はじめに
目的
本章では、この記事の目的と読み方をわかりやすく説明します。源泉徴収票の発行義務や期限について不安を感じている方が、実務で迷わないように整理しています。
本記事の構成と対象読者
会社の人事・経理担当者、個人事業主、従業員や退職者など、源泉徴収票に関わる全ての方を対象にしています。各章で法的根拠や具体的な手続き、よくあるケースを順を追って解説します。
読み方のポイント
まず概要をつかみ、該当する章(在職者、退職者、再発行など)を参照してください。実務で使える注意点や対応策を具体例で示しますので、必要に応じて該当箇所を確認して実務に活かしてください。
源泉徴収票とは何か、その重要性
定義と役割
源泉徴収票は、雇用主が従業員に対して1年間に支払った給与や賞与の額、源泉徴収した所得税額、各種控除額を記載した書類です。税金や社会保険の計算のもとになる公式な証明書です。
主な記載項目(簡単な説明)
- 支払金額:1年間に会社が支払った総額です。例:給与や賞与の合計。
- 源泉徴収税額:会社が給与から差し引いて税務署に納めた金額です。
- 各種控除:社会保険料や配偶者控除など、税額計算に使う控除の合計です。
使われる場面(具体例)
- 確定申告:還付や追加納税の手続きで必須です。
- 転職手続き:新しい勤務先への提出や年末調整で使います。
- 住宅ローン審査、保育園の所得証明など:収入証明として求められます。
なぜ重要か
源泉徴収票は収入と税の状況を正確に示す唯一の公的資料です。間違いや未受領があると、税務手続きやローン審査で不利になります。受け取ったら金額や氏名、勤務先名を必ず確認し、疑問があれば早めに会社に相談してください。
保管のポイント
原本を安全に保管し、必要時にすぐ提出できるようにします。コピーを取っておくと再発行を待つ間に便利です。
発行義務の根拠と対象者
法的根拠
所得税法第226条に基づき、給与や賞与を支払う者(企業や個人事業主)は支払を受ける者に対して源泉徴収票を交付する義務があります。交付は支払額と源泉徴収税額を明確にし、受給者が確定申告や年末調整で正しく税務処理できるようにするためです。
対象者(誰に交付するか)
- 従業員全員が対象です。正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート、嘱託、役員など、給与や賞与を受け取るすべての人に交付します。
- 複数の勤務先がある場合は、それぞれの給与支払者が自分の支払分について交付します。副業でアルバイトをしている人にも、当該アルバイト先は源泉徴収票を出す義務があります。
交付を怠ったり虚偽記載した場合のリスク
交付しない、あるいは虚偽の記載をした場合は罰則が適用されます。罰則としては1年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められています。罰則は給与支払者および責任者に及ぶため、確実な交付と正確な記載が重要です。
発行期限とタイミング(在職者の場合)
概要
年末調整が終わった従業員には、翌年1月31日までに源泉徴収票を発行・交付する必要があります。これは所得税法で定められた期限です。
対象者
12月31日時点で会社に在籍している従業員が対象です。パート・アルバイトも含まれます。
法定の発行期限
法的な最終期限は翌年1月31日です。期限を過ぎると行政対応や従業員との対応が必要になることがあります。
実務上のタイミング
多くの会社は12月末〜1月中旬に配布します。理由は年末調整の処理や印刷・封入作業の都合です。余裕を持って1月上旬までに配るとトラブルを避けやすいです。
交付方法と注意点
対面で手渡すのが一般的ですが、従業員の同意があれば電子交付(PDF送付等)も可能です。住所変更や長期休職がある場合は、郵送や送付確認を確実にしてください。
退職者の場合の発行期限
退職後の原則
退職した従業員には、退職日の翌日から起算して1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。例えば退職日が5月10日なら、6月10日までに渡す必要があります。
交付方法
在職中と同様に手渡しでの交付が基本です。退職日に渡せない場合は、郵送(書留や簡易書留など記録が残る方法)で送るのが一般的です。電子交付は条件が限られるため、実務ではあまり使われません。
住所変更や受取時の注意
退職後に住所が変わることが多いため、退職時に現住所を確認しておくと安心です。郵送で送る場合は、受領確認が取れる方法を選んでください。
遅れた場合の対応
期限を過ぎたら、速やかに交付手続きを行ってください。再発行や問い合わせの対応は、次章で詳しく説明します。
会社の保管義務と再発行
保管義務の基本
会社は源泉徴収票を7年間保管する義務があります。これは従業員の所得や税額の確認に必要なためです。保管期間は雇用が終了した後も適用されます。
保存方法と注意点
紙でも電子でも保存できます。ただし、読み取り可能な状態で安全に保管してください。アクセス権やバックアップを整え、個人情報保護に配慮します。
再発行の対応手順
- 従業員からの依頼を受け付け、本人確認(身分証や退職時の情報)を行います。2. 過去7年分の記録を検索し、該当分をコピーまたは再作成します。3. 再発行した書類には発行日を明記して交付します。企業内で対応履歴を残すとよいです。
再発行できない場合の対応
保管期限(7年)を過ぎて記録が消去されている場合は、再発行できないことを丁寧に説明します。代替として、源泉徴収票の原本がない旨を記した証明書や、給与明細、年末調整の記録を提供できるか確認してください。
実務上のポイント
早めに依頼窓口を明確にし、再発行の手順や費用の有無を就業規則や案内で示すとトラブルを防げます。疑問があるときは税務署へ相談してください。
源泉徴収票を受け取らない場合の対応と注意点
まず確認すること
源泉徴収票が手元にない場合、まず会社に問い合わせます。在職中なら人事・総務や給与担当、退職者なら退職時の担当者に連絡してください。口頭だけでなくメールや書面で依頼すると記録が残ります。
再発行の依頼方法
会社に再発行を依頼します。本人確認のため身分証明や退職証明を求められることがあります。受け取り方法は手渡し・郵送・電子交付(合意がある場合)のいずれかです。通常、再発行に費用はかかりません。
受け取れない場合の代替手段
どうしても受け取れないときは、給与明細や離職票、雇用保険の記録を用意して税務署へ相談してください。確定申告には源泉徴収票がなくても手続きできる場合がありますが、証拠書類が必要になります。
注意点
個人情報の取り扱いに注意し、紛失防止のためコピー管理を徹底してください。再三催促しても対応がない場合は、労働基準監督署や税務署に相談すると解決の糸口が見つかります。
早めに対応すると転職先への手続きや確定申告の不安を減らせます。早めの連絡を心がけてください。
罰則と法的リスク
主な罰則
源泉徴収票の発行・交付を怠ると、所得税法違反になり、懲役や罰金が科される可能性があります。具体的には故意に交付しなかったり、必要な書類を虚偽の内容で作成した場合に刑事責任が問われます。短くても厳しい処分につながるおそれがあります。
虚偽記載のリスク
金額や控除の記載を誤って故意に訂正しないと、虚偽記載として処罰の対象になります。従業員側での税務申告が正しく行えず、後に過少申告や追徴課税が発生すると、会社が損害賠償を求められることもあります。
その他の法的・実務上のリスク
税務署による調査や加算税・延滞税の発生、企業の信用失墜などの二次的な被害が生じます。代表者や担当者が個人責任を問われるケースもあります。
企業が取るべき対策
発行ミスに気づいたら速やかに訂正と再発行を行い、関係者に説明してください。内部で発行手順を整備し、保存義務を守ること、税務や法務の専門家に相談することをおすすめします。損害を減らすために記録を残し、従業員への説明を丁寧に行うことが重要です。
ケース別Q&A(よくある質問)
以下は、勤務先や働き方ごとに多く寄せられる質問と簡単な回答です。具体例で分かりやすく説明します。
Q1: アルバイトやパートにも発行義務はありますか?
A: はい。アルバイトやパートでも給与を支払った事業者は発行します。例えば、年末に短期で働いた学生にも原則として発行されます。
Q2: 年度途中で退職した場合の発行期限は?
A: 退職後1か月以内に発行する必要があります。例:4月末で退職したら5月末までに受け取れます。
Q3: 発行が遅れた場合のリスクは?
A: 従業員の確定申告や転職手続きに支障が出ます。加えて法的な罰則や行政の指導が入る恐れがあります。
Q4: 再発行してほしいときは?
A: 勤務先に再発行を依頼してください。紛失や住所変更が理由ならその旨を伝えます。急ぐ場合は理由を明確に伝えると対応が早まります。
Q5: 複数の会社から給与をもらった場合は?
A: 各事業者がそれぞれの分の源泉徴収票を発行します。確定申告で合算して申告します。
Q6: 退職後、会社が発行しないと言うときは?
A: まずは書面やメールで依頼し、それでも応じない場合は税務署や労働基準監督署に相談してください。
Q7: 海外に転居した場合は?
A: 送付先を伝えれば郵送で受け取れます。事前に新しい住所を会社に知らせましょう。
Q8: 年末調整済みかどうか分からないときは?
A: 源泉徴収票を見ると年末調整の欄で確認できます。分からなければ会社の経理担当に問い合わせてください。
その他よくある疑問があれば、具体的な状況を教えてください。対応方法を一緒に考えます。
令和7年(2025年)分の具体的な発行期限
期限
令和7年(2025年)分の源泉徴収票は、翌年の令和8年(2026年)1月31日までに発行・交付する必要があります。これは在職者・退職者を問わず基本の締切日です。
雇用者が行うべきこと(実務ポイント)
- 年末調整や給与計算を早めに確定し、発行準備を進めます。
- 発行は紙交付でも電子交付でも行えますが、従業員が受け取れる方法を確保してください。
- 交付記録と控えを保管し、再発行依頼に備えます。
従業員が確認すべきこと
- 1月末までに源泉徴収票を受け取れているか確認してください。
- 受け取れない場合は、まず勤務先に問い合わせてください。再発行や受取方法の確認を求めましょう。
期限を過ぎた場合の対応
- 期限内に交付がないと、従業員が確定申告や手続きで支障をきたす可能性があります。
- 未交付や遅延がある場合は勤務先に再発行を依頼し、それでも解決しないときは税務署に相談してください。
実務のチェックリスト(簡易)
- 年末調整の結果を1月中旬までに確定する。
- 発行書類を作成・確認する。
- 1月31日までに交付する。
- 交付記録を保存する。
上記を守ることで、従業員の手続きや会社側のリスクを減らせます。
まとめと実務ポイント
本章では実務で役立つ要点を分かりやすくまとめます。
- 発行期限の再確認
- 在職者:年末調整後、翌年1月31日までに交付します。
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退職者:退職日の翌日から1か月以内に交付します(例:3月15日退職なら4月15日まで)。
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会社の義務
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源泉徴収票は7年間保管します。紛失や再交付依頼に備え、整理して保存してください。
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実務チェックリスト(簡潔)
- 毎年のスケジュールを作成して担当者を決める
- 退職者の住所や受取方法を退職時に確認する
- 発行用テンプレートと控えの保管場所を統一する
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再発行依頼の受付窓口と手順を明確にする
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トラブル回避のポイント
- 発行遅延や記載ミスは本人や会社に不利益が生じます。早めにチェックリストを回して確認してください。
- 従業員から受け取らない旨の申出があれば書面で記録すると安心です。
実務では「期限を守る」「記録を残す」「担当を明確にする」ことが最も重要です。これらを習慣化すると、手続きがぐっと楽になります。


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