はじめに
本章の目的
この文書は、離職票(離職証明書)を作成する際の実務的な疑問に答えるために作りました。特に有給休暇を取得した日の扱いが、雇用保険の受給資格を左右する「賃金支払基礎日数」にどう影響するかを分かりやすく解説します。
誰に向けた内容か
- 人事や総務で離職票を作る方
- 退職者の雇用保険手続きを手伝う方
- 自分の失業給付を正しく受けたい方
この記事で分かること(構成)
- 有給休暇を取得した月の基礎日数の数え方
- 「11日ルール」と「80時間ルール」の考え方と適用例
- 離職票への具体的な記載方法と注意点
- 雇用保険受給資格との関係やよくある質問
読み方のポイント
できるだけ具体例を示し、用語は最小限にしています。ブログ記事の構成や書き方の型のように、各章を順に読めば実務で迷わず対応できるように作りました。次章から順に詳しく見ていきましょう。
離職票の「有給」「基礎日数」について詳しく解説
概要
離職票を作成する際、有給休暇(年次有給休暇)と基礎日数の扱いは実務でよく迷われます。ここでは、どのような場合に有給が基礎日数に含まれるか、具体例と注意点を交えて分かりやすく説明します。
有給(年休)の扱い
有給が「給与として支払われている日」は基礎日数に含めます。つまり、実際に賃金が支払われた日数を数えるため、有給消化や年休の買取で金銭が支払われている場合は基礎日数に入ります。反対に無給休暇や休職で給与が支払われない日数は基礎日数に含めません。
基礎日数とは(簡単な説明)
基礎日数は、離職票で「賃金支払の基礎となった日数」を示す欄です。雇用保険の受給要件や給付日数の判定に影響しますので、給与支払いの事実に基づいて正確に記載する必要があります。
具体例
・月の所定労働日が20日、実労働15日、年休5日で給与支払われた→基礎日数は20日(15+5)。
・実労働17日、無給休暇3日(給与なし)→基礎日数は17日。
実務上の注意点
・年休を買い取った場合は給与扱いとなり基礎日数に含める。給与明細で支払の有無を確認してください。雇用保険の判定に関わるため、給与・勤怠の記録を整え、従業員へ説明しておくとトラブルを避けられます。
1. 離職票における「賃金支払基礎日数」とは
賃金支払基礎日数の意味
賃金支払基礎日数は、雇用保険の受給資格や失業給付の計算で使う「賃金の支払い対象となった日数」を表します。離職日を起点に1か月ごとに区切り、その期間内で働いた日数や賃金支払いの対象になった日を数えます。受給判定において重要な指標です。
カウントのしかた(基本ルール)
- 離職日を起点に1か月ごとの区切りを作ります(例:3月20日が離職日なら3/20〜4/19が1か月)。
- その1か月ごとに「賃金支払基礎日数」を算出します。
- その月が“対象月”としてカウントされるのは、原則として「11日以上」または「労働時間が80時間以上」のどちらかを満たす場合です。
具体例
- 例1:ある月に15日出勤(合計労働時間150時間)→11日以上なのでその月はカウント。
- 例2:ある月に9日出勤で合計90時間→日数は不足だが80時間超なのでカウントされる。
- 例3:ある月に10日、合計70時間→日数も時間も不足し、その月はカウントされない。
なぜ重要か
賃金支払基礎日数は、失業給付の受給資格や給付日数の基礎になるため、正確に把握する必要があります。会社が記載する離職票の数値が基準に沿っているか確認しましょう。
2. 有給休暇の扱い
概要
有給休暇を取得した日は、離職票の「賃金支払基礎日数」において1日としてカウントします。半日出勤や給与支払い対象の特別休暇も同様に1日として扱います。無給の休暇や欠勤は含みません。
具体例
・出勤2日+有給9日=合計11日→その月は“対象月”としてカウントされます。
・出勤0日+有給11日=合計11日→同様にカウントされます。
実務上のポイント
- 給与台帳やタイムカードに有給の記録を残してください。記録がないと基礎日数に反映されないことがあります。
- 半日扱いの有給も1日計上になります。給与計算上は減額していても、基礎日数では1日として数えます。
- 会社が特別休暇に給与を支払う場合は、その日も基礎日数に含めます。
注意点
・有給でない欠勤は対象外です。雇用保険の受給資格に影響しますので、正確な記録を心がけてください。
3. 「11日ルール」と「80時間ルール」
概要
2020年以降、賃金支払基礎日数が11日未満でも、当該月の労働時間が合計80時間以上あればその月を「対象月」としてカウントする運用が行われています。パートや変則勤務の方も、月間の労働時間が80時間を越えれば対象になります。
誰が該当するか
- 週の出勤日数が少ない人や、シフトが不規則な人
- 給与支払い日数が11日に満たない月がある人
こうした人でも、実労働時間が80時間以上であれば対象に含めます。
カウントの方法(実務ポイント)
- 労働時間はタイムカードや勤務表で合算します。記録が大切です。
- 有給や賃金扱いの休暇の取り扱いは会社の賃金支払い状況次第で判断されますので、給与明細で確認してください。
具体例
- 例1:出勤日が少なく賃金支払基礎日数が8日だが、実働が85時間ある月→80時間ルールでその月をカウント。
- 例2:同じく賃金支払基礎日数が8日で実働が70時間→原則としてカウントされません。
注意点と対応
- 勤務時間の記録を保存してください。ハローワークの審査で証拠が求められます。
- 給与計算の方法や有給の扱いで不明点がある場合は、まず社内の給与担当者に確認するか、ハローワークに相談してください。
4. 離職票への記載方法と注意点
記載欄(9欄・11欄)
離職証明書では「賃金支払基礎日数(9欄)」と「基礎日数(11欄)」を記載します。9欄は賃金の支払いに基づく日数、11欄は雇用保険の基本日数です。両方とも正確に記入してください。
日数のカウント方法
有給休暇や半日出勤も日数に含めてカウントします。半日勤務は就業規則や給与規定で決められた方法に従って日数換算します(例:半日を0.5日と扱う等)。出勤扱いで賃金が支払われる日は基礎日数に入ります。
月給制・その他の扱い
月給制の場合、暦日数を基礎日数とすることが多いですが、勤務形態や給与体系で異なります。日給制やシフト制では実勤務日数や実労働時間を基に記載します。給与規程と就業規則を必ず確認してください。
11日未満・80時間未満の月の扱い
1か月あたりの基礎日数が11日未満、あるいは労働時間が80時間未満の月は、その理由と実労働時間を備考欄に記載します。短日数の背景(育児・療養・休職など)も記載しておくと誤解を防げます。
実務上の注意点
・勤怠記録や給与台帳と整合させる。
・就業規則・給与規程を確認して社内ルールに従う。
・記載ミスは雇用保険給付に影響するため、コピーを保管し必要なら労働局へ相談する。
具体例や疑問があれば、次章でよくある事例と解説を掲載します。
5. 雇用保険受給資格と基礎日数の関係
要件の基本
失業給付を受けるには、離職日からさかのぼって2年間の間に「賃金支払基礎日数が11日以上」または「労働時間が80時間以上」の月が、通算で12か月以上あることが必要です。1か月ごとに要件を満たすかどうかを判定します。
カウントの仕方(具体例)
・例1:毎月賃金支払基礎日数が12日の月が10か月、労働時間が80時間超の月が2か月ある場合は合計12か月で要件を満たします。
・例2:賃金支払基礎日数が8日の月が多く、労働時間も短い場合は、その月はカウントされません。
有給の扱い
有給休暇で給与が支払われた日は賃金支払基礎日数にカウントされます。ですから、有給取得が基礎日数の補填になることがあります。
注意点
・判断は離職日から2年間で行います。
・同じ月に両方の条件を満たしても1か月としてしか数えません。
・短期の就労を複数回行った場合でも通算できます。疑問があるときはハローワークで確認してください。
6. 実務でよくある質問と例
この章では、実務でよく出る質問に対する簡単な答えと、具体例を挙げて説明します。
Q1: 有給休暇だけで11日になった月はカウントされますか?
はい。離職票で数えるのは「賃金支払の基礎となった日数」です。実働日数に有給を加えて合計が11日以上になれば、その月は有効な月としてカウントします。例えば、所定労働日数が12日で実働7日、有給4日なら合計11日となりカウントされます。
Q2: 週3日勤務のパートはどう扱いますか?
所定労働日数(契約に基づく出勤予定日)と実際の有給を合算して判断します。週3日勤務で月の所定日数が12日程度なら、実働と有給の合計が11日以上であれば該当月になります。
Q3: 「80時間ルール」はどう適用しますか?
短時間労働者では、月ごとの労働時間が判断基準になることがあります。1か月の実働時間が80時間を超える場合は、働いた月として扱う場合があるため、所定日数が少ないパートでも時間ベースでカウントされることがあります。
実務の注意点
- 出勤簿や有給の記録を明確に残すこと。
- 離職票の記載に疑問があれば早めに事業主かハローワークに確認すること。
次の章では、離職票への記載方法と注意点を詳しく見ていきます。
まとめ
離職票の「賃金支払基礎日数」は、有給休暇も含めて給与支払の対象となった日数をすべてカウントすることが基本です。有給は一日分として必ず計上します。出勤日数と有給日数を合算して正確に記載してください。
11日ルールや80時間ルールは、欠勤や短時間勤務を賃金支払いの有無として扱う基準です。雇用形態や給与体系によって適用が異なるため、該当するルールを確認してから記入しましょう。
実務上のポイント:給与明細・タイムカードで日数を確認する。パートや時短勤務は時間換算の扱いに注意する。疑問があるときはハローワークや社労士に相談してください。
正確にカウントすることで、失業給付の受給資格判定や手続きがスムーズになります。記載ミスを避けるため、複数人での確認や記録の保存を習慣にしましょう。
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