はじめに
目的
この記事は、ふるさと納税を行う際に重要な「源泉徴収票」の役割と、控除限度額の計算・確認方法について分かりやすく解説します。給与所得者が正確に上限を把握し、自己負担を抑える実務的な情報を提供します。
対象読者
給与所得者で、ふるさと納税を始めたい方、すでに寄付をして控除額が気になる方、源泉徴収票の見方に不安がある方を想定しています。税務の専門知識がなくても読み進められるように書いています。
本章での内容
本章では記事全体の概要と進め方を説明します。次章以降で源泉徴収票の必要性、年収の確認方法、確認すべき項目、控除超過のチェック方法、確定申告に必要な書類を順に解説します。実例を交えて、手順どおり進めれば自分で確認できる構成にしています。
ふるさと納税における源泉徴収票の必要性
概要
ふるさと納税をする際、源泉徴収票は必須ではありませんが、控除限度額を正しく把握するために非常に役立ちます。事前に寄附の上限を知っておくと、自己負担額を抑えられます。
源泉徴収票に書かれている主な情報
- 支払金額(年間の給与)
- 社会保険料等の控除額
- 課税対象となる所得金額
- 所得税の源泉徴収額
これらが控除計算の基礎になります。
給与明細との違いと利点
給与明細は月々の支払いを示しますが、年収や各種控除の合計までは分かりにくいことがあります。源泉徴収票は年次の確定データなので、控除限度額を計算する際に信頼性が高いです。
具体的な活用方法(例)
年収や社会保険料の合計を源泉徴収票で確認し、それをもとにふるさと納税の控除シミュレーターに入力します。複数の収入源がある場合や年の途中で転職した場合も、最終的な源泉徴収票で合算して確認してください。
注意点
副業収入や各種控除(扶養、配偶者控除など)は控除限度に影響します。確実に控除内で寄附したい場合は、源泉徴収票を手元に用意して計算することをおすすめします。
控除限度額の計算に使用する年収の確認方法
概要
ふるさと納税の控除限度額を計算する際に使う年収は「手取り」ではなく、源泉徴収票の「支払金額」に記載された年間の給与・賞与の合計額です。対象期間は寄附を行う年の1月から12月までです。
源泉徴収票での確認手順
- 源泉徴収票を用意します。会社が年末に発行します。
- 「支払金額」欄の金額を確認します。これがその年の給与収入です。
- 複数の勤務先がある場合は、それぞれの源泉徴収票の支払金額を合算します。
給与以外の収入があるとき
給与以外の収入(副業や事業所得)がある場合は、確定申告書の『総所得金額』を基にします。給与とその他収入を合算して年収の目安を出します。
年収がまだ確定していない場合の目安
まだ年末の源泉徴収票が手元にない時は、前年の源泉徴収票や確定申告書を目安にします。急激な収入変動が見込まれる場合は、月収×12やこれまでの累計を使って概算してください。
具体例
源泉徴収票の支払金額が5,000,000円なら、年収は5,000,000円です。複数の支払金額がある場合は合計して、控除限度額の計算に用います。
必要に応じて次の章で、源泉徴収票の具体的な欄の読み方を説明します。
源泉徴収票で確認すべき項目
概要
源泉徴収票は、控除手続きで最も重要な証明書です。以下の項目を順に確認してください。見落とすと控除額の計算や確定申告に誤りが出ます。
主な確認項目
- 支払金額(年収)
- その年に支払われた給与の総額です。控除限度額の基礎になるため必ず確認します。例:支払金額が500万円なら年収として扱います。
- 給与所得控除後の金額
- 給与所得控除を差し引いた後の金額で、課税対象の算出に使います。支払金額との関係を確認してください。例:支払金額500万→控除後350万(例示)。
- 所得控除の額の合計
- 社会保険料や各種控除の合計額です。控除可能額の確認に使います。
- 源泉徴収税額
- 既に天引きされた所得税の合計です。寄附金控除や確定申告で精算します。
- 配偶者控除の額
- 配偶者に関する控除の記載。配偶者がいる場合は確認します。
- 社会保険料等の金額
- 健康保険・厚生年金等の支払額。控除計算で重要です。
- 生命保険料控除、地震保険料控除
- 各保険の控除額が記載されています。該当する場合はチェックしてください。
- 控除対象扶養親族
- 扶養親族の人数や氏名が記載されます。扶養控除の適用に必要です。
チェック時のポイント
- 金額は源泉徴収票の該当欄と一致しているか照合します。
- 年収や控除額に疑問があれば給与担当や年末調整の資料と照らし合わせてください。
- 書類は確定申告まで保存します。
控除限度額を超えたかどうかの確認方法
まずはシミュレーションで確認
源泉徴収票にある年収(支払金額)や家族構成を、ふるさと納税サイトのシミュレーションに入力してください。サイトは自動で目安の控除上限を示します。サイト結果は目安なので、当年分は確定値にならない点に注意してください。前年の年収で試算すると実務上の目安になります。
自分で計算する手順(式を使う場合)
控除上限の目安は次の式で求めます。
個人住民税所得割額×20%÷(90%−所得税率×1.021)+2,000円
手順は次の通りです。
1. 個人住民税所得割額を用意する(通常は住民税決定通知書で確認)。当年分がなければ前年分で目安を出します。
2. 所得税率(課税される所得に対する税率)を確認する。税率は課税所得の区分に応じて変わります。
3. 式に当てはめて計算する。
例:個人住民税所得割額が100,000円、所得税率が10%(0.10)の場合
計算:100,000×0.20=20,000
分母:0.90−0.10×1.021=0.7979
20,000÷0.7979=約25,061
25,061+2,000=約27,061円(寄附金税額控除の上限の目安)
翌年の住民税決定通知書で最終確認
実際に控除が反映されたかは、翌年に届く住民税決定通知書で確認できます。そこには寄附金控除の適用状況や住民税の金額が記載されます。控除が超過していれば、控除されなかった分は自己負担になりますので、次年度の寄附額を調整するなどの対応を検討してください。
確定申告時に必要な書類
必要書類一覧
- 寄附金受領証明書(ふるさと納税の領収書)
- 源泉徴収票
- 還付金受取用口座番号(銀行口座情報)
- マイナンバー関連書類(マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類)
各書類の役割と注意点
寄附金受領証明書は、どの自治体にいついくら寄附したかを証明します。自治体ごとに発行されるため、複数の自治体に寄附した場合はすべて揃えてください。税務署に提出するか、e-Taxで申告する際にスキャンして添付します。
源泉徴収票は年間の給与や賞与、源泉徴収税額が記載されており、寄附金控除の計算に必要な所得確認書類です。会社から発行される時期は年明けで、見落とさず受け取ってください。
還付金受取用口座番号は、所得税の還付がある場合に指定します。銀行名、支店名、口座番号、口座名義を正確に用意してください。
マイナンバー関連書類は、本人確認のために必要です。マイナンバーカードがあるとe-Taxの手続きがスムーズです。
ワンストップ特例を利用した場合
ワンストップ特例を利用すると確定申告が不要になるケースがあります。ワンストップの申請を行っていない、または条件を満たさない場合は上記書類を準備して確定申告してください。
保存期間
寄附金受領証明書は5年間は保存してください。税務調査で提示を求められることがあります。


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