対象額に差が出ます。
3.社会保険料・雇用保険の差異
会社負担分が別表示になっていたり、天引きタイミングが異なったりして合計がずれることがあります。
4.複数社からの給与や再就職
同年中に転職・副業があると、各社の源泉徴収票を合算しても計算方法の違いでズレが生じます。
5.四捨五入や端数処理
月ごとの端数処理を合計すると数円〜数百円の差になることがあります。例:毎月の端数を切り捨てていると年で差が出ます。
これらのパターンをまず確認すると、多くの場合、原因が見えてきます。次章では控除側に焦点を当て、合わない理由を詳しく説明します。
所得控除の合計が合わない理由
概要
源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」と自分で合算した控除額が合わない場合、もっとも多い理由は「基礎控除(通常48万円)」が個別明細に含まれていないことです。2020年以降、基礎控除は原則48万円になっており、明細欄には細かく書かれないことが多いです。
具体例で確認
例:社会保険料控除300,000円、生命保険料控除40,000円、雑損控除0円の場合
– 自分で合算すると340,000円
– 源泉徴収票の合計が820,000円なら、基礎控除480,000円が加わっている可能性が高いです。
確認手順
1) 自分で合算した控除額に基礎控除480,000円を加えて再計算してください。
2) それでも合わない場合は、会社の総務や源泉徴収票の発行元に明細の出し方を確認してください。税務署に相談することもできます。
補足
他にも、一部の控除が支払側の集計でまとめて記載される場合があります。まずは基礎控除を加えて照合するのが手早い確認方法です。
課税証明書と源泉徴収票の金額が違う理由
概要
課税証明書は市区町村が前年1月1日〜12月31日の「全ての所得」を基に発行します。一方、源泉徴収票は勤務先が支払った給与や賞与など「給与所得分」だけを示します。そのため金額が異なることがよくあります。
主な違いと具体例
- 対象となる収入の違い:副業収入、家賃収入、年金、配当などは課税証明書に反映しますが、源泉徴収票には含まれません。例:副業で20万円得ると課税証明書の金額は源泉徴収票より大きくなります。
- 作成主体と目的の違い:源泉徴収票は給与支払者が発行し所得税の控除状況を示します。課税証明書は住民税や課税の基準確認のため市区町村が作成します。
- 確定申告や年末調整の反映:確定申告で申告した医療費控除や雑損控除は課税証明書に反映されます。結果、金額が修正される場合があります。
チェックすべき項目
- 副業や不動産収入の有無
- 確定申告や年末調整の有無
- 課税対象外の収入(非課税の手当など)が含まれていないか
- 発行年度が同一か
不一致に気づいたら、まず収入の内訳を確認し、市区町村か勤務先へ問い合わせると早く解決します。
控除・計算方法によるわずかなズレ
概要
源泉徴収票の金額は、支払金額や法定控除をもとに会社が計算します。その計算式や端数処理、賞与の扱いなどで、手計算と数百円〜数千円の差が生じることがあります。
主な要因
- 端数処理の違い:円未満や千円単位の切り捨て・切り上げ・四捨五入で差が出ます。例えば、月給30万円で保険料3万円なら課税対象は27万円ですが、端数処理で税額がわずかに変わります。
- 給与所得控除の適用:給与所得控除は国税庁の一覧表で決まります。年収や支払回数で該当行が変わり、計算結果が変わることがあります。
- 賞与(ボーナス)の計算:賞与は専用の税率表で計算します。年収見込みとの整合で年またぎの調整が入る場合があります。
- 税制改正や表の改定:控除額や税率の改定により、前年の手計算と違う結果になることがあります。
具体的な確認方法
- 給与明細の「支払金額」「社会保険料」「源泉徴収税額」を照合します。2. 賞与明細がある場合はその税率表の適用を確認します。3. 不明な点は経理・給与担当者に計算根拠(使用した表と端数処理)を確認してください。国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」や「給与所得控除の表」で自分でも照らし合わせられます。
以上の点を確認すれば、多くの「わずかなズレ」は原因が分かります。原因が特定できない場合は、会社に再計算を依頼するとよいです。
その他のチェックポイント
年末調整が正しく反映されていない
年末調整の手続きが会社側で完了していない、またはシステム反映が遅れていると金額が合わないことがあります。まず給与明細や年末調整の控えを確認し、反映日時や担当部署に問い合わせましょう。
途中入社・退社の場合
入社・退社のタイミングで支払金額や控除の按分が異なります。月割り計算や日数按分で差が出るため、該当期間の給与明細をすべて照合してください。
支払項目の違い
賞与や通勤手当、非課税の手当が含まれているかで支払金額が変わります。別の年に支払われた振替分が混ざっていないかも確認します。
控除証明書や社会保険の反映漏れ
生命保険料控除や社会保険料の控除証明が適用されていないと控除額が合いません。会社が受け取った控除証明と自分の手元の証明を照合してください。
復興特別所得税の加算
源泉徴収税額には復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されています。税額の計算式が「所得税額×1.021」になっているか確認するとよいです。端数処理で数円のズレが生じる場合もあります。
複数の勤務先や副業がある場合
副業や掛け持ちで源泉徴収票が複数あると合算が必要です。自分で合算した金額と各社の明細を照らし合わせてください。
困ったときは、まず勤め先の総務・人事に確認し、それでも解決しない場合は税務署に相談しましょう。
まとめ:合わない場合の対処法
以下は、源泉徴収票や課税証明書の金額が合わないと感じたときの具体的な対処法です。
1)まずは再計算する
- 所得控除の合計が合わない場合は基礎控除(48万円)を加えてもう一度計算してください。例:給与収入から給与所得控除、各種所得控除、基礎控除を順に差し引いて課税対象額を確認します。
2)差が出る原因を順に確認
- 給与以外の所得(副業、年金、利子等)があるか確認します。これらは課税証明に反映されることがあります。
- 確定申告をしている場合は申告内容と照合してください。
3)書類と計算式を照合する
- 源泉徴収票の各欄(支払金額、社会保険料、控除額など)が課税証明と一致するか確認します。数字の拾い間違いや桁の誤りもよくあります。
4)公式資料を参照する
- 国税庁や市区町村の案内を併用すると計算方法や用語の違いが分かりやすくなります。
5)相談する
- 自分で原因が分からないときは、勤務先の給与担当、税務署、市区町村の税務課に相談してください。相談時は源泉徴収票、課税証明書、確定申告書の写しを用意するとスムーズです。
まずは落ち着いて順に確認すれば、多くの場合は原因が分かります。必要なら早めに専門窓口へ相談しましょう。
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