はじめに
本記事の目的
本記事は、離職票の保管期間について分かりやすく解説するために作成しました。企業側と個人(退職者)側の法定保存期間や、実務での注意点、再発行の可否や関連法令まで取り上げます。離職票の取り扱いで迷っている方に向けた実用的なガイドです。
誰に向けた記事か
主に次の方を想定しています。
– 人事・総務や経理担当者
– 最近退職した方や離職票の保管に不安がある方
– 中小企業の経営者や労務管理を担当する方
具体例を交えながら説明しますので、専門知識がなくても読み進められます。
なぜ注意が必要か
離職票は失業保険の手続きに必要な重要書類です。紛失や誤処理があると、給付に遅れや手続きのやり直しが生じます。税務上や労働関係のトラブル防止の観点でも保管方法が重要です。
本記事の構成
以下の章で順を追って説明します。
第2章: 離職票とは何か?その役割と基礎知識
第3章: 離職票の法定保管期間(企業側)
第4章: 離職票の保管期間(個人・退職者側)
第5章: 離職票の再発行が可能な期間
第6章: 離職票の保管に関する実務上の注意点
第7章: 関連法令・他の人事書類の保管期間
次章からは具体的な法定期間や実務上の手順を丁寧に説明します。まずは基礎的な知識を押さえておきましょう。
離職票とは何か?その役割と基礎知識
離職票の定義
離職票は正式には「雇用保険被保険者離職証明書」と言い、退職した事実と雇用保険の加入状況を証明する公的書類です。失業給付(失業手当)を受ける際にハローワークへ提出します。
誰が発行するか
事業主(会社)が作成して退職者へ交付します。通常は2枚一組で渡され、ハローワーク提出用と本人控えとなることが多いです。受け取り時期は企業により異なりますが、退職後数日から数週間程度かかる場合があります。
主な用途
主な用途は失業給付の申請です。転職先へ提出する書類ではなく、年金や税務の一般的な証明書には代わりません。
確認すべきポイント
受け取ったら必ず内容を確認してください。特に「退職日」「雇用保険の被保険期間」「離職理由」は重要です。離職理由の違いで給付開始の時期や給付日数が変わります。たとえば、会社都合(解雇や倒産など)では給付が早く、多くなる場合があり、自己都合(自己都合退職や転職希望)では待期や給付日数の制限があります。
受け取れない・紛失した場合
離職票が届かない場合や内容に誤りがある場合は、まず事業主に確認してください。対応が難しいときはハローワークに相談すると手続きの案内を受けられます。紛失した場合の再発行は事業主への依頼が必要です(再発行の期間等は第5章で詳しく説明します)。
離職票の法定保管期間(企業側)
保管義務の概要
企業は、退職者に関する離職票を退職日の翌日から4年間、保管する法的義務があります。これは雇用保険の手続きや後日の確認に備えるためです。実務上、まず離職票が発行された時点で専用ファイルに整理すると管理が楽になります。
起算日と期間の考え方
起算日は「退職日の翌日」です。たとえば2023年3月31日に退職した場合、保管期限は2027年3月31日までとなります。4年を過ぎると保管義務はなくなり、廃棄できます。
対象となる書類の例
離職票のほか、雇用保険被保険者資格取得届や喪失届、賃金台帳の写しなど、同様の保存期間が適用される書類があります。社内でどの書類が該当するか一覧にしておくと便利です。
廃棄時の注意点
個人情報を含むため、廃棄はシュレッダーや専門業者での処理が望ましいです。電子データでも同等の管理(暗号化やアクセス制限)を行ってください。
実務上のポイント
・保管期限をカレンダーに登録し、期限前に確認する。
・退職者ごとにファイルを分け、発行日と期限を明記する。
・社内規程で保管方法と廃棄手順を定め、担当者を明確にする。
離職票の保管期間(個人・退職者側)
概要
退職者本人に離職票の法定保管期間は定められていません。ただし、失業給付(雇用保険の給付)を申請する可能性がある場合は、退職日の翌日から1年間は必ず保管してください。
なぜ1年保管が必要か
ハローワークで失業給付の手続きを行える期間が、退職日の翌日から1年と定められているためです。たとえば退職日が1月1日なら、翌年の1月1日までは保管しておく必要があります。
複数社分を合算して申請する場合
過去の勤務を合算して給付を受けるケースでは、勤務記録の確認が長引くことがあります。そのため、2年間程度の保管を推奨する場合があります。
実務上の注意点(簡潔)
- 原本は大切に保管しましょう。申請時に原本が求められることが多いです。
- 破棄する場合は、保管期間が経過していることを確認してからにしてください。
- 紛失したときの対応は第5章で詳しく説明します。
必要な期間だけ確実に保管し、不要になったら安全に処分してください。
離職票の再発行が可能な期間
概要
離職票を紛失した場合、退職日の翌日から起算して4年間は再発行の申請が可能です。企業には一定期間の保管義務があり、その期間内であれば再発行を依頼できます。
再発行可能な期間の詳細
- 起算点:退職日の翌日からカウントします。
- 期限:4年以内に再発行の申し出を行ってください。4年を過ぎると企業の保管義務は消滅し、再発行が難しくなります。
再発行の手順(一般的な流れ)
- まずは前職の会社に連絡し、離職票の再発行を依頼します。電話やメールで状況を伝え、必要書類や本人確認方法を確認してください。
- 会社が対応できる場合、会社側で離職票を作成し、本人へ郵送または直接手渡しします。
- 会社が対応できない(倒産・連絡不能など)場合は、最寄りのハローワークに相談します。給与明細や源泉徴収票、雇用契約書など在職を証明する書類を持参すると手続きがスムーズです。
必要になることが多い書類(例)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 雇用契約書や給与明細、源泉徴収票
- 会社とのやり取りを示す記録(メールや郵便の控え)
実務上の注意点
- 可能な限り早く対応してください。期限ぎりぎりだと手続きが間に合わないことがあります。
- 会社が文書を廃棄している場合、再発行は難しくなります。その際はハローワークで代替手続きが可能か相談してください。
- 離職票は雇用保険の給付手続きに必要です。再発行できないと給付に遅れが出る可能性があります。
保存の勧め
再発行の手間を避けるため、離職票は受け取り次第コピーを取るかスキャンして安全な場所に保管してください。電子保存でも問題ありませんが、個人情報の扱いには注意してください。
離職票の保管に関する実務上の注意点
保管期間の目安
離職票は最低でも1年間は保管してください。失業給付申請や勤務期間の証明が必要になるためです。安心を求めるなら2年〜4年程度保管します。企業は法定保存期間の4年を基準に守る必要があります。
個人向けの実務ポイント
- 紛失対策として、離職票を受け取ったらすぐにコピー(紙・デジタル)を作成します。スマホで撮影してもよいです。
- ファイル名に「退職年月_勤務先名」と記入すると後で探しやすくなります。
- 失業給付を申請する可能性がある場合は、申請期間が過ぎてもすぐに廃棄しないでください。
企業向けの実務ポイント
- 法定保存期間(4年)を厳守します。給与台帳や雇用保険関係書類と同様に管理します。
- 個人情報保護の観点から、保存期限が過ぎたら速やかに安全に廃棄(シュレッダー等)します。
- 電子化する場合はアクセス権を設定し、バックアップを確保します。
紛失・再発行に備えるポイント
- 再発行手続きに時間がかかることを見越して、余裕をもって対応します。
- 複数社での加入期間を合算する場合は、各社の離職票が揃っていると手続きがスムーズです。
廃棄時の注意
- 期限後は個人情報が漏れないようシュレッダーや専門業者で破棄します。
- 廃棄記録を残すと管理責任を果たしやすくなります。
関連法令・他の人事書類の保管期間
法律の大まかな流れ
2020年の法改正で、雇用に関する一部の書類の保存期間が見直されました。企業は法定期間に従って保管する義務があります。
主な書類と保管期間(実務上の目安)
- 雇用契約書・労働条件通知書:5年(2020年改正により延長)
- 労働者名簿・賃金台帳:5年(労働基準法に基づく)
- 離職票:4年(雇用保険法施行規則に定める)
電子保存について
電子帳簿保存法や各省庁のガイドラインに従えば、電子保管も可能です。原本性の確保、改ざん防止、検索性・可読性の確保が求められます。具体的にはタイムスタンプやアクセス記録の保存、定期的なバックアップが有効です。
実務上の注意点
- 個人情報保護の観点からアクセス権限を管理してください。
- 訴訟や年金・保険の確認で必要になる可能性があるため、法定期間を目安に余裕をもって保存することをおすすめします。
- 廃棄はシュレッダーや溶解処理で安全に行ってください。
まとめ的な指針(実務のヒント)
保存期間は最低基準です。社内ルールで保存期間を明確にし、電子・紙での管理方法を統一すると管理負担が減ります。必要に応じて社労士や弁護士に相談すると安心です。


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