はじめに
目的
本調査は「離職票 誰が発行」というキーワードを中心に、離職票に関する基本的な情報を分かりやすくまとめることを目的としています。離職票の発行主体や手続きの流れ、企業の役割、書類の構成、発行時期、届かない場合の対処法などを丁寧に解説します。
離職票とは
離職票は、退職した人が失業給付(失業保険)を受ける際に必要となる公的書類です。退職後にハローワークで手続きを行うときに提出します。発行には企業の手続きとハローワークの処理が関係するため、両者の連携が重要です。
誰に向けた記事か
- 退職後に離職票の発行元や流れを知りたい方
- 発行が遅れて困っている方の対応策を探している方
- 初めて退職して失業手当を申請する方
本シリーズの構成
本記事は全8章で構成します。第2章以降で発行主体、手続き、書類の見方、発行時期、退職証明書との違い、届かない場合の対応、取得方法と利用場面を順に詳しく説明します。
離職票の発行元と企業の役割
ハローワーク(発行機関)の役割
離職票はハローワークが正式に発行する公的な書類です。ハローワークは雇用保険に関する受給手続きの窓口で、受給資格の判定や支給手続きのために離職票を受け取ります。書類の記載内容をもとに給付の可否や期間が判断されます。
企業の役割と法的義務
離職票の申請は原則として旧勤務先(企業)が行います。企業は雇用保険法に基づき、必要書類を作成してハローワークへ提出する義務があります。たとえば、自己都合退職・会社都合退職・契約満了など退職理由に応じて所定の欄に記入します。
企業は退職した人に対して離職票を交付する責任があります。従業員が請求しない場合でも、一定の条件下では企業に発行義務が生じます。特に59歳以上の退職者については、本人の意思にかかわらず離職票の交付が義務付けられています。
具体例
- 退職者が自己都合で辞めた場合:企業は離職理由を記載し、ハローワークに申請します。
- 定年(59歳以上を含む)で退職した場合:企業は必ず離職票を発行して交付します。
このように、発行元はハローワークですが、申請と交付の手続きでは企業が中心的な役割を果たします。
離職票発行までの具体的なフロー
フローの全体像
企業が「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を作成し、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出します。ハローワークは内容を確認して「離職票-1」「離職票-2」を発行し、企業が受け取って退職者に交付します。
手順(ステップ)
- 書類準備(企業)
- 必要書類:雇用保険被保険者資格喪失届、離職証明書
- 記入例:退職日、離職理由、被保険者番号、賃金額、会社の代表印などを記入します。
- 提出(企業→ハローワーク)
- 提出期限:退職日の翌日から10日以内
- 提出方法:窓口持参または郵送(郵送の場合は追跡できる方法が安心です)
- 確認・発行(ハローワーク)
- ハローワークが内容を確認し、問題なければ離職票を作成します。記載に不備があれば差戻しや確認連絡があります。
- 交付(企業→退職者)
- 企業は離職票を受け取り、郵送または手渡しで退職者に交付します。郵送なら書留や配達記録の利用をおすすめします。
提出時の注意点
- 退職日や被保険者番号は正確に記入してください。住所変更がある場合は最新住所を使います。
- 離職理由は区分に応じて丁寧に記載すると手続きがスムーズです。
よくある遅れの原因と対策
- 記載漏れ・押印忘れ:提出前にチェックリストで確認してください。
- 郵送トラブル:追跡可能な方法で送付する。
- 離職理由の不明瞭さ:事前に労務担当と確認しておくと訂正が減ります。
離職票の構成と記載内容
全体の構成
離職票は主に2枚で成り立ちます。
– 離職票-1(雇用保険被保険者資格喪失届): 退職者本人の欄があり、基本情報を記入します。
– 離職票-2(被保険者離職証明書の本人控): 事業主が記入した内容が反映され、本人控えとして渡されます。
離職票-1の主な記載項目(例と説明)
- 氏名・生年月日: 身分確認のため正確に記載します。
- 被保険者番号: 雇用保険の番号。間違うと給付手続きが遅れます。
- 離職日: 最終出勤日や退職日を記入(例: 2025年3月31日)。
離職票-2の主な記載項目(事業主記入)
- 離職の理由: 「自己都合」「会社都合」などが記載されます。給付の扱いに影響します。
- 賃金・賞与の支払い状況: 最近の賃金額や支払期間が書かれます。
- 労働期間・被保険期間: 在籍期間や保険加入期間を確認します。
本人控えと確認ポイント
本人控えは手元に残す書類です。記載内容は必ず確認し、誤りがあれば事業主に訂正を依頼してください。特に被保険者番号、離職日、離職理由は優先して確認しましょう。
発行時期と申請期限
基本の考え方
離職票は退職者の申し出を受けて、会社が所定の手続きを行うことで発行されます。退職前に発行を依頼することもできますが、離職日や離職理由の記載が必要なため、実際の提出は退職日以降に行われることが多いです。
具体的な期限
- 退職者の請求期限:退職日から2年以内に請求してください。これを過ぎると請求できない場合があります。
- 企業の提出義務:会社は退職日の翌日から起算して10日以内に書類を提出する義務があります。
発行までの日数の目安
会社が速やかに手続きを行えば、提出後は通常数週間内に退職者の手元に届きます。ケースによっては1〜3週間で届くことが多いですが、書類の不備や会社側の手続き遅れ、郵送事情によりさらに時間がかかることがあります。
退職前に申請する場合
事前に離職票の発行を依頼しておくと、会社が退職日の記入や必要な確認を済ませた後に迅速に提出できます。退職日後に手続きが開始される点だけご留意ください。
遅延が生じたときの初動対応
まずは会社の人事担当や総務に届いているか、提出済みかを確認してください。住所変更がある場合は速やかに伝えます。会社から連絡が取れない、提出されていないと判断した場合は、最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)に相談してください。
おすすめの準備
退職前に発行を依頼し、連絡先や現住所を確認しておくと安心です。申請期限の2年を目安に、万が一のトラブルに備えて早めに動きましょう。
離職票と退職証明書の違い
発行する機関と目的
離職票はハローワークが発行する公的書類で、主に失業手当(雇用保険)の申請に使います。退職証明書は会社が発行する書類で、在職期間や職務内容などを証明します。国や自治体の手続きや民間の証明に用います。
主な使いみちの違い(具体例)
- 離職票:失業手当の申請、受給資格の確認。ハローワーク窓口で提出します。
- 退職証明書:国民健康保険や国民年金の手続き、転職先への提出、住宅ローンや各種手続きの証明。
記載内容の違い
離職票には離職理由や被保険者期間、雇用保険番号などが記載されます。退職証明書は在職期間、職務内容、最終給与など会社が必要と判断した事項が記載されます。
取得方法の違い
離職票は会社が必要な手続きをしてハローワークが発行します。社員は届くのを待ち、届かなければ会社かハローワークに確認します。退職証明書は退職者が会社に直接発行を依頼します。多くの会社は書面で発行します。
実務上の注意点
必要な手続きに応じてどちらが必要か確認してください。失業手当申請には離職票が必須です。国民健康保険や年金の手続きでは退職証明書が求められることがあります。両方が必要な場合もありますので、早めに会社と連絡を取りましょう。
離職票が届かない場合の対応
まず確認すること
退職後、一定期間たっても離職票が届かないときは、まず会社側に届出・発送済みかを確認してください。郵送事故や記載漏れで止まっていることがあります。退職日や会社名がわかる書類(給与明細や雇用契約書)を手元に用意すると話が早くなります。
ハローワークでの再発行申請
離職した事業所の管轄ハローワークで再発行を申請できます。身分証明書と退職が分かる書類を持参してください。場合によってはその場で即日受け取りが可能です。窓口で事情を説明すれば、ハローワークが会社へ確認や再発行手続きを行います。
会社へ連絡する際のポイント
感情的にならず、事実だけを伝えます。「離職票が届いていないので確認してください」と要点を明確に伝えると対応が早まります。郵便での送付状況を尋ね、可能なら送付の証拠(控え)を求めましょう。
それでも届かない場合の対応
会社が協力しない、あるいは不明瞭な対応を続けるときは、ハローワークに状況を相談してください。必要に応じて労働基準監督署に相談すると解決に向かいやすくなります。労働基準監督署は、未払い賃金や手続きの不備について助言・調査を行います。
受け取りまでの注意点
失業給付申請などで離職票が必要な場合は、早めにハローワークへ行って相談してください。申請期限に間に合うよう証明書類の代替案を案内してもらえます。
離職票の取得方法と利用場面
離職票の取得方法(基本)
退職後はまず会社に「離職票の発行をお願いします」と伝えます。会社が手続きを行い、記入済みの離職票を郵送してくれるのが一般的です。記載内容に不備があれば、受け取ってから早めに会社に確認してください。
会社への依頼時のポイント
- 連絡は書面やメールで残すと安心です。例:「離職票の発行をお願いします。送付先は○○です」
- 住所変更がある場合は必ず伝えましょう。届かない原因を防げます。
ハローワークでの利用場面
離職票は主に失業給付(基本手当)の申請で使います。ハローワークで離職票を提出し、求職申込や給付手続きの案内を受けます。提出後、受給手続きの流れや受給開始時期を案内してくれます。
その他の利用場面(例)
- 再就職の際に雇用保険の記録を確認するとき
- 給付金や証明が必要な場面で、退職理由の証明として使う場合があります
必要な場面でスムーズに手続きできるよう、離職票は届いたら大切に保管してください。


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