はじめに
目的
本書は、退職時に離職票の交付を希望しなかった方が、後から離職票が必要になった場合にどう対応すればよいかを、やさしく丁寧に案内することを目的としています。実務的な手順や提出先、必要書類の確認まで順を追って説明します。
対象読者
・退職時に離職票を受け取らなかったが、後で必要になった方
・失業手当の申請や各種手続きで離職票が求められた方
・会社側に確認するポイントを知りたい方
本書の構成
各章で順に、離職票の基礎、受け取り条件、通常の発行手順、再発行の方法、最新の受け取り方法、ハローワーク提出時の必要書類、類似書類との違いを解説します。具体例を交えて、実際の手続きで迷わないようにしています。
読み方のポイント
急ぎで離職票が必要な場合は第5章を、手続き全体を知りたい場合は第2章から順にお読みください。会社やハローワークに問い合わせる際に使える質問例も各章で紹介します。
離職票とは何か
概要
離職票は、失業保険(雇用保険の失業給付)を申請するときにハローワークが発行する公式な書類です。会社が直接渡すのではなく、会社がハローワークに提出した「離職証明書」をもとに発行されます。
発行の主体と流れ
会社が離職証明書を作成してハローワークに提出します。ハローワークはその内容を確認し、離職票を作成して本人に送付または交付します。雇用保険の手続きで必ず求められる書類です。
離職票に書かれている主な項目
- 離職の理由(自己都合か会社都合かなど)
- 勤続期間や賃金の記載
- 離職日
これらの情報をもとに、受給資格や給付額、給付日数が決まります。
いつ必要か、いつ届くか
退職後に失業給付を申請する際に必要です。会社がすぐに手続きをしないと届くまで時間がかかるため、退職時に会社に提出状況を確認してください。
具体例
例:Aさんが自己都合で退職した場合、離職票に「自己都合」と記載されます。この記載により給付開始までの待期や給付日数が変わります。必ず内容を確認し、誤りがあれば会社やハローワークに連絡してください。
離職票をもらえる条件
概要
離職票は失業保険を受ける際に必要な書類です。受け取るには主に次の3つの条件を満たす必要があります。
1. 31日以上の継続雇用の見込みがあったこと
雇用契約時に「31日以上働く予定」があった場合に該当します。たとえば、契約が3ヶ月の派遣社員や2か月のアルバイトはこの条件を満たします。逆に、日雇いや勤務予定が1か月未満の短期契約は該当しません。
2. 週の所定労働時間が20時間以上であること
週あたりの所定労働時間が20時間以上である必要があります。例として、1日4時間を週5日働く場合は合計20時間で条件を満たします。週3日で1日8時間働く場合も該当します。
3. 学生でないこと
原則として在学中の学生は離職票の対象外です。卒業や退学で学生でなくなった場合は条件に含まれます。アルバイトとして雇用されていた学生は対象外になる点に注意してください。
交付を希望するタイミングと注意点
離職票は原則として退職者が希望したときに発行手続きが進みます。退職時に「離職票を発行してほしい」と会社に伝えないと、会社は手続きを行わないことがあります。口頭だけでなく、メールや書面で希望を伝えると後で確認しやすくなります。
発行されない場合の対処(簡単な目安)
会社が発行に応じないときは、まずは書面で再度請求してください。それでも応じない場合は、ハローワークに相談すると助言を受けられます。次章で手続きの流れや再発行について詳しく説明します。
離職票の通常の発行手順
離職票を受け取るまでの一般的な流れを、順を追って分かりやすく説明します。
1. 雇用保険の加入を確認
まず、雇用保険に加入しているか確認します。給与明細や雇用契約書で「雇用保険料」の記載を確認してください。加入していない場合は離職票は発行されません。
2. 会社に離職票の発行を依頼
退職後、総務や人事に離職票の発行を依頼します。口頭だけでなくメールや書面で依頼しておくと安心です。受け取り先の住所や連絡先も伝えましょう。
3. 会社がハローワークに離職証明書を提出
会社は離職者の情報を記載した離職証明書をハローワークに提出します。ハローワークはその内容を確認して離職票を作成します。
4. ハローワークが離職票を発行・会社へ送付
ハローワークで離職票が発行されると、通常は会社へ送付されます。手元に届くまで数日から数週間かかることがあります。会社が渡してくれない場合や遅れる場合は、ハローワークに相談してください。ハローワークが会社へ確認して対応してくれます。
5. 受け取り後の手続き
会社から離職票を受け取ったら、必要事項を記入してハローワークに提出します。提出時に身分証明書や印鑑が必要になることが多いので、事前に確認してください。
やっぱり欲しい場合の再発行手続き
概要
退職後に離職票が必要になったときは、再発行の申請ができます。最も確実なのは住所地を管轄するハローワークで本人が直接手続きをすることです。会社を通して申請する方法もあります。
本人がハローワークで申請する場合の流れ
- 必要書類をそろえて最寄りのハローワークへ行きます。本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)と、可能なら雇用保険被保険者番号や退職日が分かる資料を持参してください。具体例:給与明細や雇用契約書など。
- 窓口で再発行したい旨を伝え、申請書に記入します。ハローワークが会社へ発行の照会を行い、確認が取れれば再発行されます。
会社経由で申請する場合
会社の担当者がハローワークに申請書を提出すると、離職票を郵送で受け取れます。会社から頼める場合は、手続きの手間が少なく済みます。会社が閉鎖している、連絡が取れないといった場合は、本人申請を優先してください。
必要日数・費用
費用は通常かかりません。照会や調査により数日から2週間程度かかることがあります。書類不備があるとさらに時間を要します。
注意点
会社情報(正確な社名や退職日)が分かると手続きが早く進みます。どうしても会社側と連絡が取れないときは、ハローワークに事情を相談すると対応方法を案内してくれます。
最新の受け取り方法
概要
2025年1月20日から、雇用保険の離職手続きを電子申請で行い、特定の要件を満たす場合にマイナポータルを通じて離職票を直接受け取れるようになりました。これにより郵送を待つ必要がなくなる可能性があります。
受け取りのイメージ
- 離職手続きを電子で申請します。事業主や本人がオンラインで手続きを完了すると、行政側で処理されます。
- 一定の要件(電子手続きが完結しているなど)を満たすと、離職票がマイナポータルに表示されます。
- マイナポータル上で確認・ダウンロードでき、印刷して手元に保管できます。郵送が不要になることがあります。
具体的な準備例
- マイナポータルにログインできる状態にしておくと確認がスムーズです。
- 申請後はマイナポータルの通知や案内をこまめに確認してください。
受け取れない場合の対処
電子受け取りの要件に当てはまらないときは、従来どおり郵送で届きます。電子での案内が来ない場合は、勤務先かハローワークに問い合わせてください。
注意点
- マイナポータルで受け取れるかはケースによって異なります。必ず受け取り条件を確認してください。
- ダウンロード後は、離職票を紛失しないよう印刷・保存してください。
ハローワーク提出時に必要な書類
必要書類一覧
- 離職票(事業主が発行したもの)
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの原本)
- マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、または個人番号が記載された住民票)
- 受給口座の確認資料(本人名義の普通預金通帳の見開き、またはキャッシュカード)
各書類のポイント
- 本人確認は原本を持参してください。コピーのみでは手続きできない場合があります。
- マイナンバーは本人確認と併せて必要です。通知カードを紛失したときは、住民票(個人番号記載)で代替できます。
- 受給口座は本人名義が原則です。家族名義の口座や一部の金融機関は受給に使えない場合があるため、事前に確認してください。
注意点とよくあるケース
- 書類に不備があると手続きが遅れます。窓口でコピーを取れる場合もありますが、なるべく全て用意して来所してください。
- 在留資格のある外国人は在留カードを本人確認書類として併用できます。
- 通帳を持たない場合はキャッシュカードを持参し、窓口で確認を受けてください。
離職票と他の書類との違い
概要
離職票はハローワークが扱う失業保険手続き用の書類です。退職証明書(または離職証明書)は会社が発行し、国民健康保険や年金の切替、次の就職先での在職確認などに使います。用途が異なるため混同しないよう注意が必要です。
発行元と用途の違い
- 離職票:会社が作成した情報を基にハローワークが発行します。主に雇用保険の給付申請で使います。
- 退職証明書:会社が直接発行します。保険・年金の手続きや在職期間の証明に使います。
記載内容と具体例
- 離職票:離職理由、雇用期間、給与等が記載され、失業給付の受給日数や開始に影響します。
- 退職証明書:在職期間や職務内容などの簡潔な証明。国民健康保険の資格喪失届や年金の種別変更で求められます。
使い分けのポイント
- 失業手当を申請するなら離職票を用意してください。
- 保険や年金の切替、再就職先への証明は退職証明書を依頼しましょう。
- 両方必要になる場面もあります。会社に早めに発行を頼み、コピーを保管してください。


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