はじめに
本書の目的
この文書は、会社を退職したときに必要な「離職票」が会社から発行されない、あるいは遅れて届く場合に備えたガイドです。離職票の発行手続きの流れ、発行しない理由の例、違法性の有無、届かない場合の具体的な対処法を分かりやすく解説します。
想定読者
- 退職後に離職票が届かない方
- 会社に発行を頼んでも対応が遅い方
- 申請手順や相談先を知りたい方
本章で伝えること
本章では本書の全体像と読み方、離職票がなぜ重要かを簡潔に説明します。以降の章で具体的な手順や相談先を順に示しますので、必要な箇所を参照してください。
注意点
離職票は失業給付などに必要な公的書類です。紛失や未受領がある場合は記録(メールややり取りの日時)を残しておくと相談時に役立ちます。次章では、まず会社が離職票を出さないときの実情を詳しく見ていきます。
離職票を会社が出してくれない場合の徹底調査
■ 基本の流れ
離職票は退職者がハローワークで失業給付を受けるための書類です。退職者が会社に依頼し、会社が必要書類をハローワークへ提出してから発行され、退職者に届きます。
■ 発行までの目安
通常は会社が手続きを開始してから約2週間が目安です。ただし会社の事務処理状況やハローワークの混雑で前後します。
■ まず確認すること
– 自分が正式に退職手続きを終えているか(退職届や退職日)
– 会社に離職票の請求を口頭で伝えたか、書面で伝えたか
– 会社が提出する書類(離職証明書など)に不備がないか
■ 具体的な初動対応(おすすめの順序)
1. まず社内の人事または総務に書面で依頼し、提出日を確認する
2. 返信がない場合は電話で再確認し、やり取りを記録する
3. それでも進まないときはハローワークに相談し、会社からの提出状況を確認してもらう
4. 最終的に証拠(メールや書面)を残して労働相談窓口に相談する
■ ポイント
事実を記録しておくと解決が早くなります。発行が遅れる理由は複数あるため、まずは穏やかに確認することが有効です。
離職票が出してもらえない主な理由
雇用保険に未加入
最も多い理由です。雇用保険に加入していない場合、会社は離職票を作成・交付できません。短期勤務や日雇い、雇用契約の誤認などで加入漏れが起きます。まずは給与明細や雇用契約書で被保険者番号や雇用保険料の控除を確認してください。
退職者の依頼不足
会社はこちらからの請求がないと手続きを開始しないことがあります。退職後に離職票をいつまでに欲しいか、書面か郵送かを明確に伝えると早く動いてもらえます。
会社やハローワークの手続き遅延
社内の総務担当やハローワークでの処理が混雑すると時間がかかります。特に繁忙期や担当者交替で遅れが生じます。進捗を電話やメールで丁寧に確認しましょう。
会社の対応ミス・怠慢
記載ミスや手続き忘れ、故意の遅延もあります。具体例として必要書類の紛失や提出期限の無視があります。記録(やり取りのメールや控え)を残し、改善が見られない場合はハローワークや労働相談窓口に相談してください。
その他の事情
事業所の廃止や倒産、特殊な雇用形態では手続きが複雑になります。その場合はハローワークで状況を説明し、必要な対応を確認してください。
違法性について
まずの結論
会社が離職票の発行手続きを怠ることは、場合によっては違法となる可能性があります。雇用保険法では、事業主に対して退職者の資格喪失日の翌々日から10日以内に必要書類をハローワークへ提出する義務を定めています。
法的義務と具体例
資格喪失日が8月31日なら、提出期限は9月2日から数えて10日以内、つまり9月11日までです。会社が意図的に手続きをしない、あるいは著しく遅延する場合はこの義務違反に当たります。
どのような対応があり得るか
手続き遅延や未実施は行政指導の対象になります。ハローワークは事業主に対して是正を求め、場合によっては改善命令や罰則(過料など)の対象となる可能性があります。また、遅延で給付に損害が出た場合は民事的な損害賠償請求が検討されることがあります。
当事者として取るべき行動
まずは書面(内容証明郵便など)で発行を求め、送付の記録を残してください。ハローワークに相談して状況を伝え、手続きの有無を確認してもらいましょう。必要なら労働局や弁護士に相談して、行政への申告や法的手段を検討してください。記録を残すことが解決を早めます。
離職票が届かないときの対処法
1) まず会社へ再度依頼する
離職票は会社が発行する書類です。まずは電話かメールで再度依頼してください。依頼の際は日時と担当者名を記録します。内容証明郵便やメールの送信履歴を残すと証拠になります。例:”離職票の発行をお願いいたします。発行日と送付方法をお知らせください。”
2) 記録すべきこと(具体例)
- 依頼した日付・時間
- 担当者の氏名と所属部署
- 依頼した方法(電話・メール・面談)
- 送付の有無と送付日
これらを紙や電子メモで残してください。証拠があると後の手続きがスムーズになります。
3) ハローワークに相談する
2週間ほど待っても届かない場合はハローワークへ相談してください。ハローワークは会社へ発行を促すよう働きかけます。相談時は身分証明書と離職日、会社名、依頼の記録(メールや送達証明)を持参してください。
4) 仮手続き(仮の申請)を利用する
離職票が無い場合でも、ハローワークで失業給付の仮手続きができることがあります。仮手続きでは本人確認と会社への確認で給付の開始を検討します。正式な離職票が後で届けば手続きが確定します。手続きの可否や必要書類はハローワークで確認してください。
5) 2025年1月からのマイナポータル経由取得について
2025年1月からはマイナポータルを通じて離職票を取得できる制度が始まります。マイナンバーカードでログインし、電子で受け取れるため会社の発行遅延に左右されにくくなります。準備としてマイナンバーカードの有効化とマイナポータルの利用登録をしておくと便利です。
6) 会社が応じない場合の次の一手
会社が故意に発行を拒む場合は、ハローワークの相談結果を受けて労働局や労働基準監督署に相談してください。記録した証拠があると対応が進みやすくなります。必要に応じて書面での要求や専門家(社会保険労務士など)への相談も検討してください。
離職票が必要なケースと使うタイミング
主に必要になる場面
- 失業保険(雇用保険の基本手当)の申請時。一番一般的で必須です。
- 求職活動の証明や、再就職支援を受けるとき。ハローワークでの手続きに使います。
- 健康保険や年金の切替手続きで、退職日や被保険者資格喪失の確認が必要な場合。市区町村での国民健康保険加入時に求められることがあります。
- 転職先が在職期間の確認を求める場合や、失業期間に対する公的給付の審査時。
使うタイミングと注意点
- 基本は退職後にハローワークで失業給付を申請するとき。離職票が届いたら速やかに持参してください。
- 離職票が届く前に申請準備を始めたいときは、退職証明書や給与明細、雇用保険被保険者証などを代わりに用意することができます。ハローワークに相談すると代替書類で対応してくれる場合があります。
- 転職手続きや保険の切替は時期が限られることがあるため、必要と分かったら早めに会社へ発行を依頼し、届かない場合はハローワークや市区町村窓口へ相談してください。
実務的な小ワザ
- 退職時に離職票の送付先住所を確認しておくと届きやすくなります。
- 会社が発行遅延の場合、ハローワークに状況を説明すると手続きの救済策を案内してくれます。
よくある質問・注意点
Q1: 離職理由を訂正したい場合
ハローワークで訂正できます。離職票の記載内容に誤りがあれば、まずハローワーク窓口で相談してください。たとえば「会社都合」と「自己都合」の判断に疑問があるときは、説明と証拠(雇用契約書や退職時のやり取り)を用意すると話が進みやすいです。
Q2: 離職票の再発行は可能ですか
可能です。ハローワークで再発行手続きを受け付け、窓口で即日対応してもらえるケースが多いです。会社側の手続きが不完全な場合は、ハローワークが間に入って確認します。
Q3: 住所変更の扱い
退職前後に住所が変わる場合は、必ず会社に連絡してください。会社が古い住所に送付してしまうと受け取り漏れが起きます。郵便の転送手続きも併せて行うと安心です。
注意点
- 受け取り忘れが疑われるときは、まず会社とハローワークの両方に確認してください。
- 証拠は保存しておくと有利です(メール、退職届の控えなど)。
- 不安な場合はハローワークで早めに相談を。窓口での説明で手続きがスムーズになります。
まとめ:離職票が出してもらえない場合の対応フロー
退職後に離職票が必要な場面では、速やかな対応が大切です。以下の順序で進めてください。
1. 退職時に発行を依頼する
退職手続きの際に離職票の発行を口頭・書面で依頼します。メールや文書で記録を残すと後で証拠になります。
2. 2週間待って届かなければ再依頼
退職後2週間を目安に届かなければ、まずは会社に再依頼します。送付状況や登録に不備がないか確認しましょう。
3. それでも届かない場合はハローワークへ相談
会社への再依頼でも解決しないときは、最寄りのハローワークで相談します。仮手続き(離職票がなくても失業手当の仮申請)や、会社に対する手続きの案内を受けられます。
4. マイナポータルやその他の方法も検討
マイナポータルから取得できる場合があります。利用方法が分からないときはハローワークでサポートを受けてください。
5. 記録を残し迅速に行動する
依頼メール、送付記録、退職日を示す書類は必ず保管してください。離職票は失業保険申請に必須です。早めに動くことで給付の遅れを防げます。


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