はじめに
この記事は、源泉徴収票に記載されている「支払金額」について、わかりやすく丁寧に解説することを目的としています。
何を扱うか
「支払金額」の意味、どのような収入が含まれるか・含まれないか、計算や確認のポイント、ほかの項目との違いを順を追って説明します。書類の見方がわからない人や、年末調整・確定申告の準備を始める人に役立つ内容です。
誰に向けた記事か
会社員、アルバイト、派遣社員、フリーランスに報酬を支払う側の担当者など、幅広い方を想定しています。専門的な税法の深掘りは避け、日常で使う実務的な説明を中心にします。具体例でイメージしやすくしますので、初めて源泉徴収票を見る方でも安心して読み進められます。
読み方と使い方
まずは「支払金額」の欄を確認する習慣をつけると便利です。次章以降で、項目ごとの見分け方や注意点を実務に即して解説します。本章を読んだあと、実際の源泉徴収票を開いて確認すると理解が深まります。
源泉徴収票の「支払金額」とは?
概要
源泉徴収票の「支払金額」とは、1年間に会社から支払われた給与や賞与(ボーナス)、残業代、課税対象の各種手当を合計した金額です。一般に「額面年収」や「年収」とほぼ同じ意味で使われ、税金や社会保険料を計算する基礎になります。支払金額は税引前の総支給額です。
主なポイント
- 税金や社会保険料が差し引かれる前の金額です。
- 非課税の通勤手当や出張旅費は含まれません。
- 源泉徴収票の「支払金額」欄に記載されています。
具体例(簡単な計算)
たとえば、月給30万円×12か月=360万円、賞与50万円、残業20万円があるとすると、支払金額は360万+50万+20万=430万円になります。ここに通勤手当(非課税)があっても加えません。
なぜ確認するか
支払金額は確定申告、住宅ローン審査、転職時の年収確認などで使われます。自分の給与明細と合っているか必ず確認してください。次章では、支払金額に含まれるもの・含まれないものを詳しく解説します。
支払金額に含まれるもの・含まれないもの
含まれるもの
- 基本給
- 毎月の給与そのもの。手取りではなく支給額で記載されます。
- 残業代・深夜手当
- 実際に支払われた時間外手当や深夜手当も含まれます。
- 賞与(ボーナス)
- 年間に支払われた賞与が支払金額に反映されます(別欄がある場合もあります)。
- 各種課税手当
- 住宅手当、役職手当、家族手当など、所得税法上で課税される手当が含まれます。
- 報奨金・インセンティブ
- 成果に応じた報奨金や歩合も支払金額に入ります。
含まれないもの
- 通勤費(通勤手当)
- 実費精算の交通費や非課税範囲内の通勤手当は含まれません。非課税限度を超える部分は課税対象になります。
- 出張旅費・日当
- 実際にかかった出張費や日当など、費用の補填として支給されるものは原則含まれません。
- その他の非課税手当
- 法令で非課税とされる福利厚生的な給付(一定の職務必要経費など)は支払金額に反映されません。
注意点:どの項目が課税扱いかは支給の性質と税法の定めによります。迷った場合は給与明細や総務・経理に確認してください。
支払金額とその他の項目の違い
源泉徴収票には「支払金額」のほかに、主に次の項目が並びます。
給与所得控除後の金額
支払金額(総支給)から給与所得控除額を差し引いた金額です。課税対象となる給与の基礎を示します。例:支払金額4,000,000円、給与所得控除900,000円→控除後3,100,000円。
所得控除の額の合計額
社会保険料控除や扶養控除など、個人に適用される各種控除の合計です。これを控除して「課税される所得」が確定します。例:控除合計800,000円→課税所得2,300,000円。
源泉徴収税額
会社が給与から天引きして納付した所得税の合計です。最終的な納税額は年末調整や確定申告で精算されます。
要点:支払金額は”出発点”の総額で、他の項目はそこから税額や手取りを導くための調整値です。
支払金額の確認が必要なタイミングと注意点
主な確認のタイミング
- 転職・就職時の年収証明:企業が源泉徴収票を求めることが多いです。最終年度の「支払金額」を基に年収を示します。過去勤務先が複数ある場合はそれぞれの源泉徴収票を用意します。
- 住宅ローンや各種融資の審査:金融機関は返済能力を審査するため、支払金額(年収)を重視します。提出時に差額がないか確認してください。
- 確定申告時:副業や年の途中で転職した場合、各源泉徴収票の支払金額を合算して所得を計算します。
注意点と具体例
- 複数勤務先がある場合:支払金額は合算します。例)会社A:3,000,000円、会社B:500,000円 → 合計3,500,000円。
- 非課税手当の取扱い:通勤手当など非課税部分が多い業種では、口座に入った総受取額と支払金額が異なることがあります。明細と照合してください。
- 誤りが疑われる場合:支払金額が明らかに違うときは、まず勤務先の給与担当に確認し、訂正が必要なら再発行を依頼します。金融機関や税務署にも相談できます。
実務的なチェックリスト
1) 全ての源泉徴収票を集める
2) 支払金額を合算して確認する
3) 非課税手当や控除項目と照合する
4) 不一致があれば給与担当や提出先に相談する
これらを確認すれば、手続きの遅れや誤解を防げます。必要なときは早めに確認・対応しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:支払金額が手取り額と違うのはなぜ?
支払金額は年間の総支給額(額面)を示します。ここから健康保険料・厚生年金・雇用保険などの社会保険料、所得税、住民税、その他の控除が差し引かれて手取りになります。たとえば支払金額が300万円で社会保険が40万円、税金が10万円なら、手取りは約250万円です。
Q:通勤手当が多い場合、支払金額に影響しますか?
通勤手当には非課税になる部分があります。非課税の範囲に入る通勤手当は支払金額に含まれません。課税対象として扱われる場合のみ、支払金額に加算されます。例:月3万円の非課税通勤手当なら支払金額に反映されませんが、課税扱いなら年間36万円が含まれます。
Q:アルバイトやパートでも支払金額は記載されますか?
はい。雇用形態に関係なく、1年間に支給された総額が支払金額として記載されます。複数の勤務先がある場合は、それぞれの源泉徴収票に年間支給額が出ます。税金の処理や確定申告の際は合算して扱います。
Q:支払金額が間違っていると感じたら?
まず給与担当や人事に確認してください。誤りがあれば源泉徴収票の再発行や修正を依頼できます。必要なら会社と相談して早めに対応しましょう。
コメント