はじめに
この章の目的
この文書は、源泉徴収票の「乙欄」について、意味や適用される条件、甲欄や丙欄との違い、具体的な注意点や年末調整・確定申告との関係までを分かりやすく解説することを目的としています。副業やアルバイトで乙欄が使われた場合の対応も具体例を交えて説明します。
誰に向けて
副業や掛け持ちのアルバイトがあり、源泉徴収票の欄分けで戸惑っている方。会社から渡された源泉徴収票を見て「自分は何をすればよいのか」を知りたい方に向けています。
この記事を読むとできること
- 乙欄が何を意味するかが分かります。
- 甲欄・乙欄・丙欄の違いを実務上の例で理解できます。
- 乙欄が適用されたときに年末調整や確定申告で取るべき行動が分かります。
読み進め方
まずは本章で全体像をつかみ、次章以降で具体的なケースや注意点を順に確認してください。迷ったときに読み返せるよう、具体例を交えて丁寧に説明します。
源泉徴収票の乙欄とは
概要
源泉徴収票の「乙欄」は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合や年末調整を受けていない場合に使われる区分です。扶養控除等申告書は通常、主に収入がある1か所の勤務先にしか出せません。そのため、複数の勤務先から給与を受けるとき、主たる勤務先以外の給与では乙欄が適用されます。
どういう意味か
乙欄は「控除が適用されていない状態」を表します。つまり、扶養や基礎控除などを考慮せずに源泉徴収(給与からの天引き)を行います。結果として、甲欄より多めに税金が差し引かれることが多いです。
具体例
A社を主な働き口として扶養控除申告書を出している人が、アルバイトでB社から給与を得る場合、B社では乙欄が適用されます。B社は扶養控除を反映せずに源泉徴収するため、手取りが少なく見えることがあります。
対処法のヒント
- 主たる勤務先で年末調整を受けると、全体の税負担は調整されます。
- 年末調整を受けない場合や調整が不十分なときは、確定申告で過不足を精算できます。
この章では乙欄の基本的な意味と影響を説明しました。次章では甲欄・乙欄・丙欄の違いを詳しく見ていきます。
源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄の違い
はじめに
甲欄・乙欄・丙欄は給与から差し引く源泉税の計算表の区分です。どの欄を使うかで税額が変わりますので、違いを分かりやすく説明します。
甲欄
- 扶養控除等申告書を勤務先に提出している人が適用されます。
- 各種控除(扶養など)が考慮され、税率は比較的低めです。
- 一般に主たる勤務先(本業)で使われます。
乙欄
- 申告書を提出していない場合に適用されます。
- 控除が反映されないため、甲欄より税率が高くなります。
- 副業や短期アルバイトなど、本業以外の収入で使われることが多いです。
丙欄
- 日雇いなど、短期間で働く場合に用いられることが多い区分です。
- 申告書なしで控除も無く、一律の計算方法が適用されます。
比較のポイント
- 控除の有無:甲欄だけ控除が反映される
- 税負担:乙欄は甲欄より重くなる傾向
- 用途:甲=本業、乙=副業・兼業、丙=日雇い等
具体的な税額は給与額や扶養の有無で変わりますので、該当する欄が分からない場合は勤務先や税務署に確認してください。
乙欄が適用される具体的なケース
副業・兼業の場合
主たる勤務先が決まっている人が、それ以外の会社やアルバイトで働くと、主たる勤務先以外では原則として乙欄が適用されます。例えば、昼は正社員、夜は飲食店でアルバイトをする場合、夜の勤務先では扶養控除などを反映せず源泉徴収します。
扶養控除等申告書を提出していない場合
扶養控除等申告書をその勤務先に提出していない(提出し忘れや企業側の配布漏れを含む)と、会社は乙欄で源泉徴収します。書類を後から提出しても、すでに徴収した税額は年末調整や確定申告で調整できます。
短期雇用・臨時採用の場合
雇用期間が短い、または臨時的な採用では手続き簡略のため乙欄にすることがあります。例:短期のイベントスタッフや季節労働など、一時的に働くときに多い扱いです。
賞与(ボーナス)のみ支給される場合
賞与だけ支給され、給与と通算しない扱いになると、賞与分は一律20.42%で源泉徴収されるケースがあります。金額によって差は出ますが、通常の給与計算より高くなる可能性があります。
その他の典型例
・複数のパートを掛け持ちしている場合、主たる勤務先以外は乙欄になることが多いです。
・初出勤で書類未提出のケースや、雇用契約が短期のみで提出手続きが省略された場合も乙欄適用になります。
これらはいずれも、扶養控除や基礎控除を勤務先が反映せずに税額を計算するため、給与から差し引かれる税額が多くなる傾向があります。年末調整や確定申告で過不足を調整できますので、該当する場合は書類提出や申告の準備をするとよいです。
乙欄適用時の注意点
乙欄が適用されると、基礎控除や扶養控除などが差し引かれず、源泉徴収の税額が高めになります。そのため税負担が重く感じられることが多いです。
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なぜ負担が増えるのか
乙欄はあらかじめ控除を想定しない計算です。例として、副業で毎月の給与から多めに税金が引かれ、年末調整では清算されません。 -
年末調整と確定申告
乙欄の分は年末調整の対象外です。ですから本業の給与と副業の源泉徴収票を合わせて確定申告を行い、過不足を精算します。多く払っていれば還付が受けられます。 -
受け取ったときにすること
源泉徴収票は必ず保管し、本業の給与と合わせて確定申告を準備してください。保険料控除などの証明書もそろえると正確に計算できます。 -
注意点
確定申告を忘れると払い過ぎた税金が戻らないことがあります。複数の副業で乙欄が使われる場合は手続きが増えるため、早めに整理してください。税務署や税理士に相談するのも有効です。
よくある質問・トラブルと対応
以下は、乙欄に関してよくある質問と具体的な対応例です。
Q1:なぜ税金が多く引かれるのですか?
給与ごとに源泉徴収額を計算するため、主たる給与の扶養申告がない場合は控除が少なくなり税額が増えます。多く引かれた場合は確定申告で精算します。
Q2:確定申告で何をすればいいですか?
本業・副業の収入を合算して申告します。用意するものは源泉徴収票、支払証明、控除証明(社会保険料・医療費等)、マイナンバーなどです。e-Taxか税務署窓口で申告します。
Q3:提出書類を提出し忘れたら?
勤務先から扶養控除等申告書が配られたら早めに提出してください。提出漏れがあれば、まず勤務先に確認し、源泉徴収票を受け取って確定申告で清算します。
Q4:副業先が乙欄でも問題ありますか?
問題はありませんが、その分源泉徴収は多くなります。還付を受けるには確定申告を行ってください。
Q5:源泉徴収票が届かない・金額が違う場合
勤務先に訂正を依頼してください。対応が困難な場合は最寄りの税務署に相談し、必要な書類を揃えて申告します。
トラブル対応のポイント
- 書類は必ずコピーを取る。\n- 期限内に申告できないときは早めに税務署へ相談する。\n- 返金は申告後、手続きにより数週間〜数か月かかることがある。
不安がある場合は、給与明細や源泉徴収票を手元に税務署や税理士に相談すると安心です。
まとめ
この章では、本記事の要点を分かりやすく整理します。
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乙欄の特徴:扶養控除等申告書を提出していない勤務先や副業先で使われ、控除が反映されず源泉徴収額が高くなります。年末調整は行われません。
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必要な手続き:乙欄で給与を受けた分は確定申告で精算します。主たる勤務先がある場合はそちらで扶養控除等申告書を提出し、手取りを調整する方法も使えます。
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確定申告に用意するもの:源泉徴収票(乙欄の分も含む)、給与や控除の証明書、各種控除の領収書や証明書を揃えてください。
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実務上の注意点:複数の勤務先があるときは、どこに扶養控除等申告書を出すかを早めに決めると負担が軽くなります。税額に疑問があるときは税務署や税理士に相談してください。
日常の管理と早めの手続きで、余計な税負担や手続きの手間を減らせます。この記事を参考に、源泉徴収の扱いを確認してみてください。
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