はじめに
この文書は、年金手帳が2冊以上ある場合の原因や対処方法をわかりやすく説明するために作成しました。年金手帳は、色や発行時期が異なることがあり、それが重複の原因になることがあります。本書では、複数冊の年金手帳が存在する理由、確認すべきポイント、年金受給額への影響、必要な手続き、そして制度の変更点について順を追って解説します。
対象は次の方です。
- 年金手帳が2冊以上あることに気づいた方
- どの手帳を使えばよいか迷っている方
- 手続きの流れや注意点を知りたい方
本章では文書の目的と読み方、準備しておくとよいものを簡単に説明します。以降の章で具体的な確認方法や申請手続きについて丁寧に解説しますので、まずは落ち着いて手元の手帳を確認してください。個人情報を扱うため、手帳の写真を公開したり、不特定多数に渡すことは避けてください。
年金手帳が複数冊ある理由
色の違いは発行時期の違いを示します
年金手帳は発行された時期によって色が異なります。茶色、オレンジ色、青色といった見た目の違いは、制度改定やデザイン変更に伴うものです。たとえば若いときにもらった手帳と、後の制度変更で配られた手帳が色違いで並ぶことがあります。
過去の手帳が保管されていることが最も多い理由です
新しい手帳が来ても、昔の手帳を捨てずに取っておく方がよくいます。職歴の確認や年金記録の照合に備えて、過去のものを保管すると複数冊になります。実際には使うのは最新の手帳だけで、古いものは記録として残している場合がほとんどです。
紛失や再発行で増えるケースもあります
手帳を失くして再発行を受けると、新しい手帳が発行されます。氏名や住所の変更で差し替えがあった場合も複数になることがあります。
具体例で見ると分かりやすいです
学生時代に交付された手帳、就職後に勤務先から受け取った手帳、紛失で再発行された手帳が手元に残ると、3冊以上になることもあります。まずはどれが現在有効かを確認してください。
複数冊ある場合の確認ポイント
-
年金番号が同じかどうかを最優先で確認してください。年金番号は手帳の表面や見開きに記載されています。番号が同じであれば、記録が統一されている可能性が高く、そのまま保管して差し支えありません。
-
番号が異なる場合は注意が必要です。基礎年金番号に統合されていない可能性があり、年金記録が分散することで将来の受給に影響することがあります。特に青色の手帳で番号が異なると、過去に二重で年金記録が作成されたり、二重払い出しのリスクが生じる場合があります。
-
確認する具体的なポイント
- 氏名・生年月日が手帳間で一致するかを比べる。誤字や旧姓の併記に注意してください。
- 発行年月や発行機関の記載があれば確認する。時期の違いが手帳発行の背景を示すことがあります。
-
手帳の記載内容(加入履歴など)をざっと確認し、明らかに重複や欠落がないか確認する。
-
対処の準備
- 手帳の写し(コピーや写真)を用意しておくと相談がスムーズです。
-
本人確認書類や勤務先の履歴を整理しておくと手続きが進みやすいです。必要に応じて戸籍や住民票などが求められることがあります。
-
問い合わせ先
-
番号が異なる、記録に不明点がある場合はお住まいの年金事務所や市区町村窓口に早めに相談してください。窓口で現物を見せながら確認することで、統合手続きの必要性や方法がわかります。
-
メモ
- 統合手続きには時間がかかる場合があります。放置すると将来の受給で不利になる可能性があるため、早めに確認・相談することをおすすめします。
複数冊の年金手帳が年金受給額に与える影響
要点
複数の年金手帳を持っていても、年金受給額自体が増えることはありません。年金の金額は加入期間や納付実績(保険料を支払った期間)に基づいて計算されます。手帳の色や冊数は計算には反映されません。
受給額の計算の基本
年金は「加入期間」と「保険料の納付実績」が中心です。たとえば、会社Aで10年、会社Bで15年働いた場合、それぞれの加入期間が合算され、合計25年で計算されます。年金手帳が1冊でも3冊でも、合算した実績で判断します。
手帳の冊数が引き起こす問題
冊数そのものは影響しませんが、次のような記録の不一致があると受給額に影響する可能性があります。
– 基礎年金番号が複数登録されている(記録が分散し、実績が正確に集計されない)
– 会社名や期間の記載に誤りがある
これらがあると、本来の加入実績が反映されず受給額が少なく算定されることがあります。
具体例
例:過去に番号が二重に作られ、一部の加入期間が別の番号に記録されている場合。手帳が複数でも、記録を統合しなければ正しい年金額になりません。統合後に年金額が増えることはあり得ますが、それは手帳冊数のためではなく、記録が正しく反映されたためです。
対処のポイント
- 基礎年金番号の一致を確認する
- 「年金定期便」や厚生年金の記録で加入履歴を照合する
- 記録に誤りや欠落があれば年金事務所に相談し、訂正を依頼する
上記を確認すれば、手帳が複数あっても受給額がどう決まるかが明確になります。記録の正確性が最も重要です。
必要な対処方法
1. まず確認と相談
手元の年金手帳に記載された年金番号を確認してください。番号が複数ある場合は統合手続きが必要です。分からない点は、ねんきんダイヤルや最寄りの年金事務所に相談できます。相談で担当窓口の案内を受けると手続きがスムーズです。
2. 提出先と提出方法
- 現在、厚生年金に加入中の方:勤務先(事業主)に年金手帳を提出してください。事業主が手続きを行います。
- 自営業や無職の方など:住所地を管轄する年金事務所に持参または郵送で提出します。
3. 提出時に必要な書類
- 年金手帳(複数あるものをすべて)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)
- 戸籍謄本や住民票が必要となる場合があります(姓や本籍地が変わっているとき)
4. 代理提出・委任
本人以外が手続きをする場合は委任状と代理人の本人確認書類が必要です。事業主が扱う場合も、会社の指示に従ってください。
5. 提出後の流れ
年金事務所が照合して、統合された基礎年金番号や通知書を発行します。処理に時間がかかることがあるので、問い合わせ先を控え、経過を確認してください。
年金手帳の廃止と新制度への移行
令和4年4月1日以降、年金手帳の新規発行や再交付は廃止され、基礎年金番号通知書が発行されるようになりました。既にお持ちの年金手帳は引き続き使用できますが、複数冊お持ちの場合は、最新の手帳に記載された基礎年金番号が正しい番号です。
- 利用上のポイント
- 日常の手続きでは、最新の年金手帳または基礎年金番号通知書を提示してください。
-
雇用先や年金事務所で番号が必要になることがありますので、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)を用意しておくと安心です。
-
複数冊あるときの対応
-
古い手帳は記録として保管しておいてください。年金の記録に不安がある場合は、年金事務所に相談し、正しい基礎年金番号や記録内容を確認してもらいましょう。
-
紛失や番号確認の方法
- 紛失した場合は、最寄りの年金事務所に本人確認書類を持参して照会を依頼します。電話での相談も可能ですが、番号の正式な確認や再発行のような手続きには本人確認が必要です。
この移行により手続きの形が変わりましたが、番号自体は一人に一つです。困ったときは遠慮せず年金事務所へ相談してください。


コメント